August 9, 2024
【前日の為替概況】ドル円、3日続伸 米新規失業保険申請件数が予想より強い内容に
8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3日続伸。
終値は147.23円と前営業日NY終値(146.68円)と比べて55銭程度のドル高水準だった。
米労働省が発表した前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い内容だったことが分かると、米長期金利の上昇とともにドル買いが先行。
22時30分過ぎに一時147.54円と日通し高値を更新した。
その後の下押しも146.94円付近にとどまった。
市場では「米景気後退が差し迫っているという見方は的外れのようだ」との声が聞かれた。
なお、米長期金利の指標となる米10年債利回りは4.02%台まで上昇した。
ユーロドルは小幅ながら3日続落。
終値は1.0919ドルと前営業日NY終値(1.0922ドル)と比べて0.0003ドル程度のユーロ安水準だった。
米労働市場の底堅さを示唆する米雇用関連指標の発表を受けて米長期金利が上昇すると全般ドル買いが先行。
23時前に一時1.0882ドルと日通し安値を付けた。
ただ、売り一巡後はじりじりと下値を切り上げ、1.0919ドル付近まで下げ渋った。
米国株相場の上昇を受けて投資家のリスク回避姿勢が和らいだことが相場を下支えした。
ユーロ円は続伸。
終値は160.77円と前営業日NY終値(160.22円)と比べて55銭程度のユーロ高水準。
米雇用指標をきっかけに米経済減速への過度な懸念が和らぐと、ダウ平均が一時740ドル超上昇するなど、米国株相場が底堅く推移。
リスク・オンの円売りが優勢となり、2時30分過ぎに一時160.88円と日通し高値を付けた。
ユーロ円以外のクロス円も堅調だった。
ポンド円は一時187.88円、豪ドル円は97.14円、NZドル円は88.57円、カナダドル円は107.36円まで値を上げた。
メキシコペソも堅調だった。
対円で7.81円、対ドルで18.8605ペソまでペソ高が進んだ。
メキシコ中銀はこの日、政策金利を現行の11.00%から10.75%へ引き下げることを決めたと発表。
市場予想は据え置きと0.25%の利下げで拮抗していたが、金利発表後もペソ買いが続いた。
なお、声明では「景気減速懸念の高まりを背景に利下げを決定」「3対2の賛成多数で利下げを決定」「インフレ率を目標の3%に持続的に収束させることに引き続き取り組む」との見解が示された。
【本日の東京為替見通し】市場との対話失敗で流動性悪化、ドル円はレンジ内で荒い値動きか
ドル円相場はようやく落ち着きを取り戻しつつあるが、依然として流動性は悪く、一定のレンジ内で荒い値動きになりやすいことには注意したい。
7月31日の日銀政策決定会合後に行われた植田日銀総裁の会見で、総裁がこれまでよりも大幅にタカ派に傾いた。
そして、今週7日にはこれまでタカ派とされていた内田日銀副総裁がハト派と捉えられる発言を行った。
いずれの発言も、これまでの両者のスタンスとの違いは明白で、市場にとってはサプライズとなり、どのような理由があろうと正副日銀総裁が市場との対話が出来ていなかったことが乱高下を引き起こしたといえる。
一部では、植田日銀総裁は度重なる与党要人からの利上げ圧力がかかっていたことによりタカ派に転じ、内田日銀副総裁は株の暴落に慌てた与党からの修正に応えハト派へ転換したなどの噂もある。
いずれにしろ日銀に対する信頼度の低下は避けられない事態になっている。
本日は7月のマネーストック以外には本邦からの経済指標の発表はない。
そもそも、1-3月期の実質国内総生産(GDP)が大幅な下方修正、消費支出の鈍化などにもかかわらず利上げが決定された。
しかしその後は、経済指標などの発表が乏しいにもかかわらずハト派発言に変わるなど、日銀の金融政策がパラダイムシフトしたと捉えられている。
今後は経済指標よりも政治的圧力や株価などの動きが政策手段の変更を決定づけるとさえ言われていることで、本邦の経済指標に対しての反応は鈍いだろう。
本日もドル円相場をけん引するのは、日経平均株価を中心とした株式市場の動向になりそうだ。
5日に一時3万1156円まで暴落した日経平均だが、徐々に下げ幅を取り戻しているものの、今年前半の新NISA(少額投資非課税制度)導入時のような過熱感は完全に失われてしまった。
昨日発表された7月29日から8月2日までの対外対内証券投資では、海外投資家が株式指数先物を含め1兆円を超す売り越しだったことも判明している。
これは5日の大暴落が含まれない数値であり、海外投資家の本邦株売りはさらに進んだ可能性も高い。
再び海外投資家がこれまでのような本邦の株買いや、新NISAの海外投資分の外貨買いがこれまでのように積み増されるかも定かではなくなったことで、株式市場の重さが、ドル円の上昇する勢いを削ぎそうだ。
もっとも、昨日は米株式市場が値幅を伴って上昇していることや、米長期金利も一時4%台に乗せたこともあり、ドル円を一方的に売り込むにも材料不足とも思われる。
本日は神経質な動きとなるだろうが、大きくレンジを広げるのは難しいかもしれない。
円以外では、オセアニア通貨の値動きが注目される。
米株高によりリスク選好の動きに敏感なオセアニア通貨はNY市場でほぼ高値引けしている。
昨日の講演でもブロックRBA(豪準備銀行)総裁がタカ派姿勢を維持したことで、豪ドルは特に底堅さを維持した動きになりそうだ。
【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 7月マネーストックM2
<海外>
○07:15 ◎ シュミッド米カンザスシティー連銀総裁、講演
○10:30 ◎ 7月中国消費者物価指数(CPI、予想:前年比0.3%)
○10:30 ◎ 7月中国生産者物価指数(PPI、予想:前年比▲0.9%)
○15:00 ◎ 7月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.3%/前年比2.3%)
○15:00 ◎ 7月ノルウェーCPI(予想:前月比0.6%/前年比2.8%)
○16:00 ◇ 7月スイスSECO消費者信頼感指数(予想:▲36.0)
○16:00 ◇ 6月トルコ鉱工業生産
○21:00 ◎ 7月ブラジルIBGE消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比4.47%)
○21:00 ◇ 6月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比0.3%)
○21:30 ☆ 7月カナダ雇用統計(予想:新規雇用者数変化2.25万人/失業率6.5%)
○10日01:00 ☆ 4-6月期ロシア国内総生産(GDP)速報値(予想:前年比4.2%)
○10日01:00 ◎ 7月ロシアCPI(予想:前月比1.1%)
○シンガポール(独立記念日)、南アフリカ(女性の日)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
8日08:50 日銀金融政策決定会合における主な意見(7月30-31日分)
「物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整することが適切である」
「足もとの経済の状態は、現在の極めて低い政策金利を幾分引き上げることができる程度には良いと考えている」
「金利を引き上げたとしても、0.25%という名目金利は引き続き極めて緩和的な水準であり、経済をしっかりと支えていく姿勢に変わりはない」
「金融政策の正常化が自己目的になってはならず、今後の政策運営については、注意深く進めていく必要がある」
「緩やかなペースの利上げは基調的な物価の上昇に応じて緩和の程度を調整するものであり、引き締め効果を持たない」
「今回の政策変更後も、物価が見通しに沿って推移するもと、前向きな企業行動の持続性が確認されていけば、その都度、金融緩和の一段の調整を進めていくことが必要」
「市場に金利形成を委ねるため、基本的には計画に沿って、国債買入れの減額を淡々と進めていくべき」
「国債買入れの減額計画の目的は、あくまでも市場領域の回復であり、金融引き締めにあるのではない」
8日11:00 鈴木財務相
「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるべき」
「内田日銀副総裁発言へのコメントは控える」
「春闘の力強い結果が徐々に賃金に反映されつつある」
「政策を総動員し、持続的・構造的な賃上げを実現したい」
8日11:49 ブロックRBA(豪準備銀行)総裁
「インフレリスクを警戒」
「必要なら利上げをためらわない」
「6日の理事会で利上げをはっきりと検討した」
「一つの経済指標に反応するわけではない」
「経済が予想よりも早く悪化した場合、金利を引き下げる」
「理事会が現在把握している情報に基づくと、金利が急速に下がるとは考えられない」
9日04:06 メキシコ中銀声明
「景気減速懸念の高まりを背景に利下げを決定」
「3対2で金利引き下げを決定」
「2024年第3四半期のインフレ率を5.2%と予測」
「2024年第4四半期のインフレ率を4.4%と予測」
「2025年第4四半期までにインフレが3%の目標に戻ると引き続き予想」
9日04:11 トランプ前米大統領
「大統領には金融政策に一定の発言権があるべきだ」
「多くの場合、私は連邦準備制度理事会(FRB)議長よりも優れた直感力を持っている」
9日04:19 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「雇用の伸びは落ち着いてきたが、まだ仕事は増え続けている」
「1、2年前に考えられていたよりも、はるかに多くの労働供給がある」
「新規採用も解雇もない、まさに現状維持の状況にある」
「状況は好転するかもしれないし、悪化するかもしれない」
「経済指標が通常の範囲に近づいてきている」
「失業率は上がることが示唆される」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=5日線を追うように下押し先行も持ち直す>
下影陽線引け。
145円後半で低下中だった5日移動平均線を追うように下押しが先行し、145.44円まで下落する場面もあった。
しかし持ち直し、147円台へ戻してNYを引けている。
長めの下ひげをともなう足型を形成した。
底堅さの示唆といえる。
まだ一目均衡表・転換線148.46円が抵抗になり続けている感はあるものの、このレンジで一定の底堅さを維持できれば、週明けにも147円台へ低下する見込みの転換線をやがて上回り、上値の重さは軽減するだろう。
レジスタンス2 148.46(日足一目均衡表・転換線)
レジスタンス1 147.90(8/7高値)
前日終値 147.23
サポート1 145.93(ピボット・サポート1)
<ユーロドル=転換線・基準線前後の底堅さ確認できた>
下影極小陰線引け。
一目均衡表・転換線と基準線が重なる1.0893ドルを割り込む下振れもあった。
しかし安値は1.0882ドルまでと、1.0880ドル前後で上昇中の21日移動平均線を割り込んでいない。
転換線・基準線前後で下げ渋った格好で、同レンジでの底堅さが確認できた。
転換線はやがて切り上がる公算で、同線の動向に沿ったじり高の流れが期待できる。
レジスタンス1 1.1008(8/5高値)
前日終値 1.0919
サポート1 1.0881(21日移動平均線)
<ユーロ円=転換線付近の攻防>
下影陽線引け。
159円前半で低下中の5日移動平均線を割り込む下押しが先行した。
一時158.97円まで下振れている。
しかし160円台へ反発してNYを引ける底堅さを示した。
ここからは一目均衡表・転換線161.19円付近の攻防が想定でき、いったん押し返される展開も視野に入れて臨むべきか。
しかし来週後半にも底打ちする見込みの同線の流れに沿って次第に持ち直すことが予想される。
レジスタンス1 161.44(8/7高値)
前日終値 160.77
サポート1 159.53(ピボット・サポート1)
<豪ドル円=転換線付近で不安定に推移する可能性も>
下影陽線引け。
7日は一目均衡表・転換線95.97円を上回る水準の重さに押し返された。
しかし昨日は同線を下回ったところをおおむね下ひげにする格好で底堅さを回復。
97円台まで上値を伸ばした。
ただ、転換線は週明けにも低下を再開し、やがて93円台まで切り下がる見込み。
同線の動向に引っ張られ不安定に推移するリスクもある。
だが、転換線が次第に持ち直す流れに沿って底堅さを示す展開が想定できる。
レジスタンス1 97.91(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 97.09
サポート1 95.93(8/8レンジ半値水準)
Provided by
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