アジア通貨危機とは|原因・市場への影響・時期などをわかりやすく解説
アジア通貨危機とは、タイ・バーツの下落をきっかけとして発生した金融危機です。
1997年にタイから始まり、インドネシアやマレーシア、韓国などのアジア各国の経済に大きな影響を与えました。
日本は東南アジア諸国のような経済危機には見舞われなかったものの、金融システムへの不安が強まりました。
本記事では、アジア通貨危機の原因や市場への影響、発生時期などをわかりやすく解説します。
目次
- 1.アジア通貨危機とは
- 2.アジア通貨危機の主な要因
- 3.アジア通貨危機の市場への影響
- 4.アジア通貨危機に関するQ&A
- 5.【まとめ】アジア通貨危機とは|原因・市場への影響・時期などをわかりやすく解説
アジア通貨危機とは
まずは、アジア通貨危機とは何か、どの国が影響を受けたのかを解説します。
- ・アジア通貨危機の発端・時期
- ・アジア通貨危機の影響を受けた主な国
アジア通貨危機の発端・時期
アジア通貨危機はタイ・バーツの下落をきっかけとした金融危機で、1997年7月に発生しました。
当時のタイは大きな経済成長を遂げていたものの、不動産・金融部門の過熱や経常収支の赤字などを背景に、経済の先行きへの不安が高まっていました。
一方、ドルペッグ制によってタイ・バーツは実態よりも高めに維持されていました。
そうした中で1997年7月にタイ・バーツが急落し、金融機関や企業の経営悪化を通じて、タイ経済の悪化が深刻化しました。
そして、タイからアジア各国へと波及していきました。
発端はタイですが、結果として国際金融市場に大きな悪影響を与えた金融危機として記憶されています。
アジア通貨危機の影響を受けた主な国
発端となったタイをはじめ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、シンガポールなどの東南アジア諸国を中心に、韓国や香港へと波及しました。
その結果、タイ、インドネシア、韓国は国際通貨基金(IMF)からの金融支援を受けることになりました。
日本ではタイのような経済危機は発生しなかったものの、アジアに投資や輸出をしていた企業が影響を受けました。
アジア通貨危機の主な要因
アジア通貨危機の主な原因について解説します。
- ・ドルペッグ制と通貨高
- ・脆弱な銀行システム
- ・へッジファンドなどによる大量の「空売り」
ドルペッグ制と通貨高
アジア通貨危機時のタイは、自国通貨を米ドルと連動させるドルペッグ制を採用していました。
タイ・バーツは米ドルに対して為替レートが固定化されていた一方で、為替レートを維持するためには大量の外貨準備が必要というデメリットもありました。
当時のタイは輸出志向型の経済で成長を続けていたものの、経常収支の赤字や不動産バブル、輸出の伸び悩みなどによって経済の先行きが不安視され、タイ・バーツを売る動きが発生しました。
タイの中央銀行はドルペッグ制を維持するために介入しましたが、外貨準備を大きく失ったことで通貨防衛が困難となり、変動相場制(管理フロート制)へ移行しました。
その結果、タイは国際通貨基金(IMF)などの支援を受けることとなり、緊縮経済を余儀なくされ、経済が大きく悪化しました。
その後、米ドルとの連動性が高い為替運営を行っていた国や、対外債務・金融システムに不安を抱えていた国にも市場の警戒感が広がり、マレーシア、インドネシア、フィリピン、韓国などへ危機が波及しました。
脆弱な銀行システム
銀行システムの構造的な問題も、アジア通貨危機の要因です。
当時のタイを含む東南アジア諸国には海外からの融資が入っており、過度な設備投資や不動産投資などに向けられました。
また、金融機関も融資の拡大を行っており、その中には審査が甘い融資も含まれていました。
タイ・バーツが急落したことでドル建て借入の返済額がバーツ換算で増え、借りていた企業や金融機関は返済が困難となり、企業の破綻や不良債権が増加していきました。
そして、信用不安の広がりによって投資家の資金引き上げが進み、企業や金融機関の経営悪化を通じて金融危機や実体経済の悪化へと広がりました。
ヘッジファンドなどによる大量の「空売り」
ヘッジファンド
などによるタイ・バーツへの投機的な空売りも、アジア通貨危機を加速させた要因の1つとされています。投機筋は当時のタイが経常収支の赤字や輸出に伸び悩んでいることから、タイ・バーツが過大評価されていると判断し、タイ・バーツの売りを強めました。
その結果、タイ・バーツは下落し、それを見た投資家や金融機関による資金引き上げが進むことで、さらにバーツ売りが強まる連鎖につながりました。
最終的にタイはドルペッグ制の維持が困難となって変動相場制へ移行し、それを契機に危機がアジア各国へ波及しました。
アジア通貨危機の市場への影響
アジア通貨危機が市場にどのような影響を与えたのかを、日経平均株価と円/タイ・バーツを例に解説します。
- ・週足チャート
- ・月足チャート
週足チャート
・円/タイ・バーツ
出典:TradingView
円/タイ・バーツの1997年の週足チャートです。
1997年6月後半に大陽線をつけ、同年7月から急騰しています。
1998年1月に高値をつけた後は下落し、同年4月以降は横ばいに推移しています。
対円レートを見ても短期間に大きくバーツ安に動いたことがわかります。
なお、タイ・バーツは対米ドルでも下落しており、通貨危機によってバーツ安が急速に進行しました。
・日経平均株価
出典:TradingView
日経平均株価の1997年の週足チャートです。
1997年は上昇基調であったものの、アジア通貨危機が発生した1997年7月以降は右肩下がりに推移しています。
なお、1990年代後半はアジア通貨危機以外にも日本経済に大きな打撃を与える出来事が多く起こりました。
国内の不良債権問題に起因する北海道拓殖銀行の破綻や山一證券の廃業、消費税の引き上げがあり、当時の日本経済に影響を与えています。
月足チャート
・円/タイ・バーツ
出典:TradingView
円/タイ・バーツの月足チャートを見ても、1997年7月から短期間で大きくバーツ安に動いていることがわかります。
1998年2月にはいったん大きく下落したものの、1999年7月から再び上昇しています。
急激なバーツ安が進行したことで、タイ経済に大きな悪影響を及ぼしました。
・日経平均株価
出典:TradingView
日経平均株価の月足チャートでは、1997年7月から下落を始め、約1年後の1998年8月には1万4000円の終値をつけました。
1997年8月の終値は1万8000円だったことから、1年間で約4000円下落した形です。
ただし、日経平均の下落はアジア通貨危機だけでなく、国内金融機関の破綻や消費増税などの影響も加わった結果だと考えられます。
アジア通貨危機に関するQ&A
アジア通貨危機に関するよくある質問は、主に以下の通りです。
- ・アジア通貨危機は日本に影響を与えましたか?
- ・アジア通貨危機は為替市場にどのような影響を与えましたか?
- ・アジア通貨危機が再来する可能性はありますか?
アジア通貨危機は日本に影響を与えましたか?
日本国内で直接的な経済危機は発生しなかったものの、アジア向け輸出の減少や、現地向けの投資・融資での損失発生を通じて、日本の企業や金融機関にも悪影響が及びました。
アジア通貨危機は為替市場にどのような影響を与えましたか?
タイ・バーツやインドネシア・ルピア、韓国ウォンなどのアジア通貨が急落しました。
また、投資家のリスク回避姿勢が強まり、世界の金融市場にも影響が波及しました。
アジア通貨危機が再来する可能性はありますか?
将来的にアジア通貨危機のような金融危機が起きる可能性はあります。
ただし、1997年当時と同じ形でアジア通貨危機が再来するとは限りません。
危機後、アジア各国では外貨準備の積み増し、金融監督の強化、地域金融協力の整備などが進みました。
とはいえ、同様の金融危機が起きた場合は、日本を含む世界経済に大きな影響を与える可能性があります。
【まとめ】アジア通貨危機とは|原因・市場への影響・時期などをわかりやすく解説
アジア通貨危機とは、タイ・バーツの下落をきっかけとした金融危機です。
1997年7月にタイで始まり、インドネシアやマレーシア、韓国などのアジア各国に波及しました。
主な原因には、ドルペッグ制の採用、脆弱な銀行システムなどが挙げられます。
今後もアジア通貨危機のような金融危機が発生する可能性を考え、教訓として学ぶことが投資を続けていくうえでは大切です。
OANDA証券では、アジア通貨危機をはじめ投資に関わる基礎的な用語を、初心者の方向けにわかりやすく解説するコンテンツを提供しています。
OANDA証券での取引に興味をお持ちいただけた方は、以下のボタンから口座開設をご検討ください。
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
