本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):日銀自らハードル上げで本邦経済指標のネガティブサプライズに警戒(2024年6月17日)

マーケットレポート

June 17, 2024

【前日の為替概況】ドル円、続伸 日銀は国債購入の具体的な減額計画策定を次回に持ち越し

14日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。
終値は157.40円と前営業日NY終値(157.03円)と比べて37銭程度のドル高水準だった。
ただ、NY市場に限れば157円台前半でのもみ合いに終始した。
6月米ミシガン大学消費者態度指数速報値は予想を下回ったものの、同時に発表された消費者の期待インフレ率が予想を上回ったため、相場の反応は限られた。

なお、日銀は今日まで開いた金融政策決定会合で、政策金利の据え置きと国債購入の減額方針を決定したものの、具体的な減額計画の策定は次回7月に持ち越した。
これを受けて東京市場では円売りが優勢となり、一時158.26円と4月29日以来の高値を付ける場面があった。

もっとも、植田和男日銀総裁が定例記者会見で「国債買い入れ減額は相応の規模になる」「データ次第では7月に利上げの可能性がある」との見解を示すと一転円買い・ドル売りが優勢に。
欧州市場序盤には一時156.89円付近まで下押しした。

ユーロドルは続落。
終値は1.0703ドルと前営業日NY終値(1.0737ドル)と比べて0.0034ドル程度のユーロ安水準だった。
フランスを中心にユーロ圏の政治混乱が懸念される中、この日もユーロ売りが続いた。
ユーロ圏の主要株式相場の下落を背景にリスク・オフのユーロ売り・ドル買いも出ると、23時前に一時1.0668ドルと5月1日以来の安値を更新した。
ただ、NY市場に入るとショートカバーが優勢となり、1.0708ドル付近まで下げ渋った。

ユーロ円は小幅続落。
終値は168.43円と前営業日NY終値(168.61円)と比べて18銭程度のユーロ安水準。
欧州の政局不安などを背景に全般ユーロ売りが優勢になると、日本時間夕刻に一時167.53円と5月16日以来の安値を付けた。
ただ、NY市場に入ると徐々に買い戻しが進み、168.57円付近まで下げ幅を縮めた。

【本日の東京為替見通し】日銀自らハードル上げで本邦経済指標のネガティブサプライズに警戒

本日のドル円相場は引き続き円安地合いは変わらないか
7月末の日銀政策決定会合までは本邦経済指標などのネガティブサプライズが円安地合いをさらに強める可能性や、連日東京時間は東京仲値を中心に本邦勢からの円売りが出ていることで、円安地合いは継続されそうだ。
なお、本邦の円売りの一部は新NISA(少額投資非課税制度)の導入による海外株投資への資金手当てともされている。

先週行われた日銀政策決定会合では、国債購入の減額方針策定を今会合では行わないことにより円売りを助長させた。
日銀サイドからすると、「次回7月30・31日の決定会合で、長期国債の買い入れの減額計画を決定する」と発表したことが、市場にとってはサプライズとなることを期待していた節がある。
しかしながら、市場からすると先に次回会合の手札を見せてしまったことは逆効果になり、余程のサプライズとなる決断を下さない限りは7月会合も「織り込み済み」と判断されかねない。

また、植田総裁は会見で減額規模を「相応の規模になる」と発言しただけではなく、「短期金利の引き上げは当然あり得る」とも発言し、タカ派トーンと捉えられる発言を繰り返したことで、円相場は大幅減額と短期金利引き上げだけでは、円買いに動かないリスクも増してきている。

更に、本邦のファンダメンタルズが決して回復傾向にはないことで、利上げにより景気悪化を引き起こしかねないことにも警戒しなくてはならない。

物価の影響を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は過去最長を更新する25カ月連続減となった。
1-3月期国内総生産(GDP)はマイナス成長になるなど、決して景気指標も好調ではない。

また、日銀が全国消費者物価指数(CPI)発表の2営業日後14時を目途に公表している「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」では、刈込平均値は2022年7月以来の1.8%、加重中央値は2023年3月以来の1.1%、最頻値は2023年1月以来となる1.6%まで低下するなど、インフレ圧力もやや後退している。
この中で、中央銀行が利上げに傾くのは正統的な対策とは言えないとの声もある。
次回会合まではインフレ指標や日銀短観なども発表されることで、データ次第にはなるだろうが、日銀のタカ派姿勢が逆に自らを袋小路に追い詰めてしまった可能性もありそうだ。

本日は本邦からは4月の機械受注が発表される。
3月は前年比では昨年2月以来のプラスに転じたが、4月は再び小幅にマイナスになると予想されている。
日銀が自ら利上げへのハードルを上げてしまったことで、通常は市場の反応が薄い同指標でもネガティブサプライズには反応することも考えられる。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:50 ◎ 4月機械受注(予想:船舶・電力除く民需 前月比▲3.0%/前年比▲0.2%)

<海外>
○11:00 ◎ 5月中国鉱工業生産(予想:前年比6.2%)
○11:00 ◎ 5月中国小売売上高(予想:前年比3.0%)
○17:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○18:00 ◎ ラガルドECB総裁、講演
○20:30 ◎ デギンドスECB副総裁、講演
○21:15 ◇ 5月カナダ住宅着工件数(予想:24.53万件)
○21:30 ◇ 4月対カナダ証券投資
○21:30 ◎ 6月米ニューヨーク連銀製造業景気指数(予想:▲10.5)
○22:15 ◎ マクルーフ・アイルランド中銀総裁、講演
○18日01:00 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、討議に参加
○18日02:00 ◎ ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演
○シンガポール(ハリラヤハジ)、インド(イスラム教犠牲祭)、トルコ(犠牲祭)、南アフリカ(青年の日の振替休日)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

14日12:25 日本銀行声明
「次回会合、今後1-2年程度の具体的な減額計画を決定」
「国債の買い入れは3月に決定された方針に沿って実施」
「景気、一部に弱めの動きみられるが緩やかに回復している」
「予想物価上昇率、緩やかに上昇している」
「金融・為替市場の動向や日本経済・物価への影響、十分注視する必要」
「経済・物価巡る不確実性、引き続き高い」

14日15:35 植田日銀総裁
「(国債買い入れ)市場の安定や柔軟性にも配慮しつつ予見可能性の確保が重要」
「市場状況を確認したうえで国債買い入れの減額方針を決定」
「国債買い入れ減額は相応の規模になる」
「最近の円安の動きは物価の上振れ要因であり注視している」
「為替相場は経済・物価に大きな影響を与える」
「具体的な政策調整時期、現時点で前もって言えない」
「7月会合、国債買い入れ減額の市場への影響を考慮したうえで政策決定」
「国債買い入れ減額、市場参加者の意見も聞いて丁寧に進めたい」
「7月以降の短期金利の調節方針、経済・物価情勢に応じて粛々と決定していく」
「7月会合、データや情報次第で緩和度合い調整もあり得る」
「7月会合までの情報次第で短期金利の引き上げは当然あり得る」
「このところの円安含め、輸入物価に再上昇の気配」

14日16:43 バスレ・スロベニア中銀総裁
「利下げのペースは利上げ時より緩やかになる可能性」
「インフレはここ数カ月で顕著に鈍化している」
「賃金の持続的な上昇はディスインフレを遅らせる可能性」

14日18:11 カザークス・ラトビア中銀総裁
「基本シナリオ通りなら、金利の方向性は明確である」
「データは大方の期待と一致している」
「市場の織り込み具合は妥当なようだ」

14日21:49 メスター米クリーブランド連銀総裁
「労働市場はなお非常に強い」
「現在の金融政策姿勢は適切な位置にある」
「金利引き下げを遅らせ過ぎないことが重要」
「インフレ減速の兆しをもう少し確認したい」

15日02:22
「インフレ率が2%になるまで現行の金利水準を維持し続けることは不適切」

14日22:28 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「ディスインフレの軌道に向かっている」
「ディスインフレの流れは浮き沈みの多いものとなるだろう」
「仏国内政治についてはコメントしない」
「利下げはインフレに対する十分な自信を反映している」
「大きなショックがない限り、2025年後半にインフレ率が2%に到達することが目標」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=足型は上値の重さ示唆も21日線や転換線が支え>

ドル円0617

パラメータ0617

上影陽線引け。
一時158.26円まで上昇したものの押し戻され、上値の重さを示唆する長めの上ひげをともなう足型を形成した。

ただ、下押し局面では156.72円前後で上昇中の21日移動平均線や日足一目均衡表・転換線156.53円が支えとなりそう。
転換線は先々157円台まで切り上がることが想定される。

レジスタンス1 158.26(6/14高値)
前日終値 157.40
サポート1 156.72(21日移動平均線)
サポート2 155.93(日足一目均衡表・基準線)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=転換線が上昇を抑制>

ユーロドル0617

パラメータ0617

下影陰線引け。
一目均衡表・雲を下抜け、5月1日以来の安値1.0668ドルまで下振れた。

現水準1.0737ドルから1.07ドル後半へ切り上がっていく雲の下限は戻り局面で強い抵抗にならないかもしれない。
しかし低下中の一目均衡表・転換線1.0785ドルが上昇を抑制するとみる。

レジスタンス1 1.0785(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0703
サポート1 1.0650(5/1安値)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ユーロ円=転換線の位置する上方向がやや重そう>

ユーロ円0617

パラメータ0617

小陰線引け。
上下に長めのひげをつけた気迷いの足型を形成している。

方向感を見定めにくいが、低下傾向の一目均衡表・転換線168.91円の位置する上方向がやや重そうに見える。
先週末安値167.53円や一目均衡表・雲(上限166.63円・下限165.89円)を試す展開を想定する。

レジスタンス1 168.91(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 168.43
サポート1 167.53(6/14安値)

>ユーロ円のリアルタイムチャートはこちら

<豪ドル円=方向を見定めにくいが転換線前後は底堅いか>

豪ドル円0617

パラメータ0617

小陰線引け。
104.80円まで上昇後、103.64円まで下落と、やや荒っぽく上下した。

方向感を見定めにくいが、上昇傾向の転換線103.86円前後では底堅さを示しそう。
先週末の安値を更新するような下落は回避できるとみる。

レジスタンス1 104.80(6/14高値)
前日終値 104.12
サポート1 103.64(6/14安値)

>豪ドル円のリアルタイムチャートはこちら

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