東京為替見通し=ドル円売りトレンド変わらず、日銀の軌道修正期待と米インフレ鈍化が重し

市場見通し
 海外市場では、6月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことが伝わると、米金利の低下とともに全般ドル売りが進行。米10年債利回りが3.84%台まで低下したことも相場の重しとなり、ドル円は一時138.16円と5月22日以来の安値を付けた。ユーロドルは1.1140ドルと昨年3月以来の高値を付けた。

 本日のドル円は、引き続き上値は限定的になるか。先週7日の日経新聞による内田日銀副総裁へのインタビュー以後、ドル円は6円超のドル安・円高が進んでいる。いささか急ピッチでドル円は下げ幅を広げたこともあり、ある程度の調整を挟む可能性もあるだろう。しかしながら、米CPIが鈍化傾向を示したことで、ドル・インデックスで昨年4月以来となるドル安が進んでいることと、日銀によるイールドカーブコントロール(YCC)の軌道修正の思惑という円高が同時に進んでいることで、ドル円の上値を限らせるだろう。

 昨日発表された6月の米CPI発表以後も、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での5.25-50%への利上げ予想は9割を超えたままだ。しかし、9月は据え置きが前日の72.4%から81.4%へ、11月は53.7%から66.0%、12月は51.5%から57.4%へと上昇した。これまで、今年は7月を含め2回の利上げとの予想が多数を占めていたが、7月が最後の利上げとなれば、ドルの上値が抑えられることになるだろう。

 円買い要素となる日銀の金融政策の行方は、本日の日経新聞朝刊では「物価上昇率が日銀の目標を超えているのにもかかわらず、緩和姿勢を継続していることに海外勢が困惑している」との記事を掲載し、遠回しながらも日銀の姿勢を批判していると捉える記事を掲載されている。連日にわたり、日銀の低金利政策の脱却についての記事が続いていることは、今月もしくは年後半にYCCの上限引き上げなどを後押しするための、地ならし記事なのかもしれない。先週の内田副総裁発言が伝わった以後も、ブラックアウト期間(日銀は政策決定会合の2営業日前から)までは、まだ時間があるにもかかわらず、日銀関係者から市場の思惑を否定する声が聞こえてこないことも、円高に拍車をつけている。また、昨日発表された日銀調査による「生活意識に関するアンケート調査・第94回2023年6月調査)」によると、1年後の物価予想は「上がる」との予想が86.3%となり、3月調査の85.7%よりもインフレに対する声が強まっていることなども、日銀にとっては政策変更への支えになるかもしれない。

 本日のアジア時間は、中国の6月貿易収支以外は市場を動意づけるような経済指標の発表予定がない。よって、アジア時間では日中をはじめとした株式市場や、時間外の米金利などの動向、1カ月ぶりの円高水準となったことに対する本邦実需などの動きが、市場を動意づけることになりそうだ。

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