FedWatch Toolとは|使い方・注意点を解説
FedWatch Toolは、米国の連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に関する市場の見通しを示すツールです。
シカゴに本社を置く、世界最大級のデリバティブ取引所運営会社であるCMEグループが、フェデラル・ファンド(FF)金利先物の価格データを基に、市場の利上げ織り込み度を算出します。
具体的には、政策金利がどの程度引き上げられるか、または引き下げられるかの確率を算出しているツールです。
FedWatch Toolを使用することで、FRBの金融政策が今後どのように変化する可能性があるかを把握することができ、投資家やアナリストにも広く利用されています。
しかし、FedWatch Toolはあくまで予想データであり、FOMCによる金融政策の決定とは一致しない場合があるため、注意が必要です。
本記事では、FedWatch Toolの見方や使い方、注意点について詳しく解説していきます。
FedWatch Toolの見方・使い方
FedWatch Toolとは、CMEグループが金利先物市場のデータを基に、市場の利上げ織り込み度を算出・公表するツールです。
各 FOMC
CMEのFedWatch tool
にアクセスすると、下画像が表示されます。ツールは英語表記なので、それぞれの機能を日本語訳して解説していきます。
出典:CMEグループ
機能名 | 日本語訳 |
Target Rate | 目標金利 |
Current | 現在 |
Compare | 比較 |
Probabilities | 確率 |
Historical | 過去データ |
Downloads | ダウンロード |
Prior Hikes | 過去の利上げ |
Dot Plot | ドットプロット |
Chart | ドットチャート |
Table | 表 |
Target Rate
今後のFOMCで政策金利がどうなるかについて、FF金利先物市場のデータを基に市場の利上げ織り込み度を算出したデータです。
Current
現時点での市場の予想を示しています。
出典:CMEグループ
①今後のFOMC開催日
今後のFOMC開催日がタブで表示されていて、選択できるようになっています。左端は次回のFOMC開催日が表示されます。
タブの数字は開催日(日/月/年)を示しています。
例)31 124 → 2024年1月31日
②政策金利の見通し
現在の政策金利を基準に、どのように変更されるかの確率が表示されます。
出典:CMEグループ
EASE(利下げ) | 選択したFOMC開催日の利下げ確率 |
NO CHANGE(据え置き) | 選択したFOMC開催日の据え置き確率 |
HIKE(利上げ) | 選択したFOMC開催日の利上げ確率 |
③目標レートの確率
選択したFOMC開催日における、目標レートの確率が棒グラフで表示されます。
出典:CMEグループ
- ①現在のFF金利(5.25%~5.50%)
- ②14.5%の確率で5.00%~5.25%に利下げ
- ③85.5%の確率で5.25%~5.50%に据え置き
④目標レートの確率の推移
目標レートの確率がどのように推移してきたのかが表示されます。
出典:CMEグループ
上画像の例では、1か月前まで5.00%〜5.25%に利下げする確率は0%でしたが、先週は10.3%、昨日は14.5%と推移しており、利下げ確率が高まってきていることが分かります。
また、1か月前は5.50%〜5.75%や5.75%〜6.00%に利上げする確率が12%以上あったことが分かります。
Compare
「Current」で表示されていた「③目標レートの確率」と「④目標レートの確率の推移」を1つにまとめたものです。
「①今後のFOMC開催日」と「②政策金利の見通し」の見方は同じです。
出典:CMEグループ
5.25%〜5.50%に据え置きする確率が、現在に近づくにつれて低下してきていることが、棒グラフを並べることで分かりやすく表示されています。
一方、5.00%〜5.25%に利下げする確率が、徐々に高まってきていることも分かります。
Probabilities
「Current」や「Compare」は、FOMC開催日ごとに棒グラフを用いて表示されていましたが、ここでは全てのFOMC開催日の確率を表示しています。
出典:CMEグループ
- ①FF金利先物の価格
- ②政策金利の確率
- ③利上げ(利下げ)の確率
特に注目すべきは「政策金利の確率」です。
出典:CMEグループ
今後のFOMC開催日ごとに、目標レートの確率を表示しています。
水色の網掛けがされている数字が、最も確率が高いレートです。この表を見ると、開催日を追うごとに利下げされていくと予想されていることが分かります。
Historical
Historicalでは、Target Rateで示された過去のデータを確認することができます。
また、過去データのダウンロードも可能です。
Historical
予想される目標レートの確率が、どのように推移してきたのか、過去のデータを確認することができます。
出典:CMEグループ
①FOMC開催日
過去数回分と、今後のFOMC開催日を選択することができます。
このページを開くと、次回FOMC開催日がデフォルトで表示されます。
タブの数字は開催日(日/月/年)を示しています。
例)31 124 → 2024年1月31日
②表示形式の選択
「Show line chart」と「Show stacked area chart」が選択できます。また、「Ranges」をクリックすると、表示したい目標レートが選択できます。
「Show line chart」を使って見方を解説します。
出典:CMEグループ
①目標レート
②カーソル位置
③カーソル位置の確率
目標レートの確率が、どのように推移してきたのかラインチャートで表示されます。①では、どの目標レートが何色のラインなのかを表します。
チャート上でカーソルを移動させると②のように表示され、カーソル位置の目標レートの確率が③に表示されます。
出典:CMEグループ
こちらは「Show stacked area chart」で、見方はラインチャートと同じです。エリアごとに色分けされるのが特徴です。
Downloads
過去のデータを、csv形式でダウンロードすることができます。
任意のファイルをクリックすると、ダウンロードできます。
出典:CMEグループ
Prior Hikes
利上げ確率がどのように織り込まれてきたのかを、ラインチャートで表示します。
出典:CMEグループ
①利上げ確率
②FOMCまでの残り日数
③利上げされたFOMC開催日
④カーソル位置
⑤カーソル位置の確率
FOMC開催日を0日として、90日前からどのように利上げを織り込んでいったのかをラインで表示しています。
Dot Plot
FOMCでは四半期(3月・6月・9月・12月)に一度、FOMC参加メンバーによる経済予測の概要(Summary of Economic Projections)が公表されます。その中でも特に注目を集めるのが、政策金利の見通しです。
下の表は、ドットのグラフで表示されるので、「ドット・プロット(チャート)」という名称で呼ばれています。
Chart
FOMCメンバーによる経済予測の概要で公表された形式と同じドットチャートが表示されます。
出典:2023年12月FOMC(Summary of Economic Projections)
出典:CMEグループ
上はFRBが公表するドットチャートで、下はFedWatch Toolで公表されるドットチャートです。
どちらも2023年12月のFOMCで公表されたものです。
ドットチャートは、FOMCメンバーが各年末の金利予想を点(ドット)で示したチャートで、中央値が重要です。赤枠で示したドットが中央値であり、青色で表示されます。
Table
ドットチャートを表にして、分かりやすくしたものです。
出典:CMEグループ
ドットチャートと同様に縦軸が目標レート、横軸が時系列です。
FedWatch Toolを使う時の注意点
ここでは、FedWatch Toolを使う際の注意点を解説します。
- ・あくまでも予想データである
- ・市場の織り込み度も考える
あくまでも予想データである
FedWatch Toolは、CMEグループが金利先物市場のデータを基に、市場の利上げ織り込み度を算出したデータです。
その金利先物市場のデータは、マーケット参加者の取引が基になっています。
金融政策を決定するのはあくまでもFOMCなので、マーケット参加者のデータであるFedWatch Toolは市場の予想でしかなく、FOMCの決定と一致しない場合もあります。
市場の織り込み度も考える
為替への影響を考えるにあたって、マーケットは先読みしながら動いていくので「織り込み度」が重要になってきます。
FOMCで利上げが決定されても、必ずドルが買われるわけではありません。
FOMCが開催される前に利上げが100%織り込まれている場合は、利上げが決定してもドルは買われないことがあります。それよりも、まだ完全に利上げを織り込んでいない状況で利上げが決定されると、ドルが買われる傾向があります。
マーケットは織り込みで動いていくので、現在の確率だけではなく、どのように確率が推移してきたのかにも注目しておくと良いでしょう。
もっと詳しく知りたい人は、 FOMC発表前に気をつけるべきこと
【まとめ】FedWatch Toolとは
FedWatch Toolは、市場の利上げ織り込み度を算出したデータをグラフで確認でき、視覚的に織り込み度の状況が把握しやすいツールです。
CMEのサイトは英語表記なので、最初はとっつきにくく感じてしまうかもしれませんが、基本的な見方を一度覚えてしまえば、難しいものではありません。
もっと分かりやすく市場の利上げ織り込み度を確認したい人は、FedWatch Toolのデータから次回会合の「FF金利先物市場の政策金利の織り込み度」を表示させたツールもあるので、活用してみてください。
FX市場では、ドルの強弱と金利の織り込み度に相関性があるため、相場分析に役立つでしょう。
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