- ✓中間選挙で何が選ばれ、いまの勢力図はどうなっているか
- ✓予測市場・世論調査から見た最新の情勢と、勝敗を左右する上院の接戦州
- ✓日本時間で見た開票スケジュールと、結果の確定が遅れやすい州
- ✓過去の中間選挙の前後で、米国株・米金利・ドル円・金はどう動いたか(当社計算)
- ✓結果別のシナリオ(米国株・ドル円・米金利・金)と、選挙前後の注目日程
中間選挙とは:何が選ばれるのか
中間選挙は、4年ごとの大統領選挙の間(2年目)に行われる議会選挙です。大統領は選ばれませんが、法律や予算を決める議会の勢力が変わるため、政権の政策運営を左右します。今回、選挙の対象になるのは以下の通りです。
※下院の無所属1人(カリフォルニア州のカイリー議員)は共和党会派、欠員2はフロリダ州20区とテキサス州23区。上院の無所属2人は民主党会派。上院は50対50なら副大統領の1票で共和党が多数派
現在は上下両院とも共和党が多数派で、トランプ大統領の政策を議会が後押しする「統一政府」の状態です。下院は共和党218議席に対し民主党214議席と差はわずかで、民主党は数議席を上積みすれば多数派を奪還できます。上院は共和党53議席に対し民主党系47議席(無所属2人を含む)で、民主党が多数派になるには差し引きで4議席を増やし、51議席に届かせる必要があります。50対50の場合は、上院議長を兼ねるバンス副大統領の1票で共和党が多数派を維持します。
上院は法案だけでなく、閣僚やFRB(米連邦準備制度理事会)の理事など政府高官の人事を承認する権限も持っています。このため、上院の多数派がどちらになるかは、2027年以降の政策運営や人事を通じて、金融市場にも影響しうる点が注目されています。
最新の情勢:予測では民主党が優勢
投票日を目前に控え、予測市場(選挙結果などを対象に売買する市場で、価格が確率の目安になる)や選挙予測モデルは、そろって民主党の優勢を示しています。下院は9割を超える確率で民主党の奪還が見込まれ、上院も民主党が多数派を取る見方が優勢です。前週(10月22日)と比べて大きな変化はありません。ただし、上院は予測によって確率に幅があり、選挙情報会社Decision Desk HQの予測は60%と、予測市場より慎重です。
| 予測 | 時点 | 下院(民主党) | 上院(民主党) |
|---|---|---|---|
| Polymarket(予測市場) | 10月29日 | 93% | 69% |
| Kalshi(予測市場) | 10月29日 | 92% | 67% |
| Silver Bulletin(ネイト・シルバー氏) | 10月22日 | 95% | 76% |
| Decision Desk HQ | 10月29日 | — | 60% |
出所: 予測市場の比較サイトDeFi Rate(Polymarket・Kalshi、10月29日 午後8時54分 米東部時間)、Silver BulletinはNewsweek(10月23日)、Decision Desk HQは同社のX(旧ツイッター)の投稿(10月29日)。確率は民主党が多数派を取る確率。Kalshiの上院はDeFi Rateが2つの取引から算出した値
※予測市場の価格に基づく確率。各組み合わせの価格をそのまま示しているため、合計は100%にならない
選挙後の議会の組み合わせで見ると、「両院とも民主党」が68%と最も有力で、「下院は民主党・上院は共和党」のねじれが27%、「両院とも共和党」の現状維持は7%です。前週と比べると、ねじれの確率が2ポイントほど上がっており、上院の接戦州で共和党が踏みとどまる可能性も意識されています。どの組み合わせになるかで、来年以降の政策と相場への影響が変わります(後述のシナリオ別の見立てを参照)。
背景にある大統領の支持率の低迷と物価への不満
トランプ大統領の支持率は、世論調査の集計サイトSilver Bulletinの平均で37.4%、不支持は約60%です(10月29日時点)。どちらの党の議員に投票するかを尋ねる「一般投票」の調査では、民主党が8.7ポイントリードしています。10月22日に付けた今回の選挙戦で最大の差(9.2ポイント)からはやや縮みましたが、民主党の優位は続いています。AP通信とシカゴ大学NORCの10月の調査では、有権者の85%が「経済」、84%が「生活費」を最も重要な争点の一つに挙げており、物価高への不満が与党に逆風となっています。
期日前投票も活発です。10月28日午後までに期日前投票(郵便投票を含む)は3,900万票を超えました(ワシントン・ポストの集計)。
※大統領の与党の下院議席の増減。オレンジは第1次トランプ政権下の2018年(-41議席で下院の多数派を失った)。スマホ表示は1994年以降
歴史的にも、中間選挙は大統領の与党に厳しい選挙です。1946年以降の20回のうち、与党が下院の議席を増やしたのは1998年と2002年の2回だけで、平均では25.7議席を失っています。第1次トランプ政権下の2018年にも、共和党は41議席を失って下院の多数派を明け渡しました。
勝敗を左右する上院の接戦州
上院の主な接戦州の情勢は以下の通りです。
| 州 | 現職の党 | 主な対決 | 情勢 |
|---|---|---|---|
| ノースカロライナ | 共和 | ワトリー(共和)対 クーパー(民主・前知事) | 民主優勢。RealClearPoliticsの平均でクーパー氏が約11ポイントリード |
| メーン | 共和 | コリンズ(共和・現職)対 ジャクソン(民主) | 3社ともトスアップ。CNNの調査ではジャクソン氏が49対45 |
| オハイオ(補選) | 共和 | ハステッド(共和・現職)対 ブラウン(民主・元議員) | トスアップ〜民主やや有利。サフォーク大の調査でブラウン氏が47対44 |
| テキサス | 共和 | パクストン(共和)対 タラリコ(民主) | トスアップ〜民主やや有利。CNNの調査ではタラリコ氏が49対43 |
| アラスカ | 共和 | サリバン(共和・現職)対 ペルトラ(民主) | トスアップ〜民主寄り。ペルトラ氏がややリードする調査が多い |
| アイオワ | 共和 | ヒンソン(共和)対 トゥレク(民主) | トスアップ〜共和やや有利。首位が入れ替わる接戦 |
| カンザス | 共和 | マーシャル(共和・現職)対 ハミルトン(民主) | トスアップ〜共和やや有利。CNNの調査ではハミルトン氏が49対45、平均ではほぼ互角 |
| サウスカロライナ | 共和 | グラハム(共和・現職)対 アンドルーズ(民主) | 共和やや有利。世論調査の平均ではグラハム氏が2ポイント前後のリード(NYT・シエナ大の調査では48対48) |
| ミシガン | 民主 | ロジャーズ(共和)対 エルサイード(民主) | トスアップ〜民主寄り。CNNの調査ではエルサイード氏が49対42 |
出所: Cook Political Report(10月20日)、Inside Elections(10月29日)、Sabato’s Crystal Ball(10月27日)の評価、各種世論調査(CNN・SSRS、Suffolk、Emerson ほか、10月)、RealClearPolitics、PollCheck(10月27日)。「トスアップ」は勝敗予想がつかない接戦の意味。サウスカロライナ州のグラハム氏は、7月に死去したリンゼー・グラハム氏の後任として任命された同氏の妹
民主党が上院の多数派を取るには、現職が共和党の州で差し引き4議席を奪う必要があります。民主党が優勢なノースカロライナに加え、メーン、オハイオ、テキサス、アラスカなど共和党の地盤だった州でも接戦が続き、カンザスやサウスカロライナでも差が縮まっています。報道によると、選挙予測サイトのInside Electionsは10月29日、テキサスとオハイオの評価を「トスアップ」から「民主やや有利」に変更しました。
一方、アラスカ州では、投票用紙に現職と同じ名前の別の候補(ダニエル・J・サリバン氏)が載っていることを巡り、司法省が10月22日、有権者が混乱した可能性があるとして、現職のサリバン氏が同名の候補の得票数より少ない差で敗れた場合に、結果の認定を止めるよう求める訴訟を起こしました。トランプ大統領は自らが指示したと述べる一方、共和党が主導する州政府は「法的根拠がない」として訴えの却下を求めています(アラスカ公共放送、CBSニュースなどの報道による)。接戦の州で結果の確定が長引けば、上院の多数派の確定も遅れ、市場の不透明感が続く可能性があります。
州知事選では、テキサス州のアボット知事(共和)の再選がかかっています。アボット氏は8月、送電網への接続を待つデータセンター計画の審査を州の電力当局に命じ、審査を終えるまで接続手続きが止まりました(テキサス・トリビューンなどの報道による)。AI関連株の材料としても注目されており、世論調査ではアボット氏が民主党のイノホサ氏を4ポイント前後リードしています(エマーソン大、10月17〜19日調査)。
日本時間で見る開票スケジュール
投票日の11月3日(火)は日本の祝日(文化の日)で、東京市場は休場です。米国は11月1日に冬時間に切り替わるため、米東部時間に14時間を足すと日本時間になります。日本時間では4日(水)の朝8時から順次投票が締め切られ、東京市場の取引時間中に開票が進みます。主な締め切り時刻は以下の通りです。
| 日本時間(11月4日) | 米東部時間(11月3日) | 投票が締め切られる主な州 | 注目点 |
|---|---|---|---|
| 8:00 | 午後6時 | インディアナ・ケンタッキーの一部 | 最初の締め切り |
| 9:00 | 午後7時 | ジョージア・サウスカロライナ・バージニアなど | サウスカロライナ上院選 |
| 9:30 | 午後7時30分 | ノースカロライナ・オハイオなど | 上院の焦点のオハイオ州 |
| 10:00 | 午後8時 | メーン・フロリダ・ペンシルベニアなど(テキサス・ミシガン・カンザスの大部分も) | メーン上院選、下院の激戦区 |
| 11:00 | 午後9時 | アイオワ・ミネソタなど(テキサス・ミシガン・カンザスの残りの地域、ネブラスカの大部分) | アイオワ・カンザス・テキサス上院選 |
| 12:00 | 午後10時 | ネバダ・ユタ・モンタナなど(ネブラスカ西部も) | 西部の州 |
| 13:00 | 午後11時 | カリフォルニア・ワシントン・オレゴン | 下院の激戦区が多いカリフォルニア州 |
| 14:00〜15:00 | 午前0時〜1時 | アラスカ・ハワイ | アラスカ上院選(最後の締め切り) |
出所: 各州の選挙管理当局の公表時刻をまとめた報道(The Open Count など)。州内で時間帯が分かれる州は、最後の締め切り時刻を基準にしている
ただし、締め切り直後に大勢が判明するとは限りません。郵便投票の多いカリフォルニア州は、投票日の後に届いた郵便投票も11月10日まで受け付けるため、集計に数週間かかることがあります。アラスカ州は過半数を取る候補がいない場合、11月18日に順位選択投票の集計を行います。前回2022年の中間選挙でも、共和党の下院の多数派確保が報じられたのは投票日から8日後でした。上院が接戦になれば、多数派の確定が数日から数週間ずれ込む可能性があります。
選挙前後の注目日程
選挙の前後には、FOMC(米連邦公開市場委員会)や日銀会合、米雇用統計など相場を動かす材料も集中しています。
出所: FRB、日本銀行、米労働統計局(BLS)、各社IR、アラスカ州・ジョージア州の選挙管理当局、米議会調査局(CRS)、CME FedWatch。日付は現地時間(FOMCの決定は米国時間、日銀は日本時間)。日銀の結果は2026年10月30日の「当面の金融政策運営について」による
金融市場への影響
足元の相場:AI関連株の調整と高金利が重荷
選挙を前にした足元の金融市場は、AI投資の採算への懸念と、米国の高金利が重荷になっています。アルファベットは10月29日、四半期のフリーキャッシュフロー(自由に使える現金)がマイナスになったことなどが嫌気され、上場来で最大の下落率(12.6%)を記録しました(NBCニュースなどの報道による)。米10年債利回りは10月5日に5.31%(終値)と2002年以来の高水準を付けた後、AI関連株の調整を受けた安全資産への資金移動で低下し、29日は4.98%でした。
| 指標 | 10月29日の水準 | 補足 |
|---|---|---|
| S&P500 | 7,720.39 | 年初来+12.8%、10月は+0.9%。10月6日の最高値7,818.93を1.3%下回る |
| ナスダック総合 | 26,184.72 | 29日は-1.38%。10月は-2.5%と、AI関連株の売りが重荷 |
| NYダウ | 52,342.56 | 年初来+8.9%、10月は+2.8% |
| 米10年債利回り | 4.98% | 10月5日の5.31%から低下。22日に5%を下回り、その後は5%前後で推移 |
| ドル円 | 157円台後半 | 10月は156〜158円台で推移 |
| 金(COMEX先物) | 約4,030ドル | 年初来-7.1%、10月は-3.7%。1月29日の最高値(終値)から-24.2% |
| WTI原油(先物) | 約102ドル | 中東情勢を背景に、年初の50ドル台から大幅に上昇 |
| VIX(恐怖指数) | 17.20 | 選挙を前にしても比較的落ち着いた水準 |
| FRBの政策金利 | 3.75〜4.00% | 10月28日に据え置き。12月の利上げの織り込みは約8割 |
出所: 各取引所・指数算出会社(株価指数・金・原油・VIX)、米財務省(米10年債利回り)、FRB、CME FedWatch。ドル円は日次終値をもとに当社調べ。年初来・10月の騰落率は2025年末・9月末の終値からの当社計算
オプション市場では、投票日翌日の11月4日のS&P500の値動きについて、通常の日の約1.2倍の変動が織り込まれています(CNBC、10月29日)。通常より約2割大きいものの、過去の中間選挙と同程度で、選挙そのものへの警戒は大きくないことがうかがえます。同じ報道によると、市場は11月4日に結果が判明する前提で動いており、開票が長引くリスクはほとんど織り込まれていません。
「中間選挙の年」の米国株のアノマリー
※配当を含まない価格の騰落率。起点日の取り方により、集計元ごとに数ポイント異なる(投票日の終値を起点とする集計では平均+15.1%)。過去の傾向は将来の結果を保証しない
米国株には、中間選挙の年に関するよく知られたアノマリー(経験則)があります。当社の計算では、1950年以降の中間選挙の年のS&P500は、10月が月別で最も強く平均3.0%上昇し、11月も平均2.7%上昇しています(いずれも前月末の終値からの騰落率)。投票日の前日から1年後のS&P500は、1950年以降の19回すべてで上昇し、平均の上昇率は15.6%でした。投票日をはさむ短期(前日から翌日まで)でも、19回中16回が上昇しています(平均+0.9%)。選挙前の不透明感が晴れると株が買われやすい、という見方が背景にあります。
一方、今年の10月はここまでアノマリー通りとは言えません。S&P500は10月6日に最高値を付けた後、AI投資への懸念から伸び悩み、10月は29日までで+0.9%にとどまっています。ナスダック総合指数は10月に入って2.5%下落しました。アノマリーはあくまで過去の平均であり、FRBの利上げや原油高、AI関連株の動向といった材料のほうが、目先の相場への影響は大きいと考えられます。
中間選挙の後の米金利:3か月後は低下が多い
※マイナスは利回りの低下(債券価格の上昇)。スマホ表示は1998年以降。過去の傾向は将来の結果を保証しない
当社の計算では、1970年以降の14回の中間選挙のうち、投票日の前日から3か月後に米10年債利回りが低下したのは9回で、平均の変化幅は-0.22%ポイントでした(1か月後の平均は-0.20%ポイント)。ただし、2010年のように大きく上昇した例もあり、景気やFRBの政策の影響のほうが大きい点には注意が必要です。
今回は、選挙結果によって米金利の見通しが分かれます。一般に、1つの党が両院を握ると歳出が増えやすく、米金利の上昇につながりうるとされます(CNBC)。特に「両院とも共和党」となれば、追加減税などの財政拡大が意識されやすくなります。一方、米国の債務は2027年中に上限(41.1兆ドル)に達する見通しで、民主党が1つの院でも多数派を取れば、上限の引き上げを巡って与野党の対立が強まる可能性があります(CNBC、9月14日)。2023年にも債務上限を巡る対立の後に米国の格付けが引き下げられた経緯があり、財政を巡る不安は米金利の上振れ要因として意識されやすい状況です。
ドル円への影響は?
過去の中間選挙の前後で、ドル円がどう動いたかを当社で計算しました。結果は以下の通りです。
| 年 | 投票日の前日 | 翌日 | 1週間後 | 1か月後 | 3か月後 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1998年 | 114.90円 | +1.8% | +6.2% | +2.5% | -2.6% |
| 2002年 | 122.21円 | -0.5% | -2.1% | +2.0% | -1.9% |
| 2006年 | 118.17円 | -0.3% | -0.5% | -2.6% | +1.6% |
| 2010年 | 80.41円 | +0.3% | +0.9% | +4.6% | +2.1% |
| 2014年 | 112.84円 | +0.6% | +1.7% | +6.2% | +4.2% |
| 2018年 | 113.14円 | +0.2% | +0.5% | -0.1% | -2.8% |
| 2022年 | 146.84円 | -1.1% | -4.6% | -7.1% | -9.7% |
| 平均 | — | +0.1% | +0.3% | +0.8% | -1.3% |
出所: ドル円の日次終値をもとに当社計算。投票日の前日の終値からの変化率で、プラスは円安・ドル高。データの制約から1998年以降の7回。過去の傾向は将来の結果を保証しない
1998年以降の7回の中間選挙で、投票日の前日から3か月後のドル円は、円安・ドル高が3回、円高・ドル安が4回と、方向感ははっきりしません(平均-1.3%)。2022年のように3か月で約10%の円高になった例もありますが、これは米国のインフレ鈍化を受けて利上げペースの減速観測が強まった時期と重なっており、選挙よりも日米の金融政策の影響が大きかったとみられます。
今回の選挙について、市場は民主党の勝利をかなり織り込み始めています(日本経済新聞、CNBC)。予想通りの結果であれば影響は限られる一方、上院で共和党が多数派を維持するなど予想外の結果になれば、米金利やドルが動きやすくなります。一般に、「両院とも共和党」となれば財政拡大による米金利の上昇を通じてドル高につながりやすく、「両院とも民主党」では財政拡大が見込みにくくなる分、ドルの重しになりやすいと考えられます。
ドル円は10月に入って156〜158円台で推移しています。米国では10月28日のFOMCで利上げが見送られた一方、12月の利上げの織り込みは約8割と高い状態が続いています。日銀は30日の会合で政策金利を1.25%に据え置きました。高田委員が1.5%への利上げを提案して反対に回り、決定直後のドル円は157円台半ばで大きな動きはありませんでした。植田総裁の会見での発言も含め、日銀の12月の利上げ観測の行方が引き続き焦点です。7月末には日米が約15年ぶりに協調して円買い介入を実施しており(財務省)、円安が急に進む場面では介入への警戒も意識されやすい状況です。選挙前後のドル円は、選挙結果そのものよりも日米の金融政策の見通しに左右される場面が多くなりそうです。
金への影響は?
金は利息を生まず、ドル建てで取引される資産です。そのため、選挙そのものよりも、選挙結果を受けた米金利とドルの動きを通じて影響を受けやすくなります。株安や米金利の低下、ドル安が重なれば金の支えになりやすく、逆に米金利の上昇とドル高は重しになりやすくなります。10月29日には、米国の物価指標の上振れで12月の利上げ観測が強まり、利息を生まない金は下落しました(CNBC)。
足元の金は、1月29日に終値ベースの史上最高値(5,318ドル)を付けた後、下落基調が続いています。イラン情勢を受けた原油高でインフレ懸念が強まり、FRBが9月に利上げに踏み切ったことで、米金利の上昇とドル高が重荷になりました。10月29日は約4,030ドルと、9月末から3.7%下落しています。
※投票日の前日の終値を起点とした価格の騰落率(期近の限月をつないだ先物価格のため、現物価格とは差がある)。2000年代は金が長期の上昇相場にあった時期で、回数も6回と少ない。過去の傾向は将来の結果を保証しない
過去の中間選挙の後の金価格を見ると、2002年以降の6回のうち、投票日の前日から3か月後に上昇したのは5回(平均+8.2%)、12か月後に上昇したのは5回(平均+18.4%)でした。ただし、2000年代は金が長期の上昇相場にあった時期で、回数も6回と少ないため、選挙が金を押し上げたとまでは言えません。株式のアノマリーと同じく、参考程度にとどめるのがよさそうです。
選挙結果別に見ると、「両院とも民主党」の場合はドル安や米金利の低下につながれば、金の支えになりうると考えられます。2027年の債務上限を巡る与野党の対立で財政への不安が強まる場面も、金の材料になりえます。一方、「ねじれ」では政治の不透明感が和らぐことで、「両院とも共和党」では財政拡大による米金利の上昇とドル高を通じて、金の重しになる可能性があります。目先の金価格は、選挙結果よりも原油高とFRBの利上げの行方に左右されやすい状況です。
結果別のシナリオ:株・ドル円・米金利・金はどう動く?
選挙結果が相場に与える影響について、報道で伝えられている市場の見方と、金利・ドル・財政の一般的な関係をもとに、3つのシナリオに整理しました。いずれも事前の見立てであり、実際の値動きは選挙以外の材料にも大きく左右されます。
出所: 確率はPolymarket(10月29日)。各項目はCNBC(9月14日、10月9日、29日)、日本経済新聞(10月21日、28日)の報道と、金利・ドル・財政の一般的な関係をもとに当社で整理。▲上昇・▼下落・▶横ばい・◆まちまち は見立ての方向感で、将来の値動きを示すものではありません
個人投資家が押さえておきたいポイント
- ✓開票は日本時間4日(水)の朝8時から。結果が判明する時間帯は東京市場の取引時間と重なり、値動きが荒くなりやすい
- ✓予想通り「民主党が両院」なら影響は限定的になりやすい。サプライズは「上院で共和党が多数派を維持」「両院とも共和党」などのケース
- ✓上院の接戦州(メーン、オハイオ、テキサス、アラスカ、アイオワ、カンザスなど)は集計に時間がかかり、結果判明が数日〜数週間ずれ込むことも
- ✓選挙の直後に米雇用統計(11月6日)とCPI(11月10日)が続き、12月のFOMCの利上げ観測を左右する
- ✓選挙後もつなぎ予算の期限(12月11日)や2027年の債務上限問題など、財政を巡る日程が控えている
- ✓アノマリーは過去の平均。今年はAI関連株の調整や原油高など、選挙以外の材料の影響が大きい
- ✓ドル円と金は、選挙結果より米金利とドルの動き、日米の金融政策の行方に左右されやすい
まとめ
- ✓11月3日の中間選挙では、下院435議席、上院35議席、36州の知事が選ばれる。現在は上下両院とも共和党が多数派
- ✓予測市場では民主党の多数派獲得の確率が下院93%、上院69%(Polymarket、10月29日)。トランプ大統領の支持率は37%台と低く、一般投票でも民主党が8.7ポイントリード
- ✓上院はメーン、オハイオ、テキサス、アラスカ、アイオワ、カンザスなどが接戦で、民主党が差し引き4議席を増やせるかが焦点。結果の確定が遅れる可能性もある
- ✓開票は日本時間4日(水)の朝8時から順次始まり、東京市場の取引時間中に大勢が見えてくる可能性がある。接戦なら確定は持ち越し
- ✓投票日の前日から1年後のS&P500は1950年以降19回すべて上昇(平均+15.6%)、米10年債利回りは3か月後に低下した例が14回中9回(当社計算)。ドル円に明確な傾向はない
- ✓「両院とも民主党」はAI関連株やドルの重しとの見方がある一方、ねじれは想定内、「両院とも共和党」は米金利上昇・ドル高につながりやすい。サプライズの有無が焦点
- ✓金は「両院とも民主党」ならドル安・金利低下が支えに、ねじれや共和党の維持では重しとの見方。ただし目先は原油高とFRBの利上げの影響が大きい
- ✓選挙後も米雇用統計・CPI・12月のFOMC・つなぎ予算の期限が続くため、値動きの拡大に注意したい
参考資料
- 米下院書記官(議席構成)
- Polymarket「Balance of Power: 2026 Midterms」
- DeFi Rate「2026 Midterm Election Odds」
- Silver Bulletin「Generic ballot average」
- AP-NORC「Ahead of the midterms, most voters cite the economy and cost of living as top issues」
- The American Presidency Project「Seats in Congress Gained/Lost by the President’s Party in Mid-Term Elections」
- CNBC「Wall Street is betting on a clear midterm result. A contested count could rattle already edgy markets」(2026年10月29日)
- CNBC「The AI election: Wall Street braces for midterms amid mounting opposition to data centers」(2026年10月9日)
- CNBC「How the 2026 midterms could affect stocks」(2026年10月9日)
- CNBC「Why the election could make Washington’s looming next fiscal crisis harder」(2026年9月14日)
- CNBC「Gold slides as higher U.S. inflation reinforces Fed tightening bets」(2026年10月29日)
- 日本経済新聞「米中間選挙、民主勝利でも株高? ウォール街が描く3つのシナリオ」(2026年10月28日)
- 日本経済新聞「米中間選挙、「青い波」に身構える市場 AI・防衛関連銘柄に逆風も」(2026年10月21日)
- NBC News「Alphabet shares record their worst day ever, shedding $500 billion in value」(2026年10月29日)
- 財務省「片山財務大臣談話」(2026年8月3日)
- ホワイトハウス「Congressional Bill H.R. 6500 Signed into Law」(つなぎ予算、2026年9月2日)
- 米財務省「Daily Treasury Par Yield Curve Rates」
- FRB「FOMC meeting calendars」
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