2017年7月18日

市場レートと中央銀行公表レート

ベストプラクティス

企業財務、税務、会計にはどの為替レートを使うべきか

世界の中央銀行が予想外の方法で政策を実施することが増えています。2015年のスイスショックや2016年の中国人民元切り下げなど、国際金融における中央銀行の行動が以前より大胆になっていることは間違いありません。

また、原油価格の下落や英国のEU離脱といったマクロ経済的・地政学的な事態は為替市場にも大きな影響を与え、為替レートの変動性を上昇させる結果を招きました。

為替市場ではボラティリティが高いことが普通のことになってきており、市場参加者は以前にまして各国中央銀行の会合などの日程に注意するようになっています。

中央銀行が以前より積極的に関与するようになったもう一つの点は為替レートの公表です。国内で事業を行う企業に対して中央銀行の公表レートの使用を義務づける例も見られるようになりました。

市場レートと中央銀行公表レート

ここでは、為替の市場レートと中央銀行公表レートが違うものだということに注意が必要です。為替市場のレートは参加者間の需給により決定され、需給は地政学的な安定度、雇用の見通し、貿易収支、中央銀行の行動などから影響を受けます。また、為替市場は相対取引(OTC)であるため、複数の為替レートが同時に存在します。売り手と買い手が合意すればどのレートも常に有効です。そのような市場の性質により、正確なレートの提供には高度な工夫と技術が必要です。世界の外為市場をリードするOANDAは最高品質の為替レートをご提供します。それを可能にするのは次のような当社の独自性です。

  • 為替市場の主要プレーヤーからリアルタイムでデータを取得
  • 同一データを多数の信頼できる提供者から入手
  • 各取引日におけるすべてのデータを集約
  • 時間加重平均価格(TWAP)を算出
  • 為替データをAPIで自動送信するほか、クラウドベースのHistorical Currency Converterで過去の為替レートを提供

中央銀行が公表する為替レートも需給を基準に決定されますが、その他の要因や指針も加味されています。たとえば、欧州中央銀行(ECB)は基準レートの公表に当たって、為替指標に関する金融安定理事会勧告のほか、欧州証券市場監督局(ESMA)と欧州銀行監督機構(EBA)が策定した「EUにおける指標設定プロセスに関する原則」や証券監督者国際機構(IOSCO)が策定した「金融指標に関する原則」を考慮しています。しかし、他の中央銀行はこれらの指針の一部しか採用していない場合や全く別の指針を採用している場合があり、そこに問題が生じます。最終的には、同じ通貨ペアについて中央銀行ごとに公表レートが異なるという状況に至るのです。

企業の会計・税務や公認会計士にとっての意味

国によっては、中央銀行公表レート以外の為替レートを財務報告に使うことを税務当局が認めない場合があり、そのような国で事業を行う企業は為替レートの情報源を見つけることに苦労することがあります。特に、自動化された処理や報告に為替レートを活用したい場合には、問題となります。ほとんどの企業では、財務処理のために原則的には市場の為替レートを自動的に取得できる情報源を利用していても、このような特定の国に関しては手動の入力処理を別途設けています。

中央銀行公表レートに関する3つの問題点

  • 技術的な一貫性 - 中央銀行はデータの公表方法を予告なく変更する可能性があります。データを公表する時刻を変更するかもしれません。たとえば、カナダ銀行は26通貨の為替レートについて2017年5月1日以降は公表時刻を16時30分にすると発表しました。また、データの形式、公表方法、計算方法は各中央銀行により異なっていますので、各国中央銀行のウェブサイトから「スクレイピング」によって為替レートを入手することは容易ではありません。
  • 対象通貨 - カナダ銀行の例を見ると、各国中央銀行がすべての通貨に対応しているとは限らないことがわかります。国際的企業が単一の情報源から為替データを入手しようとする場合、自社に関係のある通貨のレートを中央銀行が公表していなければ、その中央銀行を情報源とすることはできません。
  • 実用性 - ほとんどの中央銀行は、公表データが参考値にすぎない旨を明示しています。つまり、取引やリスクの評価に使われることを想定していないということです。そのため、企業が市場リスクの評価のために中央銀行の公表レートを使うと、実勢と乖離する可能性があります。

企業が使うべき為替レート

企業が使うべき為替レートは事業や財務との関係によって決まります。各国の法令や会計基準によって中央銀行公表レートの使用が義務づけられているのであれば、当然それに従うべきです。一方、会社のリスクを把握したい場合、国際取引の実質的価値を評価したい場合、あるいは商品やサービスの価格を外貨で設定したい場合は、市場価格を使用する必要があります。その場合でも、為替市場は相対取引であるため、単一の情報源が提供する真の為替レートというものは存在しません。

為替データの取得方法には絶対的な基準が存在しません。そのため、優れた慣行に従うことになりますが、大手会計事務所の傾向としては、会計、税務、財務報告に使う為替データを企業が効率的に取得することは認められているようです。たとえば、為替データの取得を完全に自動化することは認められており、それができない場合でも、データを単一の情報源から直接手作業で入手すること(つまり、日次、週次、月次のデータダウンロード)も認められます。また、データの品質は提供者によって決まります。次に挙げた項目は当社が信頼できる為替データ提供者である証です。

  • 為替市場の複雑性に対する深い知識
  • 銀行間外為市場の豊富な情報を確実に入手する能力
  • 正確なTWAPを算出する技術
  • 信頼できるデータ自動送信システム

ある種の国で事業を行う企業には中央銀行の公表レートが必要となる場合もありえますが、中央銀行を単独の情報源とすることは明らかに不適当です。世界的組織で働く財務のプロや経理担当者に必要なものは、正確で信頼できる市場レートと中央銀行公表レートの両方を柔軟性のある一つのソリューションとして提供できる総合的なデータ提供者でしょう。

OANDAを選ぶ理由

OANDAは20年以上にわたり為替市場の最前線でお客様の信頼を集めてきました。その理由は、為替データの正確性や信頼性だけでなく、規制の変化に絶え間なく対応して各国の政策に適合するよう努めてきた姿勢にもあると自負しています。実際、OANDAは、各種ERPシステム、デジタル製品、フィンテックアプリ、会計・財務ソフトウェアに為替データを自動送信するExchange Rates APIにより中央銀行公表レートを提供しています。また、OANDAはHistorical Currency Converterでも中央銀行公表レートを提供しています。これはCSVファイルのダウンロードによりユーザーが手動でデータを取得できるウェブアプリケーションであり、その利便性にはご好評をいただいています。

もちろんそれだけではありません。OANDAのお客様は全世界が信頼するOANDA Rates®を併せてご利用いただけます。これにより38,000以上の通貨ペアに関する1990年以降のデータをご入手いただくことが可能です。

中央銀行公表レートに関するご質問はこちらからお寄せください