2023/06/16 11:54
(1) 長短金利操作 (イールドカーブ・コントロール) ( 全員一致)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
短期金利: 日本銀行当座預金のうち政策金利残高に ▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利 : 10年物国金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要 な金額の長期国債の買入れを行う。
長短金利操作の運用
長期金利の変動幅を 「±0.5%程度」 とし、10年物国債金利について0.5%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、 毎営業 日、実施する。上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を 促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペを実施する。
(2) 資産買入れ方針 (全員一致)
長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。
1ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約 1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
2CP等は、約2兆円の残高を維持する。社債等は、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準 (約3兆円) へと 徐々に戻していく。 ただし、 社債等の買入れ残高の調整は、社債の発行環境 に十分配慮して進めることとする。
2. わが国の景気は、既往の資源高の影響などを受けつつも、 持ち直している。 海外経済は、回復ペースが鈍化している。 そうした影響を受けつつも、 輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、 横ばい圏内の動きとなっている。 企業収益が全体として高水準で推移するもとで、 設備投資は緩やかに増加している。 雇用・所得環境は緩やかに改善している。 個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、 緩やかに増加している。 住宅投資は弱めの動きとなっている。 公共投資は緩やかに 増加している。わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。 物価面では、消費者物価 (除く生鮮食品) の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、 ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、 足もとは3%台半ばとなっている。 予想物価上昇率は、上昇したあと、このところ横ばいとなっている。
3. 先行きのわが国経済を展望すると、 今年度半ば頃にかけては、既往の資源高や海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかに回復していくとみられる。 その後は、所得から支 出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、 潜在成長率を上回る成長を 続けると考えられる。 ただし、 成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い。 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影 響が減衰していくもとで、 今年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の価格・賃金設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもと で、振れを伴いながらも、 再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。
4.リスク要因をみると、 海外の経済・物価動向、 今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。 そのもとで、 金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、 十分注視する必要がある。
5. 日本銀行は、 内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の 「物価安定の目標」を持続的安定的に実現することを目指していく。「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。 マネタリーベースにつ いては、消費者物価指数 (除く生鮮食品) の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。 引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。