GDP - FX初心者向け用語解説
GDPとは
GDPとは、Gross Domestic Productの略で「国内総生産」のことです。
米GDPを発表する米商務省経済分析局のホームページではGDPを「米国で生産された財とサービスの価値」と説明しています。
四半期ごとに数字が発表されますが、最初に速報値、その後改定値、そして最後に確報値と合計3回数字が発表されます。
月の第4週目の水曜日、もしくは木曜日に発表されるケースが多く、発表元は米商務省です。
米国内総生産 (GDP:Gross Domestic Product) | |
---|---|
発表日時 | 多くの場合、毎月第4水曜日もしくは木曜日 (夏時間)21時30分 (冬時間)22時30分 |
発表内容 | ・GDP |
発表機関 | 米商務省 経済分析局 (Bureau of Economic Analysis, U.S. Department of Commerce) |
URL | https://www.bea.gov/data/gdp/gross-domestic-product#gdp |
発表スケジュールは以下のようになっています。
速報値 | 改定値 | 確報値 | |
---|---|---|---|
第1四半期(1-3月期)GDP | 4月 | 5月 | 6月 |
第2四半期(4-6月期)GDP | 7月 | 8月 | 9月 |
第3四半期(7-9月期)GDP | 10月 | 11月 | 12月 |
第4四半期(10-12月期)GDP | 1月 | 2月 | 3月 |
GDP発表直後の市場反応
GDPは、時に市場にインパクトを与えるときがありますが、米雇用統計や米CPIの時ほどではありません。
国の経済目標はGDPを大きくすることなので、経済指標の中で最も重要な数字ではありますが、GDPは先行性のある経済指標ではありません。
終わった結果の数字、過去の経済活動の数字であり、マーケットを見通す意味では重要度は下がると解釈され、遅行指標といえます。
過去1年のGDP発表と、その後のドル円相場の動きは以下です。
速報値 | 改定値 | 確報値 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2023年 第3四半期 | 0.29円 | 0.19% | 0.42円 | 0.28% | 0.48円 | 0.34% |
2023年 第2四半期 | 1.08円 | 0.77% | 0.72円 | 0.50% | 0.17円 | 0.11% |
2023年 第1四半期 | 0.84円 | 0.63% | 0.60円 | 0.43% | 0.64円 | 0.44% |
2022年 第4四半期 | 0.70円 | 0.54% | 0.37円 | 0.27% | 0.35円 | 0.26% |
グラフから分かるように、GDPの発表後のドル円は1%を超えるような動きにはなっていません。
そして比較すると速報値よりは改定値、改定値より確報値の値動きが小さくなって行きます。
例外はありますが、重要度から言えば
です。
米GDPの推移
米国は世界最大GDPを誇る経済規模と高い成長力を保っています。
2023年末の米国のGDPは27兆ドル前後ですが、これは1ドル145円で計算すると3915兆円で、日本のGDPが約595兆円なので、約6.58倍の経済規模です。
実質GDPの対前年比の推移です。
過去40年、平均2.6%の成長となっています。
米国の人口は約3億3200万人、日本の人口は約1億2400万人であることを考えると、人口比では米国は日本の2.68倍です。
GDP比が6.58倍ということは、一人あたりのGDPにおいて2.45倍の開きがあります。
この開きは、非常に大きいといえます。
もし仮に日本の一人あたりGDPと米国の一人あたりGDPが同じになるとすれば、そのときのドル円レートは60円です。
また、GDPには2つの表示方法があります。
名目GDPと実質GDPです。
名目GDPとは、実際の数字です。
実質GDPとはインフレ率の変化の影響を排除した数字です。このとき使われるインフレ指標は、消費者物価指数や生産者物価指数等ではなく、GDPデフレーターと呼ばれています。
実質GDPは以下で算出されています。
(名目GDP)÷(GDPデフレーター)=(実質GDP)
1980年以降の米国の名目GDP、名目成長率、実質GDP、実質成長率、GDPデフレーターは以下です。
米名目GDP | 名目成長率 | 米実質GDP | 実質成長率 | GDPデフレーター | |
---|---|---|---|---|---|
1980 | 2,857.33 | 6,763.50 | |||
1981 | 3,207.03 | 12.2% | 6,935.15 | 2.5% | 9.46% |
1982 | 3,343.80 | 4.3% | 6,810.13 | -1.8% | 6.18% |
1983 | 3,634.03 | 8.7% | 7,122.30 | 4.6% | 3.92% |
1984 | 4,037.65 | 11.1% | 7,637.70 | 7.2% | 3.61% |
1985 | 4,339.00 | 7.5% | 7,956.18 | 4.2% | 3.16% |
1986 | 4,579.63 | 5.5% | 8,231.65 | 3.5% | 2.01% |
1987 | 4,855.25 | 6.0% | 8,516.43 | 3.5% | 2.47% |
1988 | 5,236.43 | 7.9% | 8,872.18 | 4.2% | 3.53% |
1989 | 5,641.60 | 7.7% | 9,197.98 | 3.7% | 3.92% |
1990 | 5,963.13 | 5.7% | 9,371.48 | 1.9% | 3.74% |
1991 | 6,158.13 | 3.3% | 9,361.33 | -0.1% | 3.38% |
1992 | 6,520.33 | 5.9% | 9,691.08 | 3.5% | 2.28% |
1993 | 6,858.55 | 5.2% | 9,957.78 | 2.8% | 2.37% |
1994 | 7,287.25 | 6.3% | 10,358.93 | 4.0% | 2.14% |
1995 | 7,639.75 | 4.8% | 10,636.98 | 2.7% | 2.10% |
1996 | 8,073.13 | 5.7% | 11,038.25 | 3.8% | 1.83% |
1997 | 8,577.55 | 6.2% | 11,529.15 | 4.4% | 1.72% |
1998 | 9,062.83 | 5.7% | 12,045.83 | 4.5% | 1.13% |
1999 | 9,631.18 | 6.3% | 12,623.38 | 4.8% | 1.41% |
2000 | 10,250.95 | 6.4% | 13,138.05 | 4.1% | 2.27% |
2001 | 10,581.93 | 3.2% | 13,263.43 | 1.0% | 2.25% |
2002 | 10,929.10 | 3.3% | 13,488.35 | 1.7% | 1.56% |
2003 | 11,456.45 | 4.8% | 13,865.53 | 2.8% | 1.97% |
2004 | 12,217.18 | 6.6% | 14,399.68 | 3.9% | 2.68% |
2005 | 13,039.20 | 6.7% | 14,901.25 | 3.5% | 3.14% |
2006 | 13,815.60 | 6.0% | 15,315.93 | 2.8% | 3.09% |
2007 | 14,474.25 | 4.8% | 15,623.88 | 2.0% | 2.70% |
2008 | 14,769.85 | 2.0% | 15,642.98 | 0.1% | 1.92% |
2009 | 14,478.05 | -2.0% | 15,236.28 | -2.6% | 0.64% |
2010 | 15,048.98 | 3.9% | 15,649.00 | 2.7% | 1.20% |
2011 | 15,599.73 | 3.7% | 15,891.53 | 1.5% | 2.08% |
2012 | 16,253.95 | 4.2% | 16,253.98 | 2.3% | 1.87% |
2013 | 16,843.23 | 3.6% | 16,553.35 | 1.8% | 1.75% |
2014 | 17,550.68 | 4.2% | 16,932.03 | 2.3% | 1.87% |
2015 | 18,206.03 | 3.7% | 17,390.30 | 2.7% | 1.00% |
2016 | 18,695.10 | 2.7% | 17,680.30 | 1.7% | 1.00% |
2017 | 19,477.35 | 4.2% | 18,076.65 | 2.2% | 1.90% |
2018 | 20,533.08 | 5.4% | 18,609.05 | 2.9% | 2.40% |
2019 | 21,380.95 | 4.1% | 19,036.05 | 2.3% | 1.79% |
2020 | 21,060.45 | -1.5% | 18,509.15 | -2.8% | 1.31% |
2021 | 23,315.08 | 10.7% | 19,609.80 | 5.9% | 4.49% |
2022 | 25,462.73 | 9.2% | 20,014.15 | 2.1% | 7.00% |
2023 | 26,949.64 | 5.8% | 20,431.53 | 2.1% | 3.68% |
米商務省経済分析局ホームページについて
米GDPの発表元は、米商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis, U.S. Department of Commerce)。
ここを見ると、米GDPに関する必要なデータが分かります。
https://www.bea.gov/data/gdp/gross-domestic-product#gdp
ここでは産業別のGDPの小売業、情報産業、非耐久財製造業、建設業、金融・保険業の寄与度の高さが分かります。
米GDPを予想するための先行性ある指標とは
先ほど、GDPは遅行指標と書きました。
遅行指標であるGDPの結果がどうなるのかを予想する手助けとなる、先行性のある経済指標も存在します。
主な先行指標には以下の経済統計があります。
昨今の経済指標反応度を見ると、雇用関係の先行指標に注目が集まっており、新規失業保険申請件数は毎週発表されるデータにもかかわらず、市場の反応度は高まっています。
また、JOLTS(求人労働移動調査)は、パウエル議長が講演で特に注目している経済統計として挙げた4つの指標の中の一つであることから、注目度が高まっています(他の3つは、米雇用統計、米消費者物価指数、米生産者物価指数)。
また、アトランタ連銀はGDPNowという数字を出しています。
これは、GDP推測に非常に役に立つ数字で、かなり高い確率で米GDPを先行的に予想しています。
このGDPNow には上記の経済指標のうち、ISM製造業景況指数、住宅着工件数以外にも、小売売上高、耐久消費財、個人所得・支出、国際貿易統計といった数字が含まれます。
次回は、高い予測率を誇るGDPNowや、GDPに関連することについて解説します。
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志摩力男(しまりきお)
慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。
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