PCE(個人消費支出)とは|インフレ指標としての役割や影響などを解説
PCE(個人消費支出)とは、米国における財やサービスの消費金額の合計を示す経済指標です。
米連邦準備制度理事会 (FRB)の金融政策に与える影響が大きいとされ、市場関係者の注目を集めています。
本記事では、PCE(個人消費支出)の特徴やよくある質問などを解説します。
目次
- 1.PCE(個人消費支出)とは
- 2.PCEデフレーター・コアPCEデフレーター
- 3.PCE(個人消費支出)デフレーターの影響
- 4.PCE(個人消費支出)に関するQ&A
- 5.【まとめ】PCE(個人消費支出)とは|インフレ指標としての役割や影響などを解説
PCE(個人消費支出)とは
PCE(Personal Consumption Expenditures)とは、米国における消費金額の大きさを示す経済指標で、日本語では個人消費支出と呼ばれます。
消費者による財やサービスの購入だけでなく、消費者のために支払われる各種費用(保険会社による医療費支払いなど)も含まれるのが特徴です。
米商務省経済分析局(BEA:Bureau of Economic Analysis)が管轄し、毎月発表されます。
PCEを使って物価上昇率を示すことができ、これをPCEデフレーターと呼びます。
また、PCEデフレーターから食料とエネルギーを除いたものをコアPCEデフレーターといい、米連邦準備制度理事会 (FRB)が政策決定にあたって重視しているとされます。
PCEデフレーター・コアPCEデフレーター
PCEデフレーターやコアPCEデフレーターの特徴などを解説します。
- ・PCEデフレーターとは
- ・コアPCEデフレーターとは
- ・CPIとの違い
- ・推移
PCEデフレーターとは
PCEデフレーターとは、米国内で消費された財やサービスのインフレ率を示します。
パーセント(%)で表示され、基準時点の物価よりも上昇すればプラス、下落すればマイナスです。
コアPCEデフレーターとは
コアPCEデフレーターとは、PCEデフレーターから食料とエネルギーを除いた値です。
食料とエネルギーは価格変動が大きく、インフレーションのトレンドを把握するためにはコアPCEデフレーターのほうが望ましいとされています。
CPIとの違い
PCEデフレーターと消費者物価指数(CPI)は、いずれも米国のインフレーションを計測する指標ですが、数値が異なります。
数値が異なる理由として、計測範囲の違いがあります。
PCEデフレーター | CPI |
---|---|
消費者による支出に加えて、消費者のための支出を含む(保険など) | 消費者が直接支出した消費のみ |
また、計算式の違いなどもあります。
> CPI(消費者物価指数)とは|計算方法、各国の比較や為替相場に及ぼす影響を解説
推移
下のグラフは、PCEデフレーターとコアPCEデフレーター(上画像)、消費者物価指数(CPI)とコアCPI(下画像)の推移を示しています。
細部で違いがあるものの、似た動きをしていることがわかります。
計測の範囲や計算方法はそれぞれ異なりますが、米国の物価動向を示すという目的は同一です。
これが、グラフの形状が類似する理由だと考えられます。
> 国別経済指標
PCE(個人消費支出)デフレーターの影響
PCEデフレーターは米連邦準備制度理事会 (FRB)が重視する経済指標の1つとされ、金利動向に影響を与えます(FRBの政策決定は雇用情勢や経済成長なども含めた総合的な判断による)。
PCEデフレーターの値が継続的に上昇する場合、インフレ上昇圧力が意識されて政策金利引き上げの可能性が高まります。
逆に、PCEデフレーターの値が継続的に下落する場合、インフレの低下が意識されて政策金利引き下げの可能性が高まります。
> 国別経済指標
上の2つのグラフは、直近10年間のFFレート(米国の政策金利)とPCEデフレーターを並べたものです。
PCEデフレーターが上昇すると、遅れてFFレートが引き上げられている様子がわかります。
下落も同様で、PCEデフレーターに遅れてFFレートが動いています。
なお、グラフ中盤において、FFレートとPCEデフレーターが同時期に大きく下落した様子がわかります。
これは新型コロナウイルスのパンデミックの時期で、FRBが迅速に行動したと考えられます。
PCE(個人消費支出)に関するQ&A
PCE(個人消費支出)に関するよくある質問は、主に以下の通りです。
- ・PCEデフレーターとコアPCEデフレーターはどちらが重要?
- ・米国のPCEはどこで確認できますか?
- ・PCEが高いとどうなりますか?
PCEデフレーターとコアPCEデフレーターはどちらが重要?
PCEデフレーターとコアPCEデフレーターの重要度は、データを使用する人によって異なると考えられます。
投資目的の場合、コアPCEデフレーターがより重要です。
コアPCEデフレーターは物価の基調的なトレンドを把握しやすいと考えられ、米連邦準備制度理事会 (FRB)など金融政策担当者が参照すると言われているためです。
その一方、消費者や企業にとっては、PCEデフレーターのほうが重要な可能性があります。
PCEデフレーターは経済全体の物価を反映するため、消費など経済活動に関する一般的なコストを把握するにはPCEデフレーターが優れていると考えられます。
米国のPCEはどこで確認できますか?
米国のPCEはBEA(商務省経済分析局)のホームページで確認できます。
また、FRED(米連邦準備制度経済データ)でPCEのグラフを閲覧可能です。
出典:Federal Reserve Economic Data
上のグラフはPCEの推移で、灰色の帯はリセッション期間です。
PCEはリセッションで下落する傾向があるものの、その他の期間は右肩上がりであることがわかります。
PCEが高いとどうなりますか?
PCEデフレーター(またはコアPCE)が高い場合は、インフレ圧力が強まっていることを意味し、FRBが利上げに踏み切る可能性が高まります。
一方で、PCE(個人消費支出)の増加は、景気の好調さを示すことがあります。
消費需要を満たすために企業は稼働率を上げたり事業規模を拡大したりするため、景気を押し上げると考えられます。
【まとめ】PCE(個人消費支出)とは|インフレ指標としての役割や影響などを解説
PCE(個人消費支出)とは、米国における財やサービスの消費金額の大きさを示す経済指標です。
PCEデフレーターは米連邦準備制度理事会 (FRB)が重視する経済指標の1つとされ、金利動向に影響を与えるのが特徴です。
PCEデフレーターが上向きの場合は政策金利引き上げ、下向きの場合は政策金利の引き下げ期待が高まる傾向にあります。
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