【本日の東京為替見通し】ドル円、日米金融政策の乖離で底堅い展開か

マーケットレポート

June 15, 2023

【前日の為替概況】ドル円 139円前半から140円台へ切り返す、年末FF金利予想中央値引上げ

 

14日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4営業日ぶりに反落。
終値は140.09円と前営業日NY終値(140.22円)と比べて13銭程度のドル安水準だった。
5月米卸売物価指数(PPI)が予想を下回ったことが伝わると、米長期金利の低下とともにドル売りが先行。
米連邦公開市場委員会(FOMC)結果公表を控える中、ポジション調整目的のドル売りも出て、0時30分過ぎに一時139.29円と日通し安値を更新した。

 

ただ、FOMCの結果が伝わると買い戻しが優勢に。
米連邦準備理事会(FRB)は13-14日開いたFOMCで市場予想通りFFレートの誘導目標を5.00-5.25%に据え置いた。
ただ、同時に公表された政策金利見通し(ドット・チャート)では2023年末の予想中央値が5.6%と3月の5.1%から引き上げられ、年内に0.25%の利上げが2回実施される可能性が示唆された。
米利上げが長期化するとの観測からドル買いで反応し、一時140.18円付近まで値を上げた。
なお、パウエルFRB議長は会見で「ほぼすべての当局者が年内のさらなる利上げは適切だと判断」「インフレ率を2%に戻すには長い道のりがある」「インフレリスクは依然として上向き」「利下げについては2年ほど先の話」などと語った。

 

ユーロドルは3日続伸。
終値は1.0830ドルと前営業日NY終値(1.0793ドル)と比べて0.0037ドル程度のユーロ高水準だった。
欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続を見込んだユーロ買いが先行したあとは、米インフレ指標の下振れを受けて全般ドル売りが進行。
前日の高値1.0824ドルを上抜けて一時1.0864ドルと5月17日以来の高値を付けた。
ただ、FOMCの結果を受けて米利上げが長期化するとの観測が高まるとドルを買い戻す動きが優勢となり、一時1.0802ドル付近まで伸び悩んだ。

 

ユーロ円は3日続伸。
終値は151.73円と前営業日NY終値(151.34円)と比べて39銭程度のユーロ高水準。
利上げを継続するECBと、金融緩和策の継続が見込まれる日銀との金融政策の方向性の違いが意識されて、円売り・ユーロ買いが優勢となり一時151.78円と2008年9月以来の高値を付けた。

【本日の東京為替見通し】ドル円、日米金融政策の乖離で底堅い展開か

 

本日の東京外国為替市場のドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)での「タカ派的スキップ(見送り)」と本日からの日銀金融政策決定会合での大規模金融緩和の維持見通しから底堅い展開が予想される。
しかしながら、パウエルFRB議長は会見で「7月FOMCでの利上げはまだ決まっていない」と述べていることには注意したい。
米長期金利は昨日低下し、ドル円も140円台前半で伸び悩む展開となっており、ここからは日銀会合からの材料待ちとなっている。

 

8時50分に発表される5月の貿易統計(予想:季節調整前1兆3319億円の赤字、季節調整済8600億円の赤字)では、ドル円の下値を限定的にしている実需の円売り圧力を確認することになる。
FOMCでは、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が5.00-25%に据え置かれたものの、ドット・プロット(金利予測分布図)で今年末の中央値が前回の5.10%(※FF金利5.00-25%)から5.60%(※FF金利5.50-75%)へ引き上げられた。
すなわち、年内残り4回のFOMC会合の内、2回で0.25%の利上げが示唆されている。
しかし、CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、7月FOMCで5.25-50%へ利上げ、そして、9月、11月、12月FOMCでは据え置き確率が高まっており、年内1回の利上げだけを示唆している。

 

パウエルFRB議長は会見で、「累積的(cumulative)な引き締めを考慮する」と前回5月と同じ文言を使った。
この「累積的」という文言は、2006年8月8日のFOMCで、バーナンキ第14代FRB議長が、17回の利上げで到達したFF金利誘導目標5.00-25%の据え置きを決定して、利下げへ転換した時に使用した文言である。
FEDピボット(FRBの方向転換)のシグナルかもしれないことで警戒しておきたい。

 

ドル円のテクニカル分析では、140.93円と138.45円を底辺とする「三角保ち合い」を上抜けており、7月FOMCでの利上げ観測や本日からの日銀会合での大規模金融緩和策の継続観測を背景にした上昇トレンドの再開を示唆している。
上値の目処としては、151.95円から127.23円までの下落幅の61.8%戻しとなる142.51円処が想定されるが、この水準は、昨年11月11日の高値142.48円に対応している。

 

10時30分に発表される5月豪雇用統計は、失業率の予想は4月と同じ3.7%、新規雇用者数は1.50万人の増加と予想されている。
豪準備銀行(RBA)は、雇用情勢よりもインフレ抑制に軸足を置いて追加利上げを示唆しており、ネガティブサプライズとならない限り豪ドル売りには繋がらないのかもしれない。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:50 ◎ 4月機械受注(予想:船舶・電力除く民需 前月比3.0%/前年比▲8.0%)
○08:50 ◎ 5月貿易統計(通関ベース、予想:季節調整前1兆3319億円の赤字、季節調整済8600億円の赤字)
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
○13:30 ◇ 4月第三次産業活動指数(予想:前月比0.4%)
○日銀金融政策決定会合(1日目)

<海外>
○07:45 ☆ 1-3月期ニュージーランド(NZ)国内総生産(GDP、予想:前期比▲0.1%/前年比2.6%)
○10:30 ◎ 5月豪雇用統計(予想:失業率3.7%/新規雇用者数1.50万人)
○11:00 ◎ 5月中国鉱工業生産(予想:前年比3.6%)
○11:00 ◎ 5月中国小売売上高(予想:前年比13.6%)
○15:30 ◇ 5月スイス生産者輸入価格
○15:45 ◇ 5月仏消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比▲0.1%/前年比5.1%)
○16:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○18:00 ◇ 4月ユーロ圏貿易収支(予想:季調前なし/季調済175億ユーロの黒字)
○21:15 ☆ 欧州中央銀行(ECB)定例理事会、終了後政策金利発表(予想:4.00%に引き上げ)
○21:15 ◇ 5月カナダ住宅着工件数(予想:23.50万件)
○21:30 ◇ 4月カナダ製造業出荷(予想:前月比▲0.2%)
○21:30 ☆ 5月米小売売上高(予想:前月比▲0.1%/自動車を除く前月比0.1%)
○21:30 ◎ 6月米ニューヨーク連銀製造業景気指数(予想:▲15.1)
○21:30 ◎ 6月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(予想:▲14.0)
○21:30 ◇ 5月米輸入物価指数(予想:前月比▲0.5%)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:24.9万件/176.5万人)
○21:45 ☆ ラガルドECB総裁、定例記者会見
○22:15 ◎ 5月米鉱工業生産指数(予想:前月比0.1%)
     ◇    設備稼働率(予想:79.7%)
○23:00 ◇ 4月米企業在庫(予想:前月比0.2%)
○16日00:35 ◎ カンリフ英中銀(BOE)副総裁、講演
○16日01:00 ☆ 1-3月期ロシア国内総生産(GDP)改定値(予想:前年比▲1.9%)
○16日01:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
○16日05:00 ◎ 4月対米証券投資動向
○ユーロ圏財務相会合

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

14日13:37 秦剛・中国外相(ブリンケン米国務長官との電話会談で)
「米国は中国の内政問題への干渉をやめるべき」
「台湾問題など中国の核心的問題を尊重すべき」
「中米関係を安定させ、健全で安定的発展の軌道に戻すことを望む」

15日03:02 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明
「最近の指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大し続けていることを示唆」
「雇用の伸びはここ数カ月間堅調で、失業率は低いまま」
「インフレ率は引き続き高止まりしている」
「米国の金融システムは健全で強固」
「家計や企業の信用状況の引き締まりが経済活動、雇用、インフレの重しになる可能性がある」
「これらの影響の程度は依然不透明だ。委員会は引き続きインフレのリスクを大いに注視している」
「委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す」
「これらの目標を支援するため、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを5.00-5.25%に維持することを決定した」
「今回の会合で目標レンジを安定的に維持することで、委員会は追加情報とその金融政策への影響を評価することが可能になる」
「時間の経過とともにインフレ率を2%に戻すために追加的な金融政策の引き締めがどの程度適切かを決めるに当たり、委員会は金融政策の度重なる引き締め、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れ、および経済と金融の動向を考慮する」
「さらに、以前発表された計画で説明されている通り、委員会は保有する米国債およびエージェンシーローン担保証券の削減を続ける」
「委員会はインフレ率を2%の目標まで戻すことに力強く取り組む」
「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引き続き監視する」
「委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策スタンスを適切に調整する準備がある」
「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する」
「今回の金融政策決定は全会一致」

15日03:35 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「2%のインフレに強くコミット」
「ほぼすべての当局者が年内のさらなる利上げは適切だと判断」
「年内の追加利上げが適切である可能性が高い」
「インフレ圧力はなお高まっている」
「インフレ率を2%に戻すには長い道のりがある」
「我々は会合ごとに意思決定を続けていく」
「金利据え置きの決定は賢明だった」
「FOMCは累積的な引き締めを考慮する」
「FOMCは二つの目標を達成するために全力を尽くす」
「インフレ緩和にはトレンドを下回る成長期間が必要となる可能性」
「7月のFOMCはライブになると予想」
「利上げ一時停止は引き締めペース鈍化の継続」
「6月据え置きを1回見送りと呼ぶべきではない」
「労働市場は驚異的な回復力を見せている」
「労働市場は経済を動かす原動力」
「我々は十分に制限的な金利にかなり近づいてきた」
「インフレリスクは依然として上向きだと考えている」
「コアPCEに大きな進歩は見られない」
「過去2年、FOMCのインフレ予測は外れていた」
「予測はあまり重視しない、不確実だ」
「利下げについては2年ほど先の話」

※時間は日本時間

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=上向きの転換線付近まで押し目買い姿勢>

<ドル円=上向きの転換線付近まで押し目買い姿勢>

各ラインの期間

 

下影小陰線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
3手連続陽線の後、孕み線で反落したものの転換線を上回って引け、続伸の可能性が示唆されている。
本日は、139.61円まで上昇している転換線付近まで押し目買いスタンスで臨み、昨日安値を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス2:142.48(2022/11/11高値)
レジスタンス1:140.93(5/30高値)
前日終値:140.09
サポート1:139.29(6/14安値)
サポート2:137.34(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロドル=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>

<ユーロドル=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>

各ラインの期間

 

陽線引け。
雲の中に入り込んで引けたものの、転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回っているため売りシグナルが優勢な展開。
しかし3手連続陽線で転換線を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は、1.0766ドルまで上昇してきた転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1:1.0905(5/16高値)
前日終値:1.0830
サポート1:1.0766(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロ円=2008年9月以来の高値、押し目買い継続>

<ユーロ円=2008年9月以来の高値、押し目買い継続>

各ラインの期間

 

陽線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
2008年9月以来の高値圏まで上昇した。
3手連続陽線で転換線を大きく上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は、14日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1:152.34(ピポット・レジスタンス2)
前日終値:151.73
サポート1:150.92(6/14安値)

<豪ドル円=6/14安値を支持に押し目買いスタンス>

<豪ドル円=6/14安値を支持に押し目買いスタンス>

各ラインの期間

 

陽線引け。
転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
7手連続陽線で転換線を上回って引けていることで続伸の可能性が示唆されている。
本日は、14日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1:95.72(ピポット・レジスタンス2)
前日終値:95.21
サポート1:94.60(6/14安値)

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