November 10, 2023
【前日の為替概況】パウエルFRB議長発言でドル高、対円で151.39円 対ユーロも1.0660ドル
9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4日続伸。
終値は151.35円と前営業日NY終値(150.98円)と比べて37銭程度のドル高水準となった。
NY勢の参入後はドル売りが先行。
24時前に150.83円付近まで弱含む場面があったものの、アジア時間につけた安値150.77円手前で下げ止まると、米長期金利の上昇を背景にした買い戻しが徐々に進んだ。
米30年債入札が不調に終わり、入札後には米10年債利回りが4.65%手前まで上昇幅を拡大するなか、3時過ぎに151.26円まで反発。
また、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「金融政策がインフレ目標達成のための十分なスタンスに到達したと確信を持てない」「さらなる引き締めが適切になれば躊躇しない」などの見解を示すとドル買いがさらに強まり、151.39円まで本日高値を更新した。
ユーロドルは反落。
終値は1.0668ドルと前営業日NY終値(1.0709ドル)と比べて0.0041ドル程度のユーロ安水準だった。
NY勢の参入後にドル売りが進んだ場面では1.0725ドルまで上昇したが、一巡後はドル買い戻しの流れに沿って1.0660ドルの安値まで一転下落した。
ユーロ円は6営業日ぶりに反落。
終値は161.46円と前営業日NY終値(161.69円)と比べて23銭程度のユーロ安水準だった。
24時前には161.80円まで上昇する場面があったものの、その後は米株安やユーロドルの下落などにつれて161.37円まで反落した。
メキシコペソ円は軟調。
メキシコ銀行(中央銀行)は予想通り政策金利の据え置きを決めたが、声明文では「政策金利をしばらくの間現在の水準に維持する必要がある」として、これまでの「長期間維持する必要がある」から表現を変更。
中銀のタカ派スタンスが後退したとの見方からペソ売りで反応し、一時8.46円まで値を下げた。
【本日の東京為替見通し】ドル円年初来高値を睨む位置、引き続き円買い介入の可能性は警戒
本日の東京外国為替市場のドル円は、引き続き本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒していく展開が予想される。
昨日のドル円は、植田日銀総裁のややハト派発言とパウエルFRB議長のややタカ派発言を受けて151.39円まで上昇。
先月末につけた年初来高値151.72円を睨む位置にきている。
植田総裁は金融政策の正常化を急ぐ考えはないことを示唆。
日本の現状を踏まえると、望ましい水準よりも低いインフレ率はオーバーシュートよりも対処が難しいと指摘した。
一方、パウエル議長は、適切なら一段の政策引き締めを躊躇しないと言及。
インフレ率を2%に下げる上で十分な引き締めを行ったと完全には確信を持てていない、との考えを改めて示した。
本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の司令塔である神田財務官は今月1日、ドル円が151円台で推移していた時、「過度な変動にはあらゆる手段を排除せず適切な行動をとる」と発言。
介入に関しては「スタンバイ」と述べた。
「過度な変動」について、「一方向に一方的な動きが積み重なって、一定期間に非常に大きな動きがあった場合は、過度な変動に当たり得る」との見解を示した。
すなわち、現状のドル円の151円台での動向は「過度な変動」と解釈できることになる。
投機筋による「円キャリートレード」(低金利の円を調達し、高金利のドルで運用する取引)は、年初来で20%以上のリターンをもたらしている、と報じられている。
「円キャリートレード」の残高の近似値と見なされている在日外銀の本支店勘定は、8月末時点で11兆円台となっており、2008年以来となる15年ぶりの高水準に近づいているもよう。
日銀が世界の中央銀行の中で唯一となるマイナス政策金利を維持しているお陰で、投機筋は低金利の円を調達して、インフレ抑制のために政策金利を引き上げてきた高金利通貨(ドル、ポンド、ユーロ、豪ドル、NZドル、加ドルなど)に投資して、収益を挙げている。
この円売りポジションの収益の反対側には、高止まりしている輸入物価を受けた食料やエネルギー購入を余儀なくされている日本の消費者がいるとも言える。
なお、投機筋の売買を集計する米商品先物取引委員会(CFTC)の10月31日時点の、円売りポジションは103848枚(x1250万円=1兆2981億円)と数年ぶりの高水準へ接近している。
【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 10月マネーストックM2
<海外>
○09:30 ◎ 豪準備銀行(RBA)四半期金融政策報告
○16:00 ☆ 9月英国内総生産(GDP、予想:前月比横ばい)
○16:00 ☆ 7-9月期英GDP速報値(予想:前期比▲0.1%/前年比0.5%)
○16:00 ◎ 9月英鉱工業生産(予想:前月比0.1%/前年比1.1%)
○16:00 ◎ 9月英製造業生産高(予想:前月比0.3%)
○16:00 ◇ 9月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:153.00億ポンドの赤字/25.00億ポンドの赤字)
○16:00 ◎ 10月ノルウェー消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.6%/前年比3.6%)
○16:00 ◇ 9月トルコ失業率
○16:00 ◇ 9月トルコ鉱工業生産
○17:30 ◎ 7-9月期香港GDP確定値(予想:前期比0.1%/前年同期比4.1%)
○21:00 ◎ 9月インド鉱工業生産(予想:前年同月比7.0%)
○21:00 ◎ 10月ブラジルIBGE消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比4.87%)
○21:00 ◇ 9月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比0.1%)
○21:30 ◎ ローガン米ダラス連銀総裁、講演
○21:30 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
○23:00 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
○24:00 ◎ 11月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、速報値、予想:63.7)
○11日00:20 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○11日01:00 ◎ 10月ロシア消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.9%)
○米国(ベテランズデー)、株式・債券・商品市場、通常取引
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
9日08:50 日銀金融政策決定会合における主な意見(10月30-31日分)
「物価目標実現を十分な確度持って見通せる状況になお至っていない、粘り強く金融緩和継続必要」
「YCCやマイナス金利、少なくとも2%目標を安定的に持続するために必要な時点まで継続方針」
「今後の賃上げ動向や賃金・物価の好循環を双方向からしっかり確認していく必要」
「2%目標にはまだ距離、YCCは運用修正しつつも枠組みは維持すべき」
「米長期金利上昇の影響で、日本の長期金利に想定外の上昇圧力掛かっている」
9日10:49 ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁
「インフレとの戦いは続くため、金利は高止まりが必要」
「FOMCでは金利据え置きを支持」
9日13:27 植田日銀総裁
「(物価目標の実現判断で)賃金と物価の好循環が強まっていくことを確認することが重要」
「来年の春闘が重要な要素の1つ」
9日17:39
「基調的な物価上昇率はなお2%をやや下回る」
「超緩和政策の解除は深刻な課題」
「中銀は利上げには注意深く動く」
9日18:05 ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト
「インフレ率を下げるために、英国の金融政策は引き締めを維持する必要がある」
「賃金が適切な水準に戻るには長い期間を要する」
10日00:59 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「インフレ率が2%になると確信できるまでは制限的な状態を継続する」
10日03:14 パエゼ米セントルイス連銀総裁代理
「インフレ鈍化の進展が鈍った場合に金利をさらに引き上げる用意をしておくべき」
10日04:00 メキシコ中銀声明
「理事会はメキシコにおけるインフレ解消プロセスの進展を認識」
「見通しは依然として厳しいと判断」
「金融政策スタンスは、インフレ率が予測期間内に3%の目標に収束するために必要な軌道にとどまる」
「理事会はインフレ圧力だけでなく、予想されるインフレ経路とインフレ期待に影響を与えるあらゆる要因を徹底的に監視」
「基準金利をしばらくの間現在の水準に維持する必要がある」
10日04:05 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「さらなる引き締めが適切になれば躊躇しない」
「GDPは今後数四半期で減速が見込まれるも、不透明感が強い」
「労働市場はひっ迫しているが、バランスは改善している」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=転換線の上で上昇力強まる、年初来高値が視野>
陽線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
4手連続陽線で、転換線の上で上昇力を強めており、続伸の可能性が示唆されている。
今年の高値151.72円や昨年の高値151.95円が視野に入っており、それら水準を上抜けた場合は追撃買いで臨みたい。
下押しした場合でも、150.30円台まで水準を上げた転換線が支持となりそうだ。
レジスタンス2 151.95(2022/10/21高値)
レジスタンス1 151.72(10/31高値)
前日終値 151.35
サポート1 150.38(日足一目均衡表・転換線)
サポート2 149.95(日足一目均衡表・基準線)
<ユーロドル=転換線を念頭、基準線から雲の下限が支持帯>
陰線引け。
雲の中で引けてはいるが、転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回っているため買いシグナルが優勢な展開が続いている。
抱き線で反落したものの転換線を上回って引けており、反発の可能性が残されている。
本日は1.0630ドル台で横ばいの転換線を念頭に、基準線1.0620ドルから1.06ドル割れの雲の下限を支持帯として臨みたい。
レジスタンス1 1.0756(11/16高値)
前日終値 1.0668
サポート1 1.0599(日足一目均衡表・雲の下限)
<ユーロ円=11/7安値を支持に押し目買いスタンス>
陰線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
この日も2008年8月以来の高値を更新した。
高値圏の孕み線で反落したものの、依然として転換線を大幅に上回って引けていることが支援材料。
本日は7日安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 162.81(2008/8/25高値)
前日終値 161.46
サポート1 160.43(11/7安値)
<豪ドル円=3手連続陰線も基準線を支持に押し目買い>
陰線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。
3手連続陰線でも転換線の上はなんとか維持しており、反発の可能性は残されているか。
本日は転換線96.22円を念頭に置き、95円後半の基準線を支持に押し目買いスタンス。
同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 97.10(11/8高値)
前日終値 96.36
サポート1 95.82(日足一目均衡表・基準線)
Provided by
DZH Finacial Research
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