September 21, 2023
【前日の為替概況】ドル円、年初来高値 米政策金利見通し引き上げ
20日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。
終値は148.34円と前営業日NY終値(147.86円)と比べて48銭程度のドル高水準だった。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を前にポジション調整目的の売りが先行し、2時30分前に一時147.48円と日通し安値を付けたものの、FOMC結果公表後はドルを買い戻す動きが活発化した。
取引終了間際には一時148.36円と昨年11月4日以来の高値を更新した。
米連邦準備理事会(FRB)は19-20日に開いたFOMCで市場予想通りFFレートの誘導目標を5.25-5.50%に据え置くことを決めたと発表。
声明では景気認識を「堅調なペースで拡大している」と上方修正したうえで、2023年と24年の成長率見通しを引き上げた。
また、政策金利見通し(ドット・チャート)では24年末の予想中央値を5.125%(前回4.625%)、25年末を3.875%(同3.375%)に引き上げた。
FRBの金融引き締めが長期化するとの見方が改めて意識されると、米金利の上昇とともにドル買いが優勢となった。
なお、パウエルFRB議長はFOMC後の会見で「FRBは金利決定について慎重に進める」としながらも、「今後の決定はデータ次第」「経済活動は予想以上に好調」「適切であれば追加利上げの用意がある」などと語った。
ユーロドルは続落。
終値は1.0661ドルと前営業日NY終値(1.0679ドル)と比べて0.0018ドル程度のユーロ安水準だった。
米長期金利の指標である米10年債利回りが4.31%台まで低下すると全般ドル売りが先行。
1時30分過ぎに一時1.0737ドルと日通し高値を更新した。
ただ、FOMCの決定が「タカ派的な据え置きだった」と受け止められると、米金利の上昇とともに一転ドル買いが広がった。
市場では「FRBがタカ派色を強めた」との見方もあり、ドル買いを促した。
5時過ぎには一時1.0650ドルと日通し安値を更新した。
なお、米長期金利の指標である米10年債利回りは一時4.4070%前後と07年11月以来の高水準を付けたほか、金融政策の影響を受けやすい米2年債利回りは5.1758%前後と06年7月以来の高水準を記録した。
ユーロ円は小幅ながら3日続伸。
終値は158.15円と前営業日NY終値(157.90円)と比べて25銭程度のユーロ高水準。
欧州株相場の上昇に伴う円売り・ユーロ買いが先行すると一時158.45円と日通し高値を付けたものの、FOMC後にユーロドルが失速するとユーロ円にも売りが波及した。
米国株相場の下落も相場の重しとなり、4時30分過ぎには157.91円付近まで上値を切り下げた。
【本日の東京為替見通し】ボラティリティ抑制の介入へ警戒感、本日も多数中銀が政策金利発表
本日のドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)後にドルがほぼ全面高になっていることで底堅さを維持するだろうが、為替介入への警戒感が高まっていることで、値幅を伴った上昇を期待するのは難しいか。
FOMCの結果を受けてドル買いになったものの、ユーロドルは前日の終値水準と比較した場合の下げ幅は20Pips程度、豪ドル/ドルは10Pipsにも満たないドル高に収まっている。
FOMC前の盛り上がりは肩透かしにあい、「タカ派的な据え置き」やドット・チャートの変化もある程度は市場の予想範囲といえそうだ。
その中でクロス円の値動きを見ると、昨日英国のインフレが低下したことで軟調に推移したポンド円以外の多くは、小幅ながら上昇していることで、円安が進んでいるといえる。
昨日、中尾元財務官が「主要中銀との金融政策の違いが拡大し、行き過ぎた円安であることに変わりない」と指摘し、「再び円安に振れる局面で為替介入することは十分考えられる」と述べたように、円安進行は為替介入への大義名分となり、本日も円買い介入への警戒感が増している。
また、昨日はイエレン米財務長官が「日本の円買い介入に関する見解は状況次第」「円のボラティリティを滑らかにする必要を理解」と発言している。
FOMCを前に出たこの発言は、FOMC後(もしくは明日の日銀政策決定会合後)に円が急落(ドルが急騰)した場合には、ボラティリティ抑制のために為替介入を行うことを本邦当局者が事前に財務長官にお伺いを立てたのでは、との声もある。
この発言が伝わった後に為替介入の権限を司っている神田財務官も、為替相場については「米当局とは日ごろから極めて緊密に意思疎通を取っている」と述べ、「過度な変動が好ましくないという認識を共有」「行き過ぎた変動に対して適切な対応をあらゆる手段を排除せずに取る」と発言したことも、米国の了承を受けて臨戦態勢が整ったとの指摘もある。
ドル円が東京時間に上値トライを仕掛けた時には、為替介入の実弾が出る可能性が増していることには留意したい。
なお、FOMCは通過したものの、本日もスイス、スウェーデン、ノルウェー、英国、トルコ、南アと多くの中央銀行が政策金利を発表する。
また、日銀も本日から政策決定会合が始まることで、FOMC通過後とはいえ発表前までは様子見になり、値動きが限定されるかもしれない。
【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間
<国内>
○日銀金融政策決定会合(1日目)
<海外>
○15:45 ◇ 9月仏企業景況感指数(予想:98)
○16:30 ☆ スイス国立銀行(中央銀行、SNB)、政策金利発表(予想:2.00%に引き上げ)
○16:30 ◎ スウェーデン中銀、政策金利発表(予想:4.00%に引き上げ)
○17:00 ◎ ノルウェー中銀、政策金利発表(予想:4.25%に引き上げ)
○17:30 ◎ 8月香港消費者物価指数(CPI、予想:前年同月比2.0%)
○20:00 ☆ 英中銀(BOE)、政策金利発表(予想:5.50%に引き上げ)
○20:00 ☆ 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
○20:00 ◎ トルコ中銀、政策金利発表(予想:30.00%に引き上げ)
○21:30 ◎ 4-6月期米経常収支(予想:2210億ドルの赤字)
○21:30 ◎ 9月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(予想:▲0.7)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:22.5万件/169.5万人)
○未定 ☆ 南アフリカ準備銀行(SARB)、政策金利発表(予想:8.25%で据え置き)
○23:00 ◎ 9月ユーロ圏消費者信頼感指数(速報値、予想:▲16.5)
○23:00 ◎ 8月米中古住宅販売件数(予想:前月比0.7%/年率換算410万件)
○23:00 ◎ 8月米景気先行指標総合指数(予想:前月比▲0.5%)
○23:40 ◎ シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
20日08:11 神田財務官
「為替相場、米当局とは日ごろから極めて緊密に意思疎通」
「過度な変動が好ましくないという認識を共有」
「行き過ぎた変動に対して適切な対応をあらゆる手段を排除せずに取る」
20日13:15 中尾元財務官
「主要中銀との金融政策の違いが拡大し、行き過ぎた円安であることに変わりない」
「日銀が為替は政府の責任分野と考えているなら、介入の必要性高まる」
「今後再び円安に振れる局面で為替介入することは十分考えられる」
「国債流通利回りが安定的に推移している今こそ(YCC修正)検討始めるチャンス」
20日23:01 マクルーフ・アイルランド中銀総裁
「利下げはもうそこまで来ている」
「2024年3月の第1回利下げは時期尚早だろう」
「次回の会合で利上げを実施するとは言っていないが、我々は頂上付近にいる」
20日23:08 米政府高官
「バイデン米大統領が21日にウクライナへの大規模な軍事支援策を発表」
21日01:24 マッカーシー米下院議長
「暫定法案が明日通過するとは保証できない」
21日02:40 カナダ中銀(BOC)議事要旨
「9月会合で利下げは議論されなかった」
「政策引き締めは潜在的な選択肢にとどまるべき」
「現在の賃金の伸びは物価の安定と矛盾している」
「過剰需要は減少する見通し」
21日03:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明
「最近の指標は、経済活動が堅実なペースで拡大していることを示している」
「ここ数カ月間、雇用の増加は鈍化したが依然として堅調で、失業率も低いままだ」
「インフレ率は引き続き高止まりしている」
「米国の金融システムは健全で強固だ」
「家計や企業の信用状況の引き締まりが経済活動、雇用、インフレの重しになる可能性がある」
「これらの影響の程度は引き続き不透明だ。委員会は引き続き、インフレのリスクに大いに注視している」
「委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す」
「これらの目標を支援するため、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを5.25-5.50%で据え置くことを決定した」
「委員会は追加情報と金融政策への影響を引き続き評価する」
「徐々にインフレ率を2%に戻すために適切とみられる追加的な金融政策の引き締めの程度を決めるに当たり、委員会は金融政策の度重なる引き締め、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れ、および経済と金融の動向を考慮する」
「さらに、以前発表された計画で説明されている通り、委員会は保有する米国債およびエージェンシーローン担保証券の削減を続ける」
「委員会は、インフレ率を2%の目標に戻すことに強く取り組む」
「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引き続き監視する」
「もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある」
「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する」
「今回の金融政策決定は全会一致」
21日03:32 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「二つの責務に正面から取り組む」
「FOMCの決定は今後のデータを基に行う」
「FRBは金利決定について慎重に進める」
「労働市場は依然として逼迫しており、需要と供給のバランスは改善し続けている」
「失業率は3.8%と依然として低い」
「名目賃金の伸びはある程度緩和の兆しを見せている」
「労働需要は依然として供給を上回っている」
「2%のインフレ目標への道は長い」
「FRBは8月のコアPCEが前年比3.9%上昇と予想」
「現在の金融政策スタンスは制限的だと見ている」
「FOMCはこれまでの進展を考慮して金利据え置きを決定した」
「適切であれば追加利上げの用意がある」
「インフレ低下にはトレンド以下の成長期間と労働市場の若干の軟化が必要」
「金利を据え置いたからといって、我々が求める政策スタンスに到達したという意味ではない」
「経済活動は予想以上に好調」
「実質金利は有意にプラス」
「経済活動の力強さが、金利の引き上げを必要とする主な理由」
「到達すべき地点にかなり近い」
「1回の利上げに大きな重要性はない」
「ソフトランディングは基本シナリオではない」
「ソフトランディングはFOMCの第一の目標」
「エネルギー価格の上昇が続くとインフレに影響を与える可能性がある」
「ストライキ、政府機関の閉鎖、学生ローンの支払い再開、長期金利の上昇がリスクの一つである」
「経済が予想より強ければ、さらに行動する必要がある」
「自然利子率が高くなった可能性があるが、まだわからない」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=5日線を一時割り込むも下げ渋り高値更新>
下影陽線引け。
148.36円まで年初来高値を更新した。
昨年11月4日以来の高値圏で上値を試す動きが続いた。
一時147.48円と、昨日147.83円で引けた5日移動平均線を割り込む下振れ場面もあった。
しかし下げ渋って高値を更新。
高値警戒感はあるものの、本日147.99円前後へ上昇した同線を挟んだレンジ中心とした底堅い推移が想定できる。
一目均衡表・転換線のサポートも現水準147.14円からやがて148円台へ切り上がる道筋が見えており支援要因となる。
レジスタンス1 148.85(2022/10/31高値)
前日終値 148.34
サポート1 147.76(ピボット・サポート1)
サポート2 147.14(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロドル=転換線の切り上がり局面を待ちたい>
上影小陰線引け。
一時1.0737ドルと一目均衡表・転換線1.0701ドルを上回る場面もあった。
しかし押し返され、1.0650ドルまで下値を探った。
転換線はまだ低下が続く見込みだが、来週後半には一時切り返す可能性がある。
そのタイミングで転換線の抵抗をこなすことができるか見極めることになるかもしれない。
ただ、それまでもうしばらく重い動きが続きそうだ。
レジスタンス1 1.0716(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 1.0661
サポート1 1.0608(3/17安値)
<ユーロ円=転換・基準線レンジから振れる方向を見定め>
上影小陽線引け。
一時158.45円と、1週間ぶりの高値をつけたものの、一目均衡表・基準線158.18円を下回る水準へ押し戻された。
基準線と一目・転換線157.62円に挟まれたレンジを中心とした振れを予想する。
両線の最接近が予想される158.10円台に収れんするような動きを経て、上下どちらへ振れるか見定める局面になりそうだ。
レジスタンス1 158.65(9/13高値)
前日終値 158.15
サポート1 157.44(ピボット・サポート2)
<豪ドル円=転換線が雲を上回るなか底堅さ維持へ>
上影小陽線引け。
一目均衡表・転換線が一目・雲の上限94.74円を上回りサポートとなる水準が切り上がるなど、堅調な流れが示唆されている。
一時96.07円と、7月6日以来の96円台を回復。
目先のすう勢を示す5日移動平均線からややかい離したため、本日95.37円前後で推移する5日線前後で調整気味に下押す展開も視野に入れておきたい。
しかし今後も転換線の上昇が続くなか底堅い展開を維持するとみる。
レジスタンス1 96.07(9/20高値)
前日終値 95.65
サポート1 94.86(日足一目均衡表・転換線)
Provided by
DZH Finacial Research
「投資を面白く、投資家を笑顔に」をスローガンに、株式や為替など様々な金融マーケットの情報を提供。
豊富な経験を持つエキスパートが多数在籍し、スピーディー且つオリジナルな視点からの情報をOANDA Labに配信しています。
会社名:株式会社DZHフィナンシャルリサーチ
所在地:東京都中央区明石町8番1号 聖路加タワー32階
商号等:【金融商品取引業者】投資助言業/【登録番号】関東財務局長(金商)907号
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。