FedWatch Tool(フェドウォッチ ツール)とは|使い方・注意点を解説
FedWatch Toolは、米国の政策金利に関する市場の見通しを示すツールです。
シカゴに本社を置く、世界最大級のデリバティブ取引所運営会社であるCMEグループが、フェデラル・ファンド(FF)金利先物の価格データを基に、政策金利変更に関する市場の織り込み度を算出・公表します。
しかし、FedWatch Toolはあくまで予想データであり、連邦公開市場委員会(FOMC)が決める政策金利と一致しない場合があることに注意が必要です。
本記事では、FedWatch Toolの見方や使い方、注意点について詳しく解説していきます。
目次
- 1.FedWatch Tool(フェドウォッチ ツール)とは
- 2.FedWatch Toolの見方・使い方
- 3.FedWatchの表(更新日2024年10月4日)
- 4.FedWatch Toolを使う時の注意点
- 5.FedWatch Toolに関するQ&A
- 6.【まとめ】FedWatch Tool(フェドウォッチ ツール)とは|使い方・注意点を解説
FedWatch Tool(フェドウォッチ ツール)とは
ここではFedWatch Toolについて、以下の内容に分けて解説します。
- ・意味
- ・確率の算出方法
意味
FedWatch Toolとは、金利先物市場のデータを基に、政策金利変更に関する市場の織り込み度を算出・公表するツールです。
FOMCで政策金利が変更される可能性(織り込み度)を確認できます。
出典:CMEグループ
CMEのFedWatch toolにアクセスすると、上の画像が表示されます。
ツールは英語表記で、赤枠内の意味は以下の通りです。
機能名 | 日本語訳 |
---|---|
Target Rate | 目標金利 |
Current | 現在 |
Compare | 比較 |
Probabilities | 確率 |
Historical | 過去データ |
Downloads | ダウンロード |
Prior Hikes | 過去の利上げ |
Dot Plot | ドットプロット |
Chart | ドットチャート |
Table | 表 |
確率の算出方法
FedWatch Toolでは、次の前提や算出方法を基にしています。
複雑なので、ここでは概要をまとめるに止めますが、詳しく知りたい場合はCMEのサイトを参照してください。
CME公式サイトはこちら
- P(政策金利引き上げ) = [ FFER(月末) - FFER(月初) ] / 25 ベーシスポイント
- P(現状維持)= 1 - P(政策金利引き上げ)
- ・政策金利の「引き上げ」と「現状維持」の確率を算出
- ・確率は月末と月初のFFER(フェデラルファンド実効レート)の差異に対する市場の期待を反映したもの
- ・FRBが政策金利を変更する際、これを25ベーシス刻みで行うことを前提
- ・FFERはゼロ(0)%以上であることが前提
FedWatch Toolの見方・使い方
ここでは、FedWatch Toolの見方と使い方を、以下の3つの機能のそれぞれに分けて説明します。
Target Rate
「Target Rate」は、今後のFOMCで決まる政策金利を、市場がどのように予測しているかを示すデータです。
Target Rateの中には、以下の4つのメニューがあります。
出典:CMEグループ
- ・Current
- ・Aggregated
- ・Compare
- ・Probabilities
Current
Currentは、現時点で市場が「金利をどう予想しているか」を示しています。
表示される画面の見方は、以下の通りです。
出典:CMEグループ
①〜④の項目名は以下の通りです。
出典:CMEグループ
- ・①:今後のFOMC開催日
- ・②:政策金利の見通し
- ・③:目標レートの確率
- ・④:目標レートの確率の推移
それぞれの項目の見方を説明します。
①今後のFOMC開催日この数字は開催日(日・月・年)を示しています。
見方は下図の通りです。
例)12 624 → 2024年6月12日
出典:CMEグループ
「この日付のFOMCで、金利がどうなるか」の予測が示されます。
②政策金利の見通し現在の政策金利が「下がるか・変わらないか・上がるか」についての、市場の予想を示すデータです。
見方は下図の通りです。
出典:CMEグループ
②の3つの予想を、棒グラフにしています。
出典:CMEグループ
0%の場合はグラフが表示されないので、上の例ではグラフが2本になっています。
なお、グラフが3本ある場合も「下がる・同じ・上がる」の3つとは限りません。
下図をご覧ください。
出典:CMEグループ
このケースでは「上がる」は0%なので、グラフがありません。
そして「下がる」は、0.25%の引き下げと0.50%の引き下げの2つが予測されています。
そのため「下がる」のグラフが2本あります。
④目標レートの確率の推移金利の予想が、どのように推移してきたかを示しています。
出典:CMEグループ
過去の予想と比較することで、今後の変化を考える際の参考になります。
Aggregate
Aggregate(集約)は2024年に導入された機能です。
FF金利先物(フェデラル・ファンド金利先物)の状況から今後の金利を予測し、簡潔に表示します。
例えば、2024年12月のCurrentの金利予測は、下図の通り5つの予想に割れています。
出典:CMEグループ
これを「Aggregate」で見ると、下図のように2つだけとシンプルになります。
出典:CMEグループ
Compare
出典:CMEグループ
「Compare」は、「Current」で表示されていた「③目標レートの確率」と「④目標レートの確率の推移」を1つにまとめたものです。
下図の通り、④の4つの数字を全てグラフにして、③の中に表示しています。
出典:CMEグループ
「①今後のFOMC開催日」と「②政策金利の見通し」の見方は同じです。
出典:CMEグループ
Probabilities
「Probabilities」では、ここまで説明してきた確率が「全てのFOMC開催日」の「全ての金利」でまとめられています。
3つの表があり、それぞれの意味は以下の通りです。
出典:CMEグループ
- ・①:FF金利先物の価格
- ・②:政策金利の確率(Current)
- ・③:政策金利の確率(Aggregate)
①は先物価格一覧です。
②は、ここまで説明してきた「それぞれのFOMCで、その金利になる確率」を表にしたものです。
水色の数値が、最も高い確率を示します。
③は「Aggregate」を示し、水色の数値が最も高い確率を示します。
②について、赤枠は政策金利、緑の枠はFOMC開催日を意味します。
出典:CMEグループ
「最新の政策金利の確率(Current)」は、こちらを押すとページに飛びます。
Historical
「Historical」のカテゴリでできることは、「Target Rateで示された過去データの確認」です。
このカテゴリには、下図の通り3つのメニューがあります。
(Historicalの中に、もう1つHistoricalがあります)
出典:CMEグループ
- ・Historical
- ・Downloads
- ・Prior Hikes
Historical
予想される目標レートの確率が、どのように推移してきたのか確認できます。
出典:CMEグループ
①のFOMC開催日の設定は「Target Rate」の時と同じです。
②の表示形式は、以下の2つから選びます。
- ・Show line chart
- ・Show stacked area chart
また、②の一番右にある「Ranges」をクリックすると、下のメニューが出ます。
出典:CMEグループ
このメニューによって、表示したい目標レートを選択できます。
まず「Show line chart」の見方を説明します。
この画面は、下図の情報を示しています。
出典:CMEグループ
- ・①:目標レート
- ・②:日付設定カーソル
- ・③:到達確率
①で設定した目標レートに、②の時点で到達する確率が、③に表示されます。
②の日付のカーソルは、自由に移動できます。
次に「Show stacked area chart」の見方を説明します。
出典:CMEグループ
実は、この見方は先ほどの「Show line chart」と同じです。
Show line chartは「線だけ」でしたが、こちらは「線と線の隙間を塗りつぶしている」という点が異なります。
「塗りつぶしている方が見やすい人はこちらを選ぶ」というだけで、読み取れる情報自体は同じです。
Downloads
過去のデータを、csv形式でダウンロードできます。
任意のファイルをクリックすると、ダウンロードできます。
出典:CMEグループ
Prior Hikes
利上げ確率の予想が、どのように変化してきたかを示すデータです。
見方を簡単に説明すると、下図の通りです。
出典:CMEグループ
- ①:開催まで残り10日の時点で、
- ②:実際に利上げした6月24日のFOMCで、利上げが起きる確率が、
- ③:何パーセントと予想されていたか
を示します。
どのFOMCも、残り1日や0日になると、予想が100%近くになります。
開催日に近づくほど、予想の精度が上がるためです。
それぞれのデータ項目を正確に説明すると、下図の通りです。
出典:CMEグループ
- ①利上げ確率
- ②FOMCまでの残り日数
- ③利上げされたFOMC開催日
- ④カーソル位置
- ⑤カーソル位置の確率
Dot Plot
「Dot Plot」でわかるのは、「FOMC参加メンバーによる政策金利の見通し」です。
下図のようにドットのグラフで表示されるので、「ドット・プロット(チャート)」という名称で呼ばれています。
出典:CMEグループ
「Dot Plot」の中には、以下の2つのメニューがあります。
出典:CMEグループ
- ・Chart
- ・Table
それぞれのメニューの見方を説明します。
Chart
「Chart」を選ぶと、下図のようなドットチャートが表示されます。
出典:CMEグループ
このチャートの意味は、以下の通りです。
出典:CMEグループ
例えば下図の場合、①の「年率5.0〜5.5%の間」と予想したFOMC参加者が、②のように「4人いた」ことがわかります。
出典:CMEグループ
色分けの意味は、下図の通りです。
出典:CMEグループ
①の赤いドットは実効金利、②の水色のドットはメディアン(中位数)です。
Table
「Table」は、先ほどのドットチャートを表にしたものです。
出典:CMEグループ
表の意味については、下図をご覧ください。
出典:CMEグループ
左側のドットで赤枠の2人は、表の方で「5.375が2名」と表示されています。
青枠も同じように「5.125が2名」と表示されています。
ドットチャートは感覚的に状況を把握できます。
しかし「5.375が2人、5.125が2人…」というように、それぞれの数値の人数を数えたい場合は、表の方が適しています。
FedWatchの表(更新日2024年10月4日)
※データは都度更新。
FOMC
開催日 |
200-225 | 225-250 | 250-275 | 275-300 | 300-325 | 325-350 | 350-375 | 375-400 | 400-425 | 425-450 | 450-475 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2024/11/7 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 32.60% | 67.40% |
2024/12/18 | ― | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 11.60% | 45.00% | 43.30% | 0.00% |
2025/1/29 | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 1.30% | 15.40% | 44.80% | 38.50% | 0.00% | 0.00% |
2025/3/19 | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 1.60% | 16.00% | 44.70% | 37.70% | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
2025/5/7 | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 1.10% | 11.60% | 35.90% | 39.90% | 11.50% | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
2025/6/18 | 0.00% | 0.00% | 0.70% | 7.50% | 26.50% | 38.30% | 22.50% | 4.40% | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
2025/7/30 | 0.00% | 0.20% | 3.10% | 14.20% | 30.70% | 32.80% | 16.10% | 2.90% | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
2025/9/17 | 0.10% | 1.20% | 6.80% | 19.70% | 31.40% | 27.20% | 11.70% | 1.90% | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
2025/10/29 | 0.30% | 2.50% | 9.90% | 22.50% | 30.40% | 23.50% | 9.40% | 1.50% | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
FedWatch Toolを使う時の注意点
ここでは、FedWatch Toolを使う際の注意点を解説します。
- ・あくまでも予想データである
- ・市場の織り込み度も考える
あくまでも予想データである
FedWatch Toolは、金利先物市場のデータを基にして、政策金利変更に関する市場の織り込み度を算出したデータです。
その金利先物市場のデータは、マーケット参加者の取引が基になっています。
金融政策を決定するのはFOMCなので、マーケット参加者のデータであるFedWatch Toolは市場の予想でしかなく、FOMCの決定と一致しない場合があります。
市場の織り込み度も考える
為替への影響を考えるにあたって、マーケットは先読みしながら動いていくので「織り込み度」が重要になってきます。
FOMCが利上げを決めても、その後に必ず米ドルが買われるわけではありません。FOMCが開催される前に利上げが100%織り込まれている場合は、利上げが決定しても米ドルは買われないことがあります。
まだ完全に利上げを織り込んでいない状況で利上げが決定されると、米ドルが買われる可能性があります。
マーケットは織り込みで動いていくので、現在の確率だけではなく、どのように確率が推移してきたのかにも注目しておくと良いでしょう。
もっと詳しく知りたい人は、FOMC発表前に気をつけるべきことで解説しています。
FedWatch Toolに関するQ&A
FedWatch Toolに関してよく見られる疑問点は、以下の通りです。
- ・利上げの織り込み度とは何ですか?
- ・FF金利とは何ですか?
利上げの織り込み度とは何ですか?
利上げの織り込み度とは「利上げをどの程度予想しているか」です。
例えば織り込み度が100%なら、市場参加者が「利上げは確実と予想している」という意味です。
あくまで市場参加者の予測に過ぎないため、織り込み度が100%であっても、必ず利上げされるわけではありません。
FF金利とは何ですか?
FF金利とは、フェデラル・ファンド金利(Federal Funds Rate)の略です。
別名で「FFレート」とも呼ばれます。
FF金利は米国の政策金利に該当し、FRB(連邦準備制度理事会)によって誘導目標が決められています。
フェデラル・ファンドとは、米国の銀行が、同国の中央銀行である「連邦準備銀行」に預け入れる無利息の準備金のことです。
この準備金が不足している銀行が、他銀行に無担保で資金を借りる時に適用される金利がFFレートです。
【まとめ】FedWatch Tool(フェドウォッチ ツール)とは|使い方・注意点を解説
FedWatch Toolは、政策金利変更に関する市場の織り込み度を算出したデータで、視覚的に織り込み度の状況が把握できるツールです。
CMEのサイトは英語表記ですが、基本的な見方を一度覚えてしまえば、難しいものではありません。
わかりやすく市場の織り込み度を確認したい人は、FedWatch Toolのデータから次回会合の「FF金利先物市場の政策金利の織り込み度」を表示させたツールもあるので、活用してみてください。
FX市場では、米ドルの強弱と金利の織り込み度に相関性があるため、相場分析に役立つでしょう。
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