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次期FRB議長レース、焦点は1月FOMCか

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再燃する「プラザ合意2.0」観測、トランプ氏はドル安容認も

「プラザ合意2.0」――日米“協調”行動を受け対ドルでの円安是正が進むなか、トランプ政権発足前に「マールアラーゴ合意 」として取り沙汰されたドル安誘導観測が蒸し返されている。
1月23日に日銀金融政策決定会合後に幕開けしたドル円急落劇は、NY連銀のレートチェック観測に加え、1月27日にはドナルド・トランプ大統領の「ドル安はすばらしい」発言まで重なった。

特にトランプ氏の発言は、2025年3月以降、封じていた対円、対人民元でのドル高是正の必要性を改めて強調するものだった。

「中国や日本を見ればわかるが、私は彼らといつも激しい応酬を交わしていた。というのも、彼らは常に円や人民元を切り下げたがっていたからだ。彼らは切り下げて、切り下げて、また切り下げる(They devalue, devalue, devalue)。だから私は『不公平だ』と言った。彼らが通貨を切り下げると、競争するのが難しくなるからだ」

ただし、片山さつき財務相がトランプ発言の前に「日米財務相共同声明に基づき、米当局と緊密に連携し続ける」を強調しているように、米国がドル安を誘導すべく日本を利用した印象もある。
高市早苗首相率いる政権にしても、衆議院総選挙を控え、円安是正は物価高対策となり、ウィン・ウィンだったと言えよう。

トランプ氏、次のドル安誘導の一手に次期FRB議長指名を活用も?

一連の流れを受け、ドル・インデックスは1月27日に前日比1.3%安の95.55と2022年2月以来の水準へ沈んだ。
2022年3月に利上げしてからの上げ幅を完全に相殺したが、トランプ政権1期目の安値88.25には、まだ距離がある。

チャート:ドル・インデックスの週足
チャート:ドル・インデックスの週足
(出所:TradingView)

そこで、トランプ政権がドル一段安を狙うならば、次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長指名の機会を活用するシナリオもあり得るだろう。
トランプ氏は1月27日、次期FRB議長を「かなり近いうちに発表する」と言い切った。
合わせて「金利はかなり下がるだろう」と述べており、トランプ政権の意を汲んで利下げを継続させる候補者に白羽の矢を立てる公算が大きい。

ウルフ・リサーチのステファニー・ロス氏は、次期FRB議長指名について「最も可能性が高いタイミングを一つ挙げるならば、1月のFOMC開催期間中だろう。特に、利下げを見送ったFRBから関心を逸らしたいとトランプ氏が考えているのであれば、なおさらだ」と指摘
同氏は、次期FRB議長指名について、今週あるいは数週間以内と幅広に予想するが、スティーブン・ミランFRB理事の任期切れを1月31日に控えるだけに、ここに合わせて次期FRB議長を指名する可能性がありそうだ。
足元、パウエル議長がFRB理事として残留するシナリオを排除できないなか、FRB理事会で多数派の4人を獲得すべく、ミラン氏を残すとは考えづらい。

チャート:FRB正副議長と理事、それぞれの任期
チャート:FRB正副議長と理事、それぞれの任期

次期FRB議長については、これまでケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長、ケビン・ウォーシュ元FRB理事の「2人のケビン」が最有力視されてきた。
もっとも、ハセット氏についてトランプ氏は現職にとどまってほしい意向を表明済み。
また、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が報じたように、債券投資家がトランプ政権の意向に添う大幅利下げを通じインフレを加速するとして、米財務省に懸念を伝えたといい、ブロックチェーン型市場予測プラットフォームのカルシで、1月28日時点の予想確率は7%まで低下した。

こうした状況下、足元で急浮上しているのが米資産運用大手ブラックロックの債券担当最高投資責任者(CIO)、リック・リーダー氏だ。
トランプ氏が1月21日、リーダー氏との面談の後に「非常に印象的」と高評価していたことを一因に、最有力候補に浮上。
同氏のカルシでの予想確率は47%と、ウォーシュ氏の28%を抜く。

画像:カルシが示す次期FRB議長、指名確率
画像:カルシが示す次期FRB議長、指名確率
(出所:カルシ

リーダー氏は3%までの利下げを支持、住宅の「アフォーダビリティ」への配慮も

リーダー氏が次期FRB議長レースで一歩リードした背景として、過去の発言を基に3つの要因が挙げられる。
1つ目は、FRBの保有資産の戦略で、同氏は2025年6月時点で流動性懸念から量的引き締め(QT)を停止すべきと主張
実際に、2025年10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で短期金利の急伸を受けQTの終了を決定しただけでなく、同年12月のFOMCでは米財務省短期証券(Tビル)の購入再開を発表した。
なお、スコット・ベッセント長官率いる米財務省は超長期ゾーンの米国債発行を抑え、短期ゾーンにシフトしている。
こうしたFedと米財務省の戦略は、リーダー氏の考え方とも整合的だ。

2つ目に、リーダー氏が住宅市場の安定化に積極姿勢を示しており、その点がトランプ政権から評価されている可能性がある。
同氏は、2025年9月のインタビューで「アフォーダビリティ(この場合は住宅購入のしやすさ)を取り戻す必要がある」とアピールしていた。

チャート:次期FRB議長候補の主な特徴
チャート:次期FRB議長候補の主な特徴

3つ目に、利下げ継続の志向が挙げられる。
同氏は、利下げによって住宅ローン金利引き下げが可能と発言。
また、1月13日に「Fedは中立金利に近い3%まで利下げできる」と主張していた。
足元でFF金利誘導目標は3.5~3.75%であるため、FF先物市場と同じく、あと2回の利下げ余地を見込んでいた。

チャート:FF先物市場、1月27日時点で年内はかろうじて2回の利下げ予想に傾く
チャート:FF先物市場、1月27日時点で年内はかろうじて2回の利下げ予想に傾く

同じウォール街出身でもウォーシュ氏がモルガン・スタンレーで企業の合併・買収(M&A)部門でキャリアを積んだ事実を踏まえれば、リーダー氏に軍配が上がってもおかしくない。
ただ、上院の指名公聴会では、リーダー氏が破綻したリーマン・ブラザーズ出身であることが取り沙汰される場合もありそうだ。

リーダー氏が次期FRB議長候補として注目されるが、ワシントン・ポスト紙は2017年4月に「判断に影響を及ぼしたいなら、最後に話す人になればいい」と報じていた。
トランプ氏の決断は直前で変わる場合もあり、蓋を開けてからのお楽しみとなりそうだ。

株式会社ストリート・インサイツ代表取締役・経済アナリスト 安田佐和子

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株式会社ストリート・インサイツ代表取締役・経済アナリスト 安田佐和子

世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。
2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。
その他、ジーフィット株式会社にて為替アンバサダー、一般社団法人計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員を務める。
NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライト」の他、日経CNBCやラジオNIKKEIなどに出演してきた。
その他、メディアでコラムも執筆中。
X(旧ツイッター):Street Insights
お問い合わせ先、ブログ:My Big Apple NY


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