本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):円安阻止の手段乏しくトレンド継続か、ユーロ・ランドの動きにも注目(2024年7月1日)

マーケットレポート

July 1, 2024

【前日の為替概況】ドル円 160円前半を下値に持ち直す ユーロ円は再び導入以来の高値更新

28日のニューヨーク外国為替市場でドル円は小反発。
終値は160.88円と前営業日NY終値(160.76円)と比べて12銭程度のドル高水準だった。
米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として重視する5月個人消費支出(PCE)物価指数が市場予想に沿う形で鈍化したことが分かると、全般ドル売りが先行。
前日の安値160.29円を下抜けて一時160.26円まで値を下げた。
東京市場で一時161.27円と1986年12月以来約37年半ぶりの高値を付けたあとだけに、利益確定目的の売りも出やすかった。

ただ、その後発表の6月米シカゴ購買部協会景気指数や同月米ミシガン大学消費者態度指数確報値が予想を上回ると買い戻しが優勢に。
市場では「月末・期末のロンドン16時(日本時間24時)のフィキシングに絡んだ円売りのフローが観測された」との声も聞かれ、160.96円付近まで持ち直した。

ユーロドルは小幅ながら続伸。
終値は1.0713ドルと前営業日NY終値(1.0704ドル)と比べて0.0009ドル程度のユーロ高水準だった。
米インフレ再加速への懸念が後退すると米10年債利回りが一時は4.25%台まで低下。
ユーロ買い・ドル売りが先行した。

ただ、米10年債利回りが4.40%台まで一転上昇するとユーロ売り・ドル買いが出て1.06ドル台後半まで下押しした。
もっとも、月末・期末のロンドン・フィキシングに絡んだユーロ買いのフローが観測されると持ち直した。
2時過ぎには一時1.0725ドルと本日高値を更新した。

ユーロ円は3日続伸。
終値は172.39円と前営業日NY終値(172.08円)と比べて31銭程度のユーロ高水準。
ドル円が下落した影響で22時30分前に一時171.45円と日通し安値を付けたものの、前日の安値171.39円が目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。
ドル円の持ち直しにつれた円売り・ユーロ買いも出て、一時172.45円と1999年のユーロ導入以来の高値を更新した。
月末・期末のロンドン・フィキシングに絡んだ円売りのフローも観測された。

【本日の東京為替見通し】円安阻止の手段乏しくトレンド継続か、ユーロ・ランドの動きにも注目

本日のドル円相場は、引き続き円安基調は変わらないか。
先週28日には1986年12月以来となる161.27円を記録したドル円だが、依然として円を積極的に買う材料は不足している。

先週初までは160円台が「神田シーリング」などと、ドル円の上値の防戦ラインと囃し立てていた一部市場関係者もいたが、いざ160円台に乗せるとすでに160円台に目が慣れてきてしまっている。
今後も緩やかな円安が進行した場合は、その流れを止める手段が乏しく、円の売り場を探している市場参加者がまだ多いだろう。
先週のロンドンフィキシングを見ても分かるように、投機的な円売りだけではなく、実需の円売りが根強いのが現状だ。
また、一部では先週取引されていた158円台まで円高が進めば、円売りを仕込みたいという声も出ているようだ。

円安の進行が止まらないのは、本邦通貨当局者が「為替の過度な変動は望ましくない」「最近の急速な円安進行に関しては深刻な懸念を有する」と円安懸念を表明しているものの、円安を止める手段が枯渇していることだ。
6月の日銀政策決定会合で、今月(30-31日)の会合で長期国債の買い入れの減額や短期金利の引き上げを示唆してしまったことで、市場はすでに減額や多少の短期金利上昇を織り込みつつある。
当局者は6月に示唆した時点で、円安の勢いが弱まることを期待していたのかもしれないが、むしろ手の内を見せてしまったことで円安阻止の切り札が、一時的な円安抑制にしか効果がない為替介入以外に見当たらなくなっている。

また、これだけ手詰まりの中で、円売りを促している新NISA(少額投資非課税制度)の海外投資分の除外や、かつて噂されたレパトリ減税策など、円安の流れを抑制するような方針を政府は全く講じていない。
そのため、円安を本腰を入れて止めようとしていないのではないかという憶測も徐々に出てきている。

円買いだけではなくドル売りが難しいのは、27日に行われた米大統領選挙を占う討論会で、トランプ前大統領がバイデン米政権の高インフレを非難したことも要因。
CBSニュース/ユーガブの世論調査によると、民主党登録有権者のうち、バイデン氏が引き続き大統領選に出馬すべきだと答えたのはわずか55%となった。
トランプ氏優勢の状況下で、インフレをさらに高める可能性のあるドル売りを本邦当局者が仕掛けるのは非常に難しい。

前回の介入後にイエレン米財務長官は、本邦の介入について幾度も「為替介入は過剰な動きへの対処であるべき」とくぎを刺していた。
ドル買い・円売り介入と違い、米国にとっては自国通貨売りのドル売り介入には抵抗感がある。
また、この数週間を通すと数円程度の動きで、4月29日のような前営業日から5円を超える動きでもなく、米国がドル売り介入に理解を示すのも難しいことも、ドル買い・円売り要因となる。

本日本邦から発表される経済指標では、6月調査の日銀・企業短期経済観測調査(短観)が発表される。
かつては本邦の経済指標の中で最も注目されたものだが、ここ最近は短観で市場が動意づくのは難しい。
ただし、参考のために企業が想定する2024年度の為替レートには目を配っておきたい。
3月調査では全規模・全産業はドル円が141.42円、ユーロ円が151.86円、大規模・製造業はドル円が140.40円、ユーロ円が151.07円となった。

アジア時間では円中心の相場となるだろうが、早朝からユーロやランドが動意づいていることで、本日は様々な通貨の激しい振幅が予想される。
フランスの第1回目の総選挙は予想通り極右政党「国民連合(RN)」が34%前後の最多得票を獲得した。
欧州連合(EU)離脱の考えもある左派連合が第1党になる可能性が一先ず回避され、ユーロは早朝には堅調に推移している。
また、南アでは国民統一政府(GNU)に野党第一党・民主同盟(DA)の参加合意が週末に決定し、ランドもオセアニア市場で強含んで始まった。
アジア時間にトレンドを作ることは難しいかもしれないが、欧州入り後の値動きには要警戒となる。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:50 ☆ 日銀・企業短期経済観測調査(短観、6月調査)
     ☆ 大企業製造業の業況判断指数(DI、予想:11)
     ◎ 大企業非製造業の業況判断指数(DI、予想:33)
     ◎ 大企業製造業DI・9月見込み(予想:11)
     ◎ 大企業非製造業DI・9月見込み(予想:28)
     ◎ 大企業全産業設備投資計画(前年度比、予想:13.8%)
○14:00 ◇ 6月消費動向調査(消費者態度指数 一般世帯、予想:36.4)

<海外>
○10:45 ◎ 6月Caixin中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:51.5)
○15:00 ◇ 6月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比▲0.1%)
○15:30 ◇ 5月スイス小売売上高
○16:00 ◇ 6月トルコ製造業PMI
○16:30 ◇ 6月スイス製造業PMI(予想:45.3)
○16:50 ◎ 6月仏製造業PMI改定値(予想:45.3)
○16:55 ◎ 6月独製造業PMI改定値(予想:43.4)
○17:00 ◎ 6月ユーロ圏製造業PMI改定値(予想:45.6)
○17:30 ◎ 6月英製造業PMI改定値(予想:51.4)
○17:30 ◇ 5月英消費者信用残高(予想:15億ポンド)
○17:30 ◇ 5月英マネーサプライM4
○21:00 ◎ 6月独消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比0.2%/前年比2.3%)
○21:15 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○22:45 ◎ 6月米製造業PMI改定値(予想:51.7)
○23:00 ☆ 6月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数(予想:49.2)
○23:00 ◇ 5月米建設支出(予想:前月比0.3%)
○2日04:00 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
○ECB主催の国際金融会議「ECBフォーラム」(ポルトガル・シントラ、3日まで)
○香港(特別行政区成立記念日)、カナダ(建国記念日)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

28日10:13 トランプ前大統領
「関税は赤字を減らし、中国などのような国を抑制する」

28日11:28 鈴木財務相
「過度な変動にあたるかどうかの認識はコメントしない」
「為替の過度な変動は望ましくない」
「為替の急激な、一方的な変動には深く懸念」
「過度な為替変動には適切に対応」
「円の信認は維持できている」
「財政健全化の取り組みが重要」
「7月25-26日のブラジルG20までは神田財務官が対応する」

28日16:23 林官房長官
「為替市場の動向をしっかりと注視」
「過度な変動には適切な対応を取っていきたい」

28日19:18 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「これまでの利上げで最終的にインフレを抑制できる」
「金融政策は広く考えられているほど引き締め的ではないかもしれない」

28日19:29 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「データ次第とは速報のデータ次第という意味ではない」
「データ上のサプライズは現在小さくなった」
「予測に対する信頼性が高まっている」

28日21:54 デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「政策が効果を発揮するまでには時間がかかっているが、効果は出ている」
「インフレデータはインフレが落ち着いていることを示しており、政策は予想通りに機能している」
「PCEの結果は良いニュース」
「政策について見解を示すのはまだ早すぎる」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=6/27・28に支えられた160.20円台がポイントに>

ドル円0701

パラメータ0701

小陽線引け。
約37年半ぶりの161円台乗せに成功したが大台は維持できず、一時160円前半まで緩んだ。
もっとも売り戻しが一巡すると、160円後半まで持ち直した。

先週半ばの大陽線の後はロウソク足の実体が狭くなってきており、高値警戒感が出てきつつある。
27・28日と支えられた160.20円台が支持水準として働くかが上昇トレンド維持のポイントとなるだろう。

レジスタンス2 161.81(ピボット・レジスタンス2)
レジスタンス1 161.27(6/28高値)
前日終値 160.88
サポート1 160.26(6/28安値)
サポート2 159.44(日足一目均衡表・転換線)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=転換線を超えて上サイドの主要線を意識>

ユーロドル0701

パラメータ0701

小陽線引け。
1.06ドル後半で下げ渋り、1.07ドル台に切り返すも一目・転換線を超えたところで上昇が一服した。
ただ週明けは1.0710ドルの同線を支えに上値を伸ばしている。

転換線の上でしっかり推移するようだと、1.07ドル後半から1.08ドル台の日足一目の主要線が意識される。
本日は雲の下限が1.0772ドル、基準線は1.0791ドル、雲の上限が1.0805ドルに位置している。

レジスタンス1 1.0805(日足一目均衡表・雲の上限)
前日終値 1.0713
サポート1 1.0666(6/26安値)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ユーロ円=高値更新が続く、先週後半の安値圏が支持に>

ユーロ円0701

パラメータ0701

陽線引け。
下押しを171円半ばに留めて切り返し、172円台で再びユーロ導入以来の最高値を再び更新した。
週明けも前週高値を超えて上げ幅を拡大している。

先週は1円程度の下サイドへの調整をこなしながら上値を伸ばしてきた。
本日も171円台への下押しは想定しながら、先週後半に支えられた171.40円前後が支持帯として働くか。

レジスタンス1 173.74(ピボット・ターニングポイント)
前日終値 172.39
サポート1 171.39(6/27安値)

>ユーロ円のリアルタイムチャートはこちら

<豪ドル円=6/28安値から転換線が支持帯に>

豪ドル円0701

パラメータ0701

陽線引け。
下押しも106円半ばでは支えられ再び107円台乗せに成功した。
107.40円台まで上値を伸ばし、年初来高値をこの日も更新している。

日足一目・転換線は週明けに106円前半まで上昇し、明日以降も水準を切り上げる見込み。
上向きのトレンドは変わらず、先月末安値から転換線までを支持帯と見込み、買いスタンスで臨みたい。

レジスタンス1 108.01(ピボット・レジスタンス2)
前日終値 107.30
サポート1 106.25(日足一目均衡表・転換線)

>豪ドル円のリアルタイムチャートはこちら

OANDA CFD

Provided by
DZH Finacial Research

「投資を面白く、投資家を笑顔に」をスローガンに、株式や為替など様々な金融マーケットの情報を提供。 豊富な経験を持つエキスパートが多数在籍し、スピーディー且つオリジナルな視点からの情報をOANDA Labに配信しています。
会社名:株式会社DZHフィナンシャルリサーチ
所在地:東京都中央区明石町8番1号 聖路加タワー32階
商号等:【金融商品取引業者】投資助言業/【登録番号】関東財務局長(金商)907号


本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

この記事をシェアする
一覧へ戻る

ホーム » マーケットニュース » 本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):円安阻止の手段乏しくトレンド継続か、ユーロ・ランドの動きにも注目(2024年7月1日)