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CPIナウ(CPI Now)とは?CPI(米消費者物価指数)を予測するうえで参考となるデータについて解説


米消費者物価指数を予想するのに参考になる数字がいくつかあります。
クリーブランド連銀が公表しているCPIナウは、その精度の高さから多くの市場関係者の注目を集めます。

CPIナウ(CPI Now)

クリーブランド連邦準備銀行は、個人消費支出価格指数(PCE)と消費者物価指数(CPI)という2つの代表的な物価指数についての「ナウキャスト(Nowcast)」、すなわち現時点での推計値・予測値を毎日発表しています。

クリーブランド連銀
https://www.clevelandfed.org/indicators-and-data/inflation-nowcasting

「ナウキャスト(Nowcast)」は10のデータシリーズを使用して作成されています。
10のうち8つは月次データです。
内訳を見てみると、8つのうち5つはBLS(米労働統計局)からのデータで、CPI、コアCPI、食品CPI、家庭用食品CPI、ガソリンCPIを使用しています。
残り3つはBEA(米商務省経済分析局)からのデータで、PCE価格指数、PCEコア価格指数、食品・飲料のPCE価格指数です。
10のうち2つは週次のデータ系列で、1つはエネルギー情報局から毎週月曜日に発表されるガソリン小売価格、もう1つはブレント原油のスポット価格であり、フィナンシャル・タイムズ紙またはエネルギー情報局から発表されます。

歴史的にこのクリーブランド連銀CPIナウの予測は非常に優れており、一般的なベンチマークやプロの市場関係者の予測よりも正確でした。
クリーブランド連銀はその精度についてFRS(連邦準備制度)のグリーンブックに匹敵すると発言しています。

その正確性ゆえ、市場関係者のみならず、政策立案者も米消費者物価指数のトレンドを把握する際に利用していると言われています。
米消費者物価指数発表直前には注目され、市場予想との乖離があれば、CPIナウの方向に賭けるトレーダーもいます。

スティッキープライス消費者物価指数(Sticky-Price CPI)

スティッキープライス消費者物価指数(Sticky-Price CPI)は、米国の消費者物価指数の構成要素に注目した指標でアトランタ連銀が算出・公表しています。
CPIの構成要素を価格頻度に基づいて「価格が柔軟に変動する品目」と「価格の粘着性が高い品目」に分類しています。
「価格の粘着性が高い品目」は頻繁に価格を変更できないので、頻繁に価格変更される物品より将来のインフレ期待があらかじめ組み込まれて価格改定されていると考えられているからです。

アトランタ連銀、Sticky-Price CPI公表ページ
https://www.atlantafed.org/research/inflationproject/stickyprice

アトランタ連銀、Sticky-Price CPI公表ページ
画像:CPIコア指数とスティッキープライスCPI

スティッキープライスCPIの方がCPIコア指数よりも動きがなだらかですが、確かに趨勢を表しているとも言えます。

なぜ「価格の粘着性が高い品目」にインフレ見通しが組み込まれやすいのでしょうか。
その点に関してはグリーブランド連銀のページが適切に説明しているかもしれません。
少しアカデミックですが、ご興味のある方にとっては参考になると思います。

クリーブランド連銀

「Are Some Prices in the CPI More Forward Looking Than Others? We Think So.
-CPIに含まれる一部の物価は、他の物価よりも将来を見通しているのでしょうか? 私たちはそう考えています。」
https://www.clevelandfed.org/publications/economic-commentary/2010/ec-201002-are-some-prices-in-the-cpi-more-forward-looking-than-others-we-think-so

頻繁に価格変更できない物やサービスは、将来のインフレ率の推移を慎重に考慮して価格設定しなければならないので、より先のことを見越しているはずであると説明しています。
そして「スティッキー(粘着性のある)」な品目の価格は、柔軟性のある品目の価格より数ヶ月遅行してピークアウトを迎える傾向があることがわかっています。
代表的なものに家賃がありますが、家賃の反映には6ヶ月から1年程度の時間がかかります。

このスティッキープライスCPIは、目先の消費者物価指数の予測にはあまり役立たないかもしれませんが、将来のインフレ率がどうなるのかを占う上では重要です。

先述の画像でもわかりますが、CPIは順調に低下してきています。
しかし、サービス価格の一部の「スティッキー(粘着性のある)」なものは、価格が上昇し続けています。
そのことがFRBの関心を引いています。

今後、おそらく順調に3%程度まで米消費者物価指数は下がっていくと思われますが、「スティッキー」な価格がそこから下の価格低下を妨害するかもしれません。
そうなると、なかなかFRBは金利を下げられないことになり、ドル円相場のサポート要因になる可能性があります。
その意味でも、スティッキープライスCPIには、今後も注目していきたいものです。

記事執筆者:志摩力男(しまりきお)

慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。


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