スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とは|役割・指数・格付けをわかりやすく解説
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は米国に本社を置く民間の格付け機関で、ムーディーズ(Moody’s)、フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)と並び、一般的には世界三大格付け機関の1つに位置づけられています。
格付け機関とは、金融商品や政府、企業などの信用度を評価し、格付けを行う機関です。
本記事では、スタンダード・アンド・プアーズの役割、格付けの見方などを詳しく解説します。
目次
- 1.スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とは
- 2.スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)格付けの基本的な見方
- 3.スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)と他の格付け機関の違い
- 4.スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)に関するQ&A
- 5.【まとめ】スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とは|役割・指数・格付けをわかりやすく解説
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とは
まずは、スタンダード・アンド・プアーズについて、以下の基本的な内容を解説します。
- ・スタンダード・アンド・プアーズの主な役割
- ・S&Pは世界三大格付け機関の1つ
スタンダード・アンド・プアーズの主な役割
スタンダード・アンド・プアーズとは、米国の格付け機関です。
スタンダード・アンド・プアーズは旧ブランド名で、現在はS&P Global Ratingsとして従来の信用評価業務を引き継いでいますが、現在でも慣用的に使われています。
格付けは、投資先の信用リスクを分析するための客観的な判断材料の1つになるため、投資家から重要視されており、格付けの変更や将来的な見通しが相場に大きな影響を与える可能性があります。
なお、現在のS&P Globalは格付け業務のほか、株価指数の算出や市場データの提供など、幅広い金融サービスを手がけています。
S&Pは世界三大格付け機関の1つ
スタンダード・アンド・プアーズは世界三大格付け機関の1つとして、多くの投資家から動向が注目されています。
他の三大格付け機関には、ムーディーズ(Moody’s)とフィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)が挙げられます。
なお、有名なのは三大格付け機関ですが、これら以外にも格付け機関は存在します。
日本では、格付投資情報センター(R&I)や日本格付研究所(JCR)が金融庁に登録された格付け機関です。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)格付けの基本的な見方
スタンダード・アンド・プアーズが公表する格付けの基本的な見方を解説します。
- ・長期発行体格付け
- ・短期発行体格付け
- ・スタンダード・アンド・プアーズのアウトルック
長期発行体格付け
長期発行体格付けは、長期的な信用力の評価を表します。
満期が1年以上の金融債務を対象に、支払い能力や財務状況、デフォルトの可能性を基に評価が決定されます。
格付けランクが高いほどデフォルトリスクが低く、格付けランクが低いほどデフォルトリスクが高いことを表します。
スタンダード・アンド・プアーズの長期発行体格付けランクは以下の通りです。
| 格付けランク | 意味 |
| AAA | 最も高い格付け。金融債務を履行する能力が極めて高い |
| AA | 金融債務を履行する能力が非常に高い。AAAとの差はわずか |
| A | 金融債務を履行する能力は高いが、AAAやAAよりも経済状況の変化による悪影響を受けやすい |
| BBB | 金融債務を履行する十分な能力はあるが、経済状況の悪化によりリスクが高まる可能性がある |
| BB | 投機的格付けの中では最高ラインだが、経済状況の悪化などにより金融債務を履行する能力が不十分になる可能性がある |
| B | 現時点では金融債務を履行する能力がある。一方で、事業環境や経済状況の悪化により、履行能力が低下する可能性が高い |
| CCC | 現時点で金融債務を履行する能力が低い |
| CC | 現時点ではデフォルトには陥っていないものの極めて近い状態にあり、将来的にデフォルトはほぼ確実と予想される |
| SD、D | デフォルトが発生した状態。SDは通常の格付けスケール外の評価で、特定の金融債務でのみデフォルトが発生した場合に付与される |
最上位はAAAで、Dが最下位です。
AAAに近づくほどリスクが低く、Cに近づくほどリスクが高いと判断されます。
Dはデフォルト(債務者が契約上の支払い義務を果たせない状態)がすでに発生している状態です。
BBより下の格付けは投機的とされ、リスクが高い金融商品であることを表します。
なお、AAからCCCまでの格付けには、プラス記号(+)やマイナス記号(-)がつけられます。
この記号は同じカテゴリー内での相対的な順位を表し、プラスが上位、マイナスが下位に位置づけられます。
短期発行体格付け
短期発行体格付けは、短期的な信用力の評価を表します。
満期が1年以内の金融債務を対象に、支払い能力や財務状況、デフォルトの可能性を基に評価が決定されます。
スタンダード・アンド・プアーズの短期発行体格付けランクは以下の通りです。
| 格付けランク | 意味 |
| A-1 | 短期発行体格付けにおける最高位で、金融債務を履行する能力が非常に高い |
| A-2 | 金融債務を履行する能力が高いものの、A-1よりも経済状況などの変化による悪影響を受けやすい |
| A-3 | 金融債務を履行する能力は高いが、経済状況などの変化で履行能力が低下する可能性がある |
| B | 現時点では金融債務を履行する能力はあるが、継続性に不安 |
| C | 金融債務を履行する能力が低く、リスクが高い |
| SD、D | デフォルトが発生した状態 |
A-1が最上位で信頼性が一番高く、Cは信用リスクが一番高いと判断されます。
なお、A-1では債務者の金融債務を履行する能力が非常に高い場合にプラス記号(+)が付与されることがあります。
SDとDは、スタンダード・アンド・プアーズがデフォルトと判断した場合につけられます。
スタンダード・アンド・プアーズのアウトルック
アウトルックは日本語で「見解」や「見通し」を意味し、格付け会社の将来的な格付けの見通しを示します。
期間は一般的に、投資適格級では最長2年、投機的格付けでは最長1年を目安としています。
スタンダード・アンド・プアーズの評価には肯定的(Positive)、否定的(Negative)、安定(Stable)、発展中(Developing)の4種類があり、それぞれの意味は以下のとおりです。
| 肯定的(Positive) | 格上げの可能性がある |
| 否定的(Negative) | 格下げの可能性がある |
| 安定(Stable) | 現在の格付けが変更される可能性は低い |
| 発展中(Developing) | 方向性は未定 |
アウトルックの内容がポジティブであれば将来的な格上げが期待され、投資家に好印象を与えやすいです。
反対に、ネガティブであれば将来的な格下げの可能性があるため、投資家からは嫌気されやすいです。
ただし、アウトルックはあくまでも見通しであり、将来的に必ず格上げや格下げが起きるわけではない点には注意が必要です。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)と他の格付け機関の違い
スタンダード・アンド・プアーズと同じく、世界三大格付け機関に位置づけられているムーディーズとフィッチ・レーティングスとの違いを見ていきます。
- ・ムーディーズとの比較
- ・フィッチ・レーティングスとの比較
ムーディーズとの比較
スタンダード・アンド・プアーズとムーディーズは格付け体系が異なります。
以下は、ムーディーズの格付けランクです。
グローバル・スケール長期格付け| 格付けランク | 意味 |
| Aaa | 最上位の格付け。信用力が最も高い |
| Aa | 信頼性が高く、信用リスクが極めて低い |
| A | 中級の上位と判断され、信用リスクは低い |
| Baa | 中級と判断され、信用リスクは中程度 |
| Ba | 投機的と判断され、相当の信用リスクがある |
| B | 投機的であり、信用リスクは高い |
| Caa | 投機的で安全性が低く、信用リスクが極めて高い |
| Ca | 非常に投機的で、デフォルトに近い状態 |
| C | すでにデフォルト状態 |
ムーディーズの「グローバル・スケール長期格付け」はAaaが最上位です。
Ba以下の格付けランクは投機的に位置します。
最下位のCに近づくほど信用リスクが高まり、Cはデフォルト状態と判断されます。
グローバル・スケール短期格付け| 格付けランク | 意味 |
| P-1 | 返済能力が極めて高い |
| P-2 | 返済能力が高い |
| P-3 | 許容できる程度の返済能力がある |
| NP | P-1~P-3のどれにも当てはまらない格付け |
短期の格付けである「グローバル・スケール短期格付け」はP-1が最上位で、P-2、P-3と下がっていきます。
最下位のNPはP-1からP-3に当てはまらず、投機的で信用リスクが高いことを意味します。
また、ムーディーズではAaからCaa までの格付けに、1、2、3 という数字付加記号がつくことがあります(数字が低いほど信頼性が高い)。
フィッチ・レーティングスとの比較
フィッチ・レーティングスの格付けは、スタンダード・アンド・プアーズと同様にAAA〜Dで表されます。
以下は、長期と短期の信用格付けランクです。
長期格付け| 格付けランク | 意味 |
| AAA | 最上位の格付けで、最も信用力が高い |
| AA | AAAより劣るが、信用力は高い |
| A | 信用力は高いが、上位格付けよりも経営や経済環境の悪化による影響を受けやすい |
| BBB | 信用力は十分だが、経営や経済環境の悪化によって履行能力が低下するリスクがある |
| BB | 投機的と判断されるライン。現在は問題ないが、経営や経済環境の悪化によるデフォルトリスクが高まる |
| B | 現時点では支払いは継続しているが、デフォルトリスクは高い水準にある |
| CCC | 信頼性が低く、デフォルトが現実の可能性として認められる |
| CC | デフォルトが起きる可能性が高い |
| C | デフォルトが近い状態 |
| RD | 一部デフォルト状態 |
| D | デフォルト状態 |
AAAが最上位で、格付けランクが低くなっていくほど信用力が低下します。
BBが投機的と判断されるラインで、BB以下は信用リスクが高いと考えられます。
RDは一部デフォルト状態を表し、最下位のDはすでにデフォルトに陥っている状態を表しています。
短期格付け| 格付けランク | 意味 |
| F1 | 最も信用力が高い。+符号が付された場合は、極めて高い信用力を持つ |
| F2 | 信用力が高く、期日どおりの支払い能力は良好 |
| F3 | 信用力は中位で、期日どおりの支払い能力が十分にある |
| B | 投機的と判断されるライン。現時点での支払い能力には問題ないが、金融や経済の環境悪化によってリスクが高まりやすい |
| C | デフォルトが現実に起きる可能性がある |
| RD | 一部デフォルト状態 |
| D | デフォルト状態 |
短期格付けはF1が最上位で最も高い信頼性を示し、B以下は投機的と判断されます。
最下位はDで、すでにデフォルト状態に陥っていることを意味します。
フィッチ・レーティングスもプラス記号(+)やマイナス記号(-)を使って区分し、プラス記号の方が信頼性は高くなります。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)に関するQ&A
スタンダード・アンド・プアーズに関するよくある質問を解説していきます。
- ・スタンダード・アンド・プアーズの格付けはどこで確認できますか?
- ・スタンダード・アンド・プアーズによる日本国債の格付けは?
- ・スタンダード・アンド・プアーズとS&P500は同じ意味ですか?
スタンダード・アンド・プアーズの格付けはどこで確認できますか?
スタンダード・アンド・プアーズの公式サイトで確認可能ですが、登録が必要な場合があります。
公式サイト以外では、ロイターやブルームバーグ、日本経済新聞などのメディアでも報道されています。
その他には、格付け情報を発信しているサイトや、上場企業で自社の格付けを公開している場合があります。
スタンダード・アンド・プアーズによる日本国債の格付けは?
2025年10月6日現在、スタンダード・アンド・プアーズによる日本国債の格付けは、「A+」です。
アウトルックは「安定的」ですが、今後の財政状態によっては、格下げになる可能性が示唆されています。
スタンダード・アンド・プアーズとS&P500は同じ意味ですか?
スタンダード・アンド・プアーズは、もともと格付け会社として知られていますが、現在はS&P Globalという企業グループの一部門「S&P Global Ratings」が格付け業務を担っています。一方、株価指数「S&P500」は、同じグループ内の別部門「S&P Dow Jones Indices」が算出しており、格付けとは機能も役割も異なります。
【まとめ】スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とは|役割・指数・格付けをわかりやすく解説
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は米国の格付け機関で、ムーディーズやフィッチ・レーティングスと並び、世界三大格付け機関の1つとされています。
格付けは金融商品や発行体における信用リスクを客観的に表していることから、投資家が動向に注目しており、格上げや格下げ、アウトルックの内容によって相場が動く可能性があります。
ただし、格付けはあくまでも現在の目安であり、未来を保証していません。
格付けランクが高いからデフォルトが必ず起きないわけではなく、何らかの要因で急に信用力が低下することはあります。
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