本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):円の買い戻しトレンド変わらず、日銀正常化の思惑高まる(2023年7月11日)

マーケットレポート

July 11, 2023

【前日の為替概況】ドル円、3日続落 NY連銀調査で1年後のインフレ期待が低下

 

10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3日続落。
終値は141.31円と前営業日NY終値(142.21円)と比べて90銭程度のドル安水準だった。
一時は4.08%台まで上昇した米10年債利回りが3.98%台まで低下すると円買い・ドル売りが先行。
前週末の安値142.07円や一目均衡表基準線が位置する141.92円を下抜けて一時141.28円まで値を下げた。
NY連銀の最新調査で、1年後のインフレ期待が6月に3.8%と前回の4.1%から低下し、2021年4月以来の低水準を付けたことも相場の重しとなった。

なお、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁は「高すぎるインフレを引き下げるために、年内あと2回の利上げが必要となる公算が大きい」との見解を示したほか、メスター米クリーブランド連銀総裁は「インフレ率を下げるには追加の金融引き締めが必要」などと発言。
また、バー米連邦準備理事会(FRB)副議長(銀行監督担当)は「金利は適切な水準に近づいているものの、まだ幾分やるべきことがある」などと述べたものの、相場の反応は限られた。

ユーロドルは3日続伸。
終値は1.1001ドルと前営業日NY終値(1.0967ドル)と比べて0.0034ドル程度のユーロ高水準だった。
独長期金利が上昇した一方、米長期金利が低下したため、欧米金利差縮小への思惑からユーロ買い・ドル売りが優勢となった。
前週末の高値1.0973ドルを上抜けると、一時1.1001ドルと日通し高値を付けた。

主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時101.95と6月22日以来の低水準を付けた。

ユーロ円は5日続落。
終値は155.47円と前営業日NY終値(155.94円)と比べて47銭程度のユーロ安水準。
ユーロドルの上昇につれた買いが入った半面、ドル円の下落につれた売りが出たことで一時155.33円と本日安値を更新した。

ユーロ円以外のクロス円も軟調だった。
ポンド円は一時181.10円、豪ドル円は94.11円、NZドル円は87.66円、カナダドル円は106.39円、スイスフラン円は159.25円、南アフリカランド円は7.49円まで値を下げた。
トルコリラ円は一時5.41円と史上最安値を記録した。

【本日の東京為替見通し】円の買い戻しトレンド変わらず、日銀正常化の思惑高まる

 

本日も円高基調は変わらないか。
昨日の東京時間では、本邦実需の買いなども支えとなり、ドル円は一時143円台に乗せた。
しかしながら、トレンドに逆行する動きは欧州入り後にはすぐに打ち消され、NY時間には6月20日以来となる水準まで下値を広げている。
円の買い戻しは、先週後半のように米金利が大幅に上昇した時も、株安を嫌がりドル売り・円買いとなった。
その一方で、昨日は米株が反発したものの、米金利が低下したことをきっかけにドル円は弱含んだ。
米金利・株がどちらに動いてもドル円は売られやすく、明確なドル売り相場といえそうだ。

特に海外勢が気にしているのは、先週7日の日経新聞朝刊に、内田日銀副総裁がイールドカーブコントロール(YCC)の将来の見直しの可能性を否定しなかったことで、7月27-28日に行われる日銀政策決定会合でYCCの上限引き上げもあり得るとの思惑が高まっていることだ。
本日の日経新聞朝刊は「植田日銀の100日」との検証連載を開始したが、見出しが「25年目の正常化を狙う」となっていることで、日銀が報道を利用し、YCCの上限引き上げの地ならしを行っているとの捉え方もある。
本邦勢よりも市場の動きを先取りする海外勢が、先月に仕込んだドルロングや日本株買いを、回転を早くしポジションを閉じている可能性もありそうだ。

また、昨日公表された7月の日銀地域経済報告(さくらレポート)では、既往の資源高の影響などを受けつつも、すべての地域で、景気は持ち直し、ないし、緩やかに回復しているとしている。
前回(23年4月判断)と比較して、全国9地域のうち東海、中国、九州・沖縄の3地域の景気判断を引き上げたように、国内環境の好転も金融政策正常化の支えとなりそうだ。

ドル円以外ではオセアニア通貨の動きに注目しておきたい。
オセアニア通貨はリスク許容度に敏感なこともあり、株式市場の値動きで上下を繰り返しそうだ。
また、明日はNZ準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が行われることで、MPCに向けたポジションの調整などで相場が動くかもしれない。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:50 ◇ 6月マネーストックM2

<海外>
○08:01 ◇ 6月英小売連合(BRC)小売売上高調査
○09:30 ◇ 7月豪ウエストパック消費者信頼感指数
○10:30 ◇ 6月豪NAB企業景況感指数
○15:00 ◎ 6月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.3%/前年比6.4%)
○15:00 ◎ 6月英雇用統計(失業率/失業保険申請件数推移)
○15:00 ◎ 3-5月英失業率(ILO方式、予想:3.8%)
○16:00 ◇ 5月トルコ経常収支(予想:70.0億ドルの赤字)
○17:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
○18:00 ◎ 7月独ZEW景況感指数(予想:▲10.5)
○18:00 ◎ 7月ユーロ圏ZEW景況感指数
○21:00 ◎ 6月ブラジルIBGE消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比3.20%)
○12日02:00 ◎ 米財務省、3年債入札
○北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(リトアニア・ビリニュス、12日まで)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。
▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

10日15:46 中島日銀大阪支店長
「賃上げの持続性、現時点の判断は非常に難しい」
「為替円安のネガティブな反応聞かれるということない」

10日23:57 バー米連邦準備理事会(FRB)副議長(銀行監督担当)
「インフレは高すぎる」
「インフレ率を目標値まで下げることに非常に注意を払っている」
「目標に近づいているが、まだやるべきことが若干ある」

11日00:10 メスター米クリーブランド連銀総裁
「インフレ率を下げるには追加の金融引き締めが必要」
「FRBの政策は過去に比べて制限的ではない」
「FRBの利上げは経済活動を抑制している」
「経済は予想以上に好調であることが判明した」
「サプライチェーンの混乱は緩和された」
「インフレは依然として高水準」
「インフレ率を2%に戻すには、賃金圧力が依然として高すぎる」

11日00:13 ベイリー英中銀(BOE)総裁
「英国は供給面での持続的な成長を必要としている」
「賃金と物価の上昇が依然として早すぎる」
「これまでの引き締めの一部はまだ英国に影響を与えていない」
「MPCは賃金、インフレ、物価データを監視」

11日00:14 デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「リスクはよりバランスが取れてきている」
「政策を決めるためにはデータを精査する必要」
「金利を引き上げるために、さらに取るべき手段がある」
「米経済の勢いは予想を上回っている」

11日01:39 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「インフレは高すぎて持続可能ではない」
「現在のインフレは過度のリスクテイクによるものではなく、パンデミックへの対応によるもの」
「景気後退(リセッション)は基本的な見通しではない」
「現在の政策は明らかに制限的な領域にある」
「雇用の伸び鈍化やインフレ低下などの兆しとともに経済は減速し始めている」

※時間は日本時間

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=サポート期待された基準線を下抜け>

ドル円=サポート期待された基準線を下抜け

各ラインの期間

 

上影陰線引け。
142.70円付近で上昇中の21日移動平均線を下回る水準から浮上し、143円台を回復する動きが先行した。
しかし低下傾向の一目均衡表・転換線143.18円を上値に控えるなか失速した。

サポートが期待された一目・基準線141.92円も下抜けている。
調整モードに入り、6月16日安値139.85円など140円割れの水準も意識されてきそうだ。

レジスタンス1  142.07(7/7安値)
前日終値  141.31
サポート1  140.72(ピボット・サポート1)
サポート2  139.85(6/16安値)

<ユーロドル=上値の節目抜いて上昇に弾みつく展開期待>

ユーロドル=上値の節目抜いて上昇に弾みつく展開期待

各ラインの期間

 

下影陽線引け。
1.0944ドルまで下押しが先行した。
しかし下げ渋って上伸。
下値での底堅さを示す下ひげをともなう足型を形成して1.1ドル台を回復した。
高値は1.1ドルの節目を若干上回る水準にとどまっており、6月22日高値1.1012ドルを目前にいったん足踏みすることも考えられる。
しかし底堅い流れを維持して同高値をやがて上抜き、上昇に弾みがつく展開が期待できる。

レジスタンス1  1.1054(5/8高値)
前日終値  1.1001
サポート1  1.0944(7/10安値)

<ポンド円=21日線付近から戻すことできても転換線が抵抗>

ポンド円=21日線付近から戻すことできても転換線が抵抗

各ラインの期間

 

陰線引け。
一目均衡表・転換線182.56円付近から下放れ、181.86円前後で推移している21日移動平均線付近の攻防となっている。
上昇中の21日線付近で下げ渋り、戻りを試す展開も期待できる。
だが、下抜けた転換線が抵抗になりそう。
21日線付近も下放れる展開につながりかねず、下押しリスクに注意が必要な状態といえる。

レジスタンス1  182.56(日足一目均衡表・転換線)
前日終値  181.75
サポート1  180.83(ピボット・サポート1)

<NZドル円=21日線付近の下げ渋り期待も下値リスク視野>

NZドル円=21日線付近の下げ渋り期待も下値リスク視野

各ラインの期間

 

上影陰線引け。
一目均衡表・転換線88.65円を割り込み一時87.66円と、目先の下値の節目である6月29日安値87.60円を抜けて下値を探る動きに勢いがつきそうな状態といえる。
88.13円前後で上昇中の21日移動平均線の動きを追うような戻りも期待したいところ。
しかし同線付近で低下中の5日線が重しとなるか。
6月21日安値87.12円や同20日安値86.86円などをめどに下値を試す展開を視野に入れて臨みたい。

レジスタンス1  88.37(5日移動平均線)
前日終値  87.75
サポート1  87.12(6/21安値)

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