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次期ECB総裁はクノット氏かデコス氏か|2人の経歴と政策の考え方、ラガルド総裁から何が変わるかを図解(2026年11月8日)

マーケットレポート

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次期ECB総裁
ラガルド総裁の後任候補は、オランダのクノット氏とスペインのデコス氏の2人
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が2027年2月7日に退任するのを受けて、ユーロ圏の財務相会合(ユーログループ)は11月6日、後任の候補が前オランダ中央銀行総裁のクラース・クノット氏と、前スペイン銀行総裁で国際決済銀行(BIS)総支配人のパブロ・エルナンデス・デコス氏の2人だと発表しました。11月9日の会合から審議が始まり、12月中旬の欧州理事会(EU首脳会議)での決定が目標とされています。2人はどんな人物で、総裁になったらECBの金融政策はどう変わりうるのか。経歴、過去の発言、ラガルド総裁との違いを図と表で整理します。
候補
2人
オランダとスペインが推薦
ラガルド総裁の退任
2027/2/7
本来の任期は2027年10月末
決定の目標
12月中旬
欧州理事会(予定)
中銀預金金利
2.50%
10月29日に据え置き
次期ECB総裁選びを3行でいうと
1
候補はともに元中央銀行総裁の実務家
クノット氏(59歳)は14年間オランダ中銀を率い、金融安定理事会(FSB)の議長も務めた。デコス氏(55歳)は銀行規制の国際ルールを決めるバーゼル委員会の議長を経て、現在はBISのトップ
2
出発点は「タカ派」と「調整役の技術官僚」
クノット氏はかつて量的緩和に反対したタカ派(引き締めに前向き)として知られ、近年は合意をまとめる実務派に。デコス氏はデータを重視する技術官僚とされ、国債市場の分断への備えも重視してきた
3
総裁1人で政策が急に変わるわけではない
ECBの金融政策は27人の政策理事会で決まる。ただ、議論のまとめ方や危機のときの対応、市場への発信の仕方で違いが出る可能性があり、ユーロ相場の材料になりうる

CHAPTER 01何が決まったのか:ラガルド総裁の退任と後任選び

ラガルド総裁は任期を約9か月残して退任します。後任は、ユーロ圏の国々の合意で決まります。

ECBは10月29日、理事会の結果の公表と同じ日に、ラガルド総裁が2027年2月7日に退任すると発表しました。2019年11月に就任したラガルド総裁の任期は2027年10月末まででしたが、それより約9か月早い退任です。報道によると、ラガルド総裁は会見で、金融政策以外の問題についても自由に発言し、関わりたいと理由を説明しました。次の役職は明らかにしておらず、世界経済フォーラム(WEF)の会長への就任が取り沙汰されています。

退任の時期をめぐっては、2027年春のフランス大統領選挙より前に後任を決められるよう、前倒ししたとの見方も報じられています。ラガルド総裁自身は、選挙との関係についての質問には答えていません。

10月29日
  • ECBがラガルド総裁の2027年2月7日の退任を発表。欧州理事会のコスタ議長が後任選びの手続きを始めると表明
11月4日
  • オランダ政府が、前オランダ中央銀行総裁のクノット氏を候補に指名
11月6日
  • 推薦の締め切り。ユーログループのピエラカキス議長が、候補はデコス氏(スペイン)とクノット氏の2人と発表
11月9日
  • ユーログループで2人の審議を始める
12月中旬
  • EUの財務相理事会(ECOFIN)の勧告を経て、欧州理事会(12月17〜18日)での決定が目標と報じられている
2027年
2月7日
  • ラガルド総裁が退任。新総裁の任期は8年

出所: ECB、報道。11月9日以降は予定・目標

ECB総裁はどうやって決まるのか

STEP 1
国が候補を推薦
ユーロ圏の国が候補を推薦する。今回はオランダとスペインの2か国だけが推薦した
▼
STEP 2
財務相が審議・勧告
ユーロ圏の財務相会合(ユーログループ)で候補を絞り、EUの理事会(財務相)が欧州理事会に勧告する
▼
STEP 3
欧州議会とECBの意見
欧州議会(経済金融委員会の公聴会)とECB政策理事会に意見を聞く
▼
STEP 4
首脳が任命
欧州理事会が特定多数決で任命する。採決するのはユーロ圏の国だけで、21か国のうち16か国以上、かつ人口の65%以上の賛成が必要
ECB総裁の任命の流れ(EU運営条約 第283条など)。任期は8年で、再任はできない

ECB総裁の任命は、全会一致ではなく多数決です。ただ、実際には大国のドイツとフランスを含む主要国の合意が欠かせず、ほかの理事のポストと組み合わせた交渉になることが多いとされます。今回も、後で触れるように、2027年前半に入れ替わる3つの席をまとめて決める交渉になるとみられています。

歴代のECB総裁

総裁出身国在任期間主な出来事
ドイセンベルクオランダ1998年6月〜2003年10月ユーロの導入(1999年)
トリシェフランス2003年11月〜2011年10月世界金融危機、欧州債務危機の始まり
ドラギイタリア2011年11月〜2019年10月「ユーロを守るためなら何でもする」発言、マイナス金利と量的緩和
ラガルドフランス2019年11月〜2027年2月7日(予定)コロナ禍の緊急資産購入、2022年からの大幅利上げ、2026年の利上げ再開
次期総裁オランダかスペイン2027年2月〜(任期8年)クノット氏ならオランダから2人目、デコス氏ならスペインから初めて

出所: ECB、報道

ECBの政策金利とユーロ圏の物価上昇率(歴代総裁の任期別)
中銀預金金利(政策金利) 物価上昇率(HICP、前年比) 物価目標 2% ドイセンベルク トリシェ ドラギ ラガルド 0% 2% 4% 6% 8% 10% 2000年 2004年 2008年 2012年 2016年 2020年 2024年 4.0% 2.5% 中銀預金金利 物価上昇率 目標 2% ドイセン ベルク トリシェ ドラギ ラガルド 0% 2% 4% 6% 8% 10% 2000 2004 2008 2012 2016 2020 2024 4.0% 2.5%
出所: ECB(中銀預金金利、ユーロ圏の消費者物価指数HICP 1999〜2025年)、欧州連合統計局(HICP 2026年、10月は速報)をもとに当社作成。2026年から品目の分類が新しくなったため、2025年までとは厳密にはつながらない。ラガルド総裁の任期は2027年2月7日まで

ECBの28年あまりの歴史では、総裁ごとに直面した課題が大きく異なります。ドラギ総裁の時代は物価の低迷が続き、金利をマイナスまで下げて国債などを大量に買いました。ラガルド総裁の時代は、コロナ禍の後に物価が急上昇し、ECBは2022年7月から大幅な利上げに転じました。物価上昇率は2022年10月に10.6%まで上がっています。2026年は中東情勢によるエネルギー価格の上昇で物価が再び加速し、6月と9月に利上げしています。10月のユーロ圏の物価上昇率(速報)は4.0%と、目標の2%を大きく上回っています。次の総裁は、この物価の再加速への対応を引き継ぐことになります。

CHAPTER 022人のプロフィール

2人とも自国の中央銀行の総裁としてECBの政策理事会に加わり、国際的な金融規制の議長も務めた経歴を持ちます。

クラース・クノット氏
前オランダ中央銀行総裁(オランダ)
生まれ
1967年4月、オランダ北部のフローニンゲン州(59歳)
学歴
フローニンゲン大学で経済学を学び、1995年に経済学博士
中央銀行での経歴
1995年にオランダ中央銀行に入り、IMF(国際通貨基金)への出向、財務省の金融市場局長などを経て、2011年7月から2025年7月まで14年間総裁を務めた
国際機関
金融安定理事会(FSB)の副議長(2018〜21年)を経て、2021年12月から2025年6月まで議長
現在
オランダの鉄道計画の政府特使、米国の研究機関の客員フェローなど
推薦
オランダ政府(11月4日)。首相は「多くの欧州の国にとって最適な候補」と説明
パブロ・エルナンデス・デコス氏
国際決済銀行(BIS)総支配人、前スペイン銀行総裁(スペイン)
生まれ
1971年、スペインのマドリード(55歳)
学歴
マドリード・コンプルテンセ大学で経済学博士。経済・経営学と法学の学位も持つ
中央銀行での経歴
1997年にスペイン銀行に入り、経済・統計・調査の部門を率いた。2018年6月から2024年6月までスペイン銀行総裁
国際機関
2019年1月から2024年6月までバーゼル銀行監督委員会の議長。2025年7月から中央銀行の国際組織であるBISの総支配人(トップ)
現在
BIS総支配人(任期は2030年まで)
推薦
スペイン政府。与党の首相と最大野党の党首がそろって支持を表明

出所: BIS、オランダ中央銀行、FSB、各国政府の発表、報道。年齢は2026年11月8日時点

クノット氏は、ユーロが導入された1999年前後にIMFでユーロ圏を担当する部署の立ち上げに関わり、世界金融危機の後はオランダ財務省で金融市場の政策を担当しました。オランダ中銀の総裁としては、トリシェ、ドラギ、ラガルドの3代の総裁のもとで、14年間政策理事会のメンバーを務めました。FSBの議長としては、主要国の金融規制の調整役を務めました。

デコス氏は、スペイン銀行の調査部門の出身で、マクロ経済や財政政策の分析を専門としてきました。ECBの財政政策の作業部会の議長も務めました。スペイン銀行総裁の時期には、コロナ禍と、その後の物価高による利上げを経験しました。バーゼル委員会の議長としては、銀行の自己資本の国際ルール(バーゼルIII)を各国が期限どおりに実施するよう求めてきました。

スペインとオランダ、それぞれの事情:スペインからECB総裁が出たことはなく、スペインが総裁の座に候補を立てるのは初めてと報じられています。2026年5月末にデギンドス副総裁(スペイン出身)が退任したことで、ECBの役員会にスペイン出身者がいない状態にもなっています。一方のオランダは、初代総裁のドイセンベルク氏を出しており、クノット氏が選ばれれば2人目のオランダ出身の総裁になります。ただ、ECBの役員会にはオランダ出身のエルダーソン理事(任期は2028年12月まで)がすでにいます。

CHAPTER 03それぞれの特徴と、金融政策の考え方

クノット氏は「タカ派」からの変化、デコス氏は「データ重視の調整役」が特徴です。過去の発言を時系列でたどります。

クノット氏:量的緩和に反対した「タカ派」から、合意をまとめる実務派へ

2015年1月
  • ECBの量的緩和(国債などの大量購入)の開始に反対票を投じたことを、オランダのテレビで認める
2019年9月
  • ドラギ総裁の最後の緩和策(資産購入の再開など)を、書面の声明で公に批判。「今の経済情勢に見合わない」と述べ、住宅市場での過度なリスクも指摘
2021年5月
  • 講演で、気候変動は金融政策の視野に入ると述べ、資金供給の担保などにある「炭素への偏り」を正すよう提案
2022年5月
  • 物価高を受けて、7月に0.5%の利上げもありうると発言。ECBは7月に0.5%の利上げを決めた
2025年4月
  • 講演で、ユーロがより広く使われるのは欧州にとって良いことだと述べる。国防のための一時的な借金の増加はやむを得ないとし、EUの共同債の拡大も支持
2026年10月
  • 14年間の政策理事会での経験をまとめた論考で、資産購入には当初懐疑的だったが、今は政策手段の一つとして認めると説明

出所: オランダ中央銀行、本人の論考、報道

クノット氏は、2010年代に量的緩和やマイナス金利に繰り返し異を唱え、北部の国々の「タカ派」の代表格とみられてきました。一方で、2022年以降の利上げの局面では議論をまとめる役回りも担い、報道によると、フランス政府の関係者は同氏を「タカ派だが、賢いタカ派」と評しています。ラガルド総裁も2025年に、クノット氏について「良いECB総裁になる」と述べ、合意をまとめる力を高く評価しました。近年は、ユーロの国際化や、防衛のためのEUの共同債など、かつての北部の国々では慎重論が強かった分野にも柔軟な姿勢を見せています。

デコス氏:データを重視する技術官僚、財政と金融の安定にも目配り

2020年9月
  • コロナ禍の資産購入について、柔軟に運用して国ごとの金利の分断(南欧の国債利回りの急上昇など)を避けることが極めて重要と発言
2022年6月
  • 議長を務めるバーゼル委員会が、銀行の気候関連の金融リスクの管理と監督の原則を公表
2022年11月
  • 追加の利上げは必要だが、その水準と速さは物価の見通しと景気後退の可能性しだいと発言
2023年9月
  • 4%に上げた金利を十分長く続ければ、物価は2%に戻るとの見方を示す
2024年5月
  • 6月の利下げが基本シナリオと発言。ECBは6月に利下げした
2026年4〜6月
  • BISのトップとして、中東の戦争は物価を押し上げ成長を押し下げると指摘。一時的な供給ショックは見過ごせるが、長引けば必要に応じて行動する用意が要ると述べた。財政の刺激が広く長く続けば物価のリスクが高まるとし、各国に財政の余力の立て直しを求めた

出所: BIS、スペイン銀行、報道

デコス氏は、報道ではタカ派・ハト派(緩和に前向き)のどちらかと明確に位置づけられることは少なく、データを重視する技術官僚、チームプレーヤーと描かれることが多い人物です。2022年の利上げ局面でも、利上げの必要性は認めつつ、景気への影響に目を配る発言が目立ちました。南欧の国の中央銀行の出身として、国ごとの国債の利回りの差が広がり、金融政策の効果が国によって偏る「分断」への備えを重視してきた点も特徴です。一方、BISのトップとしては物価の安定を最優先とする姿勢を明確にしており、財政の膨張への警戒も繰り返し示しています。

テーマ別に比べると

物価と金利
クノット氏
物価目標を重視する姿勢が強く、2022年には大幅な利上げにも前向きだった。2025年には「緩和的でも引き締め的でもない金利」が適切と述べている
デコス氏
データしだいで判断する姿勢。2026年は、エネルギー高などの供給ショックは一時的なら見過ごせるが、長引けば行動が必要との考えを示した
国債などの資産購入
クノット氏
2015年と2019年に量的緩和に反対。2026年の論考では、当初は懐疑的だったが今は政策手段の一つと認めると説明
デコス氏
コロナ禍では、国ごとの金利の分断を避けるため柔軟な運用が重要と主張
財政・ユーロの役割
クノット氏
国防のための一時的な借金の増加はやむを得ないとし、EUの共同債の拡大を支持。ユーロの国際化は条件つきで望ましいとの立場
デコス氏
財政の刺激が長く続けば物価のリスクが高まると警告し、財政の余力の立て直しを求めている
銀行規制・気候
クノット氏
FSBの議長として国際的な金融規制を調整。気候変動を金融政策の視野に入れる考えを示した
デコス氏
バーゼル委員会の議長として規制の着実な実施を求め、規制を緩めることには否定的。気候関連の金融リスクの監督原則もまとめた

※過去の発言と報道をもとに当社で整理したもので、2人が総裁として取る政策を示すものではありません。

CHAPTER 04総裁になったら金融政策はどう変わる?ラガルド総裁との違い

金融政策は合議で決まるため、急な転換は考えにくい状況です。違いが出やすいのは、議論のまとめ方、危機への対応、市場への発信です。

ECBの金融政策は、総裁を含む役員会の6人と、ユーロ圏21か国の中央銀行総裁の計27人でつくる政策理事会で決まります。総裁は理事会の議長として議論をまとめ、会見で決定を説明する役割を担いますが、1人で金利を決めるわけではありません。そのため、新しい総裁の就任でECBの政策がすぐに大きく変わる可能性は低いとみられます。それでも、理事会の意見が割れたときにどちらに議論を導くか、市場が急変したときにどれだけ早く動くか、会見でどんな言葉を選ぶかには、総裁の考え方が表れます。

ラガルド総裁の時代を振り返ると

ラガルド総裁は、フランスの財務相やIMFの専務理事を務めた弁護士出身の政治家で、中央銀行の出身ではない初めてのECB総裁でした。在任中には、コロナ禍の緊急の資産購入、2021年の戦略の見直しで物価目標を「2%(上振れも下振れも同じように避ける)」と改めたこと、国債利回りの急上昇を抑える新しい手段(TPI)の創設、2022年7月からの大幅な利上げ、そして2024年からの利下げと2026年の利上げ再開がありました。気候変動への対応やデジタルユーロの準備を進め、政治や市場への発信の役割を重視したことも特徴です。2人の候補は、いずれも中央銀行の出身で、政策の細部や金融規制に詳しい実務家である点が、ラガルド総裁との大きな違いです。

クノット氏が総裁になった場合
物価の安定を最優先にする姿勢が強いとの見方が広がりやすく、物価が目標を上回る局面では利上げに前向きと受け止められる可能性があります。
物価への対応
▲
物価の上振れに早めに対応するとの見方が出やすい
ユーロ
▲
引き締めへの前向きさが意識されれば、ユーロの支えになりうる
南欧の国債
▼
利回りの差が広がる局面で、介入に慎重とみられる可能性
発信
▶
合意を重視し、議論の経緯を丁寧に説明するとみられる
デコス氏が総裁になった場合
データを重視し、景気や金融の安定にも目を配る調整型とみられやすく、利上げや利下げの判断はより慎重と受け止められる可能性があります。
物価への対応
▶
一時的な供給ショックは見極める一方、長引けば行動する考え
ユーロ
◆
政策の方向感よりも、そのときの物価と景気の数字に左右されやすい
南欧の国債
▲
国ごとの金利の分断に目配りし、市場を落ち着かせやすいとの見方
発信
▶
BISでの経験を生かし、金融規制や財政との関係にも言及しそう

※過去の発言と報道をもとに当社で整理した方向感で、将来の政策や相場の動きを示すものではありません。▲上向き・強まる▼下向き・弱まる▶変化は小さい◆まちまち。南欧の国債の▲は利回りの差が縮まりやすい(国債が買われやすい)、▼は差が広がりやすいことを表します。

どちらが総裁になっても、2027年2月に引き継ぐのは、エネルギー価格の上昇で物価が目標を大きく上回り、ECBが利上げを再開した局面です。さらに、フランスの財政や政治への不安から仏国債の利回りが上がり、ドイツ国債との差が広がるなど、国ごとの金利の差も課題になっています。物価を抑えるための利上げと、国債市場の安定をどう両立させるかが、新総裁の最初の試金石になりそうです。

総裁だけでなく、役員会の半分が入れ替わる

ECB役員会の6席のうち3席が、2027年1〜6月に入れ替わる
在任中・任期中 決まった後任 後任を選ぶ席 2025年7月 2026年1月 2026年7月 2027年1月 2027年7月 2028年1月 2028年7月 2029年1月 総裁 ラガルド(仏) 後任(クノット氏かデコス氏) 副総裁 デギンドス(西) ヴイチッチ(クロアチア) 理事(市場操作) シュナーベル(独) 後任は未定 理事(チーフエコノミスト) レーン(アイルランド) 後任は未定 理事 エルダーソン(蘭) 理事 チポローネ(伊) 現在(11月8日) 在任中 決まった後任 後任を選ぶ席 25/7 26/1 26/7 27/1 27/7 28/1 28/7 29/1 総裁 ラガルド(仏) 後任(クノット氏かデコス氏) 副総裁 デギンドス(西) ヴイチッチ(クロアチア) 理事(市場操作) シュナーベル(独) 後任は未定 理事(チーフエコノミスト) レーン(アイルランド) 後任は未定 理事 エルダーソン(蘭) 理事 チポローネ(伊) 現在(11月8日)
出所: ECB、欧州理事会の発表、報道をもとに当社作成。シュナーベル理事は2027年1月3日に退任(IMFへ)、レーン理事の任期は2027年5月31日まで、エルダーソン理事は2028年12月14日まで、チポローネ理事は2031年10月まで

2027年の前半には、総裁を含めてECBの役員会の6人のうち3人が入れ替わります。市場操作を担当するドイツ出身のシュナーベル理事は、IMFへ移るため2027年1月3日に退任します。チーフエコノミストのレーン理事(アイルランド出身)も、2027年5月末に任期が切れます。報道によると、ドイツは総裁の座は争わず、シュナーベル理事の後任にドイツの候補を出す方針で、フランスはチーフエコノミストの座を狙っているとされます。1つの国が役員会の席を2つ持たないという慣行もあるとされ、総裁にどちらを選ぶかは、ほかの席の配分と組み合わせた交渉になるとみられています。

3席
2027年1月〜6月に入れ替わる役員会の席(総裁、市場操作担当の理事、チーフエコノミスト)
16か国
総裁の任命に必要な賛成の国の数(ユーロ圏21か国のうち。人口の65%以上も必要)
8年
総裁の任期。再任はできない。2027年2月に就任すれば2035年まで

出所: ECB、EU運営条約、報道

CHAPTER 05今後の注目点と日程

11月9日のユーログループから、12月中旬の首脳会議までが山場です。決定がずれ込む可能性も指摘されています。

11/9
月
政治ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)
2人の候補の審議を始める。この日に1人に絞るとは限らない
11/18
水
指標ユーロ圏10月のHICP(確報)
速報は4.0%。12月の利上げの判断材料
11/27
金
政治シュナーベル理事の後任の推薦締め切り
締め切りは延長された。ドイツは自国の候補を出す方針と報じられている
12/11
金
政治EU財務相理事会(ECOFIN)
欧州理事会への勧告を出す予定と報じられている
12/17
木
市場ECB理事会(12月)
スタッフ見通しの改定。利上げの有無とラガルド総裁の会見
12/17〜18
木〜金
政治欧州理事会(EU首脳会議)
次期総裁の任命が目標。ほかの理事のポストとの一括の合意になるかも注目
2027/1/3
日
政治シュナーベル理事が退任
IMFへ移る。後任は総裁の人選と合わせて決まる可能性がある
2027/2/7
日
政治ラガルド総裁が退任
翌日から新総裁が就任する見込み

出所: ECB、ユーロスタット、報道。日付は現地時間。ECOFINと欧州理事会での決定は予定・目標で、ずれ込む可能性がある

チェックしておきたい3つのポイント

  • ✓候補を1人に絞れるか:11月9日のユーログループは審議の始まりで、その場で決まるとは限らない。絞り込みが長引けば、12月の首脳会議での決定がずれ込む可能性がある
  • ✓ほかの理事のポストとの組み合わせ:ドイツ(市場操作担当の理事)とフランス(チーフエコノミスト)の要求と、総裁の人選がどう組み合わされるか
  • ✓選ばれた候補の最初の発言:欧州議会の公聴会などで、物価、利上げ、国債市場の安定についてどんな考えを示すか。ユーロ相場の材料になりうる
用語メモ
ECB政策理事会
ECBの金融政策を決める最高意思決定機関。役員会の6人(総裁・副総裁・4人の理事)と、ユーロ圏21か国の中央銀行総裁で構成する
中銀預金金利
銀行がECBに預けるお金につく金利で、ECBの政策金利の中心。2026年10月29日時点で2.50%
タカ派・ハト派
物価の安定を重視して利上げなどの引き締めに前向きな立場をタカ派、景気や雇用を重視して緩和に前向きな立場をハト派と呼ぶ
分断(フラグメンテーション)
同じユーロを使う国の間で国債の利回りの差が大きく広がり、金融政策の効果が国によって偏ること。南欧の国で起きやすい
TPI(伝達保護措置)
2022年にECBがつくった、特定の国の国債利回りが経済の実態に見合わないほど急上昇したときに国債を買える仕組み
BIS(国際決済銀行)
スイスのバーゼルにある、各国の中央銀行が出資する国際組織。「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる。総支配人はそのトップ
バーゼル委員会・FSB
バーゼル委員会は銀行の自己資本などの国際ルールを決める組織。FSB(金融安定理事会)は主要国の金融規制や監督を調整する組織

まとめ

  • ✓ラガルドECB総裁が2027年2月7日に退任するのを受け、後任の候補は前オランダ中銀総裁のクノット氏と、BIS総支配人で前スペイン銀行総裁のデコス氏の2人が推薦された
  • ✓任命は欧州理事会の多数決で、ユーロ圏21か国のうち16か国以上・人口の65%以上の賛成が必要。11月9日のユーログループから審議が始まり、12月中旬の首脳会議での決定が目標とされる
  • ✓クノット氏はかつて量的緩和に反対したタカ派として知られ、近年は合意をまとめる実務派に。デコス氏はデータを重視する技術官僚で、国ごとの金利の分断や財政との関係にも目を配る
  • ✓金融政策は27人の理事会で決まるため急な転換は考えにくいが、議論のまとめ方、危機への対応、市場への発信に違いが出る可能性がある
  • ✓2027年前半には総裁を含む役員会の3席が入れ替わり、ドイツやフランスの要求も絡む一括の交渉になるとみられる
  • ✓新総裁が引き継ぐのは、エネルギー高で物価が4%台に上がり、ECBが利上げを再開した局面。総裁の人選は、ユーロドルやユーロ円の材料にもなりうる

参考資料

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