本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):ドル売り介入困難さ増し円安進むか、本邦CPIにも要注目(2024年6月21日)

マーケットレポート

June 21, 2024

【前日の為替概況】ドル円、6日続伸 米経済指標を受けて弱含むも反転上昇

20日のニューヨーク外国為替市場でドル円は6日続伸。
終値は158.93円と前営業日NY終値(158.09円)と比べて84銭程度のドル高水準だった。
前週分の米新規失業保険申請件数や6月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数、5月米住宅着工件数など、この日発表の米経済指標が総じて予想より弱い内容だったことが分かると一時158.25円付近まで弱含んだものの、米長期金利の指標となる米10年債利回りが4.22%台から4.29%台まで切り返すと一転ドル買いが優勢となった。
5時過ぎには一時158.94円と4月29日以来の高値を付けた。

米財務省は外国為替報告書で、日本を「監視リスト」に追加したと公表。
市場では「政府・日銀による為替介入はより困難になった」との見方から円売り・ドル買いが出た面もあった。
ただ、日本や他の貿易相手国を為替操作国に認定するには至らなかった。

ユーロドルは4営業日ぶりに反落。
終値は1.0702ドルと前営業日NY終値(1.0744ドル)と比べて0.0042ドル程度のユーロ安水準だった。
米長期金利の上昇に伴うユーロ売り・ドル買いが出たほか、6月ユーロ圏消費者信頼感速報値が予想を若干下回ったことが相場の重しとなり一時1.0702ドルと日通し安値を付けた。

ユーロ円は4日続伸。
終値は170.09円と前営業日NY終値(169.85円)と比べて24銭程度のユーロ高水準。
欧州株高を背景に投資家のリスク志向が改善すると円売り・ユーロ買いが先行。
23時30分過ぎに一時170.32円と6日以来の高値を付けた。
ただ、そのあとはユーロドルの下落につれた売りが出たため、伸び悩んだ。

メキシコペソは堅調だった。
シェインバウム次期大統領が「エブラルド元外相を経済相に任命する」と発表すると、財政悪化への過度な懸念が和らぎ、ペソを買い戻す動きが広がった。
原油先物価格の上昇を背景に産油国通貨とされるペソに買いが入った面もあった。
ドルペソは一時18.2570ペソ、ペソ円は8.69円までペソ高に振れた。

【本日の東京為替見通し】ドル売り介入困難さ増し円安進むか、本邦CPIにも要注目

本日のドル円相場は引き続き円安地合いが継続しそうだ。
昨日、米財務省が外国為替報告書で、日本を「監視リスト」に追加したことで、本邦為替当局者にはこの決定が重くのしかかるだろう。
米国が同盟国でもある日本に対して厳しい措置をとったことは、日米財務省間が意思疎通をうまく図っていなかった結果と思われる。

4月29日と5月1日(日本時間2日未明)に行われた為替介入後にイエレン米財務長官は「為替介入はまれな行為であるべき、他国への伝達必要」と複数回にわたって、本邦のドル売り介入への不快感を示した。
特に「他国への伝達が必要」という文言は、上述日の介入前後に本邦為替当局者が米財務省への連絡を怠っていた可能性もあるのでは、と市場では言われている。

ドル売り介入は原資調達のために米債券市場に影響も与えることで、インフレ対策に苦心している米財務省は、本邦為替当局者に対して快く思っていないのかもしれない。
よって、今後の介入は「監視リスト」から「為替操作国」へと移行するリスクもあることで、ますます介入が難しくなったと言えそうだ。

しかも、4月29日の介入の前営業日は一時154.99円まで下がったドル円が、29日当日に160円台まで上昇するなど5円超のドル高・円安だった。
仮に本日160円台までドル円が上昇したとしても、僅か1円超のドル高でしかなく、イエレン米財務官がこれまで述べている「為替介入は過剰な動きへの対処であるべき」との動きにはならないと思われることも、介入が難しい一因だ。

本日は経済指標の結果次第で、更なる円安を促す可能性があることにも要警戒。
日本時間8時半に本邦の5月全国消費者物価指数(CPI)が発表される。
市場では生鮮食料品を除くコア指数は前年比で前月の2.2%から2.6%へと上昇予想、コア指数にエネルギーを省いたコアコア指数は前年比で前月の2.4%から2.2%へと低下予想になるなど、まちまちな予想になっている。

強弱どちらの結果への反応が大きくなるかと言えば、やはりインフレ率が予想より低下していた場合になる。
今月行われた日銀政策決定会合で、7月の会合で長期国債買い入れの減額計画を発表すると発表。
植田日銀総裁にいたっては短期金利の引き上げも示唆するなどタカ派の見解を示した。
市場も7月の減額や利上げを織り込もうとしている中で、インフレ率が引き続き低下傾向を示していた場合は、7月の減額や利上げが難しくなる可能性がある。

日銀が自らハードルを上げてしまった弊害で、インフレ圧力が弱まった場合には、円売りで大きく反応する可能性が高い。
また、2営業日後(25日)に日銀が注目している「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」(刈込平均値、加重中央値、最頻値)が公表されるが、前回は刈込平均値が2022年7月以来の1.8%、加重中央値は2023年3月以来の1.1%、最頻値は2023年1月以来となる1.6%まで低下したこともあり、これらの指標もさらに低下しているのを確認すれば、利上げは当面先になるだろう。

なお、昨日はスイス国立銀行(中央銀行、SNB)が政策金利の引き下げを敢行したことでスイスフランに対してもドル買い・フラン売りが進んだ。
また、英中銀(BOE)は政策金利を据え置いたが、金融政策委員会(MPC)メンバーの2名が利下げを主張したことで、ポンドドルも軟調な動きになった。
ドルが複数の通貨で底堅さを示していることも、ドル円の下値を支えることになりそうだ。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:30 ☆ 5月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合、予想:前年比2.6%)
○08:30 ☆ 5月全国CPI(生鮮食料品・エネルギー除く、予想:前年比2.2%)

<海外>
○11:15 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、パネルディスカッションに参加
○15:00 ◎ 5月英小売売上高(自動車燃料含む、予想:前月比1.5%/前年比▲0.9%)
○15:00 ◎ 5月英小売売上高(自動車燃料除く、予想:前月比1.3%/前年比▲0.8%)
○15:45 ◇ 6月仏企業景況感指数(予想:99)
○16:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○16:15 ◎ 6月仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:46.8)
○16:15 ◎ 6月仏サービス部門PMI速報値(予想:50.0)
○16:30 ◎ 6月独製造業PMI速報値(予想:46.4)
○16:30 ◎ 6月独サービス部門PMI速報値(予想:54.4)
○17:00 ◎ 6月ユーロ圏製造業PMI速報値(予想:47.9)
○17:00 ◎ 6月ユーロ圏サービス部門PMI速報値(予想:53.5)
○17:00 ◎ シムカス・リトアニア中銀総裁、講演
○17:30 ◎ 6月英製造業PMI速報値(予想:51.3)
○17:30 ◎ 6月英サービス部門PMI速報値(予想:53.0)
○17:30 ◎ 5月香港CPI(予想:前年同月比1.3%)
○21:30 ◎ 4月カナダ小売売上高(予想:前月比0.7%/自動車を除く前月比0.7%)
○21:30 ◇ 5月カナダ鉱工業製品価格(予想:前月比0.5%)
○21:30 ◇ 5月カナダ原料価格指数(予想:前月比▲0.6%)
○22:45 ◎ 6月米製造業PMI速報値(予想:51.0)
○22:45 ◎ 6月米サービス部門PMI速報値(予想:53.7)
○22:45 ◎ 6月米総合PMI速報値(予想:53.5)
○23:00 ◎ 5月米景気先行指標総合指数(予想:前月比▲0.3%)
○23:00 ◎ 5月米中古住宅販売件数(予想:前月比▲1.0%/年率換算410万件)
○スウェーデン(夏至祭)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

20日16:25 神田財務官
「為替、今後とも過度な変動に対してはしっかりと対応していく」
「為替相場、金利差も重要な要素の一つだが様々な要因で決定される」
「5月末公表の為替介入、投機による過度な変動への対応でかなり効果あった」

20日16:35 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)声明
「必要に応じて外国為替市場での介入も行う意向」
「基礎的なインフレ圧力は前四半期と比較して再度低下」
「本日の政策金利引き下げにより、SNBは適切な金融状況を維持することができる」
「引き続きインフレの推移を注意深く監視」
「中期的な物価安定と一致する範囲内にインフレを維持するため、必要ならば金融政策を調整する予定」
「2024年のインフレ率は1.3%と予測(従来は1.4%)」
「25年のインフレ率は1.1%と予測(従来は1.2%)」
「26年のインフレ率は1.0%と予測(従来は1.1%)」

20日17:15 ノルウェー中銀(ノルゲバンク)声明
「2024年の政策金利見通し4.5%(3月予測4.4%)」
「25年の政策金利見通し4.1%(3月予測3.9%)」
「24年コアCPI見通し4.0%(3月予測4.1%)」
「25年コアCPI見通し3.4%(3月予測3.2%)」
「以前の予想よりもやや長期間にわたり引き締め的な金融政策スタンスを維持する必要がある」
「政策金利は年末まで据え置かれ、その後段階的に引き下げられるだろう」

20日17:28 ジョーダン・スイス国立銀行(スイス中銀、SNB)総裁
「基調的インフレ圧力が低下」
「引き続き状況を注意深く監視し、必要に応じて政策を調整」
「政策金利ついてフォワードガイダンスは提供しない」
「スイスフラン高は金融情勢にインパクトを与える」
「外国為替の動向は非常に重要であり、インフレ見通しに影響する」

20日18:29 バーチェ・ノルウェー中銀(ノルゲバンク)総裁
「金利見通しは2025年に合計0.75%の利下げを示している」

20日18:35 シムシェキ・トルコ財務相
「トルコは持続的で強力なディスインフレの瀬戸際にいる」
「来年のインフレ率は10%台半ばになり、その後は一桁台になる可能性」

20日20:02 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
「MPCは7対2で5.25%の据え置きを決定」
「2人が0.25%の利下げを主張」
「7月4日の総選挙の時期は今回の会合での決定とは関係ない」
「中期的に2%のインフレ目標を持続的に達成するために必要であると判断された」
「インフレ率は短期的には2%目標に近づくと予想されていたが、年後半には2.5%程度まで若干上昇すると予想」
「地政学的要因による短期的なインフレ見通しの上振れリスクは引き続き残る」
「5月報告書を前提とし、インフレ率は2年後に1.9%、3年後には1.6%まで低下」
「5月報告書の CPI 予測に示されたインフレ持続のリスクについては、引き続きさまざまな見解」
「インフレ持続の主要指標は引き続き緩やかになっているが、依然として高い水準にある」
「中期的にインフレ率を2%目標に持続的に戻すため、十分な期間引き締めを続ける必要」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=下押しても5日線前後で底堅さ示し高値更新へ>

ドル円0621

パラメータ0621

陽線引け。
158.90円台と年初来高値160.17円をつけた4月29日以来の水準まで上昇した。

目先の支えとなる5日移動平均線から多少かい離気味となってきた点は多少気掛かり。
だが、下押しがあっても同線前後では底堅さを示し、高値更新を試す流れが続くとみる。

レジスタンス1 159.62(ピボット・レジスタンス2)
前日終値 158.93
サポート1 158.31(5日移動平均線)
サポート2 157.61(6/19安値)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=転換線が低下するなか売り圧力が強まる>

ユーロドル0621

パラメータ0621

陰線引け。
一目均衡表・転換線が1.0760ドルへ切り下がり低下の流れを再開するなか売り圧力が強まった。

一時1.0702ドルまで下落し、17日安値1.0686ドルや、下値のポイントとなる14日安値1.0668ドルが意識される。
下値の節目を割り込んで下落が進むリスクを視野に入れて臨みたい。

レジスタンス1 1.0760(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0702
サポート1 1.0650(5/1安値)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ユーロ円=転換線が基準線を上回り、上向き示唆>

ユーロ円0621

パラメータ0621

小陽線引け。
21日移動平均線169.62円前後で底堅さを示し、じり高の流れとなった。

下押し局面で一目均衡表・基準線169.21円が引き続き支えとなりそうであるほか、一目・転換線168.93円もやがて基準線を上回りサポートとなってくる点も上向きの流れを示唆している。

レジスタンス1 170.89(6/3高値)
前日終値 170.09
サポート1 169.21(日足一目均衡表・基準線)

>ユーロ円のリアルタイムチャートはこちら

<豪ドル円=高値圏で推移、調整への警戒も>

豪ドル円0621

パラメータ0621

陽線引け。
一時105.91円と2007年11月以来の高値を付けた。
106円台回復目前だが、高値警戒感も漂う水準。

5日移動平均線が目先の支えだが、下抜けた際に次の支えとなりそうな日足一目均衡表・転換線104.72円とも少しかい離してきた。
調整が多少なりとも入る可能性を視野に入れて臨みたい。

レジスタンス1 106.25(ピボット・レジスタンス2)
前日終値 105.78
サポート1 105.29(5日移動平均線)

>豪ドル円のリアルタイムチャートはこちら

OANDA CFD

Provided by
DZH Finacial Research

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