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日銀政策決定会合では何が決まるのか?今後の日銀の方向性についても解説


日銀政策決定会合では何が決まるのか?

日銀政策決定会合では、日本の金融政策が決定されますが、伝統的にはそれは主に「政策金利」を動かすことでした。

しかし、日本は1990年代後半の金融不況以降、デフレ圧力が強まり、政策金利が低位に押し下げられたまま動かせない状況が25年以上続いています。

しかし、日本は1990年代後半の金融不況以降、デフレ圧力が強まり、政策金利が低位に押し下げられたまま動かせない状況が25年以上続いています
日本銀行政策金利の推移(出典:Trading view)

1999年2月、速水総裁は短期金利の指標である無担保コール翌日物金利を0.15%へ誘導しました。
その時、速水総裁が「ゼロでも良い」と発言し、ゼロ金利政策と呼ばれるようになりました。

利上げの試みは速水総裁が2000年8月に、福井総裁が2007年に2回利上げしましたが、いずれもすぐに頓挫しました。
政策金利がゼロ近辺にあるなか、如何に金融緩和を進めるかが焦点となり、日本銀行の政策は伝統的な政策金利操作ではなく、非伝統的な「量的緩和政策」に焦点が移りました。

日本銀行の政策は伝統的な政策金利操作ではなく、非伝統的な「量的緩和政策」に焦点が移りました
日本銀行バランスシート政策金利の推移(出典:Trading view)

量的緩和政策を強力に推進したのは黒田日銀総裁でしたが、その背景にあるのはデフレ脱却を公約として誕生した第2次安倍政権です。
アベノミクスと呼ばれた金融緩和政策下で日銀はどのような政策を取ってきたのか、整理して見てみたいと思います。

2013年1月22日、当時の白川総裁との間で、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」という、いわゆる政府・日銀共同声明を出しました。
日本銀行は2%の物価目標を実現することを約束し、政府は規制緩和、イノベーション基盤の強化等、日本経済の競争力強化に向けた取り組みをすすめ、同時に財政に対する信任確保の取り組みを約束しました。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2013/k130122c.pdf

2013年4月4日、日銀は「量的・質的金融緩和」の導入を決めました。
いわゆるバズーカ1です。
マネタリーベースを年間60-70兆円ペースで増加させることを目指し、長期国債を年間50兆円ペースで買い入れることを約束しました。
ここから、日本銀行のバランスシートは急拡大します。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2013/k130404a.pdf

2014年10月31日、日銀は「量的・質的金融緩和」の拡大を決めました。
いわゆるバズーカ2です。
国債購入ペースを年間80兆円に加速させました。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2014/k141031a.pdf

2016年1月29日、日銀は「マイナス金利付き量的・質的緩和」を導入、ついにマイナス金利に踏み込みました。
しかし、ドル円相場は発表直後こそ円安となりましたが、その後円高に向かい、6月22日の英ブレグジット国民投票結果後は99円台に突入するなど、黒田総裁の目論見とは違う方向に動きました。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2016/k160129a.pdf

2016年9月21日、日銀はこれまでの金融緩和政策の「総括的な検証」を行い、デフレではなくなったものの、なぜ2%の物価目標に届かないのか検証しました。
粘り強く金融緩和を進めていかなければならないとして、「長短金利操作付き量的・質的緩和」を導入しました。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2016/k160921a.pdf

80兆円の長期国債購入枠は維持されましたが、事実上、量の政策は放棄され、長期金利の変動幅を抑えることで金融緩和を進めるという金利政策にシフトしました。

このあと、上記のグラフを見るとわかるように、日銀のバランスシートの拡大は鈍化を始めました。

現在、日銀は黒田日銀総裁のもとで採用されたYCC(イールドカーブ・コントロール)政策をどのようにストップさせるのか、という部分が焦点となっています。
世界でも例を見ない長期金利をコントロールする政策がどのような経緯で採用されるに至ったか、前述した部分は非常に重要なポイントといえます。

量的緩和政策とドル円相場の関係

ハト派エコノミストを中心に、中央銀行のバランスシートが拡大すると通貨安になるということが、常識的に語られています。
しかし、本当でしょうか?

先程のチャートにドル円相場を重ねて見てみます。

先程のチャートにドル円相場を重ねて見てみます

上記を見てわかるように、相関関係は高そうに見えます。

図のオレンジの期間、2013年から2015年夏までは、日銀バランスシート拡大に伴い、ドル円も上昇しました。
しかし、グリーンの期間、2015年8月から2021年12月まで、バランスシートは拡大していますが、ドル円相場は軟調です。
図の黄色の部分、2021年から2023年にかけては、バランスシートはほとんど増えていませんが、ドル円は急騰しました。

バランスシートと為替相場は因果関係があるように見えなくもないですが、予想の手段に使うにはあまりにも漠然としていると私個人としては思います。
すなわち、予想の手段としては結局使えないと考えます。
各国のベースマネーの量を比較して為替レートの予想することを「ソロスチャート」と呼んでいる人は多いのですが、当のソロス本人は、かつての一時期そう言ってはいましたが、ずっとそのようには考えてなかったでしょう。
「ソロスチャート」という言葉は1人歩きしているように見えます。

今後の日銀の方向性

今、日本の金融政策で問題になっているのは、YCC(イールドカーブ・コントロール)をどうすべきか、という点でしょう。
世界的なインフレ率上昇が日本にもきました。

今、日本の金融政策で問題になっているのは、YCC(イールドカーブ・コントロール)をどうすべきか、という点でしょう
日本のコアCPI(出所:トレーディングビュー)

日本のインフレ率も、1990年代後半から2%を超えることが難しかったのですが、昨今4%台に乗せて来るようになりました。
各国のインフレ率上昇が日本にも波及した格好です。

このインフレ率上昇を受けて、日本銀行は金融引き締めに動くと、多くの海外勢が考えています。
2023年7月なのか、9月、10月辺りになるのか、時期は定かではありません。
個人的には、早めに処理する方が望ましいのではないかと思っています。

政策を変えるとすれば

    (1)YCC(イールドカーブ・コントロール)政策の変更

  • (a) 現在のバンド幅0.5%を0.75%もしくは1.0%に変更する。
  • (b) 現在のターゲット金利10年物国債から、5年等に年限を短期化する。
  • (c) もしくは、全て撤廃。
  • (2)マイナス0.1%の政策金利を0.0%もしくは0.1~0.25%にあげる。

これまでの日銀の話によると、YCCは金融緩和政策とは違うものという位置付けです(※植田総裁、内田副総裁のインタビュー記事等を参照)。

金融緩和や引き締めとは関係ないので、いつでも行うことが可能です。

しかし、YCCに手を付ければ、金融正常化に進んだとマーケットは見るので、ドル円相場で言えば3-5円ぐらい円高方向に行くことはあり得るでしょう。

(2)のマイナス金利の解除や、0.25%程度への引き締めというのは、かなりハードルが高そうにみえます。
植田総裁が就任した最初の会合(2023年4月28日)の声明文において、「賃金の上昇を伴う形で、2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指していく」と書いているためです。

Provided by
志摩力男(しまりきお)

慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。


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