本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):1週間弱で前提条件外れた日銀、本日も荒い値動きになるか(2024年8月8日)

マーケットレポート

August 8, 2024

【前日の為替概況】ドル円、続伸 米長期金利が上昇

7日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。
終値は146.68円と前営業日NY終値(144.34円)と比べて2円34銭程度のドル高水準だった。
内田真一日銀副総裁が東京時間に「市場が不安定な状況で利上げをすることはない」「当面現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある」と述べ、追加利上げに慎重な見解を示すと、本日の東京市場では日経平均株価が続伸し、円売り・ドル買いが優勢に。
一時147.90円まで大幅に値を上げた。

ただ、NY市場に入ると上昇は一服し、147.00円を挟んだもみ合いの展開に終始した。
米長期金利の指標となる米10年債利回りが3.97%台まで上昇したことに伴う円売り・ドル買いが出た半面、米国株相場の反落を受けた円買い・ドル売りが入ったため相場は一進一退の展開となった。

ユーロドルは小幅ながら続落。
終値は1.0922ドルと前営業日NY終値(1.0931ドル)と比べて0.0009ドル程度のユーロ安水準だった。
本日NYカット(日本時間23時)に行使期限を迎えるオプションが1.0905ドルや1.0920ドル、1.0925ドルに観測されていただけに、しばらくは1.09ドル台前半でのもみ合いに終始した。
ただ、23時を過ぎるとユーロ買い・ドル売りがじわりと強まり、0時30分前に一時1.0937ドルと日通し高値を更新した。
ただ、米国株相場が失速すると徐々に上値が重くなり下げに転じた。

もっとも、今日の安値はアジア時間に付けた1.0906ドルで値幅は0.0031ドル程度と小さかった。

ユーロ円は9営業日ぶりに反発。
終値は160.22円と前営業日NY終値(157.79円)と比べて2円43銭程度のユーロ高水準。
欧州株相場の上昇を背景に投資家の過度なリスク回避姿勢が和らぐと円売り・ユーロ買いが先行。
0時過ぎに一時161.44円と本日高値を更新した。
ただ、一時は480ドル超上昇したダウ平均が下げに転じるとユーロ円にも売りが出て160.20円付近まで下押しした。
ナイト・セッションの日経平均先物も大証終値比620円高の3万5690円から720円安の3万4350円まで一転下落した。

【本日の東京為替見通し】1週間弱で前提条件外れた日銀、本日も荒い値動きになるか

昨日、内田日銀副総裁が函館市の金融懇談会で発表した「最近の金融経済情勢と金融政策運営」で、副総裁は「円安を受けて輸入物価が再び上昇に転じていることを踏まえて、0~0.1%よりも 0.25%程度の金利水準の方が、よりリスクに中立的で、適切であると判断した」と利上げの理由を述べた
しかしながら、その一方で今後の利上げ条件に付いて前提として「経済・物価の見通しが実現していくとすれば」という条件が付いていることを説明。
「ここ1週間弱の株価・為替相場の大幅な変動が影響」と僅か1週間の株価の大暴落と、ドル円の急落で早くも前提条件が変わりつつあるとの見解を示した。

内田副総裁の発言で市場に一番影響を与えたのが、「わが国の場合、一定のペースで利上げをしないとビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではない」と述べ、「したがって、金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と断言してしまったことだ。

内田日銀副総裁が述べたように、「市場の変動の影響注視し、そのことを政策に反映していくのは当然」なのは確かだ。
しかし、7月の会合から昨日までの経済指標は6月の毎月勤労統計調査こそは発表されたが、その他には特段市場が注目する本邦の経済指標等の発表がなかった。
それにも関わらず、1週間も経たずに前提条件に合致しなくなったと判断されたことは市場にとってはサプライズだろう。

「不安定な状況」は、米国の経済指標の悪化などがあったとはいえ、植田日銀総裁が市場予想よりもタカ派に転じたことにより起きたこと。
決して市場が大袈裟に反応したわけではなく、日銀が市場とのコミュニケーションが全くとれていないと言える。

内田副総裁の発言を受け、昨日のドル円は早朝の安値から3円60銭を超えるドル高・円安、株式市場は2000円の値幅で振れる結果となった。
市場の安定性を保つべき中央銀行のコミュニケーション能力不足で流動性が崩壊し、海外からも「日銀の信頼性が損なわれつつある(Bank of Japan credibility is looking strained)」と評価されている。
本日も傷んでしまったマーケットの中でドル円は些細なニュース等で、再び荒い値動きになることが予想される。

ドル円の支えとしては、昨日の内田副総裁のハト派発言のほか、皮肉なことに中銀の信頼性の欠如も円安要因になりそうだ。
もともと7月の利上げは政治的な圧力が主要因という声もある中で、昨日は内田副総裁だけではなく、井藤金融庁長官が日本テレビとのインタビューで投資について「長期の目線」で対応と述べるなど、株安の火消しに走っている。
今回の内田副総裁の発言も、植田総裁が株価の乱高下について閉会中審査の出席を求められていることで、「日銀サイドも政府の意向を組んで株安を阻止しようとしている」とのうわさもあるほどだ。

一方でドル円の上値を抑えるのは、新NISA導入による強い株買いトレンドの勢いが完全に削がれてしまったこと。
また、ドル円のロングがいまだに捌けていないこと、本邦勢の想定為替レートを意識したドル売りが出やすいことなどが挙げられる。
株安の流れが落ち着けば日銀が再び利上げに向かうとの予想も依然多いことも、ドル円の上値を抑えそうだ。

本日の東京市場では、6月国際収支や7月の景気ウオッチャー調査が発表される。
また、通常は注目される7月30-31日に行われた日銀金融政策決定会合における主な意見が公表されるが、内田副総裁がすでに1週間前の見解を変更していることで、直近の会合の意見も意味をなさないものになるだろう。

円以外の通貨では、オセアニア通貨に注目。
日本時間正午前にブロックRBA(豪準備銀行)総裁が講演を行う。
RBAは前回の理事会でも利上げについて協議されるなど、日銀同様に利上げの可能性もある数少ない中銀でもあることで、総裁の見解が注目される。
また、日本時間正午にはニュージーランド準備銀行(RBNZ)が2年インフレ予想を発表する。
RBAと違いハト派寄りの同中銀だが、来週の金融政策委員会(MPC)を前にインフレ予想に変化が生じればNZドルも動意づきそうだ。
なお、前回の予想は2.33%まで低下している。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:50 ◎ 6月国際収支速報
     ◇  経常収支(予想:季節調整前1兆7897億円の黒字/季節調整済2兆2755億円の黒字)
     ◎  貿易収支(予想:3507億円の黒字)
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
○08:50 ◎ 日銀金融政策決定会合における主な意見(7月30-31日分)
○14:00 ◇ 7月景気ウオッチャー調査(予想:現状判断指数47.5/先行き判断指数48.5)

<海外>
○11:40 ◎ ブロック豪準備銀行(RBA)総裁、講演
○13:30 ☆ インド中銀、金融政策決定会合(予想:6.50%で据え置き)
○21:00 ◎ 7月メキシコ消費者物価指数(CPI、予想:前年比5.57%)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:24.0万件/187.0万人)
○23:00 ◇ 6月米卸売売上高(予想:前月比0.3%)
○9日02:00 ◎ 米財務省、30年債入札
○9日04:00 ◎ メキシコ中銀、政策金利発表(予想:11.00%で据え置きと10.75%への引き下げで拮抗)
○9日04:00 ◎ バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

7日10:34 内田真一日銀副総裁
「景気は緩やかに回復しており、先行きも潜在成長率上回る成長続ける」
「経済や物価が見通しに沿って展開していくなら、金融緩和度合いの調整が必要」
「円安修正は政策運営に影響する」
「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要」
「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」
「米国経済はソフトランディングする可能性が高い」
「最近の内外の金融資本市場の動きは極めて急激」

7日14:46
「日銀の政策変更に伴う円安修正、株価下落の要因の一つ」
「市場の変動の影響注視し、そのことを政策に反映していくのは当然」
「植田総裁と自分との考えの違いはない」
「為替は動くもので、それ自体が経済・物価見通しをどう変えていくかは確定的なこと言いづらい」
「為替の日々の動きにコメントするのは適切ではない」 
「緩やかなパスで利上げできる状態は、時期選べる点でアドバンテージ」
「一定のペースで金利上げていかないとビハインド・ザ・カーブになるわけではない」
「中立金利などの特定の金利水準を意識しているわけではない」

7日20:52 三村淳財務官
「マーケットの不安定な状況は緊張感を持って注視する必要」
「為替は特定の水準ではなくボラティリティを見ている」
「為替はファンダメンタルズを反映し、安定推移が望ましい」
「(介入に関して)人が変わったから政策変わるものではない」

7日21:12 レーン・フィンランド銀行(中央銀行)総裁
「インフレが鈍化傾向にある限り、利下げは妥当」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=転換線が控える148円台を前に押し戻される>

ドル円0808

パラメータ0808

上影大陽線引け。
6日に押し戻された際の高値146.36円を上抜け勢いづき、147.90円まで上伸した。

しかし低下が見込まれる一目均衡表・転換線148.46円も控える148円台の回復を前に押し戻されている。
146円台で低下中の5日移動平均線に近づく格好でNYを引けた。
本日145.68円前後へ低下した5日線を上回って推移することが想定できるものの、転換線は引き続き抵抗として効きそう。
戻りを限定するだろう。

レジスタンス2 148.46(日足一目均衡表・転換線)
レジスタンス1 147.90(8/7高値)
前日終値 146.68
サポート1 145.53(8/5-7上昇幅の38.2%押し)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=転換・基準線が重なりしっかりしたサポートに>

ユーロドル0808

パラメータ0808

下影小陰線引け。
ドル相場の回復傾向を重しに1.0906ドルまで売りが先行した。
しかし前日安値1.0904ドルや一目均衡表・転換線1.0893ドルといった水準の下抜けには至っていない。

本日は一目・基準線が上昇して転換線と重なる格好に。
同水準のサポートはよりしっかりしてきた。
下振れた場合のめどは昨日の基準線の水準に代えて21日移動平均線前後としつつ、底堅く推移することが想定できる。

レジスタンス1 1.1008(8/5高値)
前日終値 1.0922
サポート1 1.0879(21日移動平均線)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ポンド円=転換線付近まで徐々に戻す期待も>

ポンド円0808

パラメータ0808

上影大陽線引け。
6日に押し戻されて長い上ひげを形成した際の高値187.09円を上回り、一時188.08円まで上昇した。
5日移動平均線186.32円を下回る水準へ押し戻されたが、本日は185.50円前後へ低下した同線を上回る格好に。

一目均衡表・転換線189.79円までの戻り余地を徐々に埋めていく展開も期待できる。
ただ、今後見込まれる転換線の低下は重しとなりそう。

レジスタンス1 188.08(8/7高値)
前日終値 186.18
サポート1 183.50(ピボット・サポート1)

>ポンド円のリアルタイムチャートはこちら

<NZドル円=転換線の抵抗こなすも、同線の動向が気掛かり>

NZドル円0808

パラメータ0808

上影大陽線引け。
6日に抵抗となった一目均衡表・転換線87.30円を抜け、一時88.99円まで上昇した。

転換線を上回ったまま引けることができた。
底堅い展開を期待するが、転換線は来週早々にも87円割れへ低下する公算。
下支えとなる水準の切り下がりは、下押しへの不安を高める一因といえる。

レジスタンス1 88.99(8/7高値)
前日終値 87.88
サポート1 86.73(8/5-7上昇幅の38.2%押し)

>NZドル円のリアルタイムチャートはこちら

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DZH Finacial Research

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