本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):FRB議長証言後もドル売り勢い弱く円安継続か、RBNZは無風予想(2024年7月10日)

マーケットレポート

July 10, 2024

【前日の為替概況】ドル円、続伸 FRB議長発言これまでと大きな違いなく証言後にドル買い

9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。
終値は161.33円と前営業日NY終値(160.83円)と比べて50銭程度のドル高水準だった。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は米上院銀行委員会の議会証言で、先行きの金融政策について「会合ごとに判断する」との考えを改めて示したほか、「最近のインフレデータは2%目標への穏やかな進展を示唆」「より良いデータが増えればインフレに対する確信が強まるだろう」「インフレが持続的に2%に向かうという確信が高まるまで利下げは適切ではない」などと述べた。

総じてこれまでの発言から大きな違いはなかったが、前週末の米雇用統計を受けて利下げ観測が高まっていたこともあり、議会証言後は米金利の上昇とともにドル買いで反応。
米10年債利回りが4.32%台まで上昇するなか、一時161.52円と日通し高値をつけた。
もっとも、その後は米金利が上昇幅を縮小したため、161.30円前後の水準で伸び悩んだ。

ユーロドルは続落。
終値は1.0813ドルと前営業日NY終値(1.0824ドル)と比べて0.0011ドル程度のユーロ安水準だった。
米金利の上昇などが重しとなって1.0806ドルまで弱含んだ。
もっとも、本日の値幅は0.0027ドル程度と狭く、1.08ドル台前半でのレンジ内推移にとどまった。

なお、米格付け会社ムーディーズはこの日、仏下院選挙の結果は同国の信用格付けにとってマイナスだと警告。
大連立政権が樹立されれば意思決定や債務管理がより困難になるとの見方を示した。

ユーロ円は4営業日ぶりに反発。
終値は174.45円と前営業日NY終値(174.08円)と比べて37銭程度のユーロ高水準だった。
ドル円の上昇につれて下値を切り上げる展開となり、24時過ぎには174.59円まで本日高値を更新した。
ただ、昨日につけたユーロ導入来高値の174.63円が目先のレジスタンスとして意識されると174.30円台まで押し戻された。

メキシコペソは堅調。
6月メキシコ消費者物価指数(CPI)は前年比4.98%上昇と予想の同4.84%上昇を上回った。
メキシコでは足もとでインフレ再加速が進んでおり、メキシコ銀行(中央銀行)の追加利下げ観測後退を手掛かりにした買いが入った。
対ドルでは17.9006ペソまでペソ高が進み、ペソ円も6月3日以来の高値となる9.01円まで値を上げた。

【本日の東京為替見通し】FRB議長証言後もドル売り勢い弱く円安継続か、RBNZは無風予想

本日の東京市場では円安地合いは変わらないか。
先週後半から本邦実需勢や調整の円買い・ドル売りが入っているが、ドル円の下押しが徐々に浅くなってきている。
また、昨日のパウエルFRB議長の議会証言後、米国の報道は、CNBCが「高金利の長期維持は経済成長を危うくする(Fed Chair Powell says holding rates high for too long could jeopardize economic growth)」、WSJは「FRBが利下げに近づく(Powell Inches the Fed Closer to Cutting Rates)」と、どれもハト派よりの見解を報じた。

しかしながら、米債市場は金利低下とはならず、同様にドル売りの反応も限られた。
CMEグループの「フェドウォッチ」では年末までには2回の利下げを97%前後まで織り込んでいることもあり、市場には新味のない内容となったのかもしれないが、いずれにしろ、ドル売りの反応が鈍かった。
この流れを受け継いだ本日のアジア市場では、積極的にドル売りに動くのは難しいと予想する。

本日は、本邦では注目すべき点が2点ある。
1点目は昨日から日銀が「債券市場サーベイ」などに参加する金融機関の実務担当者を集めて行っている「債券市場参加者会合」。
通算で20回目となる同会合だが、臨時開催が初めてとなっただけではなく、植田日銀総裁が「国債買い入れ減額、市場参加者の意見も聞いて丁寧に進めたい」と発言していたことで注目度が増した。

昨日は銀行等グループと証券等グループが分かれて行われたが、本日は16時30分からバイサイドグループが参加して行われる。
昨日の会合後に伝わった内容では、幅広い意見が出たとは言われているが、基本路線は国債の買い入れ減額のペースと幅に関する意見が多く、すでに減額は決定しているような動きになっている。
というのも、参加している銀行をはじめとする金融機関は利上げに傾けば収益増加効果が大きいことで、国債買い入れの大幅減額を積極的に意見としてあげるのは当然と言えよう。

昨日の会合を前にして、鈴木財務相は、この会合について「重要な協議で注視したい」と発言するなど、今回の会合が日銀の金融政策決定会合にも影響を与える(与えさせようとしている)可能性も指摘されている。
これは、ここ最近のさえない経済指標の結果もあり、日銀の中では大幅減額には抵抗感があるとのうわさもあるが、財務省や政府が、この「債券市場参加者会合」での声を免罪符にして、国民や中小企業には不満が出やすい利上げ路線の道を探ろうとしているのかもしれない。

なお、前回19回目の会合が開かれたのが、6月4-5日だったが、議事要旨の公表は同月27日となっている。
よって、今回9-10日の議事要旨は、7月30-31日の日銀政策決定会合後に公表されることが濃厚だ。

2点目は本邦の6月の国内企業物価指数に注目したい。
前月比では前回の+0.7%から+0.4%まで低下するとの予想だが、前年比では円安の影響もあり+2.4%から+2.9%まで上昇する予想になっている。
市場では国債買い入れ減額を織り込もうとしていることで、物価指数が予想より高まるかに注目したい。

円以外の通貨では、NZドルの動きに注目。
本日は日本時間11時にニュージーランド準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が政策金利を発表する。
市場では、政策金利は5.50%の据え置き予想となっている。
前回5月22日のMPCで発表された金融政策声明(statement)とは違い、本日はより簡潔な金融政策レビュー(review)しか発表されないことで、今後の政策金利見通しなどは公開されない。

僅か1ページ程度のレビューの発表となることで、前回ほどRBNZの方針を読み解くのは難しいが、サプライズがないとは限らないことで警戒は怠らないようにしておきたい。
また、中国からは6月の消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)が発表される。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:50 ◇ 6月企業物価指数(予想:前月比0.4%/前年比2.9%)
○債券市場参加者会合(日銀、最終日)

<海外>
○10:30 ◎ 6月中国消費者物価指数(CPI、予想:前年比0.4%)
○10:30 ◎ 6月中国生産者物価指数(PPI、予想:前年比▲0.8%)
○11:00 ☆ ニュージーランド準備銀行(RBNZ)、政策金利発表(予想:5.50%で据え置き)
○15:00 ◎ 6月ノルウェーCPI(予想:前月比0.5%/前年比2.9%)
○16:00 ◇ 5月トルコ失業率
○16:00 ◇ 5月トルコ鉱工業生産(予想:前月比3.8%)
○17:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○20:00 ◇ MBA住宅ローン申請指数
○21:00 ◎ 6月ブラジルIBGE消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比4.35%)
○22:30 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、講演
○23:00 ◇ 5月米卸売売上高(予想:前月比0.1%)
○23:00 ☆ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、米下院金融サービス委員会で金融政策や経済情勢に関する半期に一度の証言
○23:30 ◇ EIA週間在庫統計
○11日00:30 ◎ マン英MPC委員、講演
○11日01:00 ◎ 6月ロシアCPI(予想:前月比0.7%)
○11日02:00 ◎ 米財務省、10年債入札
○11日03:30 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、ボウマンFRB理事、あいさつ
○北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(ワシントン、11日まで)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

9日11:38 鈴木財務相
「過度な金利上昇やインフレは未然に防ぐ必要」
「日銀の債券市場参加者会合、どういう協議なされるか注視」

9日21:52 センテノ・ポルトガル中銀総裁
「インフレ率が目標を下回るとは見ていない」

9日23:02 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「最近のインフレデータは2%への穏やかな進展を示唆」
「会合ごとに政策決定を続ける」
「我々が直面するリスクはインフレの上昇だけではない」
「より良いデータが増えればインフレに対する確信が強まるだろう」
「労働市場は強いが過熱してはいない」
「インフレが持続的に2%に向かうという確信をさらに高めるまでは利下げは適切ではない」
「1-3月期のデータはより高い信頼性を裏付けるものではなかった」
「労働市場は完全にバランスを取り戻したようだ」
「次の動きが利上げとなる可能性は低い」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=転換線が切り下がる前に高値更新できるか注視>

ドル円0710

パラメータ0710

陽線引け。
161.11円へ切り上がった転換線を下回る水準からスタートしたものの同線の上昇に追随するように持ち直した。
しばらく転換線付近で安定した推移となるか。

ただ、レンジを切り上げることができないと、転換線は来週にも低下へ転じる見込み。
支えとなる転換線が切り下がる前に高値を更新できるか注視したい

レジスタンス1 161.95(7/3高値=年初来高値)
前日終値 161.33
サポート1 160.73(7/9安値)
サポート2 160.26(6/28・7/8安値)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=雲の中へ沈むも、転換線支えに崩れ回避へ>

ユーロドル0710

パラメータ0710

小陰線引け。
一目均衡表・雲の上限1.0818ドルを巡る攻防となっていたが、戻りが鈍く1.0813ドルと雲の上限を下回ってNYを引けている。

本日1.0784ドルへ低下した一目・基準線の動きを追うような下押しも想定しておきたい。
しかし今後の上昇が想定される一目・転換線1.0765ドルが支えとなることが期待でき、大きく崩れる展開は回避できるとみる。

レジスタンス1 1.0902(6/6・7高値)
前日終値 1.0813
サポート1 1.0765(日足一目均衡表・転換線)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ユーロ円=5日線付近の底堅さ背景に高値更新うかがう>

ユーロ円0710

パラメータ0710

陽線引け。
上昇中の5日移動平均線前後の底堅さを維持し、8日につけたユーロ導入以来の最高値174.63円から大きく離れないレンジで推移した。

本日5日線は174.33円前後へ切り上がっている。
同線付近の底堅さ背景に高値更新をうかがう展開。
反落に転じても上昇中の一目均衡表・転換線173.04円がやがて支えになるだろう。

レジスタンス1 174.92(ピボット・レジスタンス2)
前日終値 174.45
サポート1 174.02(7/9安値)

>ユーロ円のリアルタイムチャートはこちら

<豪ドル円=5日線の上昇ともない1991年以来の高値更新>

豪ドル円0710

パラメータ0710

陽線引け。
5日移動平均線の上昇をともない1991年以来の高値を108.76円まで更新した。

本日早朝もさらにじり高。
堅調な推移が続くとみる。
高値圏の調整が相応に大きくなるリスクも視野に入れて臨みたいが、まずは5日安値108.05円前後の下げ渋りで108円割れ回避へ。
下押しが進んでも上昇が続く見込みの一目均衡表・転換線107.66円が支えになると考えられる。

レジスタンス1 109.54(1991/3/28高値)
前日終値 108.75
サポート1 108.05(7/5安値)

>豪ドル円のリアルタイムチャートはこちら

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