June 23, 2023
【前日の為替概況】ドル円 143.23円まで上昇、FRB議長が年内2回の利上げを再強調
22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。
終値は143.11円と前営業日NY終値(141.88円)と比べて1円23銭程度のドル高水準だった。
前週分の米新規失業保険申請件数が予想より弱い内容だったことが伝わると一時141.78円付近まで売られたものの、下押しは限定的だった。
ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事が「インフレ抑制のために追加利上げが必要」「インフレの水準はなお容認できないほど高い」と述べたうえ、パウエルFRB議長が「今年あと2回の利上げが適切となるだろう」と述べたと伝わると、米金融引き締めが長引くことが改めて意識された。
5月米中古住宅販売件数が予想より強い結果となったことも相場の支援材料となり、レジスタンスとして意識されていた2022年11月11日の高値142.48円を上抜けると一時143.23円まで上値を伸ばした。
ユーロドルは反落。
終値は1.0956ドルと前営業日NY終値(1.0986ドル)と比べて0.0030ドル程度のユーロ安水準だった。
パウエルFRB議長がインフレ抑制のために金融引き締めを続ける必要性を改めて強調すると、米金利の上昇とともにドル買いが活発化し、一時1.0949ドルと日通し安値を更新した。
ユーロ円は続伸。
終値は156.79円と前営業日NY終値(155.89円)と比べて90銭程度のユーロ高水準。
インフレ抑制のため、スイス国立銀行(SNB)や英中銀(BOE)など欧州の各中銀が利上げを発表すると、欧州中央銀行(ECB)も利上げを継続するとの見方が改めて強まった。
大規模な緩和姿勢を維持する日銀との金融政策の違いが意識されて、円売り・ユーロ買いが進んだ。
5時前には一時156.93円と2008年9月以来約15年ぶりの高値を付けた。
なお、ポンド円は一時182.56円と15年12月以来の高値を付けたほか、スイスフラン円は160.00円と史上最高値を更新した。
【本日の東京為替見通し】ドル円 続伸か、本邦通貨当局のドル売り・円買い介入には要警戒
本日の東京外国為替市場のドル円は、パウエルFRB議長の議会証言を受けて米10年債利回りが3.80%付近まで上昇していることで堅調推移が予想されるものの、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には要警戒か。
ドル円は、パウエルFRB議長がインフレ抑制のために金融引き締めを続ける必要性を強調したことで143.23円まで続伸し、昨年11月11日の高値142.48円や151.95円(2022年10月21日高値)から127.23円(2023年1月16日安値)までの下落幅のフィボナッチ・リトレースメント61.8%戻しの142.51円を上回った。
この上のポイントとしては、昨年11月10日の高値146.59円や76.4%戻し(151.95円~127.23円)の146.12円となる。
パウエルFRB議長が年内2回の利上げを再強調したものの、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、7月FOMCで5.25-50%へ利上げ、そして、9月、11月、12月FOMCでは据え置き確率が高まったままであり、年内1回の利上げだけを示唆している。
そして、米10年債利回りは3.8%付近、米2年債利回りは4.8%付近で1.00%の長短金利逆転(逆イールド)のままであり、リセッション(景気後退)の到来によるFEDピボット(FRBの利下げ転換)を示唆している。
本邦通貨当局は、昨年9月と10月にボラティリティー(過度な変動)を抑制するという名目で、ボリンジャー・バンド+2σ付近でドル売り・円買い介入を断行しており、本日(※+2σは143.00円付近)も引き続き警戒していくことになる。
先日、ドル円が142円台に乗せた局面では、鈴木財務相が「為替動向を『注視』。
必要であれば適切に対応」と述べ、西村経産相が「過度な変動・投機的な動きはしっかりと『注視』」と述べ、『注視』の段階に留まっている。
本邦通貨当局がドル売り・円買い介入に踏み切る場合は、「断固たる措置」という警告が発せられるため、鈴木財務相や神田財務官の発言内容を見極めつつ、「神田シーリング」を探っていくことになる。
植田日銀総裁は先週16日の日銀金融政策決定会合の後の会見で、「消費者物価の見通しが大きく変われば、政策変更につながる可能性がある」との見解を示していた。
本日8時30分に発表される日本の5月のコア消費者物価指数(CPI)は、前年比+3.1%と予想されており、4月の同比+3.4%からの低下が見込まれている。
日銀が昨年4月の展望リポートから注視している「コアコアCPI」(※生鮮食品やエネルギーを除いた数字)の予想は同比+4.2%で、41年9カ月ぶりの上昇幅を記録した4月の同比+4.1%からの上昇が見込まれている。
もし、上昇基調が続いていたならば、7月の日銀金融政策決定会合でのイールドカーブコントロール(YCC)上限引き上げへの思惑が高まることで、ドル円の上値を抑える要因となる。
【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:30 ☆ 5月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合、予想:前年比3.1%)
○08:30 ☆ 5月全国CPI(生鮮食料品・エネルギー除く、予想:前年比4.2%)
<海外>
○08:01 ◇ 6月英消費者信頼感指数(Gfk調査、予想:▲26)
○14:00 ◎ 5月シンガポールCPI(予想:前年比5.5%)
○15:00 ◎ 5月英小売売上高(自動車燃料含む、予想:前月比▲0.2%/前年比▲2.6%)
○15:00 ◎ 5月英小売売上高(自動車燃料除く、予想:前月比▲0.3%/前年比▲2.1%)
○16:00 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
○16:00 ◇ 5月トルコ貿易収支(予想:127.0億ドルの赤字)
○16:15 ◎ 6月仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:45.4)
○16:15 ◎ 6月仏サービス部門PMI速報値(予想:52.0)
○16:30 ◎ 6月独製造業PMI速報値(予想:43.5)
○16:30 ◎ 6月独サービス部門PMI速報値(予想:56.2)
○17:00 ◎ 6月ユーロ圏製造業PMI速報値(予想:44.8)
○17:00 ◎ 6月ユーロ圏サービス部門PMI速報値(予想:54.5)
○17:30 ◎ 6月英製造業PMI速報値(予想:46.8)
○17:30 ◎ 6月英サービス部門PMI速報値(予想:54.8)
○18:15 ◎ ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
○18:30 ◎ ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演
○19:00 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演
○21:45 ◎ パネッタECB専務理事、講演
○22:45 ◎ 6月米製造業PMI速報値(予想:48.5)
○22:45 ◎ 6月米サービス部門PMI速報値(予想:54.0)
○22:45 ◎ 6月米総合PMI速報値(予想:53.5)
○24日02:40 ◎ メスター米クリーブランド連銀総裁、あいさつ
○中国(端午節)、スウェーデン(夏至祭)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
22日10:43 野口日銀審議委員
「政策指針変更は、緩和を粘り強く継続する強いコミットメント」
「いま最も重要なのは、金融緩和の継続通じてようやく芽生えつつある賃上げのモメンタムをトレンドとして定着させること」
「市場機能保全の金利変動幅の拡大は、緩和効果の低下で経済回復を遅らせる」
「イールドカーブの形状は、総じてスムーズ」
「当面は物価・賃金を巡るノルムが変わりつつあるのか否か、慎重に見極めていく必要」
「生鮮食品除く消費者物価の前年比、今年度半ばにかけて2%下回っていく」
「長期金利の変動幅、金融緩和効果と市場機能のトレードオフをどう判断するかも踏まえて考える必要」
「緩和継続を通じて、賃上げに向けたモメンタムを強固にする」
22日16:34 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)声明
「政策金利をさらに引き上げる必要があることは否定できない」
「必要に応じて外国為替市場にも積極的に関与する意向を維持」
「中期的には、インフレはより緩やかな水準に戻ると思われる」
「主なリスクは、海外経済の減速がより顕著になること」
「不動産市場の脆弱性は続いている」
22日17:07 ノルウェー中銀(ノルゲバンク)声明
「政策金利が8月にさらに引き上げられる可能性が高いことを示唆」
「インフレ率は3月報告書の予想より大幅に上昇している」
「賃金の上昇とクローネ安がインフレ率を押し上げるだろう」
「今後の金利の行方は経済情勢に左右される」
「クローネが想定よりも弱くなったり、経済への圧力が持続したりした場合、インフレ率を目標値まで引き下げるためには、予想よりも高い政策金利が必要になるかもしれない」
「秋の間に政策金利が4.25%に引き上げられることを示している」
22日17:28 ジョーダン・スイス国立銀行(スイス中銀、SNB)総裁
「追加の引き締めが必要となる可能性が最も高い」
22日17:57 バーチェ・ノルウェー中銀(ノルゲバンク)総裁
「これまでの予想よりもクローネは幾分下落すると予想」
「クローネ買い介入は金融政策の手段ではない」
22日19:57 スナク英首相・報道官
「高インフレで高成長は出来ない、インフレを引き下げるのが重要」
「イングランド銀行(英中銀・BOE)が行っていることを引き続き支えることが重要」
「ベイリーBOE総裁は引き続き首相から支持されている」
22日20:02 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
「MPCのメンバー7人は0.50%の利上げを支持、残り2人は据え置きを支持」
「インフレが持続すれば、さらなる金融引き締めが必要とのガイダンスを維持」
「これまでの大幅な利上げの影響を注意深く監視し続ける」
「インフレ率は年内にさらに大幅に低下すると予想される」
22日20:06 トルコ中銀声明
「インフレ指標と基本的なインフレ動向を注意深く監視する」
「物価安定の主要目標に沿って、あらゆる手段を断固として使い続ける」
「インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、必要な金融引き締めを適時かつ段階的にさらに強化する」
「インフレ率の基調的な低下を確実にし、中期的に5%のインフレ目標を達成するために必要な金融・財政状況を作り出す方法で政策金利を決定する」
「最近の指標はインフレ基調の上昇を示唆」
22日20:14 ハント英財務相
「高インフレは、我々が対処しなければならない当面の最大の経済課題」
「2%のインフレ目標に対する我々のコミットメントは鉄壁であり、常に適用される」
「イングランド銀行は、独立した金融政策の決定を通じて、インフレ率をこの目標に戻すための行動をとるにあたり、私の全面的な支援を受ける」
「家計と企業は、インフレを抑制するために我々が共に
行動することに疑いを抱くべきではない」
「来週、エネルギー規制当局と会談し、投入コストの低下を消費者に確実に還元する方法について話し合う」
「公共部門の給与支給がインフレ圧力を悪化させないよう引き続き確保する」
「インフレへの容赦ない取り組みが当面の優先課題である」
22日20:18 ベイリー英中銀(BOE)総裁
「今金利を引き上げなければ、後でもっと悪くなる可能性がある」
「インフレは高すぎるし、今対処しなくてはならない」
22日21:07 ナーゲル独連銀総裁
「金利はまだ十分に引き上がっていない」
「インフレはまだピークに達しておらず、インフレ脱却までピークを維持する必要」
「タイトな労働市場はインフレ圧力を持続させる可能性」
22日21:39 シムシェキ・トルコ財務相
「安定性、持続性、信頼性に焦点を当てた政策を実施すべき」
「安定的で信頼できるリラは、ドル化に対抗する最も効果的な解決策」
「市場経済、自由な為替制度政策を実施へ」
「この政策は資本流入をもたらすだろう」
22日22:57 ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事
「インフレ抑制のために追加利上げが必要」
「インフレの水準はなお容認できないほど高い」
22日23:26 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「今年あと2回の利上げが適切となるだろう」
「インフレ率を持続的なベースで2%に戻す必要がある」
「サービス部門のインフレには大きな進展は見られない」
「金融政策の効果にどれくらいの期間がかかるかについてコンセンサスはない」
「FRBは商業用不動産について認識しており、非常に懸念している」
23日04:05 メキシコ中銀声明
「今回の決定は全会一致」
「政策金利を現在の水準で長期間維持する必要がある」
「インフレ見通しは依然として非常に複雑」
「2023年第4四半期のインフレ率は4.6%、24年第4四半期のインフレ率は3.1%になると予想」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=6/21の高値を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
2手連続陽線で転換線を大幅に上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は、21日の高値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス2:145.18(2022/11/9安値)
レジスタンス1:144.27(ピポット・レジスタンス2)
前日終値:143.11
サポート1:142.36(6/21高値)
サポート2:141.12(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロドル=1.08ドル後半で上昇中の転換線が支持に>
陰線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。
孕み線で反落したものの転換線を上回って引けており反発の可能性が示唆されている。
本日は、上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1:1.1091(5/4高値)
前日終値:1.0956
サポート1:1.0884(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=15年ぶり高値更新中、押し目買い継続>
陽線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
この日も2008年9月以来の高値を更新した。
2手連続陽線で転換線を大きく上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は22日安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1:157.76(ピポット・レジスタンス2)
前日終値:156.79
サポート1:155.62(6/22安値)
<豪ドル円=上向きの転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
2手連続陽線で転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。本日は、95円台後半まで上昇してきた転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1:97.68(6/19高値)
前日終値:96.69
サポート1:95.83(日足一目均衡表・転換線)
Provided by
DZH Finacial Research
「投資を面白く、投資家を笑顔に」をスローガンに、株式や為替など様々な金融マーケットの情報を提供。
豊富な経験を持つエキスパートが多数在籍し、スピーディー且つオリジナルな視点からの情報をOANDA Labに配信しています。
会社名:株式会社DZHフィナンシャルリサーチ
所在地:東京都中央区明石町8番1号 聖路加タワー32階
商号等:【金融商品取引業者】投資助言業/【登録番号】関東財務局長(金商)907号
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。