RBAは3会合連続利上げで4.35%に到達、次の一手は「様子見」へ
国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は4月15日、日銀を始め主要な中銀に対し「直ちに利上げが必要だとは考えていない」と発言した。
しかし、豪準備銀行(RBA)は、独自路線を貫いた。
RBAは5月5日、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を0.25%引き上げ4.35%に設定。
2月、3月に続き、3会合連続の利上げとなる。
声明文によれば、前回の5対4とは異なり、8対1で利上げを決定した。
声明文では、基調的なインフレ率が2月時点の予想よりも高い水準でピークを迎えるとの見通しに上方修正を加えた。
また、コスト増に直面した企業が製品・サービス価格を引き上げ始めており、広範な価格への二次的効果が生じる可能性についても新たに明記。
さらに、基本シナリオに反してイラン紛争が継続した場合には、インフレ率が一段と上振れし、経済活動が低下するリスクも「起こり得る」とし、インフレへの警戒姿勢を強めた。
会見でブロック総裁は、原油高による短期的なインフレ加速はもはや避けられず、「非常に我々は貧しくなった。そこから逃れる道はない」「これらの利上げは今後6カ月のインフレには何の影響も及ぼさない。それはもう手遅れだ」と警告し、短期の物価軌道は既定路線であるとの認識を示した。
もっとも、ブロック氏は「金融政策はやや引き締め的で、これにより今回のインフレ・ショックが経済を通過した後にインフレがより高く、より持続的になるリスクに対処する一助になると判断している」と発言。
また、今回の利上げについて「いま余裕を確保し、これから何が起きるかを見極めるため」と説明し、「現在はインフレのリスクが上振れにも下振れにも動き得る状況に対して、警戒できるだけの余裕を持てている」と述べた。
声明文でこれまで3回利上げした事実を明記した流れに合わせ、連続利上げから様子見の余地を確保する姿勢へと軸足を移した格好だ。
RBAがインフレ警戒を残しつつも様子見姿勢を強めた背景には、5月12日公表の豪政府予算が挙げられる。
ABCニュースによれば、当初よりも財政出動が抑制される見通しだ。
ブロック氏自身、政府の生活費支援策が「最も必要とされる層に的確に向けられていなければ」、インフレが一段と悪化するリスクがあると釘を刺しており、財政政策との整合性を求めている。
豪3月消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.6%と、2023年10月以来の強い伸びを記録した。
ただし、コアCPIとされるトリム平均値は同3.3%と4カ月連続で変わらず。
現時点で二次的波及を見極める余地があるだけに、RBAは連続利上げこそ中断する構えだ。
しかし、二次的影響の顕在化や財政政策次第では、再び利上げに動く可能性を残した。
RBAの政策運営は、日銀が4月に据え置きを決定した動きと、対照的と言わざるを得ない。

チャート:豪3月CPIは2023年10月以来の高い伸び、トリム平均値は4カ月連続で変わらず
ECBは6月利上げが視野も、ハト派は慎重姿勢崩さず
欧州中央銀行(ECB)は4月30日の理事会で中銀預金金利を2.0%にて据え置いた。
前回に続き、全会一致の決定となる。
しかし、ラガルド総裁は会見で、「我々は本日の据え置き決定を議論したが、それと同時に、利上げという決定についても、相当な時間をかけて深く議論した」と述べ、6月会合での利上げを示唆した。
ユーロ圏4月統合消費者物価指数(HICP)は前年同月比3.0%と2023年9月以来の水準に達し、ECBの2%目標を大幅に上回った。
既に、ナーゲル独連銀総裁がインフレ見通し改善なければ6月利上げが必要との認識を寄せ、エストニア中銀のカジミール総裁も、6月利上げは「ほぼ不可避」と言及し、タカ派は利上げの道筋を築きつつある。
もっとも、ハト派寄りのECBメンバーは6月利上げに急ぐ姿勢をみせていない。
デギンドスECB副総裁は「6月まで待つ必要があり、そこでより多くの情報と新たな見通しが得られるだろう」と決め打ちしない方向性を打ち出した。
ビルロワドガロー仏中銀総裁も、6月利上げに保証する二次的影響は見られないと発言。
ユーロ圏4月コアHICP速報値が同2.2%と前月を下回っただけに、データを確認したい意図が垣間見える。

チャート:ユーロ圏4月HICP速報値は2023年9月以来の高い伸び、コアHICPは前月以下
加えて、ユーロ圏4月総合PMI速報値が予想外に50を割り込み48.6へ低下した。
ユーロ圏最大の経済力を誇るドイツのリセッション入りも視野に入り、独経済省は2026年の成長見通しを1.0%から0.6%に下方修正済みだ。
市場では今後1年で0.75%の利上げを織り込む状況だが、物価安定をシングルマンデートに掲げるECBでも、慎重にならざるを得ないのだろう。
BOEは8対1の据え置き、3シナリオで示したイラン紛争の衝撃
イングランド銀行(BOE)の英金融政策委員会(MPC)は4月30日、8対1の賛成多数で政策金利を3.75%に据え置いた
。
3会合連続で政策金利を維持。
反対票は前回と同じくタカ派で知られるチーフエコノミストのピル氏のみで、0.25%の利上げを主張した。
ベイリー総裁は、今回の据え置きは「受け身的な様子見ではなく、積極的な据え置き」と説明、エネルギー価格次第で利上げが必要となる可能性を打ち出した。
また、年内2回の利上げを織り込む市場を無視しない立場を示した上で「二次的なインフレ波及を確認してから動くのでは遅すぎる」と警告。
今後の判断は、中東情勢がエネルギー価格に与える影響、その価格上昇が英CPIにどう波及するかに左右されるとした。
英3月CPIは前年同月比3.3%と3カ月ぶりの伸びとなったが、コアCPIは同3.1%に鈍化しており、次回6月18日のMPCでの利上げを決断するのか、見極めの段階に入ったと言えよう。

チャート:英4月CPIは3カ月ぶり伸び、コアCPIは前月以下
BOEは今回、イラン紛争の長期化シナリオと二次的影響の深刻度に応じた3つのシナリオを提示した。
シナリオA(比較的軽微):
紛争が早期に収束しエネルギーショックが限定的にとどまる場合、インフレは2026年末に3.5%程度でピークを打ち、その後2%目標に向けて低下。
追加利上げは不要となる可能性あり。
シナリオB(中程度):
エネルギー価格の高止まりが継続し、インフレは3.5%強でピーク。
その後2%に回帰するものの、2月時点の市場予想より政策金利は高い水準で推移することが示唆された。
政策金利は現状から数回の引き上げが必要となりうる。
シナリオC(最も深刻):
ホルムズ海峡封鎖が長期化し二次的効果が顕在化した場合、インフレは2027年初頭に6.2%でピークを迎え、2029年まで2%を上回る状態が継続。
BOEはこの最も深刻なシナリオ下で、政策金利が2027年に5.25%程度まで上昇すると試算、その場合「需給ギャップの拡大とリセッションリスクを代償とする」と明記。
議事録によれば、シナリオA~Cに対し9人のMPC委員の多くがシナリオBを中心的な想定(central case)としたが、エネルギー価格や二次的影響の不確実性をめぐる判断次第となりそうだ。
ベイリー総裁やロンバルデッリ副総裁、ブリーデン委員、ラムスデン委員はシナリオBを重視しつつ、シナリオCにも配慮する姿勢を表明。
最もハト派寄りはテイラー委員で、A寄り~Bに軸足を置いた。
ディングラ委員はA~Cを全て排除せず。
タカ派寄りのグリーン委員とマン委員はBより強い二次的影響をにらみ、ピル委員は全てのシナリオで二次影響リスクを警戒し利上げ票を投じたという。
エコノミストの間では、意見が分かれている。
ロイターによれば、オランダのING銀行は6月のみ1回の利上げを予想し、ドイツ銀行は7月まで利上げなし、且つ複数の利上げも排除せずとの見方を示す。
シティグループは、年内据え置きを見込む。

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株式会社ストリート・インサイツ代表取締役・経済アナリスト 安田佐和子
世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。
2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。
その他、ジーフィット株式会社にて為替アンバサダー、一般社団法人計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員を務める。
NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライト」の他、日経CNBCやラジオNIKKEIなどに出演してきた。
その他、メディアでコラムも執筆中。
X(旧ツイッター):Street Insights
お問い合わせ先、ブログ:My Big Apple NY
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