株式の基礎

上場廃止とは|基準・メリット・デメリットなどをわかりやすく解説


上場廃止とは、証券取引所で取引されている株式などの金融商品が取引対象から除外され、証券取引所での取引が終了することを指します。

上場廃止になると、証券取引所での売買はできなくなりますが、相対取引などで売買が行われる可能性もあります。

本記事では、上場廃止の意味や基準、メリット・デメリット、よくある質問などをわかりやすく解説します。

※OANDA証券では株式取引をサービスとして提供していません。本記事は株式取引に関する一般的な知識を提供することを目的としています。

上場廃止とは

上場廃止の意味と、実際の具体例について解説します。

  • ・上場廃止とは
  • ・具体例

上場廃止とは

上場廃止とは、上場している株式などの金融商品が証券取引所での取引対象から外され、証券取引所での取引が終了することです。

各証券取引所は上場廃止の基準を定めており、その基準に反した場合に取引所が上場廃止を決定します(企業の判断で自主的に行われるケースもあります)。

上場廃止になると、証券取引所での売買はできなくなりますが、相対取引などで売買が行われる可能性もあります。

なお、上場廃止が決定されると、通常は「整理銘柄」に指定され、上場廃止日前の一定期間(原則1か月)まで売買が可能です。

具体例

ここでは、日本の証券取引所で近年上場廃止となった主な企業の具体例を紹介します。

企業名 上場廃止日 理由
船井電機 2021年8月26日 株式公開買い付け(TOB)による完全子会社化に伴い上場廃止
東芝 2023年12月20日 TOBによる完全子会社化に伴い上場廃止
大正製薬 2024年4月9日 経営陣による買収(MBO)による完全子会社化に伴い上場廃止
ベネッセ 2024年5月17日 TOBによる完全子会社化に伴い上場廃止
ローソン 2024年7月24日 TOBによる完全子会社化に伴い上場廃止
永谷園 2024年9月27日 MBOによる完全子会社化に伴い上場廃止

上場廃止に至る理由は、TOBやMBOによる完全子会社化など、企業の経営戦略や組織再編に伴うものが多いことがわかります。

上場廃止の主な理由

続いて、上場廃止の主な理由について解説します。

上場廃止の理由は、大別すると以下の2つに分類されます。

  • ・強制的な上場廃止(上場廃止基準に該当)
  • ・自主的な上場廃止(経営判断)

強制的な上場廃止(上場廃止基準に該当)

財務状況の悪化や法令違反などにより、証券取引所が定める上場廃止基準に抵触した場合に行われるものです(詳しくは後述)。

基準に該当した企業に対して、投資家保護や市場の公正性を保つ観点から、証券取引所が上場廃止の判断を下します。

企業側にとっては予期せぬ退場となることが多く、信用失墜や資金調達力の低下といった深刻な影響を及ぼす可能性があります。

自主的な上場廃止(経営判断)

企業が経営戦略などの判断に基づいて、自ら上場を取りやめる場合です。

例えば、親会社による株式公開買い付け(TOB)や、経営陣による買収(MBO)を通じて、完全子会社化を目的に上場を廃止することがあります。

このようなケースでは、経営の自由度を高めたり、長期的な経営方針を柔軟に進めたり、あるいは経営再建を図るために上場を取りやめる場合もあります。

また、上場を維持するためのコスト削減や、株主の意見に左右されずに経営判断を進めたいといった理由から、自主的に上場廃止を選択する企業の例も少なくありません。

上場廃止の基準とは

日本取引所グループが定める上場廃止基準(各市場共通)として、主に以下の6項目が挙げられます(法令上は20項目)。

なお、2025年3月から上場維持基準に関する経過措置が終了し、より厳格な基準が適用されています。

  • ①上場維持基準への不適合
  • ②有価証券報告書の提出が遅延
  • ③報告書の虚偽記載や不適正意見等
  • ④特別注意銘柄等に該当
  • ⑤上場契約に違反
  • ⑥その他

①上場維持基準への不適合

証券取引所が定める株主数、流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率、売買代金、売買高、時価総額、純資産の額などの「上場維持基準」に適合しない状態が一定期間続いた場合(上場維持基準は、プライム、スタンダード、グロースによって異なる)。

②有価証券報告書等の提出が遅延

監査報告書または期中レビュー報告書を添付した有価証券報告書や半期報告書などの法定開示書類を、法定の提出期限までに提出しなかった場合。

③報告書の虚偽記載や不適正意見等

有価証券報告書等に虚偽記載がある、または監査報告書・期中レビュー報告書に不適正意見や意見不表明に該当する記載があり、かつ直ちに上場廃止しなければ市場の秩序維持が困難であると証券取引所が認めた場合。

④特別注意銘柄等に該当

特別注意銘柄に指定され、内部管理体制等が適切に整備・運用される見込みがない、または指定後にその状態が改善されないと証券取引所が認めた場合。

⑤上場契約に違反

上場企業が新規上場時の契約や宣誓事項に重大な違反をした場合、または証券取引所が新規上場基準を満たしていないと判断し、1年以内に再審査を通過できなかった場合。

⑥その他

企業の信用力や株主の権利に重大な影響を及ぼす可能性がある、次の事項に該当する場合。

  • ・銀行取引の停止
  • ・破産手続、再生手続、更生手続の開始
  • ・事業活動の停止
  • ・不適当な合併
  • ・支配株主との取引における健全性の毀損(例:第三者割当による支配株主の異動)
  • ・株式事務代行機関への不委託
  • ・株式の譲渡制限や完全子会社化
  • ・指定振替機関における取扱いの対象外
  • ・株主の権利の不当な制限
  • ・全部取得や株式等売渡請求による株式の取得
  • ・株式併合の実施
  • ・反社会的勢力の関与
  • ・その他(公益または投資者保護の観点から重要と判断される事項)

上場廃止後はどうなるのか?

上場廃止後はどうなるのかを、以下の3つのケースで解説します。

  • ・株式への影響
  • ・会社への影響
  • ・社員への影響

株式への影響

上場廃止後は、原則として証券取引所での売買ができなくなります。

相対取引などでの売買は一部可能ですが、流動性が著しく低下しボラティリティが高くなりやすいため、注意が必要です。

投資家は株式の売買や資産の換金に際して、慎重な対応が求められます。

会社への影響

上場廃止により、資金調達手段が大幅に制限されることがあります。

また、情報開示の義務が緩和されるため、透明性が低下し、取引先や投資家からの信頼が損なわれる可能性があります。

会社としては、経営の見直しや再建計画の策定が必要となり、迅速かつ適切な対応を講じることが重要です。

社員への影響

上場廃止の理由や企業の経営状況により異なりますが、資金調達力の変化や情報開示の減少は、社員の働き方や将来展望にも影響を与える場合があります。

例えば、強制的な上場廃止の場合、会社は資金調達の手段が限られ、給与や福利厚生に影響が出る可能性が考えられます。

こうした変化を受けて、社員は自身のキャリアや働き方を見直すことが大切です。

上場廃止のメリット・デメリット

上場廃止によって企業に生じる主なメリットとデメリットを解説します。

メリット デメリット
・上場維持にかかるコストを削減できる
・株主や市場の制約から解放され、経営の自由度が増す
・敵対的買収のリスクを回避しやすくなる
・株式市場からの資金調達ができなくなる
・社会的信用や知名度が低下する可能性がある
・株式の流動性が失われ、少数株主とのトラブルが生じるおそれがある

メリット

上場を廃止することで企業が得られるメリットとして、決算開示や監査対応、IR活動、上場維持費などにかかる多額のコストを削減できる点が挙げられます。

これにより、限られた経営資源を本業や将来の成長戦略に振り向けることが可能です。

また、株主や市場からの業績圧力やガバナンスの制約から解放され、自由度の高い経営を行えるようになります。

株式が市場で取引されなくなるため、敵対的買収のリスクを抑えられる点も重要なメリットです。

デメリット

上場廃止にはデメリットも存在します。

株式市場を通じた資金調達ができなくなるため、大規模な増資の実施が難しくなる可能性があります。

これは成長資金を必要とする企業にとって大きな制約となり得ます。

また、上場企業としての社会的信用や知名度を失うことで、取引先や金融機関からの評価に影響が出る場合もあります。

さらに、株式の流動性が低下するため、少数株主が保有株を売却しづらくなり、不満やトラブルに発展するリスクもあります。

上場廃止に関するQ&A

上場廃止に関するよくある質問は、主に以下の通りです。

  • ・上場廃止になると株はどうなりますか?
  • ・上場廃止になった株を持ち続けるとどうなりますか?
  • ・ローソンが上場廃止になったのはなぜですか?

上場廃止になると株はどうなりますか?

上場廃止になると、その企業の株式は証券取引所で売買できなくなり、流動性が大きく低下します。

その結果、株式の売却や換金が困難になることが多く、株主にとってリスクが高まる可能性があります。

上場廃止になった株を持ち続けるとどうなりますか?

上場廃止後も株を保有し続けることは可能ですが、その後の取り扱いには注意が必要です。

証券取引所で売買できなくなるため、株を売却するには相対取引や場外取引といった限られた方法に頼ることになります。

また、上場廃止の理由や企業の状況によっては、株価が大きく変動する場合もあります。

再建や業績回復によって株価が上昇するケースもありますが、一方で下落するリスクもあるため、保有を続けるかどうかは慎重に判断することが重要です。

ローソンが上場廃止になったのはなぜですか?

ローソンは、KDDIによる株式公開買い付け(TOB)を受けて、2024年7月24日に上場廃止となりました。

これは、KDDIが経営権を取得し、ローソンを完全子会社化して将来の事業展開や経営体制の強化を図るための措置です。

以降は、三菱商事とKDDIがローソンの株式をそれぞれ50%ずつ保有し、共同で経営を行っています。

【まとめ】上場廃止とは|基準・メリット・デメリットなどをわかりやすく解説

上場廃止とは、上場している株式などの金融商品が証券取引所の取引対象から外れ、売買ができなくなることです。

上場廃止には、証券取引所の定める基準に違反した場合に実施される「強制的な上場廃止」と、企業側の経営判断で行う「自主的な上場廃止」の2種類があります。

どちらの場合も、上場廃止後は資産の流動性が大幅に低下し、資産価値が減少するリスクがあります。

上場廃止は企業だけでなく、株主や市場にも大きな影響を与える重要な出来事です。

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