セクターとは|意味・種類・株式投資での活用法などをわかりやすく解説
セクターとは、経済活動や産業の分類を指す用語です。
投資の世界では、企業の業種や事業内容を基に似たような特徴を持つ企業をまとめて分類するために用いられます。
投資家はセクターごとの動向を理解することで、市場全体の傾向や特定分野のパフォーマンスをより正確に把握しやすくなります。
本記事では、セクターの意味や種類、株式投資での活用法などをわかりやすく解説します。
目次
- 1.セクターとは
- 2.セクターローテーションとは
- 3.セクターを活用した投資戦略
- 4.セクターを活用するポイント
- 5.セクターに関するQ&A
- 6.【まとめ】 セクターとは|意味・種類・株式投資での活用法などをわかりやすく解説
セクターとは
まずはセクターの一般的な意味と、株式市場におけるセクターについて解説します。
- ・セクターの一般的な意味
- ・株式市場におけるセクター
セクターの一般的な意味
セクターとは、一般的に経済活動や産業の分野、あるいは組織や社会の区分けを指す言葉です。
例えば、経済活動におけるセクターには農業、製造業、サービス業などがあり、それぞれ役割や特徴が異なります。
また、社会的な区分けとしても用いられ、公共セクター(政府や行政機関)と民間セクター(民間企業や団体)のように分類されることがあります。
このように、セクターは物事を体系的に整理し理解するための枠組みとして幅広く活用されます。
株式市場におけるセクター
株式市場におけるセクターとは、一般的に企業を業種や事業内容に基づいて分類したグループのことを指します。
投資家にとって、市場全体の動向を分析したり、リスクを管理したりする上で非常に重要な概念です。
同じセクターに属する企業は、似たような事業内容や収益構造、リスク要因を持つことが多いため、市場での動向やパフォーマンスが比較的似通う傾向があります。
代表的な株式セクターの種類(GICSの11セクター)
株式市場には、企業の事業内容に応じたさまざまなセクターがあります。
ここでは、世界産業分類基準(GICS)に沿って代表的なセクターとその特徴を解説します。
セクター | 主な業種 | 特徴 |
---|---|---|
エネルギー | 石油・ガス、石炭、石油関連サービス | 原油価格や政策に左右されやすい |
素材 | 化学品、鉄鋼・金属、紙・パルプ | 景気や国際商品価格の影響を受けやすい |
資本財・サービス | 建設機械・重工業、航空宇宙・防衛、建設・土木サービス | 設備投資や景気に敏感 |
一般消費財・サービス | 自動車、家庭用耐久財、ホテル・レストラン・レジャー | 景気動向に左右されやすい |
生活必需品 | 食品・飲料、日用品、医薬品小売 | 景気変動に強く安定的 |
ヘルスケア | 医薬品、医療機器、医療サービス | ディフェンシブで安定した需要 |
金融 | 銀行、保険、証券 | 金利や景気に左右されやすい |
情報技術 | ソフトウェア、半導体、通信機器 | 高成長だが変動が大きい |
コミュニケーション・サービス | インターネットサービス、携帯通信、ケーブル・固定通信 | 相対的に景気感応度が高い |
公益事業 | 電力、ガス、水道 | 安定収益だが成長は限定的 |
不動産 | 不動産開発、REIT、住宅・商業用不動産管理 | 利回り重視、金利に敏感 |
これらの分類を理解することは、分散投資や市場トレンドの把握に役立ちます。
日本独自の分類
上述したGICSの11セクターは世界的に最も良く使われる分類ですが、日本では独自の分類が用いられる場合もあります。
TOPIX-17業種は、TOPIX(東証株価指数)をより大分類でとらえるために東京証券取引所が策定している17分類です(個別銘柄が属する33業種をさらにまとめたもの)。
業種 | 主に含まれる33業種の例 | 特徴 |
---|---|---|
食品 | 水産・農林業、食料品 | 景気変動に左右されにくい |
エネルギー資源 | 鉱業、石油・石炭製品 | 資源価格や世界景気に連動しやすい |
建設・資材 | 建設業、金属製品、ガラス・土石製品 | 公共投資や設備投資に左右される |
素材・化学 | 化学、パルプ・紙、繊維製品 | 世界需要や製造業動向に連動 |
医薬品 | 医薬品 | 医療需要に支えられ景気に左右されにくい |
自動車・輸送機 | 輸送用機器、ゴム製品 | 世界景気・個人消費に敏感に反応 |
鉄鋼・非鉄 | 非鉄金属、鉄鋼 | インフラ投資や製造業需要に依存 |
機械 | 機械 | 設備投資需要に左右される |
電機・精密 | 精密機器、電気機器 | 技術革新と世界景気に連動 |
情報通信・サービスその他 | 情報・通信業、サービス業、その他製品 | IT投資や広告需要などに連動 |
電力・ガス | 電気・ガス業 | 生活必需で景気変動に強い |
運輸・物流 | 陸運業、海運業、空運業、倉庫・運輸関連業 | 貿易量や景気動向に連動 |
商社・卸売 | 卸売業 | 資源価格・世界景気に左右される |
小売 | 小売業 | 個人消費に連動する |
銀行 | 銀行業 | 金利動向や景気循環に敏感に反応 |
金融(除く銀行) | 証券、商品先物取引、保険業 、その他金融業 | 市場動向に連動しやすい |
不動産 | 不動産業 | 金利・景気動向に大きく左右される |
セクターローテーションとは
セクターローテーションとは、投資家が経済や市場環境の変化を予測し、株式市場の異なるセクター(業種)に資金を移動させる投資戦略です。
この投資戦略は、景気には大きく「拡大期」と「後退期」のサイクルがあり、それぞれの段階でパフォーマンスが期待されるセクターが異なるという考えに基づいています。
投資家は、経済状況に応じて適切なセクターに投資することで、市場全体を上回るリターンを目指します。
景気サイクルの段階 | 注目されやすいセクター | 特徴 |
---|---|---|
景気拡大期 | 情報技術、資本財・サービス、一般消費財・サービス | 成長性が高く、景気の恩恵を受けやすい |
景気後退期 | 生活必需品、ヘルスケア、公益事業 | ディフェンシブで景気変動に強い |
なお、景気拡大期に高いパフォーマンスが期待されるセクターは「景気敏感(シクリカル)セクター」、景気後退期でも安定したパフォーマンスが期待されるセクターは「ディフェンシブセクター」と呼ばれます。
セクターを活用した投資戦略
ここではセクターを活用した投資戦略を2つ紹介します。
- ・セクターETF・投資信託へ投資する
- ・個別銘柄ではなくセクター単位で投資する
セクターETF・投資信託へ投資する
この戦略は、特定のセクターに分散投資したい場合に有効です。
セクターETFやセクター型投資信託は、そのセクターに属する複数の企業にまとめて投資できるため、個別銘柄のリスクを抑えつつ、市場全体や特定セクターの動向に沿った投資成果を狙えます。
例えば、景気拡大期に情報技術セクターの成長が期待される場合、特定の半導体企業1社に投資する代わりに、情報技術セクター全体に連動するETFを購入します。
こうすることで、個別企業の業績悪化リスクを避けながら、セクター全体のトレンドに乗ることが可能です。
個別銘柄ではなくセクター単位で投資する
特定のセクター全体の成長や景気サイクルを見据えて投資する方法で、セクターローテーションを行う際に特に重要です。
例えば、景気後退局面で市場全体の下落リスクが高いと判断した場合、個別の景気敏感株を売却し、生活必需品やヘルスケアなどディフェンシブセクター全体に資金をシフトします。
セクター単位での投資は、個別企業の業績や株価変動に左右されにくいのが利点です。
これにより、景気拡大期には成長が期待される景気敏感セクターへ、景気後退期には安定したパフォーマンスが期待できるディフェンシブセクターへと、経済状況に応じて柔軟に資金を配分することができます。
セクターを活用するポイント
セクターを活用した投資を成功させるには、いくつかの重要なポイントがあります。
- ・セクターごとの特徴を理解する
- ・景気循環を理解する
セクターごとの特徴を理解する
各セクターは、成長性や景気への敏感度、収益の安定性などに違いがあります。
より適切な投資判断を行うには、セクターごとの特性や業種構成、リスク要因を把握しておくことが重要です。
例えば、情報技術セクターは「成長性は高いものの価格変動が大きい」、生活必需品セクターは「景気変動の影響が小さく安定している」といった特徴があります。
こうした違いを理解することで、ポートフォリオ全体のリスクとリターンのバランスを調整しやすくなります。
景気循環を理解する
セクターのパフォーマンスは、景気の動きに大きく影響されます。
経済のサイクルには景気拡大期と景気後退期があり、それぞれの局面で期待されるセクターのパフォーマンスは異なります。
景気拡大期には情報技術や一般消費財・サービスなどの景気敏感セクターが好調になりやすく、景気後退期には生活必需品やヘルスケアなどディフェンシブセクターが相対的に安定する傾向にあります。
景気循環を理解することで、各セクターの有利な局面を見極めやすくなります。
セクターに関するQ&A
セクターに関するよくある質問は、以下の通りです。
- ・セクター別の騰落率はどこで確認できますか?
- ・セクターとは日本語でどういう意味ですか?
- ・景気後退に強いセクターは何ですか?
セクター別の騰落率はどこで確認できますか?
セクター別の騰落率は、証券会社のマーケット情報ページ、株式情報サイト、取引所やインデックス提供会社、セクターETF・セクター型投資信託の商品ページなどで確認することができます。
セクターとは日本語でどういう意味ですか?
セクターは日本語で「部門」「分野」「領域」といった意味で使われます。
経済や金融の分野では、企業を事業内容ごとに分類した「産業別」「業種別」のグループを指すのが一般的です。
景気後退に強いセクターは何ですか?
景気後退に強いセクターは、主に生活必需品、ヘルスケア、公益事業です。
これらは景気変動の影響を受けにくいため、ディフェンシブセクターと呼ばれます。
景気が悪化しても、人々は食品や日用品を購入し、医療サービスや電気・ガスなどのライフラインを利用し続けるため、比較的安定した収益と株価を維持する傾向があります。
【まとめ】セクターとは|意味・種類・株式投資での活用法などをわかりやすく解説
セクターとは、企業を業種や事業内容別にまとめたグループのことです。
株式市場では「情報技術」「生活必需品」「金融」など、共通の特性を持つ企業群が1つのセクターとして分類されます。
同じセクターに属する企業は、事業内容や収益構造が似ていることが多いため、景気や市場環境の変化にセクター全体が影響を受けやすい傾向があります。
景気拡大期には景気敏感セクター、景気後退期にはディフェンシブセクターが注目されやすく、経済状況に応じて資金の配分を調整するセクターローテーションを行うことで、リスク管理や投資戦略の構築に役立ちます。
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