週間為替展望(ドル/ユーロ)-ドル円、米7月CPIに注目

市場見通し
◆米7月CPIが予想を大幅に下回った場合、緊急FOMCの可能性も
◆日本の4-6月期国内総生産(GDP)や中東の地政学リスクにも注意
◆ユーロ、8月ZEW景況指数や6月鉱工業生産を見極め

予想レンジ
ドル円   143.50-149.50円
ユーロドル 1.0650-1.1100ドル

8月12日週の展望
 ドル円は、米7月消費者物価指数(CPI)の伸び率が予想よりも鈍化していた場合、緊急米連邦公開市場委員会(FOMC)による利下げの可能性に警戒しておきたい。また、ウクライナ戦争や中東での地政学リスクの高まりには、引き続き注意が必要だろう。

 14日に発表される米7月CPIの予想は前年比2.9%で6月の3.0%からの鈍化へ、コアCPIの予想も3.2%で6月の3.3%からの鈍化が見込まれている。米7月の雇用統計のネガティブサプライズを受けて、9月のFOMCでの0.50%の利下げの可能性が高まっている。過去50年間の7回のリセッション(景気後退)を的確に予想してきた「サームルール」が0.53%となり、1年以内のリセッション入りを警告しているほか、21日に公表予定の年次改定で雇用者数が下方修正される可能性のあることなども、0.50%の利下げ見通しの背景になっている。

 ドル円は、植田日銀総裁が政策金利を0.25%まで引き上げた後の定例記者会見で、これまで金利の壁と見なされてきた0.50%を超えて中立金利水準の1.0%に向けた追加利上げを暗に示唆したことなどをきっかけに、円キャリートレードの巻き戻しが急速に進んだ。今週に入って、内田日銀副総裁は「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」とハト派的な見解を述べたものの、「植田総裁と自分との考えの違いはない。経済や物価が見通しに沿って展開していくのであれば、それに応じて金融緩和の度合いを調整していくことが適切」とも述べており、利上げ路線を否定したわけではない。日本株やドル円の上値を抑える要因となっている。

 また、15日に発表される日本の4-6月期実質国内総生産(GDP)は、前期比年率2.3%と予想されており、1-3月期の-2.9%からの大幅改善が見込まれている。もしGDPがプラス圏に改善した場合、6月の実質賃金が前年同月より1.1%増加して2022年3月以来27カ月ぶりにプラスに転じていることもあり、追加利上げ観測が再び高まることになりそうだ。

 ユーロドルは、米7月CPIの伸び率鈍化が見込まれていることから、底堅い展開が予想される。ただ、ウクライナや中東の地政学リスクへの警戒感も強く、上値は限定的となりそうだ。8月ZEW景況指数や6月ユーロ圏鉱工業生産などを見極めることになるだろう。

8月5日週の回顧
 ドル円は、日銀の追加利上げ観測を受けた円キャリートレードの手仕舞いで141.70円まで急落したが、内田日銀副総裁のハト派発言を受けて147.90円まで買戻されている。なお、日経平均株価は、5日に1987年10月のブラックマンデーの時の下落幅を上回る過去最大の下落幅(▲4451円)を記録した後、翌6日には過去最大の上昇幅(+3217円)を記録するなど乱高下となった。ユーロドルは週初の1.1008ドルから1.0882ドルまで下落している。(了)


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