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AI関連株が急落、半導体株指数は1日で12%安|選挙後のデータセンター規制とAI株・日経平均の行方を図解(2026年11月6日)

マーケットレポート

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AI関連株の急落
半導体株指数は1日で12%安。選挙が火をつけた「データセンター規制」とAI株の行方
11月5日の米国市場で、AI(人工知能)関連株が大きく売られました。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は12.2%安と、2020年3月以来の大きな下げを記録し、ナスダック100も6.4%下落しました。米中間選挙で民主党が上下両院を奪還し、データセンターの新設を止める動きが広がるとの警戒が強まったことに、半導体企業の決算への失望が重なりました。6日の東京市場でも日経平均が一時4,300円を超えて下げ、6万円を割り込んでいます。何が起きたのか、規制はどこまで進むのか、日本株や為替への影響を図と表で整理します。
半導体株指数(5日)
-12.2%
2020年3月以来の下落率
ナスダック100(5日)
-6.4%
約2.3兆ドルの時価総額が減少
S&P500(5日)
-4.4%
2025年4月以来の下落率
日経平均(6日前場)
-3,160円
一時4,332円安・6万円割れ
AI関連株の急落を3行でいうと
1
選挙の翌々日、AI関連株が全面安。半導体株指数は1日で12%下落
選挙の翌日(4日)は「大手IT高・半導体安」に分かれたが、5日は大手ITも含めて売られた。下げの中心はエヌビディアやAMD、マイクロンなどの半導体と、データセンターの設備・電力の銘柄
2
引き金は「データセンター規制」への警戒と、半導体企業の決算
民主党の議員から全国的な建設の一時停止を求める声が相次いだ。クアルコムとアームの見通しが物足りないと受け止められたことも重なった
3
規制は州・地域が中心になりそう。焦点はエヌビディアの決算(18日朝)
連邦の法律は大統領の拒否権があり進みにくい。日本では6日に日経平均が一時4,300円超下げ、AI向けの比重が大きい銘柄ほど影響を受けやすい

CHAPTER 01投票日から何が起きたのか

投票日から3日間で、AI関連株の値動きは「選別」から「全面安」へと変わり、6日には東京市場にも売りが広がりました。

11月3日
(米国)
  • 米中間選挙の投票。民主党が上下両院で過半数を確保
  • 出口調査などでデータセンターへの反発の強さが明らかに
11月4日
(米国)
  • 大手IT株が上昇(マイクロソフト+6.7%、アマゾン+6.1%)。新設が抑えられれば、すでに設備を持つ大手が有利との見方
  • 半導体株指数は3.1%安、電力のビストラは13.8%安と「建てる側」が売られた
  • 引け後にクアルコムとアームが決算を発表。見通しが物足りないと受け止められた
11月5日
(東京)
  • アドバンテスト14.7%安、東京エレクトロン9.4%安など半導体株が急落し、日経平均は1.79%安
  • 一方、トヨタ自動車の業績予想の引き上げなどでTOPIXは1.16%高。下げはAI関連の一部の大型株に集中
11月5日
(米国)
  • 半導体株指数は12.2%安、ナスダック100は6.4%安、S&P500は4.4%安と全面安
  • AMDとマイクロンが17%超下落。前日に上がった大手IT株も軒並み下落(アップル1.5%安〜メタ4.0%安)
  • S&P500の11業種すべてが下落し、情報技術の業種は7.3%安
11月6日
(東京)
  • 日経平均は一時4,332円安の5万6,746円まで下げ、取引時間中として5月20日以来の6万円割れ
  • 前引けは3,160円安の5万7,918円。半導体株は安値から戻した一方、トヨタ自動車や三菱UFJなど幅広い銘柄が売られた

5日の米国市場:主要な株価指数がそろって大幅安

-12.2%
半導体株指数(SOX)。2020年3月以来の下落率
-6.4%
ナスダック100。報道によると約2.3兆ドルの時価総額が失われた
-4.4%
S&P500。2025年4月の関税ショック以来の下落率

出所: 各指数の終値をもとに当社計算。「〜以来」は報道による

11月5日の米国市場では、AI関連株が大きく売られました。半導体株指数(SOX)は12.2%安の9,011と、2020年3月以来の下落率を記録しました。ナスダック総合指数は5.5%安、S&P500は4.4%安、ダウ平均は1,833ドル安で、いずれも2025年4月の「関税ショック」以来の大きな下げです。

報道によると、S&P500の11業種はすべて下落し、なかでも情報技術の業種は7.3%安と2020年3月以来の下落率でした。ニューヨーク証券取引所では値下がりした銘柄が値上がりした銘柄の5倍を超え、相場の変動の大きさを示すVIX指数(恐怖指数)は28台と、3月末以来の高さに上昇しています。

26,000.028,000.029,000.030,000.031,000.026998.4SMA21SMA75SMA20005/2506/2207/2008/1709/1410/12305070RSI(14)米国株価指数(US100) 日足11月06日11時32分(日本時間)時点 Data: OANDA MT5
米国株価指数(US100、ナスダック100)の日足(11月6日11時32分時点)。10月上旬の高値から下落が続き、5日に大きく下げた
選挙の翌日は「大手IT高・半導体安」、5日は大手ITも含めて全面安に
11月4日(選挙の翌日) 11月5日 【大手IT】 マイクロソフト +6.7% -3.6% アマゾン +6.1% -2.2% アップル +5.3% -1.5% アルファベット +3.2% -2.2% メタ +1.4% -4.0% 【半導体】 エヌビディア -3.2% -9.3% ブロードコム -2.0% -10.4% AMD +1.0% -17.3% マイクロン -7.0% -17.5% TSMC(ADR) -2.2% -10.8% 【AIインフラ・電力】 オラクル -1.9% -6.9% コアウィーブ -9.9% -9.8% バーティブ -12.9% -14.0% ビストラ -13.8% -6.2% -20% -15% -10% -5% 0 +5% +10% 4日 5日 【大手IT】 マイクロソフト -3.6% アマゾン -2.2% アップル -1.5% アルファベット -2.2% メタ -4.0% 【半導体】 エヌビディア -9.3% ブロードコム -10.4% AMD -17.3% マイクロン -17.5% TSMC -10.8% 【AIインフラ・電力】 オラクル -6.9% コアウィーブ -9.8% バーティブ -14.0% ビストラ -6.2%
出所: 各社の株価の終値をもとに当社計算
※前日の終値からの騰落率。TSMCは米国に上場する預託証券(ADR)。コアウィーブはAI向けクラウド、バーティブはデータセンターの電源・冷却設備、ビストラはデータセンターへの電力供給で注目される電力会社

銘柄ごとにみると、2日間の値動きの違いがはっきりします。選挙の翌日(4日)は、データセンターをすでに持つ大手IT株が上がり、これから建てる・設備を納める側の半導体や電力の株が売られる「選別」でした。5日は、エヌビディアが9.3%、AMDが17.3%、マイクロンが17.5%と半導体株が大きく下げ、大手IT株も1.5〜4%下落しています。それでも、マイクロソフト・アマゾン・アップル・アルファベットの4社は、投票日(3日)の終値を上回って取引を終えました。売りの中心は、あくまでデータセンターの新設に業績を頼る銘柄です。

半導体(5日)
マイクロン-17.5%
メモリー。2日間で約23%下落
AMD-17.3%
3日に好決算を発表したばかり
アーム-13.1%
4日の決算で見通しが物足りないとされた。ソフトバンクグループが大株主
エヌビディア-9.3%
報道によると、時価総額が1日で4,000億ドル超減少
AIインフラ・電力(5日)
バーティブ-14.0%
データセンターの電源・冷却設備。2日間で25%下落
コアウィーブ-9.8%
AI向けクラウド。2日続けて約10%下落
オラクル-6.9%
AI向けデータセンターを大規模に建設中
ビストラ-6.2%
データセンターへの電力供給で注目される電力会社。4日は13.8%安
大手IT(5日)
マイクロソフト-3.6%
4日は+6.7%。投票日比では+2.9%
アマゾン-2.2%
4日は+6.1%。投票日比では+3.8%
アップル-1.5%
4日は最高値。投票日比では+3.7%
メタ-4.0%
投票日比では-2.6%

出所: 各社の株価の終値をもとに当社計算(前日比)。補足は報道と各社の公表資料による

CHAPTER 02なぜAI関連株は売られたのか:3つの要因

規制への警戒、決算への失望、積み上がっていた不安。3つが同じタイミングで重なりました。

要因1
データセンター規制への警戒
民主党の議員から、全国的な建設の一時停止を求める声が相次いだ。データセンターが減れば、AI向け半導体の需要も減るとの連想が広がった
▼
要因2
半導体企業の決算
4日の引け後に発表したクアルコムとアームの見通しが物足りないと受け止められ、半導体株の売りの引き金になった
▼
要因3
積み上がっていた不安
巨額のAI投資は回収できるのか、株価は高すぎないか。10月から続いていた警戒が、選挙をきっかけに一気に表に出た
AI関連株の急落の背景(報道をもとに当社で整理)

要因1:選挙後に相次いだ「建設停止」の声

最大の要因は、データセンターへの規制が強まるとの警戒です。AIの開発や利用には、大量の半導体を詰め込んだデータセンターが必要です。建設が止まれば、エヌビディアなどの半導体や、電源・冷却の設備、電力の需要も伸びにくくなります。

選挙では、電気料金の上昇や水の不足への不満から、データセンターが大きな争点になりました。投票日の出口調査では、地元に新しいデータセンターを建てることに76%が反対し、AIとデータセンターを議会選の投票の「決定的」または「大きな」要因に挙げた人は56%に上りました。報道によると、そう答えた有権者の6割強が議会選で民主党に投票しています。10州で行われたデータセンター関連の地域の住民投票41件でも、報道によると1件を除くすべてで、建設に反対する側の主張が通りました。

76%
地元への新しいデータセンターの建設に反対(出口調査)
56%
AI・データセンターが投票の決定的・大きな要因(同)
4.4%
米国の電力消費に占めるデータセンターの割合(2023年)
6.7〜12%
同じ割合の2028年の見通し

出所: 米国の出口調査(2026年11月3日、報道による)、米エネルギー省・ローレンス・バークレー国立研究所「2024年 米国データセンターのエネルギー使用報告書」

反発の大きな理由は電気料金です。米エネルギー情報局(EIA)によると、家庭向けの電気料金の全米平均は2025年に1kWhあたり17.23セントと、2020年から31%上がりました。2026年もさらに5%程度上がる見通しです。州別にみると、データセンターの建設が相次ぐバージニア州やオハイオ州では、2026年1〜8月の料金が前年同期より13%上がっています。

データセンターの建設が相次ぐPJMの地域の州で電気料金の上昇が大きい(家庭向け、2026年1〜8月の前年同期比)
バージニア州 +13.0% オハイオ州 +13.0% メリーランド州 +12.6% ペンシルベニア州 +12.0% イリノイ州 +10.3% ニュージャージー州 +7.9% 全米平均 +6.8% テキサス州 +5.6% ジョージア州 +4.2% バージニア州 +13.0% オハイオ州 +13.0% メリーランド州 +12.6% ペンシルベニア州 +12.0% イリノイ州 +10.3% ニュージャージー州 +7.9% 全米平均 +6.8% テキサス州 +5.6% ジョージア州 +4.2%
出所: 米エネルギー情報局(EIA)「Electric Power Monthly」の州別の家庭向け電気料金(2026年は速報値)をもとに当社計算
※バージニア・オハイオ・ペンシルベニア・メリーランド・イリノイ・ニュージャージーは、データセンターの建設が相次ぐ電力網(PJM)の地域。テキサス州やジョージア州もデータセンターの建設が多いが、電力網の仕組みが異なり上昇は小さい。料金の上昇には天候や燃料費、送電網の増強の費用なども影響する

EIAは、料金の上昇の主な理由を天候や送電網の増強の費用などとしており、データセンターだけが原因とはしていません。ただ、バージニア州では2019年から2025年にかけて商業部門の電力販売量が約3,000万MWh増え、その多くがデータセンターによるものだと分析しています。データセンターが集まる電力網(PJM)の卸電力価格は、2026年に前年より41%上がる見通しです。「AIのために自分たちの電気代が上がっている」という不満が、投票行動に表れたとみられます。

連邦議会の民主党
サンダース上院議員
選挙後に「今こそデータセンターの全国的な一時停止を」とSNSに投稿(無所属、民主党と統一会派)
アンサリ下院議員
民主党が多数派になった議会の「初日の最優先課題」として、先端AIの開発の一時停止や超知能の禁止を掲げるべきだとSNSに投稿
ブラウン氏(オハイオ州で上院選に当選)
「私はデータセンターのために働くのではない」と発言
州知事
イノホサ氏(テキサス州で当選)
「知事になったら、データセンターの承認を一時停止する」と公約
アクトン氏(オハイオ州で当選)
条件付きの一時停止を掲げる
ボトムズ氏(ジョージア州で当選)
州全体での一時的な停止を掲げる
シャピロ知事(ペンシルベニア州)
8月に、建設前に地元の承認を求めるなど開発を抑える行政命令に署名(一時停止ではない)

選挙前後に伝えられた主な発言・公約(報道をもとに当社で整理、2026年11月5日時点)

もっとも、全国的な一時停止をめざす法案は、上院では3月にサンダース氏が、下院では6月にオカシオコルテス氏がすでに提出したもので、選挙後に新しい法案や公聴会の日程が決まったわけではありません。それでも、地域の反発が選挙の結果として数字で示されたことで、投資家は「データセンターの建設計画が今後、遅れたり減ったりする可能性」を株価に織り込み始めたとみられます。

要因2:クアルコムとアームの決算

4日の米国市場の引け後に、スマートフォン向けの半導体を手がけるクアルコムと、半導体の設計図を提供するアームが決算を発表しました。報道によると、クアルコムは見通しが市場の期待に届かず、アームは業績が予想を上回ったものの、次の四半期の見通しが予想をわずかに上回る程度にとどまりました。両社とも、メモリーの値上がりでスマートフォンの部品のコストが膨らんでいることを挙げています。5日の株価はクアルコムが9%超、アームが13.1%安でした。

好決算でも売られたAMD:AMDは3日に7〜9月期の決算を発表し、データセンター部門の売上高は85億ドルと前年同期の約2倍に増えました。10〜12月期の売上高の見通しも約170億ドルと強い内容でしたが、5日の株価は17%超下落しています。足元の業績よりも、「この先もデータセンターが建ち続けるか」という将来への不安が売りを呼んだことがうかがえます。

要因3:10月から続いていたAI投資への不安

AI関連株への不安は、選挙の前から積み上がっていました。半導体株指数は10月6日に高値を付けた後、下落基調に入っています。大手IT企業のデータセンターへの投資は年々膨らんでおり、「巨額の投資を回収できるのか」「株価が高すぎるのではないか」との見方が出ていました。10月には米長期金利が5.3%を超え、データセンターの建設資金の借り入れが割高になったことも重荷でした。

半導体株指数は10月上旬の高値から約3割下落(9月1日=100)
S&P500 ナスダック100 半導体株指数(SOX) 70 80 90 100 110 120 9月 10月 11月 96 92 80 1 2 3 4 S&P500 ナスダック100 SOX 70 80 90 100 110 120 9月 10月 11月 96 92 80 1 2 3 4
出所: 各指数の終値をもとに当社計算
※9月1日の終値を100として指数化。番号は本文の出来事
1
10月6日 半導体株指数とナスダック総合指数が高値を付ける
2
10月29日 アルファベットが、自由に使える現金(フリーキャッシュフロー)のマイナスを嫌気され、上場来最大の下落率(約13%)
3
11月3日 米中間選挙。民主党が上下両院を奪還
4
11月5日 半導体株指数が12.2%安。ナスダック総合指数は高値から約12%下げ、調整局面(10%超の下落)に

半導体株指数は、10月6日の高値から5日までに約32%下落しました。ナスダック総合指数も高値から約12%下げ、一般に「調整局面」とされる10%超の下落に入っています。今回の急落は、選挙をきっかけに、それまでの不安が一気に表に出た面が大きいといえます。

大手IT4社の設備投資は2年で約3倍に(単位:10億ドル)
アルファベット アマゾン メタ マイクロソフト 0 200 400 600 800 約228 2024年 約376 2025年 約730 2026年 (見通し) 1〜9月の実績 約497 アルファベット アマゾン メタ マイクロソフト 0 200 400 600 800 約228 2024年 約376 2025年 約730 2026年 (見通し) 1〜9月の実績 約497
出所: 各社の米証券取引委員会への提出資料・決算発表をもとに当社作成
※2024・2025年は有形固定資産の取得による支出(暦年。マイクロソフトは四半期の合計)。2026年は各社の見通し(アルファベットは1,950〜2,050億ドルの中央値、メタとマイクロソフトはファイナンス・リースを含む)で、定義が異なるため目安。赤い線は2026年1〜9月の支出の合計

不安の背景にあるのが、大手IT企業の設備投資の急増です。アルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフトの4社の設備投資は、2024年の約2,300億ドルから2025年には約3,800億ドルに増え、2026年は各社の見通しを合わせると約7,300億ドルと、2年で約3倍の規模です(2026年は各社の定義が異なるため目安)。2026年1〜9月の支出だけで約5,000億ドルに達しました。アルファベットとアマゾンは、2027年も投資をさらに増やす方針を示しています。

この巨額の投資が、エヌビディアなどの半導体や、データセンターの設備、電力の需要を支えてきました。裏を返せば、規制でデータセンターの建設が遅れたり、大手IT企業が投資を絞ったりすれば、関連企業の業績の前提が大きく変わります。4日に大手IT株が上がり、半導体などが下がったのは、投資を絞る余地がある大手ITと、その投資に業績を頼る側とで、受け止めが分かれたためとみられます。

なお、5日に発表された米国の経済指標は、新規失業保険申請件数が18.9万件と少ないなど、景気の底堅さを示す内容でした。それでも株価が下がり、米国債が買われて利回りが低下したことからも、今回の下げが景気への不安ではなく、AI関連への不安が中心だったことがうかがえます。

CHAPTER 03データセンター規制はどこまで進むのか

連邦の法律は進みにくく、規制の中心は州と地域。ただし「州の一時停止」は株価にとって軽くない材料です。

民主党が議会を握っても、連邦レベルでAIやデータセンターの規制が一気に進む可能性は低いとみられます。上院で法案を通すには、議事妨害(フィリバスター)を止めるための60票が必要です。さらに、大統領の拒否権を覆すには上下両院で3分の2の賛成が要ります。民主党の上院の議席は、未確定の2州を含めても最大56と、どちらにも届きません。新しい議会が始まるのも2027年1月です。

連邦(議会)
AIデータセンター一時停止法案提出済み・審議なし
AIの安全策の法律ができるまで新設を止める。上院はサンダース議員が3月、下院はオカシオコルテス議員が6月に提出。大統領の拒否権があり成立は難しいとの見方
電気料金の利用者保護法案上院で足踏み
100MW以上の大口の需要家に、送電網の増強の費用を負担させる基準づくりを州に促す。下院は9月に417対3で可決したが、上院は審議入りに必要な60票に届かず(57対43)
議会の調査2027年1月〜
多数派になった民主党が、AI企業や電力会社の幹部に証言を求める場面が増えそう
州・地域
テキサス州許可を一時停止中
アボット知事(共和党)が9月、州の電力網の運営機関による審査が終わるまで、データセンターの許可を止めるよう州の環境当局に指示。次の知事も一時停止を公約
ニューヨーク州環境許可を最長1年停止
50MW以上の大型施設が対象。最先端AIの開発企業への規制(RAISE法)も2027年1月から
ジョージア・オハイオ州新知事が停止を公約
就任は2027年1月
地域の住民投票41件中40件で反対派
10州で実施。オハイオ州だけで21件。建設の許可は地域の判断が大きい
トランプ政権
大統領令14365号2025年12月
州のAI規制を抑えるため、司法省に州法と争う作業部会を設置。ただし、連邦法で州法を上書きする提案の対象から、データセンターなどの計算基盤と子どもの安全は外している
拒否権行使を示唆
民主党が通した法案には拒否権を使うと発言

出所: 米議会、ホワイトハウス、各州政府の公表資料、報道(2026年11月5日時点)

規制の中心は州と地域になりそうです。データセンターの建設の許可、電力網への接続、税の優遇は、州や地域が決める部分が大きいためです。トランプ政権の大統領令も、連邦法で州法を上書きする立法提案の対象から、データセンターなどの計算基盤を外しています(一般的な許認可の改革は除く)。テキサス州では共和党の現知事がすでに許可を止めており、データセンターの問題は党派を超えた地域の問題になっています。

株価にとって重いのは、データセンターの建設が集まる州で一時停止が広がる場合です。計画の遅れは、半導体や電源・冷却設備の受注、電力会社の需要の見通しに直接響きます。一方で、すでに大きな計算能力を持つ大手IT企業にとっては、新しい競争相手が育ちにくくなる面もあります。4日に大手IT株が買われた背景には、こうした見方もあったとみられます。

CHAPTER 04日本株への影響:日経平均は「AI株の比重の大きさ」で下げやすい

5日は下げがAI関連の一部の大型株に集中しましたが、6日は売りが市場全体に広がりました。

東京市場の5日は、米国の急落の前の取引です。それでも、4日の米国で半導体株が売られた流れを受け、アドバンテストが14.7%安、ディスコが12.5%安、東京エレクトロンが9.4%安と半導体関連株が大きく下げました。日経平均は1,110円安の6万1,077円と4日続けて下落し、5月20日以来の安値で取引を終えています。報道によると、ソフトバンクグループは、大株主であるアームの見通しが物足りないと受け止められて売られました。

一方、TOPIX(東証株価指数)は1.16%上昇し、東証プライム市場では値上がりした銘柄が値下がりした銘柄の2倍を超えました。業績予想を引き上げたトヨタ自動車などが買われています。日経平均は値がさの銘柄の影響を受けやすく、アドバンテストや東京エレクトロン、ソフトバンクグループなどAI関連の銘柄の比重が大きいため、TOPIXとの差が開きました。

日本のAI・半導体関連株は、選挙前から6日前場までに12〜27%下落
11月2日→5日 11月6日前場の下落分 古河電気工業 -26.9% フジクラ -23.3% キオクシア -23.2% アドバンテスト -20.9% イビデン -20.8% レーザーテック -20.1% ディスコ -18.1% ソフトバンクG -17.8% 住友電気工業 -17.1% TDK -16.1% 東京エレクトロン -15.2% ルネサス -12.2% 2日→5日 11月6日前場 古河電気工業 -26.9% フジクラ -23.3% キオクシア -23.2% アドバンテスト -20.9% イビデン -20.8% レーザーテック -20.1% ディスコ -18.1% ソフトバンクG -17.8% 住友電気工業 -17.1% TDK -16.1% 東京エレクトロン -15.2% ルネサス -12.2%
出所: 各社の株価をもとに当社計算
※選挙前の最後の取引日(11月2日)の終値から、11月5日の終値(濃い赤)と11月6日前場の終値(前引け、薄い赤まで)までの騰落率。数字は前引けまでの騰落率。東京市場は3日が祝日で休場。キオクシアはメモリー、古河電工・フジクラ・住友電工はデータセンター向けの光ファイバーなど

選挙前の最後の取引日(2日)から6日の前引けまでの下落率をみると、データセンター向けの光ファイバーなどを手がける古河電気工業が27%近く、フジクラとメモリーのキオクシアが2割を超えました。半導体の検査装置のアドバンテスト、半導体パッケージの基板のイビデン、マスクの検査装置のレーザーテックも2割前後の下落です。いずれも、米国のデータセンター投資が業績を大きく左右する銘柄です。

6日の前場:日経平均は一時4,300円超安、6万円を割り込む

-3,160円
日経平均の前引け(5万7,918円、-5.2%)
-4,332円
取引時間中の安値(5万6,746円、-7.1%)
-5.6%
TOPIXに連動する上場投資信託(ETF)の前引け。5日は上昇したが、6日は日経平均並みに下落

出所: 日経平均の値と各銘柄の株価をもとに当社計算。「6万円割れは5月20日以来」は報道による

6日朝には、大阪取引所の夜間取引で日経平均先物(12月物)が3,520円安の5万7,400円で夜間取引を終えていました。東京市場は取引開始から売りが先行し、日経平均は10時半ごろに4,332円安の5万6,746円まで下げました。報道によると、取引時間中に6万円を下回るのは5月20日以来です。その後は下げ幅をやや縮め、前場は3,160円安の5万7,918円で終えています。

10/30 06時10/31 03時11/03 00時11/03 21時11/04 18時11/05 15時56,00060,00062,00064,00066,00057827±2σ中心線(21)日経225(JP225) 1時間足(ボリンジャーバンド21・±2σ)11月06日11時32分(日本時間)時点 Data: OANDA MT5
日経225(JP225)の1時間足(11月6日11時32分時点)。5日夜から6日朝にかけて下げが加速し、6日昼前はやや戻した

6日の前場で目立ったのは、売られる銘柄の顔ぶれの変化です。取引開始直後は半導体株が大きく下げ、アドバンテストは一時16%安、東京エレクトロンは一時14%安となりましたが、その後は買い戻されて下げ幅を大きく縮めました。一方で、5日に業績予想の引き上げで急伸したトヨタ自動車や、三菱UFJフィナンシャル・グループなど、AIと直接の関係が薄い主力株も売られています。5日はTOPIXが上昇しましたが、6日はTOPIXに連動するETFも日経平均と同じ程度に下げ、売りは市場全体に広がりました。

安値から戻した半導体株
アドバンテスト-4.1%
前場の安値-16.4%
東京エレクトロン-3.1%
前場の安値-14.3%
レーザーテック-3.1%
前場の安値-12.6%
ディスコ-0.7%
前場の安値-10.4%
下げが大きいAI関連株
ソフトバンクG-9.0%
前場の安値-15.8%。大株主のアームが4日の決算後に売られた
フジクラ-8.3%
前場の安値-19.6%。データセンター向けの光ファイバー
キオクシア-6.6%
前場の安値-15.3%。メモリー
古河電気工業-6.1%
前場の安値-21.0%。光ファイバーなど
AI以外にも広がった売り
任天堂-7.6%
ゲーム
トヨタ自動車-6.2%
5日は業績予想の引き上げで急伸
三菱UFJ-5.6%
銀行
TOPIX連動ETF-5.6%
市場全体の動きの目安

※6日の前引けの株価の、5日の終値からの騰落率。「前場の安値」は前場で最も安かった時点の騰落率。出所: 各社の株価をもとに当社計算

CHAPTER 05為替・金利・金への影響

株安で米国債が買われて金利が低下。ドル円はやや円高に動きました。

10/30 12時11/02 08時11/03 04時11/04 00時11/04 20時11/05 16時157.000157.500158.000158.500159.000157.861±2σ中心線(21)ドル円(USD/JPY) 1時間足(ボリンジャーバンド21・±2σ)11月06日11時32分(日本時間)時点 Data: OANDA MT5
ドル円(USD/JPY)の1時間足(11月6日11時32分時点)

株式市場の急落を受けて、比較的安全とされる米国債が買われ、米10年債利回りは前日の4.90%から4.84%に低下しました。報道によると、CME FedWatch(金利先物から算出する利上げ確率)では、12月のFOMCでの利上げの確率が、5日昼の時点で前日の8割強から約7割に下がりました(終盤は約6割との報道もあります)。株安が景気や物価を冷やすとの見方から、利上げ観測がやや後退しました。

ドル円は、米金利の低下とリスクを避ける動きから円がやや買われ、6日朝は一時157円台前半まで下げました。ただ、日経平均が大きく下げた6日の前場でも円高は続かず、昼前には157円80銭台に戻しています。日米の金利差は大きく、株安でも円高の勢いは限られています。6日夜(日本時間22時30分)の米雇用統計で利上げ観測が変われば、ドル円も大きく動く可能性があります。

株安と為替の関係:株式市場が大きく下げると、投資家がリスクを減らすために、高金利のドルや資源国の通貨を売って円を買い戻す動きが出やすくなります。今回は通貨の強弱をみても、豪ドルやNZドルが売られ、スイスフランや円は底堅い動きでした。

CHAPTER 06今後の注目点とシナリオ

目先の焦点は、11月18日朝のエヌビディアの決算。データセンターの需要が崩れていないかが試されます。

州・地域の規制が中心(中心シナリオ)
連邦の法律は膠着し、テキサスなど一部の州で新設の一時停止が続く。データセンターの建設地が他の州に移る
半導体
◆
需要の伸びが鈍るとの懸念は残るが、決算で需要の強さが確認されれば買い戻しも
大手IT
▶
既存の計算能力の価値は高まる一方、投資計画の見直しを迫られる可能性
電力・設備
▼
建設計画の遅れが業績の見通しに響きやすい
日本株
◆
半導体の製造装置・部品の銘柄は振れやすい
規制が全国に広がる
主要な州で一時停止が相次ぎ、議会の調査や電気料金の負担のルールも厳しくなる
半導体
▼
データセンター投資の減速が意識される
大手IT
◆
新規参入が減る面はあるが、設備投資の計画は縮小へ
電力・設備
▼
需要の伸びの前提が崩れる
日本株
▼
AI関連の比重が大きい日経平均は下げやすい
需要の強さが確認される
エヌビディアなどの決算でデータセンター向けの需要が強いと確認され、規制は一部の地域にとどまる
半導体
▲
売られすぎとの見方から買い戻し
大手IT
▲
投資の回収への不安が和らぐ
電力・設備
▲
建設地の分散で需要は続くとの見方
日本株
▲
半導体の製造装置・部品の銘柄が戻りやすい

※各シナリオの影響は、報道で伝えられている市場の見方と、業種ごとの一般的な関係をもとに当社で整理した方向感で、将来の値動きを示すものではありません。▲上昇・▼下落・▶横ばい・◆まちまち

今後の注目日程

11/6
金
指標米10月雇用統計(日本時間22:30)
株安のなかで利上げ観測がどう動くか。米金利とハイテク株を左右する
11/10
火
決算ソフトバンクグループの決算(15:30)
アームやAI投資の評価。日経平均への影響が大きい
11/11
水
決算コアウィーブの決算(日本時間7:00に電話会見)
AI向けクラウドの受注と資金繰り
11/13
金
決算アプライド・マテリアルズの決算(日本時間6:30に電話会見)
半導体の製造装置の需要。東京エレクトロンなど日本の装置株にも波及
11/18
水
決算エヌビディアの決算(日本時間7:00に電話会見)
データセンター向けの需要の見通しと、規制の影響への言及
12/10
木
指標FOMCの結果(日本時間4:00)
株安を受けて、利上げを決めるかどうか
2027/1
—
政治新しい議会の招集・新知事の就任
議会の調査や、州のデータセンター規制が動き出す

出所: 各社の公表資料、FRB、米労働統計局(BLS)。日時は日本時間

チェックしておきたい3つのポイント

  • ✓決算でデータセンターの需要が崩れていないか:エヌビディアやコアウィーブが、受注や見通しで規制の影響に触れるか
  • ✓州の一時停止がどこまで広がるか:テキサスなど建設が集まる州で、許可の停止が長引くか
  • ✓大手ITが投資計画を変えるか:設備投資の削減や延期が出てくれば、半導体や電力の需要の見通しに直結する
用語メモ
フィラデルフィア半導体株指数(SOX)
米国に上場する主な半導体関連の約30銘柄で構成する株価指数。エヌビディア、ブロードコム、AMD、マイクロンなどを含む
データセンター
多数のサーバーを置き、AIの学習や計算、クラウドのサービスを提供する施設。大量の電力と冷却用の水を使う
一時停止(モラトリアム)
一定期間、新しい許可や建設を止めること。今回は安全策や電力のルールが整うまで新設を止める案を指す
フィリバスター
上院で少数派が議論を長引かせて採決を妨げる手法。止めるには100議席のうち60票が必要
値がさ株
株価の水準が高い銘柄。日経平均は株価をもとに計算するため、値がさ株の値動きの影響を大きく受ける

まとめ

  • ✓11月5日の米国市場でAI関連株が急落。半導体株指数は12.2%安と2020年3月以来の下落率、ナスダック100は6.4%安、S&P500は4.4%安だった
  • ✓選挙の翌日は大手IT株が買われる「選別」だったが、5日は大手ITも含めて売られた。下げの中心は半導体とデータセンターの設備・電力の銘柄
  • ✓背景は、選挙後に民主党から相次いだデータセンターの建設停止を求める声、クアルコムとアームの決算への失望、10月から続くAI投資への不安。出口調査では地元への建設に76%が反対し、電気料金の上昇への不満が表れた
  • ✓大手IT4社の設備投資は2024年の約2,300億ドルから2026年は約7,300億ドル(見通し)へ。この投資に業績を頼る半導体・設備・電力の銘柄ほど、規制の影響を受けやすい
  • ✓連邦の規制は大統領の拒否権があり進みにくいが、テキサスなど州・地域の一時停止は広がる可能性がある
  • ✓日経平均はAI関連の比重が大きく下げやすい。6日の前場は一時4,332円安と6万円を割り込み、売りはAI以外の主力株にも広がった。次の焦点は6日の米雇用統計と、18日朝のエヌビディアの決算

参考資料

OANDA CFD
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OANDA Lab編集部

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