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Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)とは|格付けの見方・相場への影響をわかりやすく解説


Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)は、ニューヨークとロンドンに本社を構える格付け機関です。

Moody’s(ムーディーズ)やS&P Global Ratings(S&Pグローバル・レーティング)と並んで世界三大格付け機関として投資家から注目されており、その格付け動向によっては相場が大きく動くこともあります。

本記事では、Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)の概要、格付けの意味や見方、相場に与える影響などを詳しく解説します。

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)とは

まずは、Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)がどのような機関かについて解説します。

  • ・Fitch Ratingsの役割と格付けが担う市場使命
  • ・Fitch Ratingsは世界3大格付け機関の1つ

Fitch Ratingsの役割と格付けが担う市場使命

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)とは米国のニューヨークと英国のロンドンに本社を置く民間の格付け機関です。

米国に加えてロンドンにもグローバル本社を置き、世界30か国以上で展開しています。

フィッチと略して呼ばれることが多いです。

格付けとは、国や金融機関、企業が発行する債券や金融商品に対する信用度や安全性を評価し、アルファベットや数値でランク付けしたものです。

その調査や評価を行う組織を格付け機関と呼びます。

格付けはリスクを客観的に表しているため、その変更は相場に影響を与えます。

特に、Fitch Ratingsは世界三大格付け機関として投資家から注目を集めているため、格上げや格下げが相場に影響を与えやすい傾向があります。

Fitch Ratingsは世界3大格付け機関の1つ

Fitch Ratingsは世界三大格付け機関として位置づけられています。

世界三大格付け機関は、Moody’s(ムーディーズ)とS&P Global Ratings(S&Pグローバル・レーティング)、そしてFitch Ratings(フィッチ・レーティングス)を指します。

なお、格付け機関はそれぞれ独自に評価や分析をするため、同じ発行体や金融商品でも格付けが異なる場合があります。

格付けが異なる場合は、最も低い格付けを基準にする、複数の格付けの平均で判断する、分析レポートやアウトルック(見通し)を比較するなどが有効です。

なお、日本にも格付け機関があり、金融庁では信用格付業者制度による登録も行われています。

詳細は金融庁のホームページで確認できます。

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)の格付けの基本的な見方

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)の格付けについて、基本的な見方を解説します。

  • ・長期格付け
  • ・短期格付け
  • ・アウトルック

長期格付け

長期格付けとは、満期までの期間が長い金融商品に対する信用力評価です。

以下は、Fitch Ratingsの長期格付けランクです。

格付けランク 意味
AAA 最上位ランクで、信用リスクが非常に低い
AA AAAには劣るものの、信用リスクは低い
A 信用リスクは低いものの、上位の格付けよりも経営環境や経済環境の悪化による影響を受けやすい
BBB 現時点でデフォルトに陥る可能性は低いものの、経営環境や経済環境の悪化によっては債務履行能力が低下する可能性がある
BB 投機的と判断される格付けの最上位。現時点で問題はないが、経営環境や経済環境の悪化によってデフォルトリスクが高まりやすい
B 非常に投機的と判断され、現時点では問題ないものの、継続性には疑問がある
CCC 重大な信用リスクがあり、デフォルトが現実になる可能性がある
CC 信用リスクが非常に高く、一定のデフォルトが起きる可能性が高い
C デフォルトが近い状態
RD 一部デフォルト状態だが、他の債務では返済が継続されている状態
D 全体的にデフォルト状態

最上位はAAAで、最下位はDです。

AAAに近づくほど信用リスクは低く、Dに近づくほどデフォルトリスクが高いと判断されます。

Dはすでにデフォルト状態であることを示します。

Fitch Ratingsでは、BBB以上が投資適格、BB以下が投機的と分類されます。

なお、AAからCCCの格付けにはプラス記号(+)とマイナス記号(-)が付けられる場合があります。

これは、同じカテゴリー内での相対的な位置を表しており、プラスは上位のカテゴリーに近く、マイナスは下位のカテゴリーに近いことを示します。

短期格付け

短期格付けは、満期までの期間が短い金融商品に対する信用力評価です。

こちらも格付け機関ごとに定義が異なります。

以下は、Fitch Ratingsの短期格付けランクです。

格付けランク 意味
F1 短期格付けの最上位クラス。支払い能力が最も高い
F2 支払い能力が良好で、信用リスクが低い
F3 支払い能力が十分にある
B 支払い能力はあるが、金融環境や経済環境の悪化による影響を受けやすい
C デフォルトに陥る可能性があることを示す
RD 一部デフォルト状態だが、他の債務では返済が継続されている状態
D 全体的にデフォルト状態

短期格付けは最上位がF1で、最下位がDです。

F1に近いほど信用リスクが低く、Dに近いほど信用リスクが高いと判断されます。

Dはすでにデフォルト状態を示します。

また、F1にプラス記号がつくF1+はFitch Ratingsの短期格付けで最上位に位置づけられており、信用力が極めて高いと判断された発行体に付与されます。

アウトルック

格付け会社のアウトルック(Outlook)も重要な判断材料です。

アウトルックとは、将来的に格付けが変更されるか、現在の状態が継続しそうかという見通しを示したものです。

Fitch Ratingsのアウトルックは、基本的に「ポジティブ(Positive)」「ネガティブ(Negative)」「安定的(Stable)」「変動中(Evolving)」の4種類に分類されます。

ポジティブ(Positive) 格上げの可能性がある
安定的(Stable) 現在から変わらない可能性が高い
ネガティブ(Negative) 格下げの可能性がある
変動中(Evolving) 格上げ・格下げのいずれもあり得る複雑な状態を示す

ポジティブの場合は信用力が改善傾向にあり、格上げの可能性があることを示します。

反対に、ネガティブは信用リスクが高まりつつあるため、格下げの可能性があるとされます。

安定的だと現在の格付けから変更なしの可能性が高く、変動中は現在の状況が不透明であることを示します。

アウトルックには格付けについての分析なども記載されるため、参考になります。

ただし、アウトルックはあくまでも将来の方向性です。

必ずしもアウトルックが示す方向に動くわけではなく、状況次第では変更されることもあります。

また、格付け機関ごとにアウトルックが異なる場合は比較することが大切です。

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)と他の格付け機関との違い

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)と同じく、世界3大格付け機関に位置づけられるS&P Global RatingsおよびMoody’sとの違いについて解説していきます。

  • ・S&P Global Ratingsとの比較
  • ・Moody’sとの比較

S&P Global Ratingsとの比較

Fitch RatingsとS&P Global Ratingsは格付け体系が異なります。

以下は、S&P Global Ratingsの長期債務格付けと、短期債務格付けの格付けランクです。

長期債務格付け
格付けランク 意味
AAA 最上位の格付け。信用リスクが極めて低い
AA AAAとの差はわずかで、信用リスクは非常に低い
A 信用リスクは低いものの、AAAやAAと比較すると事業環境や経済状況の変化を受けやすい
BBB 信頼性に問題はないが、事業環境や経済状況の変化によって信用リスクが高まる可能性がある。ここまでが投資適格とされる
BB 投機的と判断される最上位格付け。他の投機的な格付けより信用リスクは低いが、状況次第では債務履行能力が不十分になる可能性がある
B 現時点では問題はないが、BBよりも信用リスクが高い
CCC 現段階で問題があり、財務状況や経済状況の悪化で債務不履行になる可能性がある
CC 現時点では債務不履行にはなっていないものの、将来的に債務不履行になる可能性が高い
C 現時点で債務不履行になる可能性が非常に高く、最終的な回収見通しが低いと予想される
D 債務の支払いが行われておらず、実質デフォルト状態

最上位のAAAに近づくほど信用リスクが低く、最下位のDに近づくほど信用リスクが高いと考えられます。

Fitch Ratingsと同じように、S&P Global Ratingsの格付けはアルファベットで表されます。

AAからCCCまでの格付けにはプラス記号(+)やマイナス記号(-)が付けられる場合がある点もFitch Ratingsと似ています。

短期債務格付け
格付けランク 意味
A-1 最上位のランク。信用リスクは極めて低い
A-2 信用リスクは低いが、A-1と比較すると事業環境や経済状況の悪化による影響を受けやすい
A-3 債務履行能力は十分にあるが、事業環境や経済状況の悪化によって信用リスクが高まる可能性がある
B 現段階では問題ないが、信用リスクは高い
C 現時点で債務不履行に陥る可能性あり
D 債務不履行または推定約束違反。デフォルト状態と判断

S&P Global Ratingsの短期債務格付けは、A-1が最上位で、Dが最下位です。

上位ランクがAで表される点は、Fで表されるFitch Ratingsと異なる点です。

Moody’sとの比較

Moody’sとも比較してみます。

グローバル・スケール長期格付け
格付けランク 意味
Aaa 信用力が最も高い最上位のランク
Aa Aaaに次ぐランクで信用力は高い
A 中級の上位で、信用リスクは低い
Baa 中級と判断され、相応の信用リスクがある
Ba 投機的と判断され、一定の信用リスクがある
B 投機的とみなされ、信用リスクが高い
Caa 投機的で、信用リスクが非常に高い
Ca 非常に投機的で、デフォルトに近い状態ではあるが、一定の回収が見込める
C 最も格付けが低く、デフォルト寸前

グローバル・スケール長期格付けはAaaに近いほど信用力が高く、Cに近いほど信用リスクが高いと判断されます。

Aaaのように、アルファベットの小文字で表記され、最下位はCで表される点がFitch Ratingsとの違いです。

また、AaからCaaには1〜3の数字で同一カテゴリー内での上位や下位を表すことがあります。

グローバル・スケール短期格付け
格付けランク 意味
P-1(Prime-1) 返済能力が極めて高い
P-2(Prime-2) 返済能力が高い
P-3(Prime-3) 許容できる程度の返済能力がある
NP(Not Prime) P-1~P-3にあてはまらない発行体

グローバル・スケール短期格付けはPで始まる記号で表されます。

PはPrimeを意味します。

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)に関するQ&A

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)に関するよくある質問は、主に以下の通りです。

  • ・Fitch Ratingsの格付けはどこで確認できますか?
  • ・Fitch Ratingsによる日本の外貨建て長期発行体デフォルト格付(IDR)の格付けは?
  • ・Fitch Ratingsの格付け更新はいつ行われますか?

Fitch Ratingsの格付けはどこで確認できますか?

Fitch Ratingsの公式ウェブサイトでは格付けに関する情報を確認可能です。

日本語のサイトもあります。

公式サイト以外では、ロイターやブルームバーグ、日経新聞などのメディアが報道しています。

その他には、格付け情報を発信しているサイトや、自社の格付けを公開している上場企業で確認する方法もあります。

Fitch Ratingsによる日本の外貨建て長期発行体デフォルト格付(IDR)の格付けは?

2025年11月時点におけるFitch Ratingsは日本の外貨建て長期発行体デフォルト格付(IDR)の格付けを「A」としています。

アウトルックは「安定的」としており、現時点での信用リスクは比較的低いと判断されています。

一方で、財政赤字の拡大や債務増加を懸念する声もあり、格下げの可能性も示唆されています。

Fitch Ratingsの格付け更新はいつ行われますか?

Fitch Ratingsの格付けは継続的にモニタリングされており、モニタリング対象の信用格付けは最少で年1回、一部のソブリンや国際公共財政の格付けは少なくとも6か月ごとに見直されます。

ただし、状況の急変や重要な財務イベントが発生した場合には、随時変更されることもあります。

【まとめ】Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)とは|格付けの見方・相場への影響をわかりやすく解説

Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)は、米国のニューヨークと英国のロンドンに本社を置く格付け機関で、S&P Global RatingsやMoody’sと並んで世界三大格付け機関に位置づけられています。

格付けとは、国や金融機関、企業が発行する債券や金融商品の信用度や安全性を評価したものです。

客観的な評価であるため、投資家から投資判断の参考にされています。

特に世界三大格付け機関は注目度が高いため、格付け動向によっては相場に大きな影響を与える可能性があります。

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