本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):米金融政策は転換点、中東リスク再燃もドル円の重しに(2024年8月26日)

マーケットレポート

August 26, 2024

【前日の為替概況】ユーロドル、反発 FRB議長が利下げ開始示唆でドル売る動き広がる

23日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反発。
終値は1.1192ドルと前営業日NY終値(1.1112ドル)と比べて0.0080ドル程度のユーロ高水準だった。
米重要イベントを前にしばらくは1.11ドル台前半でのもみ合いが続いていたが、NYの取引時間帯に入ると強含んだ。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はジャクソンホール会議での講演で「政策を調整する時が来た」「インフレ率が2%への軌道にあるとの確信強めた」と述べたほか、「労働市場がこれ以上減速することを歓迎しない」などと発言。
市場では「9月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始をほぼ明言した」と受け止められ、ドルを売る動きが広がった。
3時過ぎには一時1.1201ドルと昨年7月20日以来約1年1カ月ぶりの高値を付けた。

主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時100.60と昨年7月27日以来の低水準を更新した。

ドル円は大幅反落。
終値は144.37円と前営業日NY終値(146.29円)と比べて1円92銭程度のドル安水準だった。
米重要イベントを前にポジション調整目的の買いが先行すると一時146.48円と日通し高値を付けたものの、前日の高値146.53円がレジスタンスとして働くと失速した。
パウエルFRB議長の発言を受けてFRBによる9月利下げ転換が改めて意識されると、米長期金利の低下とともに全般ドル売りが活発化。
前日の安値144.85円や21日の安値144.46円を下抜けて一時144.05円まで値を下げた。
米長期金利の指標となる米10年債利回りは3.78%台まで低下した。

なお、ボスティック米アトランタ連銀総裁は「利下げを開始する準備が整いつつある」と述べたほか、ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁も「金利を引き下げ始める必要がある」との考えを示した。

ユーロ円は3営業日ぶりに反落。
終値は161.58円と前営業日NY終値(162.56円)と比べて98銭程度のユーロ安水準。
23時前に一時162.71円と日通し高値を付けたものの、前日の高値162.91円が目先レジスタンスとして意識されると失速。
4時30分過ぎには161.21円と日通し安値を更新した。
ドル円につれた動きとなった。

【本日の東京為替見通し】米金融政策は転換点、中東リスク再燃もドル円の重しに

本日のドル円は上値が重いか
先週末のカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(通称・ジャクソンホール会合)でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「政策を調整する時が来た」と述べ、改めて米金融政策が転換点を迎えたことを示した。
市場ではこれまでの50ベーシスポイントの利下げ予想に傾くほどの過熱感はないが、冷静に今後の米金利低下を織り込んでいくことになるだろう。
一方、同日に植田日銀総裁は日銀の調整の姿勢は変わらないことも示した。

前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に発表された米経済指標は、7月の雇用統計は弱く、同月消費者物価指数(CPI)はほぼ予想通りとなるなど、7月末からはやや弱い経済指標が優勢だった。
その間に内田日銀副総裁が植田日銀総裁の発言があまりにもタカ派と受けとめられたことをスムージングしたとはいえ、ドル円相場は8月中旬には149円台まで反発した。
この動きは、あまりにも長期間にわたり円安地合いが続いたことで、すぐにまた円売り相場に戻るという考えを払しょくできなかったことでおきたのだろう。

一部では、これまでIMM(シカゴ投機筋)のポジションが円ショートだったものが、僅かに円ロングに傾いただけで「円キャリートレードの余地が広がった」という声すらあった。
7月の日米中銀の声明でトレンドの流れが変わったのにもかかわらず、いまだに円ショートに慣れてしまっていることで、ドル円のロングから抜け出せない市場参加者が多く、当面のドル円は上値が重くなりそうだ。

また、欧米の投資家は円だけではなく、他のアジア通貨も軒並み買っていることもドル円の上値を抑えるだろう。
7月31日から先週までの間で、円は約3.9%対ドルで強含んだが、インドネシアルピアとマレーシアリンギは5%弱、タイバーツは4%程度、対ドルで上昇している。
他のフィリピンペソ、韓国ウォン、台湾ドル、シンガポールドルなども対ドルで買われていることをみても分かるように、欧米の投資家は7月末を境にポートフォリオを完全に転換している。

本邦投資家よりも中銀の動向に機敏に反応することができる欧米投資家が、この動きを継続することが考えられ本邦勢は乗り遅れている状況だ。
米連邦準備理事会(FRB)の金融政策が転換点を迎えただけではなく、ドル相場も7月末時点で転換点を迎えていたことに気が付かなくてはならないのだろう。

週末25日にはレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが、イスラエルに向けて数百発のロケット弾とドローンを発射した。
もっとも、イスラエルが攻撃を察知していたこともあり、ヒズボラの先制攻撃も限定的だったとの報道もある。
ヒズボラは今回の攻撃で「第1段階の報復は完了」としたが、「第2段階」の報復までに停戦協議が進むのか否かにより中東情勢の変化もあり、為替市場も中東情勢には目が離せずリスク回避の動きが優勢となるか。

なお、本日は本邦からは6月景気動向指数改定値が発表される程度で、アジア時間は他国も主だった経済指標の発表が予定されていない。
しかし、パウエルFRB議長発言後に多くの通貨が値幅を伴って動いたことで、本日の東京市場でも乱高下が予想される。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○14:00 ◇ 6月景気動向指数改定値

<海外>
○17:00 ◎ 8月独Ifo企業景況感指数(予想:86.0)
○21:30 ◎ 7月米耐久財受注額(予想:前月比4.2%/輸送用機器を除く前月比横ばい)
○インド(クリシュナ神生誕日)、英国(サマーバンクホリデー)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

23日09:36 植田和男日銀総裁
「ドル円相場は一方的な円安の修正が進んだかたち」
「内外市場は引き続き不安定で高い緊張感を持って注視」
「8月中旬以降、株価も上昇している」
「米国経済に過度に悲観的な見方が修正された」
「8月初めの株安背景は、米景気減速懸念が急激に広がったことなどが要因」
「8月初めの急激な円高、世界的ドル安と日銀の政策変更も背景にある」
「7月利上げは、物価見通しと輸入物価上昇による物価上振れリスクを考慮」
「金融資本市場が経済・物価に及ぼす影響や、7月利上げの影響を見極める」
「見通し通りの経済・物価実現の確度の高まりが確認できれば、金融緩和の度合いを調整」
「経済物価への為替レートの影響、引き続きしっかり点検していきたい」
「為替、物価見通しの中心値に影響与えることある」
「為替変動、輸入物価の景気への影響などさまざまな経路でCPIに影響」
「日本の金利は依然として低く、経済が回復すれば中立と見なされる水準まで上昇する見込み」
「為替変動、物価の中心的見通しに影響与えなくてもリスクへの配慮必要なこともある」
「中立金利の試算では、長い間低金利が続き、金利上昇で何が起こるか十分なデータない可能性ある」
「中立金利は、自信をもって示せるものあれば示したいがなかなかそうではない」
「7月利上げ、中立金利より下の緩和的状況での金利調整」

23日14:28
「物価見通しは2026年にかけて2%に収束していく」
「金融市場が大きく動いた場合は見通しへの影響の観点で考慮する」
「金融政策の考え方で副総裁との間に違いはない」

23日09:47 加藤日銀理事
「緩和的な金融環境を維持し、経済を支える」
「ETFの処分をすぐに行うことは考えていない」

23日10:14 鈴木財務相
「デフレ脱却宣言していない。後戻りする可能性は否定できない」
「為替が急激に変化することは望ましくない」

23日14:04 カザークス・ラトビア中銀総裁
「欧州中央銀行(ECB)は、年内さらに2回利下げする余地がある」
「インフレ率は政策当局が想定する下降軌道をおおむね維持している」

23日21:47 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「インフレ率が2%に戻るまで政策金利の変更を待つことはできない」
「利下げを開始する準備が整いつつある」
「穏やかで秩序立った正常化への回帰を望んでいる」
「インフレ率はFRBの目標にまだ特に近くない」
「労働市場は、より正常化された状態に戻りつつあることを示すサイン」

23日23:00 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「インフレ率が2%への軌道にあるとの確信強めた」
「政策を調整する時が来た」
「労働市場についてはこれ以上の冷え込みを求めも望みもしない」
「物価安定に向けてさらに前進する中で、我々は力強い労働市場を支えるために全力を尽くす」
「インフレの上昇リスクは減少し、雇用の下落リスクは増加している」
「今やインフレは目標にかなり近づいている」
「現行の金利水準はリスク対応に十分な余地を与える」
「利下げの時期とペースはデータや見通し、リスク次第」
「労働市場の冷え込みは間違いない」

24日00:08 ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁
「金利を引き下げ始める必要がある」

24日00:09 ベイリー英中銀(BOE)総裁
「インフレに対する勝利を宣言するのは時期尚早」
「中国発のディスインフレの兆候がある」

24日01:19 レーン・フィンランド中銀総裁
「我々は為替レートをターゲットにしていない」
「金利決定について事前にコミットしない」
「ディスインフレと弱い経済が9月利下げを示唆」
「インフレ率の低下傾向は軌道に乗っている」

24日01:53 グールズビー米シカゴ連銀総裁
「責務である雇用面について慎重になりたい」
「インフレ率は2%に向かっている」
「予測では利下げへの支持が広がっている」
「ほぼすべての指標で雇用市場は冷え込んでいる」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=転換線が示唆するさえない推移継続か>

ドル円0826

パラメータ0826

大陰線引け。
一目均衡表・転換線146.72円を下回る水準で重い動きが続いた。
8月6日以来の144円割れをうかがう状況となった。
週明けは144円を割り込む動きとなっている。

転換線はじりじり低下を続ける見込み。
同線の動向が示唆するさえない推移が継続するか。
5日安値141.70円を視野に入れた展開を想定しておきたい。

レジスタンス1 145.07(5日移動平均線)
前日終値 144.37
サポート1 143.45(ピボット・サポート1)
サポート2 141.70(8/5安値)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=5日線を下回る水準から1.12ドル台まで上昇>

ユーロドル0826

パラメータ0826

陽線引け。
1.11ドル前半で上昇中の5日移動平均線を下回る水準では底堅さを示し、上昇した。
1.1201ドルまで年初来高値を更新している。
昨年7月以来の1.12ドル台回復とあって、調整が入る余地はある。

しかし、上昇中の5日線を大きく下回る動きまでには、まだなりにくいだろう。
昨年7月18日高値1.1276ドルなどを目先の目標に上値を試す展開を予想する。

レジスタンス1 1.1276(2023/7/18)
前日終値 1.1192
サポート1 1.1105(8/23安値)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ユーロ円=転換線が基準線を上回っても楽観できない>

ユーロ円0826

パラメータ0826

陰線引け。
163円台で推移する一目均衡表・基準線を下回る水準から、同・転換線162.16円を下抜けるところまで下落が進んだ。
現状からすれば、転換線は28日に基準線を上回る見込み。

定義上は買いサインが1つ増えることになるが、基準線の低下が主因であるためポジティブではない。
基準線の低下が示唆する重い動きがしばらく続くとみる。

レジスタンス1 161.83(5日移動平均線)
前日終値 161.58
サポート1 159.79(8/12安値)

>ユーロ円のリアルタイムチャートはこちら

<豪ドル円=基準線に追随して下値を探るリスクが気になる>

豪ドル円0826

パラメータ0826

小陽線引け。
一目均衡表・転換線前後の攻防だった。
週明け転換線は97.90円に位置しているが、同線付近からの下放れつつある。

ここからは、むしろ低下傾向の一目・基準線97.79円に追随して下値を探るリスクが気になるところ。
97円の節目近辺で下げ渋った19日安値96.99円を下抜けると下落が加速しそうだ。

レジスタンス1 98.61(8/23高値)
前日終値 98.13
サポート1 96.99(8/19安値)

>豪ドル円のリアルタイムチャートはこちら

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