July 13, 2023
【前日の為替概況】ドル円、5日続落 CPI予想下回り米金利低下
12日のニューヨーク外国為替市場でドル円は5日続落。
終値は138.50円と前営業日NY終値(140.36円)と比べて1円86銭程度のドル安水準だった。
6月米消費者物価指数(CPI)が前月比0.2%/前年同月比3.0%と予想の前月比0.3%/前年同月比3.1%を下回ったことが伝わると、米金利の低下とともに全般ドル売りが進行。
米10年債利回りが3.84%台まで低下したことも相場の重しとなり、1時前に一時138.16円と5月22日以来の安値を付けた。
市場では「日銀が現行の金融緩和策を修正するとの観測も根強く、円買い・ドル売りを誘った」との声も聞かれた。
ユーロドルは5日続伸。
終値は1.1129ドルと前営業日NY終値(1.1009ドル)と比べて0.0120ドル程度のユーロ高水準だった。
米CPIが予想以上に鈍化したことを受けて全般ドル売りが優勢となった。
3時30分過ぎに一時1.1140ドルと昨年3月以来の高値を付けた。
主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時100.51と昨年4月以来の安値を記録した。
ユーロ円は7日続落。
終値は154.14円と前営業日NY終値(154.52円)と比べて38銭程度のユーロ安水準。
ただ、NY市場に限ればドル円とユーロドルの値動きの影響を同時に受けたため、大きな方向感が出なかった。
21時30分過ぎに一時153.49円と6月16日以来の安値を付けたものの、22時過ぎには154.28円付近まで下げ渋っている。
カナダドル円は頭が重かった。
ドル円の下落につれた円買い・カナダドル売りが優勢になると、24時30分過ぎに一時104.79円と日通し安値を更新した。
なお、カナダ銀行(BOC)はこの日、市場予想通り政策金利を現行の4.75%から5.00%に引き上げることを決めたと発表。
声明では「コアインフレの動向と物価見通しを引き続き評価する」「超過需要やインフレ期待、賃金の伸び、企業の価格戦略が物価目標の達成に整合的かどうかをとりわけ慎重に見極める」との文言を維持した。
また、マックレムBOC総裁は会見で「必要に応じて、再度利上げする準備ができている」と述べ、利上げ継続の可能性も示唆した。
【本日の東京為替見通し】ドル円売りトレンド変わらず日銀軌道修正期待と米インフレ鈍化が重し
本日のドル円は、引き続き上値は限定的になるか。
先週7日の日経新聞による内田日銀副総裁へのインタビュー以後、ドル円は6円超のドル安・円高が進んでいる。
いささか急ピッチでドル円は下げ幅を広げたこともあり、ある程度の調整を挟む可能性もあるだろう。
しかしながら、米CPIが鈍化傾向を示したことで、ドル・インデックスで昨年4月以来となるドル安が進んでいることと、日銀によるイールドカーブコントロール(YCC)の軌道修正の思惑という円高が同時に進んでいることで、ドル円の上値を限らせるだろう。
昨日発表された6月の米CPI発表以後も、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での5.25-50%への利上げ予想は9割を超えたままだ。
しかし、9月は据え置きが前日の72.4%から81.4%へ、11月は53.7%から66.0%、12月は51.5%から57.4%へと上昇した。
これまで、今年は7月を含め2回の利上げとの予想が多数を占めていたが、7月が最後の利上げとなれば、ドルの上値が抑えられることになるだろう。
円買い要素となる日銀の金融政策の行方は、本日の日経新聞朝刊では「物価上昇率が日銀の目標を超えているのにもかかわらず、緩和姿勢を継続していることに海外勢が困惑している」との記事を掲載し、遠回しながらも日銀の姿勢を批判していると捉える記事を掲載されている。
連日にわたり、日銀の低金利政策の脱却についての記事が続いていることは、今月もしくは年後半にYCCの上限引き上げなどを後押しするための、地ならし記事なのかもしれない。
先週の内田副総裁発言が伝わった以後も、ブラックアウト期間(日銀は政策決定会合の2営業日前から)までは、まだ時間があるにもかかわらず、日銀関係者から市場の思惑を否定する声が聞こえてこないことも、円高に拍車をつけている。
また、昨日発表された日銀調査による「生活意識に関するアンケート調査・第94回2023年6月調査)」によると、1年後の物価予想は「上がる」との予想が86.3%となり、3月調査の85.7%よりもインフレに対する声が強まっていることなども、日銀にとっては政策変更への支えになるかもしれない。
本日のアジア時間は、中国の6月貿易収支以外は市場を動意づけるような経済指標の発表予定がない。
よって、アジア時間では日中をはじめとした株式市場や、時間外の米金利などの動向、1カ月ぶりの円高水準となったことに対する本邦実需などの動きが、市場を動意づけることになりそうだ。
【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
<海外>
○08:01 ◇ 6月英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格(予想:▲34)
○未定 ◎ 韓国中銀、政策金利発表(予想:3.50%で据え置き)
○未定 ◎ 6月中国貿易収支(予想:748億ドルの黒字)
○15:00 ☆ 5月英国内総生産(GDP、予想:前月比▲0.3%)
○15:00 ◎ 5月英鉱工業生産(予想:前月比▲0.4%/前年比▲2.3%)
○15:00 ◎ 5月英製造業生産高(予想:前月比▲0.5%)
○15:00 ◇ 5月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:147.00億ポンドの赤字/15.00億ポンドの赤字)
○15:45 ◇ 6月仏消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.2%/前年比4.5%)
○18:00 ◎ 5月ユーロ圏鉱工業生産(予想:前月比0.3%/前年比▲1.2%)
○20:30 ☆ 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(6月15日分)
○21:30 ◎ 6月米卸売物価指数(PPI、予想:前月比0.2%/前年比0.4%)
◎ 食品とエネルギーを除くコア指数(予想:前月比0.2%/前年比2.6%)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:25.0万件/172.3万人)
○14日00:10 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、インタビューに応対
○14日02:00 ◎ 米財務省、30年債入札
○14日03:00 ◎ 6月米月次財政収支(予想:1750億ドルの赤字)
○日・欧州連合(EU)首脳協議(ベルギー・ブリュッセル)
○米・北欧諸国首脳会談(フィンランド・ヘルシンキ)
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。
▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
12日11:03 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)声明
「政策金利は当面制限的な水準を維持する必要がある」
「国内のインフレ率はピークから低下し続け、それに伴い期待インフレ率も低下すると予想」
「個人消費の伸びは鈍化し、住宅建設活動は減少」
「住宅価格はより持続可能な水準に戻っている」
「労働力不足は最近の移民増加の影響もあり、緩和され始めている」
「最近のデータは、金融引き締めが予想通り国内支出を抑制していることを示唆」
12日12:09 ロウ豪準備銀行(RBA)総裁
「インフレは複雑な様相を呈しており、先行きに大きな不透明感がある」
「金融政策にまだやるべきことがあるかどうかは、まだわからない」
「インフレ目標を達成するためには、さらなる引き締めが必要となる可能性がある」
「金融政策にはやるべきことがまだあるのか、判断が分かれる」
「8月の会合では、理事会は最新の経済予測と新たなデータを入手する予定」
「金融政策は遅れを伴いながら機能しており、完全な効果はまだ現れていない」
「今後数年間は経済成長が鈍化し、インフレ率が目標に戻るには時間がかかるだろう」
「合理的な期間内にインフレ率を目標に戻す決意」
「2024年は11回ではなく、8回の理事会を予定」
12日15:05 イングランド銀行(BOE)金融安定報告書
「金利上昇は銀行のリスクを高める」
「海外投資家はより慎重になっている」
「英経済は金利リスクにこれまでのところ持ちこたえている」
12日17:13 ベイリー英中銀(BOE)総裁
「利上げによって金融システムにストレスが生じている」
「利上げの完全な影響が表れるまでには時間がかかる」
12日22:07 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「手を引くのが早過ぎれば、後にさらなる行動が必要になるだろう」
12日23:03 カナダ銀行(BOC、カナダ中央銀行)声明
「エネルギー価格と商品価格の低下により、世界的なインフレは緩和しつつある」
「しかし、旺盛な需要と逼迫した労働市場により、サービス分野では持続的なインフレ圧力が生じている」
「経済成長は予想よりも力強く、特に米国では消費者と企業の支出が驚くほどの回復力を示している」
「ユーロ圏の成長は事実上停滞しており、サービス部門は成長を続ける一方、製造業は縮小している」
「主要中銀はインフレ抑制のためさらなる利上げが必要になる可能性があることを示唆」
「北米と欧州では債券利回りが上昇し、世界的な金融情勢が引き締まった」
「超過需要とコアインフレの上昇がいずれもより持続的であること、経済活動とインフレの修正見通しを考慮し、理事会は政策金利を5%に引き上げることを決定した」
「量的引き締めは、金融政策の制限的なスタンスを補完し、バランスシートを正常化している」
「引き続きコアインフレの動向とCPIインフレの見通しを評価」
「特に、超過需要の推移、インフレ期待、賃金上昇率、企業の価格設定行動が2%のインフレ目標の達成と一致しているかどうかを評価する」
「中銀は国民の物価安定を回復するという決意を貫く」
「カナダのインフレ率は5月に3.4%に低下したが、昨年夏のピーク8.1%からは大幅かつ歓迎すべき低下となった」
「これまでのところ、CPIインフレ率はほぼ予想通りに低下している」
「ただ、その勢いはエネルギー価格の低下によるものであり、基調的なインフレの緩和によるものではない」
「昨年の大幅な物価上昇を考えると、CPIインフレ率の短期的な下降の勢いは小さくなるだろう」
「昨年9月以来、3カ月のコアインフレ率は3%半から4%程度で推移しており、根底にある物価圧力は予想よりも根強いようだ」
「カナダ経済は予想よりも好調で、需要の勢いも増している」
「累積的な金利上昇を受けて個人消費が鈍化すると予想している」
13日00:08 マックレムBOC総裁
「商品やサービスにおいて依然として大幅な価格上昇が見られる」
「政策金利をさらに引き上げる用意がある」
「引き締め不足と過剰引き締めのリスクバランスを図る」
「さらなるデータを待つよりも遅延のコストが大きかった」
「当局者らは金利据え置きについても議論し、さらなるデータを検討」
「必要に応じて、再度利上げする準備ができている」
13日03:10 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
「全体的な経済活動は若干拡大した」
「5地区が僅か、もしくは中程度の成長を報告。5地区が変わらず、2地区が僅か、もしくは中程度の減少を報告した」
「消費支出に関する報告はまちまち」
「製造業活動は半分の地区で僅かに拡大したが、残りの半分では縮小した」
「住宅用不動産の需要は、住宅ローン金利の上昇にも関わらず、引き続き堅調」
「今後数カ月間の全体的な経済見通しは、総じて引き続き緩やかな成長」
「ほとんどの地区で雇用の伸びは僅かに増加した」
「労働需要は引き続き健全」
「雇用主からは引き続き、特に医療、運輸、ホスピタリティの分野、および一般に高度なスキルを必要とする職種で労働者を見つけるのが困難との報告」
「賃金の上昇は続いたものの、より緩やかなものとなった」
「複数の地区からは賃金上昇率がパンデミック前の水準に戻っているか、それに近づいているとの報告」
「価格は全体的に緩やかなペースで上昇し、一部の地区では上昇ペースが鈍化したとの報告」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=雲上限の攻防>
大陰線引け。
戻り局面に反発を抑えそうなテクニカル指標が複数控えるなか下落幅を拡大する動きが続いた。
一時138.16円と、5月22日以来の安値をつけている。
ここからは一目均衡表・雲の上限138.45円付近の攻防。
137.10円台で低下中の200日移動平均線へ近づくように雲の中へ潜り込んでいく展開も想定しておきたい。
ただ、現在200日線のやや下137.07円前後で上昇中の90日線は支えになる可能性がある。
レジスタンス1 139.29(6/14安値)
前日終値 138.50
サポート1 137.65(ピボット・サポート1)
サポート2 137.07(90日移動平均線)
<ユーロドル=気迷いの足を形成後も上向きの流れ断たれず>
大陽線引け。
11日に気迷い気味の足型を形成したものの上向の流れは断たれることなく上伸した。
一時1.1140ドルと、昨年3月以来の高値をつけている。
調整で小安く推移しても4月26日高値1.1095ドルや5月3・4日高値1.1091ドルといった水準で折り返せれば地合いの強さの確認となる。
やや差し込んでも1.1040ドル台で推移する5日移動平均線やピボットサポート1・1.1042ドル付近で下げ渋れば底堅さは十分。
6月22高値1.1012ドルを割り込まなければ上昇波形は維持できる。
レジスタンス1 1.1185(2022/3/31高値)
前日終値 1.1129
サポート1 1.1042(ピボット・サポート1)
<ポンド円=基準線を意識した展開>
大陰線引け。
一目均衡表・転換線を下抜けて6月16日以来の安値179.48円まで下落幅を拡大した。
一目・基準線178.96円を意識した展開となる。
上昇が続く見込みの同線の下支えが期待できるか。
しかし戻りを試すことになっても低下傾向の転換線181.75円がやがて抵抗になるだろう。
レジスタンス1 180.81(7/11安値)
前日終値 179.88
サポート1 178.96(日足一目均衡表・基準線)
<NZドル円=基準線の動きに沿って戻すことできるか注視>
下影小陽線引け。
5日移動平均線付近が重く、88円台で推移する21日線を抜けて下値を広げ続けた。
一目均衡表・基準線87.06円を割り込み、昨日は86.25円まで下振れている。
ただ、終値ベースでは基準線を回復。
上昇が見込まれる同線の動きに沿って、基準線と転換線の交差が予想される87円半ばから後半レンジへ戻すことができるか注視したい。
レジスタンス1 87.97(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 87.15
サポート1 86.74(7/12レンジ半値水準)
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