March 8, 2024
【前日の為替概況】米10年債利回り低下でドル続落 対円147.59円、対ユーロ1.0949ドル
7日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは続伸。
終値は1.0948ドルと前営業日NY終値(1.0899ドル)と比べて0.0049ドル程度のユーロ高水準だった。
欧州中央銀行(ECB)はこの日の定例理事会で、市場予想通り政策金利を4.50%で据え置くことを決めたと発表。
声明では「前回理事会以降、インフレはさらに低下した」としたうえで、今年のインフレ率見通しを従来の2.7%から2.3%に下方修正した。
ECBの利下げ観測が高まると全般ユーロ売りが先行し、23時前に一時1.0868ドルと日通し安値を付けた。
なお、短期金融市場では年内に想定される利下げ幅が1%と0.25%の利下げが4回実施されることを織り込む場面があった。
ただ、売り一巡後は買い戻しが優勢に。
ラガルドECB総裁が理事会後の会見で「インフレに関する確信は十分ではない」「ECBの景気抑制的な政策の時期は当面続くだろう」「今回の会合で利下げは議論しなかった」と発言。
全般ユーロを買い戻す動きが広がり、5時30分過ぎに1.0949ドルと1月16日以来の高値を更新した。
欧米株価の上昇を背景にリスク・オンのドル売りも出た。
主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時102.81と1月24日以来の低水準を付けた。
ドル円は3日続落。
終値は148.05円と前営業日NY終値(149.38円)と比べて1円33銭程度のドル安水準だった。
日銀の早期政策修正観測が高まる中、NY勢参入後も円買い・ドル売りの流れが続いた。
22時30分前には一時147.59円と2月2日以来の安値を付けた。
ただ、売り一巡後は148.30円付近まで下げ渋る場面があった。
一時は4.0498%前後と2月5日以来の低水準を付けた米10年債利回りが4.12%台まで上昇したことなどが相場を下支えした。
欧米株価の上昇や日経平均先物の持ち直しに伴う円売りも出た。
もっとも、対ユーロ中心にドル売りが強まると再び上値が重くなった。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が米上院銀行委員会で「FRBが利下げに着手するために必要なインフレ低下に対する確信はそう遠くない(not far)将来に得られる」との考えを示したことも相場の重しとなった。
ユーロ円は3日続落。
終値は162.08円と前営業日NY終値(162.81円)と比べて73銭程度のユーロ安水準。
日銀が金融政策の修正に早期に動くとの観測が円買いを促し、22時30分過ぎに一時160.56円と2月12日以来の安値を付けたが、売り一巡後は買い戻しが優勢となった。
ラガルドECB総裁の発言や株高が円売り・ユーロ買いを誘った。
5時30分過ぎには162.14円付近まで値を戻した。
【本日の東京為替見通し】ドル円、日銀政策正常化への思惑から軟調推移 今晩は米雇用統計
本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される米2月雇用統計への警戒感や3月日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除観測などから上値が重い展開が予想される。
昨日は1月の実質賃金の改善や中川日銀審議委員の発言を受け、3月日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除観測が一段と高まり、海外投機筋による大量の円の買い戻しを誘発した。
中川委員は、日本の経済・物価情勢は2%の物価安定目標の実現に向けて「着実に歩を進めている」と述べた。
昨日発表された1月の実質賃金は前年同月比0.6%減とマイナス幅が13カ月ぶりの水準に縮小した。
そして、日本最大の労働組合の全国組織である連合は、今年の春闘における参加労組の賃上げ要求が5.85%と30年ぶりに5%を上回ったと発表した。
賃上げ率が4.5%程度になった場合、実質賃金はマイナス圏からプラス圏に浮上することで、日本銀行が金融政策正常化の条件としていた「賃金の上昇を伴う形」での2%の「物価安定の目標」に到達することになる。
なお翌日物金利スワップ市場(OIS)では3月マイナス金利解除の確率が一時80%近くまで上昇し、オプション市場では145円のドルプットの取引が活発化した。
先日時事通信が、3月18-19日の日銀金融政策決定会合で、少なくとも1人がマイナス金利解除が適切だと意見表明する見通しと報じていたが、その候補として高田日銀審議委員と中川日銀審議委員の可能性が高まっている。
先日、ハト派の高田日銀審議委員が、マイナス金利解除などの条件となっている2%の物価安定目標の実現が「見通せる状況になってきた」と述べた。
さらに植田日銀総裁は、2%の物価安定目標の実現が見通せる確度について「引き続き少しずつ高まっている」と述べた。
賃金と物価の好循環が強まり、目標実現が見通せる状況に至れば「マイナス金利政策やイールドカーブコントロール(長短金利操作)の枠組みなどさまざまな大規模緩和策の修正を検討していくことになる」との見解を改めて示した。
なおパウエルFRB議長は、半年に一度の上院銀行委員会での議会証言で、FRBが利下げに着手するために必要なインフレ低下に対する確信は「そう遠くない(not far)」将来に得られるとの、ややハト派的な見解を示した。
今夜発表される2月米雇用統計の予想は、非農業部門雇用者数が前月比+20.0万人、失業率が3.7%、平均時給が前月比+0.3%、前年比+4.4%。
2月のISM製造業・非製造業の雇用指数、消費者信頼感指数での雇用指数は雇用市場の悪化を示していたことで、雇用統計がネガティブサプライズとなった場合は、パウエル議長の「確信」が得られることになる。
【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:30 ◇ 1月家計調査(消費支出、予想:前年比▲4.3%)
○08:50 ◎ 1月国際収支速報
◇ 経常収支(予想:季節調整前3304億円の赤字/季節調整済2兆744億円の黒字)
◎ 貿易収支(予想:1兆4832億円の赤字)
○14:00 ◇ 1月景気動向指数速報値(予想:先行109.7/一致110.2)
○15:00 ◇ 2月景気ウオッチャー調査(予想:現状判断指数50.6/先行き判断指数52.2)
<海外>
○16:00 ◎ 1月独鉱工業生産(予想:前月比0.6%/前年同月比▲4.8%)
○16:00 ◇ 1月独生産者物価指数(PPI、予想:前月比0.2%)
○16:30 ◎ シムカス・リトアニア中銀総裁、講演
○16:45 ◇ 1月仏貿易収支
○16:45 ◇ 1月仏経常収支
○18:00 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演
○19:00 ☆ 10-12月期ユーロ圏域内総生産(GDP)確定値(予想:前期比横ばい/前年比0.1%)
○21:00 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、討議に参加
○22:30 ☆ 2月カナダ雇用統計(予想:新規雇用者数変化2.00万人/失業率5.8%)
○22:30 ◇ 10-12月期カナダ設備稼働率(予想:80.0%)
○22:30 ☆ 2月米雇用統計(予想:非農業部門雇用者数変化20.0万人/失業率3.7%/平均時給、前月比0.3%/前年比4.4%)
○10日 ポルトガル総選挙
○10日 米国が夏時間に移行
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
7日06:34 カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁
「さらなる利上げはないというのが基本シナリオ」
「利下げの決定はインフレデータ次第」
「インフレが再燃すれば利上げが正当化される可能性がある」
「12月には2024年に2回の利下げが行われると予想していた」
「現時点では24年に2回の利下げを検討、1回の可能性も」
「米労働市場はバランスが良くなりつつある」
7日10:37 中川順子日銀審議委員
「2%物価目標の実現へ着実に歩を進めている」
「予断持たずに情報収集を続けた上で判断したい」
「今春の賃金改定、過去対比で高めの水準で着地する蓋然性が高まっている」
「物価目標が見通せる状況と判断されて政策見直す場合、YCCやリスク性資産買い入れなどについて修正要否判断」
「企業の賃金設定への姿勢、明確な変化の兆し見られる」
「 実質賃金が下振れる場合、消費者マインドの悪化通じて需要減衰し経済・物価に下押し圧力のリスク」
「鉱工業生産、一部自動車メーカーの工場稼働停止の影響も加わって足もと弱めの動き」
「個人消費、足元弱めの指標みられるが基調として大きな変化ない」
「相対的に大企業がけん引しているが、中堅・中小企業の収益環境も改善傾向」
「企業経営者からは人手不足への危機感と賃上げへの前向きな声が昨年にも増して聞かれるようになった」
7日14:43
「マイナス金利解除では、賃金と物価の好循環強まるか見極めて判断」
「賃上げに対し前向きな動き強まっているとは感じる」
「GDPは個人消費が弱く、賃金とあわせみていく必要」
7日14:49 鈴木財務相
「為替レートは市場で決定されるのが原則」
「一昨年の為替介入にルール違反との指摘はなかった」
「為替への対応は、米通貨当局と緊密に連携していきたい」
7日14:55 植田日銀総裁
「賃金物価の好循環の強まり確認できれば、大規模緩和策の修正を検討」
「2%物価目標実現の確度、引き続き少しずつ高まっている」
「財務への配慮から必要な政策遂行が妨げられるとは考えていない」
「物価安定目標のもとで、出口戦略を適切に進めていくことは十分可能」
「政策金利の水準や利上げ幅はその時の経済・物価・金融情勢次第」
「マイナス金利解除後の短期金利コントロール、付利を活用しながら行う」
「YCC撤廃にせよ残すにせよ、長期国債の買い入れは続けることになる」
7日15:15 正木日銀企画局長
「仮に付利0.5%なら支払利息は2.5兆円に」
「保有国債の平均残存年限6.51年」
7日22:18 欧州中央銀行(ECB)声明
「前回理事会以降、インフレはさらに低下した」
「ECBスタッフの最新の予測では、2024年のインフレ率は下方修正されており、これは主にエネルギー価格の寄与度低下を反映」
「インフレ率は2024年に平均2.3%、2025年に2.0%、2026年に1.9%と予測。エネルギーと食品を除くインフレ予測も下方修正され、2024年は平均2.6%、2025年は2.1%、2026年は2.0%となる」
「基調インフレを示すほとんどの指標はさらに緩和しているが、賃金の大幅な伸びもあり、国内の物価圧力は依然として高い」
「経済活動は短期的には引き続き低迷すると予想」
「理事会は金利が十分に長期間維持されれば目標に大きく貢献」
「必要な限り政策金利が十分に制限的な水準に設定される必要」
「理事会は引き続きデータに基づいたアプローチに従って、制限の適切な水準と期間を決定する」
「金利決定は今後発表される経済・金融データ、基調的なインフレの動向、金融政策の波及力の強さを踏まえたインフレ見通しの評価に基づいて決定される」
7日22:54 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「景気は依然として弱い」
「消費者は支出を控えている」
「実質所得は回復し、成長を支えている」
「調査では年内に景気が徐々に回復していくと示されている」
「政府はエネルギー支援の縮小を継続すべき」
「賃金の伸びが緩和し始めた兆しある」
「成長に対するリスクは依然として下振れ方向」
「インフレは低下傾向が続いているようだ」
「ユーロ圏のディスインフレプロセスは進展している」
「インフレに関する確信は十分ではない」
「4月にはもう少し、6月にはさらに状況が分かるだろう」
「6月にはさらにデータが得られると幅広い合意」
「賃金と企業利益の動向を特に警戒している」
「ECBの景気抑制的な政策の時期は当面続くだろう」
「将来の金利動向のペースにコミットしない」
「今回の会合で利下げは議論しなかった」
7日23:12 ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事
「まだ利下げの時期ではない」
8日00:20 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「利下げが遅くなり過ぎるリスクについて十分に認識」
「経済が予想通りに推移すれば、今年中に政策の制限的な姿勢を慎重に解除し始めると考えられる」
「利下げに自信を持てる地点からさほど離れていない」
「インフレが持続的に2%になるまでには時間がかかるだろう」
「FRBのバランスシートにMBSを持たない方が好ましい」
8日01:34 メスター米クリーブランド連銀総裁
「経済が予想通りに進展すれば今年後半の利下げの可能性は高い」
「FRBは段階的に金利を引き下げることができると予想している」
「時期尚早な利下げは最大の過ち」
「長期のFF金利見通し引き上げを検討している」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=低下している転換線を抵抗に戻り売りスタンス>
陰線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。
しかし、3手連続陰線で転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。
本日は低下している転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス2 150.08(3/6高値)
レジスタンス1 149.22(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 148.05
サポート1 147.36(90日移動平均線)
サポート2 146.05(日足一目均衡表・雲の上限)
<ユーロドル=三役好転、転換線を支持に押し目買い>
陽線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯した。
5手連続陽線で転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 1.1046(1/2高値)
前日終値 1.0948
サポート1 1.0873(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=3/6高値を抵抗に戻り売りスタンス>
下影陰線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で推移していることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
しかし、3手連続陰線で転換線162.14円を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。
160.56円までの下影が底堅さを示唆していることには留意。
本日は、本日時点の転換線162.05円を念頭に置き、6日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 162.96(3/6高値)
前日終値 162.08
サポート1 161.32(日足一目均衡表・基準線)
<豪ドル円=2/23高値を抵抗に戻り売りスタンス>
下影小陰線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
しかし、孕み線で反落し転換線98.11円を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。
本日は、本日時点の転換線97.99円を念頭に置き、2月23日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 99.06(2/23高値)
前日終値 98.01
サポート1 97.38(3/6安値)
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