米連邦準備制度理事会(FRB)は日本時間10月29日3時にFOMCの結果を公表し、政策金利を3.75~4.00%で据え置くことを決めました。据え置きは市場予想通りでしたが、票は10対2と割れ、クックFRB理事とハマック・クリーブランド連銀総裁が0.25%の利上げを主張して反対しました。本記事では、声明・ウォーシュFRB議長の会見の要点と12月会合に向けた利上げ観測の変化を整理したうえで、翌日の米GDP・PCE、30日の日銀金融政策決定会合もにらんだ、今後のドル円(USD/JPY)とゴールド(XAU/USD)の見通しを解説します。
結果ハイライト
発表直後の市場の反応
- ドル円(USD/JPY):発表前158.23円近辺 → 発表直後に158.15円近辺まで下げた後に切り返し、発表15分後は158.29円近辺 → 会見開始直後に158.35円近辺まで上げた後に下げに転じ、会見中に157.85円近辺まで下落 → 会見終了後の4時すぎは158.00円近辺
- ゴールド(XAU/USD):発表前4,038ドル近辺 → 発表直後に一時4,047ドルまで上昇した後は売りに押され、発表15分後は4,030ドル近辺 → 会見開始直後に4,024ドル台まで下げた後に買いが強まり、会見中に4,067ドルまで上昇 → その後は上げ幅を失い、4時すぎは4,032ドル近辺
発表直後のドル円(USD/JPY)1分足の値動き
発表直後のゴールド(XAU/USD)1分足の値動き
10月FOMCの結果の詳細
政策金利:9月の利上げ後、今回は据え置き
FRBは9月に約3年ぶりの利上げで政策金利を3.75~4.00%に引き上げた後、今回の会合では据え置きを決めました。声明は景気の拡大ペースの評価を引き上げる一方、インフレ率を2%へ戻すための政策スタンスは「より多くの情報の蓄積」を踏まえて判断するとして、今回は追加の利上げを急がず、データを見極める姿勢を示しました。ウォーシュ議長は会見で「今後得られる情報が、政策をどこに置くべきかを判断する助けになる」と述べています。
声明文の変更点と票の割れ
9月の声明からの主な変更点は3つです。1つ目は、第1段落で政策金利を「0.25%引き上げる」から「維持する」に改めた点です。2つ目は、景気判断で経済活動の拡大ペースを「堅調(solid)」から「力強い(strong)」に引き上げた点です。3つ目は、インフレの段落で9月の「今回の政策行動は、2%目標へのより早期の回帰を支える」との一文を削除し、「より多くの情報の蓄積が、インフレ率を2%目標へ適時に戻すために適切な政策スタンスを判断する助けになる」と書き換えた点です。追加の利上げを明示する表現は入らなかった一方、利上げ局面の終了を示す表現も盛り込まれず、次の一手はデータ次第とする書きぶりです。
票は10対2で、クックFRB理事とハマック・クリーブランド連銀総裁の2人が、今回の会合で0.25%の利上げを主張して反対しました。9月は12対0の全会一致でした。
FOMC声明の全文(日本語訳)
今回の声明の全文の日本語訳は以下の通りです。太字が前回(9月16日)の声明からの変更箇所です。
委員会は、FRBの二大責務(デュアルマンデート)を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを3.75~4.00%に維持することを決定した。委員会は、銀行システムに潤沢な準備預金を維持する政策を継続している。
経済活動は力強いペースで拡大している。地政学的な動向などに起因して不確実性は高いままだが、国内の支出は底堅く推移している。生産性の伸びは強く、設備投資は堅調である。雇用の増加は労働力人口の伸びに見合ったペースを保っており、失業率はほとんど変化していない。
インフレ率は高止まりしている。より多くの情報が蓄積されることは、インフレ率を委員会の目標である2%へ適時に回帰させるために適切な政策スタンスを、委員会が判断する助けとなる。委員会は物価の安定を実現する。
なお、今回の金融政策決定には、リサ・クック、ベス・ハマックの両氏が反対し、FF金利の誘導目標レンジを0.25%引き上げることを主張した。
※当社による仮訳です。正文はFRBが公表する英語の原文をご確認ください。
参考:9月のドット・チャート(今回は改定なし)
今回の会合では経済見通し(SEP)の公表はなく、9月に示された見通しが引き続き参加者の基本線です。9月のドット・チャートでは、2026年末の政策金利見通し(中央値)が4.1%と、現在のレンジの中央値(3.875%)から0.25%高い水準で、年内にもう1回の利上げを示唆していました。18人中12人が4.125%、4人が4.375%を見込み、現状維持は2人にとどまっています。年内に残る会合は12月8~9日の1回のみで、次回は新しいドット・チャートとともに「年内もう1回」が実行されるかが問われます。
ウォーシュ議長会見の要点
ウォーシュ議長は会見の冒頭で、経済活動は力強いペースで拡大し、雇用の面でも状況は「かなり良好」との認識を示しました。7~9月期は個人消費が堅調で、設備投資も2桁前後のペースで伸びているとみられると説明しています。一方で、インフレ率は6年近く目標を上回って推移しており、「インフレを抑えるのはわれわれの責任だ」と述べ、今回の議論は主に物価の安定に集中したと明かしました。エネルギー関連の価格が再び上昇していることにも触れ、一部の分野の価格上昇が経済全体に広がらないようにすることが仕事だと強調しました。
金融環境については、9月の利上げ以降、一部の企業や家計で金融・信用の環境が想定通り引き締まったとしつつも、「全体として引き締まってはいるが、引き締め的(tight)と呼ぶことはできないし、そう呼ぶつもりもない」と述べました。そのうえで、「必要に応じて行動する用意があることを明確にしてきたし、実際に行動する意思も示してきた」と述べ、追加の利上げに含みを残しました。ただし12月会合での利上げを約束する表現はなく、「今後得られる情報が、政策をどこに置くべきかを判断する助けになる」と、データ次第の姿勢を示しています。
質疑では、9月の利上げの効果について「多少は効き始めているが、確固たる結論はない」と述べました。11月の中間選挙を控えた時期の判断については、「政治は今回の決定に何の役割も果たしていない」と強調しています。また、会合の運営を見直し、2027年は年8回の会合のうち1回を金融政策の戦略の議論だけに充て、その会合では政策金利の採決も声明の公表も行わない方針を明らかにしました。2028年は戦略の会合を2回、政策を決める会合を6回とする見通しです。
会見が始まると、ドル円は158.35円近辺から157.85円近辺まで下げ、ゴールドは4,067ドルまで上昇するなど、ドル売りが強まる場面がありました。もっとも会見の終盤にかけてはドル売りが一服し、4時すぎにはドル円が158.00円近辺、ゴールドが4,032ドル近辺まで戻しています。
12月会合に向けた利上げ観測の変化
CME FedWatchによると、12月会合までの利上げの織り込みは、発表前(10月29日2時36分時点)の84%前後から、会見中の3時46分時点で86%前後へとやや上昇しました。声明は追加の利上げを明示しなかったものの、2人が利上げを主張して反対したことや、議長が金融環境を「引き締め的と呼べない」と述べたことで、12月の利上げを見込む向きが引き続き大勢です。もっとも、12月の判断はデータ次第となりそうです。12月8~9日の会合までには、29日夜の米GDP速報値・9月PCE、11月の雇用統計やCPIなどが控えています。
今後のドル円(USD/JPY)の見通し
ドル円は声明の公表直後に158.15円近辺まで下げた後、158.35円近辺まで持ち直しました。会見が始まると売りが強まり、一時157.85円近辺と発表前の水準(158.23円近辺)を下回りましたが、会見終了後の4時すぎには158.00円近辺まで戻しています。30日昼には日銀会合の結果発表を控えており、円の側の材料にも目が向きやすい時間帯に入ります。
会見終了後(10月29日4時5分時点)のOANDAのオーダーブックを見ると、オープンオーダーは買い58.5%・売り41.5%です。現在値より上の売り指値は下の買い指値をやや上回り、158.35円・158.40円・158.50円に売り指値が並んでいます。その上の159.00円・159.10円付近には買いの逆指値が、下の157.50~157.80円には売りの逆指値がまとまっています。下の買い指値は157.20円・157.00円と156.00円が厚めです。オープンポジションはロング47.9%・ショート52.1%とややショートが多く、会見中に下げた157.85~157.95円にはロング・ショートとも厚く積み上がっています。
直近1週間(10月22日4時〜29日4時)の通貨強弱は、首位が豪ドル、2位がカナダドルで、円は3位、米ドルは4位でした。最下位はNZドルです。FOMCの結果発表を挟んだ3時台に米ドルが弱含み、米ドルと円の差は円高方向に広がっています。
日足では、ドル円は会見中の下落で21日移動平均線(157.92円)を一時割り込みましたが、会見後は同線の上に戻しています。上には75日線(158.47円)と200日線(158.51円)が控え、RSI(14)は52前後と中立圏です。上値は、売り指値が並ぶ158.35~158.50円と、75日線・200日線が重なる158.5円近辺が目安です。下値は、21日線を明確に割り込むと、売りの逆指値がまとまる157.50円近辺が意識されそうです。その下では、買い指値が厚い157.20円・157.00円が目安になります。
この先は、29日21時30分の米GDP速報値・9月PCE、30日昼の日銀会合(据え置き予想)と15時30分からの植田総裁の会見が続きます。米国の物価・景気指標が強く、12月の利上げ観測が再び高まれば、ドル円は158円台半ばの上値を試す展開が考えられます。反対に、指標が弱めに出たり、日銀会合で先行きの利上げに前向きな発信があったりすれば、157.50円近辺を下抜けて下値を探る展開も想定されます。
今後のゴールド(XAU/USD)の見通し
ゴールドは声明の公表直後に一時4,047ドルまで上昇しましたが、その後は売りに押され、4,030ドル近辺まで下げました。会見が始まると一時4,024ドル台まで下げた後に買いが強まり、会見中に4,067ドルまで上昇しています。ただ、会見の終盤にかけてドル売りが一服すると上げ幅を失い、4時すぎには4,032ドル近辺と、発表前(4,038ドル近辺)をやや下回る水準に戻りました。12月の利上げ観測が8割台後半で維持されているなか、金利の付かないゴールドには上値を抑える材料が残っています。
日足では、ゴールドは21日移動平均線(4,120ドル)を下回ったままで、75日線(4,249ドル)・200日線(4,500ドル)も上に位置しています。RSI(14)は39前後と弱めです。上値は、会見中の高値4,067ドル近辺を上抜けられるかがまず焦点で、その先は21日線の4,120ドル台が目安です。下値は4,000ドルの節目と23日の安値3,975ドルが目安です。
まとめ
- ✓10月FOMCは政策金利を3.75~4.00%で据え置き(市場予想通り)。票は10対2で、クック理事とハマック総裁が利上げを主張して反対
- ✓声明は「2%へのより早期の回帰を支える」を削除し、「より多くの情報の蓄積」を踏まえて政策スタンスを判断するとの表現に。景気の拡大ペースは「力強い」に上方修正
- ✓ウォーシュ議長は「必要に応じて行動する用意」を示しつつ、12月の利上げは約束せず、今後の情報で判断する姿勢。金融環境は「引き締め的と呼べない」と発言。12月会合までの利上げの織り込みは84%前後から86%前後へ
- ✓2027年から年1回の会合を戦略の議論だけに充て、金利の採決と声明の公表をしない方針
- ✓ドル円は会見中に157.85円近辺まで下げた後、158.00円近辺へ戻す。ゴールドは4,067ドルまで上げた後、4,032ドル近辺へ
- ✓29日夜に米GDP速報値・9月PCE、30日昼に日銀会合の結果発表。ドル円は上値158.5円近辺・下値157.5円近辺、ゴールドは4,000ドルの節目が目安
▶ 会合前の注目点・シナリオの解説はこちら:FOMC(2026年10月)予想と注目点
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OANDA Lab編集部
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