December 2, 2024
【前日の為替概況】ドル円、反落 日銀の追加利上げ観測を背景に円高・ドル安
29日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。
終値は149.77円と前営業日NY終値(151.55円)と比べて1円78銭程度のドル安水準だった。
米感謝祭翌日で米債券・株式・商品市場が短縮取引となったことから取引参加者が少なく、NY市場に入るとしばらくは比較的狭い範囲での推移にとどまった。
売買は盛り上がりを欠き、150.00円を挟んだ方向感に乏しい値動きだった。
ただ、日経新聞電子版が植田和男日銀総裁のインタビュー記事を報じると全般円買いが優勢に。
植田総裁は同紙に対して「(追加利上げの時期について)データが想定通りに推移しているという意味では近づいているといえる」「インフレ率が2%を超え始めているときに一段の円安になれば、それは中銀にとってはリスクが大きい動きとして、場合によっては対応しないといけなくなる」などと発言。
日銀の追加利上げ観測を背景に円高・ドル安が進み、3時過ぎには一時149.47円と10月21日以来の安値を付けた。
米連邦準備理事会(FRB)による12月利下げを織り込む向きが増える中、長期金利の指標となる米10年債利回りが一時4.1685%前後と10月22日以来の低水準を付けたことも相場の重しとなった。
ユーロドルは小反発。
終値は1.0577ドルと前営業日NY終値(1.0552ドル)と比べて0.0025ドル程度のユーロ高水準だった。
欧州序盤に一時1.0597ドルと20日以来の高値を付けたものの、買い戻しが一巡すると次第に弱含んだ。
欧州中央銀行(ECB)の大幅利下げ観測を背景に独長期金利が約2カ月ぶりの低水準を付けたことがユーロ売りを誘ったほか、この日発表の11月ユーロ圏HICPコア速報値が予想を下回ったことが相場の重し。
2時前には一時1.0542ドルと日通し安値を更新した。
ただ、米長期金利の低下に伴うユーロ買い・ドル売りが入ると1.0585ドル付近まで持ち直している。
もっとも、米国では28日の感謝祭の祝日をきっかけに連休に入っている市場参加者が多く、商いは低調。
相場は明確な方向感に乏しかった。
ユーロ円は反落。
終値は158.41円と前営業日NY終値(159.90円)と比べて1円49銭程度のユーロ安水準。
日銀が12月に追加利上げに踏み切るとの観測を背景に、NY市場に入っても円買い・ユーロ売りが入りやすかった。
植田日銀総裁が「一段の円安はリスクが大きい。
場合によっては政策変更で対応しないといけなくなる」との見解を示すと一時158.04円と9月19日以来の安値を更新した。
【本日の東京為替見通し】日銀利上げ既定路線か?債券サーベイが更に背中を押すか注目
本日の東京時間のドル円は、上値が重いか。
これまで植田日銀総裁をはじめ日銀要人は、利上げをしたいにもかかわらず、石破総理が就任し、10月の総選挙が決定したことで、政権の意向を組み「経済物価が見通し通り動けば緩和の度合いを調整するが、本当にそうか見極める時間があるので丁寧にやる」とタカ派姿勢が後退させていた。
しかし、総選挙が終了したとほぼ同時の10月31日には、「時間的な余裕がある(という言葉)は今後使わない」と再びタカ派路線に戻っている。
ただ、タカ派後退発言以後の本邦経済指標(全国CPIコア、同・刈込平均値、実質賃金、実質GDP)の結果は、インフレ率のコアコア以外はどれも低下し、GDPは前月分の大幅下方修正を含め悪化したものだった。
これらの弱まった指標結果にもかかわらず、週末の日経新聞によるインタビューでは植田日銀総裁は「データはオントラック」と述べているが、「オントラック」だったのは選挙前からであり、「時間的な余裕」発言を撤回したのが、総選挙の終了と同時に政治的圧力が緩和されたことで、以前から追加利上げをしたかったことが示されている(注:植田総裁の日経インタビューは28日に行われたもので、29日の東京都区部のCPI発表前)。
日銀が一時的に利上げを停止し政府の意向を組んだのは、日本銀行法(第4条)で「金融政策が『政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない』」とされているように、他国のような厳密な独立性がなく、政府の要望には逆らえない状況だったからだろう。
また、上述のように先週29日に発表された11月の東京都区部CPIでは生鮮食品を除いた結果が、前月の1.8%増や市場予想の2.1%増を上回る2.2%増となったことが、より利上げへの大義名分となるのだろう。
よって、今月18-19日もしくは来年1月23-24日の日銀政策決定会合での利上げはほぼ既定路線なのではないだろうか。
日銀の利上げが確実視される中で、先週にはニュージーランドや韓国が利下げしたように、他国の中銀は利下げに傾いている。
他国中銀には利下げ圧力が高く、一方で日銀の利上げの可能性が高まっていることで、中銀間の方向性の違いで円は買われやすそうだ。
利上げが既定路線にある中で、本日は日銀から16時発表予定の「債券市場サーベイ」に注目したい。
この数年間は12月発表の「サーベイ」の結果が、日銀の決定に影響を与えたとされている。
一昨年(2022年)は、「サーベイ」の結果で、これまで以上に国債市場の機能度が悪化したことが判明すると、日銀は12月の政策決定会合で長期金利の許容変動幅を従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大すると発表した。
昨年(2023年)は、「サーベイ」が日銀に対応を迫るような結果ではなかったことで、超緩和策が維持され、フォワードガイダンスの文言にも修正が無かったとされている。
今年も、このサーベイが今月18-19日に行われる政策決定会合に大きな影響を与える可能性もあることで、要注目となりそうだ。
円以外では豪ドルの動きにも要警戒。
本日は豪州から10月の住宅建設許可件数と小売売上高、中国から11月Caixin製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表される。
12月9-10日の豪準備銀行(RBA)理事会が予定されていることで、豪州の経済指標や豪ドルが反応しやすい中国の指標に注目したい。
また、先週同様にトランプ次期大統領がSNS(TruthSocial)を通して、様々な決定を発表する可能性もあることで、引き続きSNSからも目が離せないだろう。
【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 7-9月期の法人企業統計調査(法人季報、ソフトウェアを含む設備投資額、予想:前年比6.7%)
<海外>
○09:30 ◎ 10月豪住宅建設許可件数(予想:前月比1.3%)
○09:30 ◎ 10月豪小売売上高(予想:前月比0.4%)
○10:45 ◎ 11月Caixin中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:50.6)
○16:00 ◇ 11月トルコ製造業PMI
○16:00 ◇ 11月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比0.2%)
○16:30 ◇ 10月スイス小売売上高
○17:30 ◇ 11月スイス製造業PMI(予想:49.5)
○17:50 ◎ 11月仏製造業PMI改定値(予想:43.2)
○17:55 ◎ 11月独製造業PMI改定値(予想:43.2)
○18:00 ◎ 11月ユーロ圏製造業PMI改定値(予想:45.2)
○18:30 ◎ 11月英製造業PMI改定値(予想:48.6)
○19:00 ◎ 10月ユーロ圏失業率(予想:6.3%)
○23:45 ◎ 11月米製造業PMI改定値(予想:48.8)
○24:00 ☆ 11月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数(予想:47.6)
○24:00 ◇ 10月米建設支出(予想:前月比0.2%)
○24:00 ◇ 11月メキシコ製造業PMI
○3日05:15 ◎ ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事、あいさつ
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
29日19:35 ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁
「関税は積極的な利下げを正当化する可能性」
29日20:30 ベイリー英中銀(BOE)総裁
「経済成長を強く支持している」
「ストレステストは金融セクターの競争力向上に寄与する」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=雲上限付近の攻防>
大陰線引け。
一時149.47円と、10月21日以来の安値まで下落幅を広げた。
一目均衡表・雲の上限149.57円近辺の攻防となる。
上昇中の雲の上限が支えになる可能性はあるものの、現水準152.68円から雲付近へ低下してくる見込みの一目・転換線が次第に重しになってくるとみる。
レジスタンス1 150.46(11/27安値)
前日終値 149.77
サポート1 148.85(10/15安値)
サポート2 148.30(10/10安値)
<ユーロドル=下押す可能性も、転換線を維持できるか注目>
小陽線引け。
一時1.0597ドルと、11月20日以来の1.06ドル回復をうかがう状態となった。
同節目や1.0612ドル前後で低下中の21日移動平均線が目先の抵抗。
一目均衡表・基準線1.0636ドルも重しとなる。
いったん下押す展開も想定しておきたいが、上昇が予想される一目均衡表・転換線1.0473ドルを下抜けなければ反発の流れは崩れていないと判断してよいだろう。
レジスタンス1 1.0636(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 1.0577
サポート1 1.0473(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=下抜けた159.10円付近の戻り売り圧力想定>
陰線引け。
一目均衡表・雲の下限160.09円付近から下放れ、11月27日に下げ渋った159.10円も割り込んで下落が加速した。
9月19日以来の158円割れをうかがう状況。
下抜けた159.10円付近の戻り売り圧力も想定でき、下値を探る展開が続きそうだ。
レジスタンス1 159.10(11/27安値)
前日終値 158.41
サポート1 157.64(ピボット・サポート1)
<豪ドル円=雲付近からの下放れ懸念される状態>
陰線引け。
一時97.45円と、一目均衡表・雲の下限97.64円を下抜けた。
終値でも雲の下限を回復できなかった。
雲付近からの下放れが懸念される状態。
下落が強まった場合、9月20日安値96.71円などを目先のめどに下値を探ることになるか。
レジスタンス1 98.16(5日移動平均線)
前日終値 97.51
サポート1 96.71(9/20安値)
Provided by
DZH Finacial Research
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