日本時間9月11日(金)21時30分に、米労働省労働統計局(BLS)から2026年8月の米消費者物価指数(CPI)が発表されます。
前回7月分は、総合CPIが前年比+3.4%と6月(+3.5%)から伸びが鈍化し、コアCPI(食品・エネルギーを除く)も前年比+2.5%と市場予想通りの結果でした。インフレの落ち着きを示す内容に9月の利上げ観測がいったん後退し、発表後はゴールド(XAU/USD)が約10週ぶりの高値圏となる4,400ドル台へ上昇しました。一方、ドル円(USD/JPY)の反応は限定的でした。
今回8月分の市場予想は、総合が前年比+3.4%と横ばい、コアが同+2.4%へのわずかな鈍化です。9月15~16日のFOMCまで1週間を切ったタイミングで発表される最後の主要インフレ指標であり、追加利上げの是非をめぐる市場の見方を最終的に固める材料として、通常以上に大きな注目を集めそうです。
発表の概要
| 指標名 | 米消費者物価指数(CPI)(2026年8月分) |
|---|---|
| 発表日時 | 2026年9月11日(金)日本時間21時30分 |
| 発表機関 | 米労働省労働統計局(BLS) |
| 前回結果 | 総合 前年比+3.4%・前月比+0.1%/コア 前年比+2.5%・前月比+0.2% |
| 今回の市場予想 | 総合 前年比+3.4%・前月比+0.4%/コア 前年比+2.4%・前月比+0.2% |
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前回までのデータ
総合CPIの前年比は、エネルギー価格の上昇を背景に今年5月に+4.3%まで加速した後、2ヶ月連続で鈍化し、7月は+3.4%まで低下しました。一方、コアCPIは+2.5%と、ここ1年は2%台半ばから3%近辺の狭いレンジでの推移が続いており、FRBの目標である2%への「ラストワンマイル」がなかなか縮まらない状況です。
コアCPIの前月比は再加速が警戒される水準
市場が最も注目するコアCPIの前月比は、6月がほぼ横ばい(▲0.02%)だった後、7月は+0.22%へ再加速しました。年率2%の物価目標と整合的なペース(月+0.17%程度)をやや上回る伸びで、3ヶ月移動平均では+0.14%と目標圏内に収まっています。市場は前月比を小数第2位(同じ+0.2%でも0.16%か0.24%か)まで見て反応するため、ヘッドラインが予想通りでも初動が振れる点には注意が必要です。
インフレの質:財は落ち着き、サービスが高止まり
物価の中身は、家電や自動車のような「財(モノ)」と、外食や医療、家賃のような「サービス」に大きく分けられます。サービスの価格は人件費や住居費と結びついて一度上がるとなかなか下がらないため(価格の粘着性)、FRBは財よりもサービスの動きを重視しています。内訳を見ると、コア財の前年比が+0.8%と落ち着いている一方、CPI全体の3分の1超を占める住居費を含むコアサービスは+3.0%と高止まりしています。7月は中古車(前月比+0.4%)や医療サービス(同+0.6%)など、粘着的な項目の伸びが目立ちました。住居費の伸びの鈍化がインフレ低下シナリオの前提となっているだけに、今回も住居費とサービス価格の動向が焦点となります。
なお、前年8月(2025年)は物価の伸びが高めだったため、今回8月分は前年比が数字のうえで下がりやすい(ベース効果が働く)月にあたります。コアの市場予想が+2.5%から+2.4%への鈍化となっているのは、主にこのベース効果を織り込んだものです。
先行指標の動向
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| 先行指標 | 結果 | 評価 |
|---|---|---|
| クリーブランド連銀CPIナウキャスト(8月、9/4時点) | 総合 前月比+0.36%/コア 前月比+0.20% | 市場予想とほぼ一致 |
| ガソリン小売価格(EIA、9/7週) | 1ガロン=4.16ドル(前年同時期比 約+1.0ドル・+30%) | 高止まり(総合の押し上げ要因) |
| ミシガン大インフレ期待(8月確報) | 1年先4.0%(前月4.2%から低下)/5年先3.3%(3ヶ月連続横ばい) | やや強い(目標比で高水準) |
| NY連銀インフレ期待(8月、9/8発表) | 1年先3.6%(横ばい)/3年先3.2%(0.1pt低下) | やや強い(高止まり) |
| 米生産者物価指数(PPI)(8月、9/10発表) | 総合 前年比+5.4%(予想+5.3%)・前月比+0.4%/コア 前年比+4.6% | 強い(予想を上回る) |
先行指標からは「総合は前月比+0.4%前後としっかりした伸び、コアは+0.2%と落ち着いた伸び」という市場予想並みの結果が示唆されています。ガソリン価格が前年比で約3割高い水準にあることが総合CPIを押し上げる一方、コアはベース効果もあって前年比の鈍化が見込まれます。また、前日10日に発表された8月の生産者物価指数(PPI)は、総合が前年比+5.4%と市場予想(+5.3%)を上回り、高い伸びが続きました。企業段階の価格上昇圧力が衰えていないことを示す内容で、本日のCPIが上振れた場合には利上げ観測を後押しする材料として意識されやすくなっています。
ガソリン価格は前年より3割高い水準が続く
総合CPIを左右するガソリン価格は、直近の全米平均で1ガロン=4.07ドルです。この夏はおおむね4ドル台で高止まりし、前年同時期(3.18ドル前後)と比べると約3割高い水準にあります。7月のCPIではエネルギーが前月比▲1.5%と総合を押し下げましたが、8月はガソリンの下げが一服しており、総合の前月比を再び押し上げる(前月比+0.4%予想の主因となる)見込みです。
インフレ期待は目標を大きく上回ったまま
家計のインフレ期待も高止まりしています。ミシガン大学調査の1年先インフレ期待は8月確報で4.0%と前月(4.2%)から低下したものの、FRBの目標である2%を大きく上回る水準です(チャートは7月分まで)。5年先も3.3%と3ヶ月連続の横ばいで、NY連銀の調査でも1年先3.6%と高止まりしています。期待の高止まりは「インフレが定着しやすい地合い」としてFRBが警戒する材料であり、CPIが上振れた場合に利上げ観測が振れやすい背景となっています。
賃金の伸びは物価に追いついていない
一方、8月の平均時給は前年比+3.1%と、総合CPI(+3.4%)を下回っています。賃金の伸びが物価上昇に追いつかず、家計の購買力は目減りしており、いわゆる「賃金インフレスパイラル」の懸念は限定的です。ただ、実質賃金のマイナスは消費の重荷となるため、FRBにとっては「インフレの粘着」と「景気の減速」のどちらをより警戒するかという難しい判断材料が積み上がっています。
前回発表時の市場の反応
前回(8月12日発表の7月分)は、総合・コアともに市場予想通りの結果となり、インフレの落ち着きを確認した市場では9月FOMCでの利上げ観測がいったん後退しました。発表の瞬間はドル円・ゴールドとも上下に大きく振れる荒い値動きとなり、その後はドル円が158円台後半へ小幅に軟化する一方、ゴールドは買いが優勢となりました。もっとも、ドルはその日のうちに買い戻され、対主要通貨では小幅高で取引を終えています。
前回のドル円(USD/JPY)の発表直後の動き

前回のゴールド(XAU/USD)の発表直後の動き

- 金利観測:9月FOMCでの0.25%利上げの織り込みは71.5%(9月10日時点)。前回CPI後に4割程度まで低下しましたが、強い8月雇用統計を受けて反転し、この1週間で約5割→7割超へ急速に高まっています※
※参照元:CME FedWatchツール
今回の結果によるシナリオ別の市場への影響
足元の相場状況
現在のドル円(USD/JPY)は154円台前半で推移しています。日銀の利上げ観測を背景とした円買いで先週は一時153円台まで急ピッチな円高が進みましたが、強い8月雇用統計やPPIの上振れを受けた米利上げ観測の高まりがドルを下支えし、足元では154円台へ持ち直しています。今回は9月FOMC(9月15~16日)と日銀会合(9月17~18日)を翌週に控えた週末の発表となり、日米の金融政策観測が同時に動きやすいため、CPIへの反応も通常より増幅されやすい地合いです。
ゴールド(XAU/USD)は4,300ドル台前半で推移しています。前回のCPI発表後には約10週ぶりの高値となる4,400ドル台まで上昇しましたが、その後は米利上げ観測の再燃とともに上値の重い展開が続いています。金利を生まない資産であるゴールドは、CPIの結果を受けた米金利と利上げ観測の変化に素直に反応しやすい状況です。
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| シナリオ | USD/JPY | XAU/USD |
|---|---|---|
| 予想を上回る(コア前月比+0.3%超) | 9月利上げ観測が一段と高まり、ドル買いが強まりやすい | 米金利上昇が重しとなり調整しやすい |
| 市場予想並み(コア前月比+0.2%) | 反応は限定的だが、小数第2位や住居費の内訳に初動が振れやすい | 限定的な反応にとどまりやすい |
| 予想を下回る(コア前月比+0.1%以下) | 利上げ観測が後退しドル売り・円買いが加速しやすい | 金利低下を追い風に高値を試しやすい |
なお、今回は9月FOMC直前で、FRB高官が金融政策に関する発言を控えるブラックアウト期間中の発表です。結果を受けた利上げ織り込みの変化がそのままFOMC予想に直結するため、通常より反応が大きくなる可能性があります。ヘッドラインだけでなく、コア前月比の小数第2位、そして住居費・サービス価格の内訳まで確認してから方向を判断する姿勢が重要になります。加えて、日銀の利上げ観測による円買い圧力が強いなかでの発表となるため、弱い結果の場合は日米双方の材料が円高方向に重なり、下方向の反応が増幅されやすい点にも注意が必要です。
OANDAのオーダーブックから見る市場参加者の動向
オープンオーダー(指値注文の分布)
9月11日6時45分時点のOANDAのオーダーブックのうち、オープンオーダー(未約定注文)を見ると、全体では買いが51.37%、売りが48.63%とほぼ拮抗しています。現在値(154.41円近辺)の上は155円台を中心に戻り売りの指値が積み上がっており、特に155円ちょうど近辺にはまとまった売り注文が観測されます。一方、現在値の下は153円台に押し目買いの指値が並びますが、152円近辺には大きめの売り逆指値とみられる注文も残っており、弱い結果でこの水準を割り込んだ場合は下げが加速しやすい分布です。
オープンポジション(売買比率)
また、オープンポジションの売買比率はロング68.1%、ショート31.9%と、ロングに大きく傾いています。ポジションの分布を見ると153円台から154円台前半で買ったロングが中心で、足元の水準では含み益を抱えた買い方が多い構図です。強い結果でドル高に振れた場合は155円台後半から156円台の含み損ロングの戻り待ち売りと戻り売り指値が上値を抑えやすい一方、弱い結果で下落した場合は含み益ロングの利益確定売りと152円近辺の逆指値が重なり、下げ幅が広がりやすい点に注意が必要です。

OANDAの通貨強弱チャートから見る直近1週間の相場環境
直近1週間のOANDAの通貨強弱チャートを見ると、円の独歩高が鮮明です。日銀の利上げ観測を背景に週前半(9月7日~8日)に円が急伸して主要通貨で最強となり、その後も高い水準を維持しています。一方、ドルは週半ばまで方向感を欠いていましたが、利上げ織り込みの上昇とともに直近では持ち直し、円に次ぐ強さへ浮上してきました。本日のCPIが強い結果となれば「ドル高」と「円高」が綱引きとなってドル円は方向感が出にくい一方、弱い結果の場合はドル安と円高が重なるため、下方向の反応が増幅されやすい相場環境です。

まとめ
- ✓前回7月分は総合+3.4%・コア+2.5%と予想通り。利上げ観測はいったん後退し、ゴールドが4,400ドル台へ上昇
- ✓今回8月分の予想は総合+3.4%(横ばい)・コア+2.4%(ベース効果で小幅鈍化)。焦点はコア前月比+0.2%の中身
- ✓9月FOMC(9/15~16)直前・ブラックアウト期間中の発表で、利上げ織り込み(現在71.5%)が大きく振れる可能性
- ✓ドル円は円高圧力とドルの持ち直しが綱引きするなかで発表を迎える。上値は155円近辺の戻り売り、下値は152円近辺の逆指値が目安で、弱い結果では下方向の反応が増幅されやすい
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OANDA Lab編集部
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