July 28, 2023
【前日の為替概況】ドル円141.32円から138.77円まで急落、YCC修正議論の報道
27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4日続落。
終値は139.48円と前営業日NY終値(140.24円)と比べて76銭程度のドル安水準だった。
4-6月期米国内総生産(GDP)速報値や前週分の米新規失業保険申請件数、6月米耐久財受注額、6月米住宅販売保留指数など、この日発表の米経済指標が軒並み予想を上回ったことが分かると、米景気の底堅さを意識したドル買いが先行。
米10年債利回りが4.02%台まで上昇したことも相場の支援材料となり、24時前に一時141.32円と日通し高値を更新した。
ただ、日経新聞電子版が「日銀は28日まで開く金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正案を議論」「長期金利の操作の上限は0.5%のまま据え置くものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認する案が浮上」と報じると一転下落した。
日本の長期金利がYCCの上限となっている0.5%より上昇し、日米の金利差が縮小するとの観測から円買い・ドル売りが進んだ。
アジア時間の安値139.38円を下抜けて一時138.77円まで値を下げた。
なお、ナイト・セッションの日経平均先物は3万3220円の本日高値から810円急落し3万2410円を付ける場面があった。
ユーロドルは反落。
終値は1.0979ドルと前営業日NY終値(1.1086ドル)と比べて0.0107ドル程度のユーロ安水準だった。欧州中央銀行(ECB)はこの日の定例理事会で、市場予想通り0.25%の利上げを決めたと発表。
声明では「金利はインフレ率を2%の中期目標に適時に戻すために必要な限り、十分に制限的な水準に設定されることになる」と表明し、「金利を十分に景気抑制的な水準にすることを確実にする」とした前回と異なり、次回会合での追加利上げを示唆しなかった。
また、ラガルドECB総裁は理事会後の会見で、9月以降の金融政策方針について「金利据え置きもあり得る」と述べ、データ次第の姿勢を強調。
ECBの明確な利上げ継続方針が示されなかったことから、全般ユーロ売りが優勢となった。
さらに、良好な米経済指標が相次いだことで米金利が上昇すると、ドルを買う動きも強まり一時1.0966ドルと10日以来の安値を付けた。
ユーロ円は大幅に4日続落。
終値は153.12円と前営業日NY終値(155.48円)と比べて2円36銭程度のユーロ安水準。
ECBの利上げ継続観測が後退する中、全般ユーロ売りが先行。
日本時間28日2時に「日銀がYCC修正議論」と報じられると円買いが活発化し、一時152.19円と6月15日以来の安値を更新した。
【本日の東京為替見通し】日銀によるYCC修正の有無を確認後、植田日銀総裁の会見に要注目
本日の東京外国為替市場では、まず日銀金融政策決定会合でのイールドカーブコントロール(YCC)修正の有無を確認。
その後は、15時30分から予定されている植田日銀総裁の会見に注目する展開となる。
日経新聞電子版が昨晩、「日銀は28日に開く金融政策決定会合でYCCの修正案を議論する」「長期金利の操作の上限は0.5%のまま据え置くものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認する案が浮上」と報じた。
これにより、変則的ながらもYCC上限が拡大される可能性が高まっている。
植田日銀総裁は18日に「持続的・安定的な2%の物価目標までに距離があるとの認識に変化がなければ、粘り強く金融緩和を続ける姿勢も変わらない」と述べ、YCCの修正観測を後退させていた。
しかし、植田総裁の発言「認識に変化がなければ」を深読みすると以下の通りに解釈できる。
- ・前提:物価安定の目標には、まだ距離があるとの「認識」がこれまであった
- ・現状認識:前提に変化がないとの「認識」で、YCCを続けてきている
- ・必要条件:前提が変わらない限り、YCCを続けるスタンスは変わらない この「認識に変化がなければ」という前提条件が変化している可能性は、以下の通りに列挙できる。
- ・内閣府が、今年度の消費者物価指数の見通しを前年比+2.6%に大きく引き上げた。
- ・7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、物価見通しが現状の+1.8%から+2.5%へ引き上げられる可能性が報じられた。
- ・6月の消費者物価指数の前年比上昇率は+3.3%となり、15カ月連続で目標の2%を上回っている。
さらに、前提が変化していることへの言及は以下の通りに列挙できる。
- ・7日の内田日銀副総裁の発言「YCCは、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」
- ・13日の早川元日銀理事の発言「YCCにおける長期金利の変動幅を拡大する政策修正を行う可能性がある」
- ・6月の日銀決定会合の「主な意見」での見解「早い段階で見直しを検討すべきだ」
- ・24日の神田財務官の発言「日本の物価・賃金の動向、最近のデータは予想より上振れしている」
- ・25日のIMFのレポート「日本銀行に対して現在のYCC政策から脱却するよう提言」
15時半からの植田日銀総裁の会見では、金融政策ではない長期金利の操作「YCC」許容変動幅拡大とフォワードガイダンスの説明に注目することになる。
【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:30 ◎ 7月東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く総合予想:前年比2.9%)
○未定 ☆ 日銀金融政策決定会合(終了後、決定内容発表、予想:当座預金金利▲0.10%で据え置き)
○未定 ◎ 経済・物価情勢の展望(7月、基本的見解)
○15:30 ☆ 植田和男日銀総裁、定例記者会見
<海外>
○10:30 ◎ 4-6月期豪卸売物価指数(PPI)
○10:30 ◎ 6月豪小売売上高(予想:前月比横ばい)
○14:30 ◇ 6月仏消費支出(予想:前月比0.1%)
○14:30 ◎ 4-6月期仏国内総生産(GDP)速報値(予想:前期比0.1%)
○15:45 ◇ 7月仏CPI速報値(予想:前月比0.2%/前年比4.3%)
○15:45 ◇ 6月仏PPI
○16:00 ◇ 6月トルコ貿易収支(予想:54億ドルの赤字)
○16:00 ◇ 7月スイスKOF景気先行指数(予想:90.5)
○17:00 ◎ シムカス・リトアニア中銀総裁、講演
○18:00 ◎ 7月ユーロ圏経済信頼感指数(予想:95.0)
○18:00 ◎ 7月ユーロ圏消費者信頼感指数(確定値、予想:▲15.1)
○21:00 ◎ 7月独CPI速報値(予想:前月比0.3%/前年比6.2%)
○21:30 ☆ 5月カナダGDP(予想:前月比0.3%/前年比1.9%)
○21:30 ☆ 4-6月期米雇用コスト指数(予想:前期比1.1%)
○21:30 ◎ 6月米個人消費支出(PCE、予想:前月比0.4%)
◎ 6月米個人所得(予想:前月比0.5%)
☆ 6月米PCEデフレーター(予想:前年比3.0%)
☆ 6月米PCEコアデフレーター(予想:前月比0.2%/前年比4.2%)
○23:00 ◎ 7月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、確報値、予想:72.6)
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
27日11:10 松野官房長官
「日銀には引き続き物価安定に向け適切な金融政策を行うことを期待」
27日16:49 エルカン・トルコ中銀総裁
「金融引き締めは為替の安定をサポート」
27日21:19 欧州中央銀行(ECB)声明
「基調的なインフレ率は全体として高水準」
「金利はインフレ率を2%の中期目標に適時に戻すために必要な限り、十分に制限的な水準に設定されることになる」
「データ依存のアプローチを継続」
27日21:53 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「短期的な景気見通しは悪化」
「サービス業の勢いは減速し、製造業も弱い外需によって抑制されている」
「基本的なインフレ率は全体として高水準を維持」
「経済とインフレの見通しは極めて不透明」
「いくつかの長期インフレ指標は上昇しており、注意深く監視する必要がある」
「今回の決定は全会一致だった」
「声明の文言の変更は無作為でも無関係でもない」
「9月以降の決定についてはオープンな姿勢で臨む」
「バランスシートの縮小については議論していない」
「9月に何を決定するかは確定していない」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=7/24安値を抵抗に戻り売りスタンス>
陰線引け。
転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の中で引けているものの売りシグナルが優勢な展開。
4手連続陰線で転換線を下回って引けており、続落の可能性が示唆されている。
本日は、転換線139.83円や19・27日安値138.77円を念頭に置いた取引に。
140円後半の24日安値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス2 141.96(7/21高値)
レジスタンス1 140.76(7/24安値)
前日終値 139.48
サポート1 137.95(日足一目均衡表・雲の下限)
サポート2 136.70(200日移動平均線)
<ユーロドル=水準を下げた転換線を抵抗に戻り売り姿勢>
大陰線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
しかし抱き線で反落し、転換線を大きく下回って引けており、続落の可能性が示唆されている。
本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 1.1121(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0979
サポート1 1.0865(日足一目均衡表・雲の上限)
<ユーロ円=雲の上限を念頭に、転換線・基準線が抵抗>
大陰線引け。
転換線は基準線と同値、遅行スパンは実線を下回り、僅かに雲の上で引けた。
4手連続陰線で一時雲の中へ突入したものの、下影を伸ばして雲の上限まで持ち直している。
ただし転換線を大幅に下回って引けており、下落圧力は高まったままか。
本日は雲の上限153.12円を念頭に置き、転換線・基準線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
なお雲の上限は来週以降も上昇する見込み。
レジスタンス1 155.12(日足一目均衡表・転換線=基準線)
前日終値 153.12
サポート1 151.51(日足一目均衡表・雲の下限)
<豪ドル円=転換線が抵抗、雲の下限が下値では意識>
大陰線引け。
雲の中に入り込み水準を下げ、転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回っているため売りシグナルが優勢な展開。
2手連続陰線で転換線を下回って引けており、続落の可能性が示唆されている。
本日は94円半ばの転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
92円後半の雲の下限が下サイドでは意識される。
レジスタンス1 94.43(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 93.58
サポート1 92.77(日足一目均衡表・雲の下限)
Provided by
DZH Finacial Research
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