市場見通し
◆ポンド、26日公表の秋季予算案に注目
◆ポンド、インフレ減速を確認し12月利下げ見込み高まる
◆加ドル、政府予算案の可決で解散総選挙は回避
予想レンジ
ポンド円 204.00-209.00円
加ドル円 110.00-114.00円
11月24日週の展望
来週のポンド相場は、対円では日本と英国の財政に対する思惑で上下する展開。対ドルでは、英米それぞれの金利見通しが鍵となりそうだ。高市首相が掲げた「責任ある積極財政」を背景に、新政権は大規模な総合経済対策を推進しようとしている。債券市場が問題視しているのは、責任の所在が明らかにされていないこと。財源問題の後回しが嫌気され、本邦の超長期債への売り圧力が強まると(利回りは上昇基調)、円安の流れも加速する可能性があるだろう。
英国では26日にリーブス英財務相が発表する秋季予算案に注目が集まる。英FT紙は先週、関係者の話として「予算案で所得税の引き上げなし」を報じた。財政改革の遅れが懸念されて英長期債や超長期債は売られ、利回りは約1カ月ぶりの水準まで上昇。リーブス氏は今週、「予算案に関する情報漏洩は許さない」と述べたが、報道自体は否定していない。ただ、別の報道によれば、確実とされた「所得税引き上げ」が取り止められたのは、予算責任局(OBR)の財政見通しが想定ほど悪くなかったためだ。財務相は予算案について、「NHS(国民保健サービス)の待機リスト短縮、国家債務の縮小、そして生活費の削減」などの優先事項を達成するため、公正な選択の実施を表明している。財政不足に変わりはないため、寄せ集めの増税が実施されるもよう。予算案でスターマー政権が市場の信認を受けられるかどうかで、ポンド相場の行方も決まりそうだ。
19日に発表された10月消費者物価指数(CPI)は前年比3.6%上昇と予想を上回ったものの、9月分からは鈍化した。英中銀が注視するサービス価格インフレ率も、4%台で減速基調を示した。これを背景に、12月の英金融政策委員会(MPC)では利下げ期待が高まっている。一方で、米国では、年内利下げ観測が急速に後退しており、金融政策からポンドは対ドルで買いづらい状況だ。
加ドルも対円では、高市政権による財政拡張政策を受けた本邦債券市場の動向が手掛かりとなりそうだ。財政悪化を警戒した超長期債利回りの上昇(価格の下落)を受けて円売りが強まっており、材料出尽くしまで流れは変わりそうにない。
また、カナダ国内に目を向けると、連邦議会は、政府予算案(財政赤字が前年度の倍以上に拡大)の下院における審議入り動議を僅差で可決した。この採決はカーニー政権にとって事実上の信認投票とされ、否決されれば政権崩壊と総選挙に発展する可能性が高かった。カーニー首相率いる自由党は少数与党のため、今後も議会運営には苦労することになるだろう。
11月17日週の回顧
ポンドや加ドルは対円で上値を試した。高市政権による大規模な経済対策が明らかとなる中、本邦長期債が売られて為替は円安が進行。ポンドは203円前半から2024年7月以来の高値圏である206円後半まで上昇し、加ドルも110円付近から約1年4カ月ぶりの112円台に乗せる場面があった。対ドルでは、ポンドが1.32ドル手前から1.3030ドル台まで下落。英インフレ鈍化や予算案への警戒感が重しとなった。加ドルは1.41加ドル前半まで加ドル安に振れた。(了)
(執筆:11月21日、9:00)
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本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
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◆ポンド、インフレ減速を確認し12月利下げ見込み高まる
◆加ドル、政府予算案の可決で解散総選挙は回避
予想レンジ
ポンド円 204.00-209.00円
加ドル円 110.00-114.00円
11月24日週の展望
来週のポンド相場は、対円では日本と英国の財政に対する思惑で上下する展開。対ドルでは、英米それぞれの金利見通しが鍵となりそうだ。高市首相が掲げた「責任ある積極財政」を背景に、新政権は大規模な総合経済対策を推進しようとしている。債券市場が問題視しているのは、責任の所在が明らかにされていないこと。財源問題の後回しが嫌気され、本邦の超長期債への売り圧力が強まると(利回りは上昇基調)、円安の流れも加速する可能性があるだろう。
英国では26日にリーブス英財務相が発表する秋季予算案に注目が集まる。英FT紙は先週、関係者の話として「予算案で所得税の引き上げなし」を報じた。財政改革の遅れが懸念されて英長期債や超長期債は売られ、利回りは約1カ月ぶりの水準まで上昇。リーブス氏は今週、「予算案に関する情報漏洩は許さない」と述べたが、報道自体は否定していない。ただ、別の報道によれば、確実とされた「所得税引き上げ」が取り止められたのは、予算責任局(OBR)の財政見通しが想定ほど悪くなかったためだ。財務相は予算案について、「NHS(国民保健サービス)の待機リスト短縮、国家債務の縮小、そして生活費の削減」などの優先事項を達成するため、公正な選択の実施を表明している。財政不足に変わりはないため、寄せ集めの増税が実施されるもよう。予算案でスターマー政権が市場の信認を受けられるかどうかで、ポンド相場の行方も決まりそうだ。
19日に発表された10月消費者物価指数(CPI)は前年比3.6%上昇と予想を上回ったものの、9月分からは鈍化した。英中銀が注視するサービス価格インフレ率も、4%台で減速基調を示した。これを背景に、12月の英金融政策委員会(MPC)では利下げ期待が高まっている。一方で、米国では、年内利下げ観測が急速に後退しており、金融政策からポンドは対ドルで買いづらい状況だ。
加ドルも対円では、高市政権による財政拡張政策を受けた本邦債券市場の動向が手掛かりとなりそうだ。財政悪化を警戒した超長期債利回りの上昇(価格の下落)を受けて円売りが強まっており、材料出尽くしまで流れは変わりそうにない。
また、カナダ国内に目を向けると、連邦議会は、政府予算案(財政赤字が前年度の倍以上に拡大)の下院における審議入り動議を僅差で可決した。この採決はカーニー政権にとって事実上の信認投票とされ、否決されれば政権崩壊と総選挙に発展する可能性が高かった。カーニー首相率いる自由党は少数与党のため、今後も議会運営には苦労することになるだろう。
11月17日週の回顧
ポンドや加ドルは対円で上値を試した。高市政権による大規模な経済対策が明らかとなる中、本邦長期債が売られて為替は円安が進行。ポンドは203円前半から2024年7月以来の高値圏である206円後半まで上昇し、加ドルも110円付近から約1年4カ月ぶりの112円台に乗せる場面があった。対ドルでは、ポンドが1.32ドル手前から1.3030ドル台まで下落。英インフレ鈍化や予算案への警戒感が重しとなった。加ドルは1.41加ドル前半まで加ドル安に振れた。(了)
(執筆:11月21日、9:00)
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DZH Finacial Research
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