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FOMCでは何が決まる?2つの決定事項について詳しく解説


FOMCで決定される2つの事項

FOMCでは米国の金融政策が決められます。
具体的に言うと、以下2点が主な決定事項です。

  • 1.政策金利の決定
  • 2.資産購入の決定

それぞれ詳しく見ていきましょう。

【決定事項1】
政策金利の決定

FOMCでは政策金利である、FFレート(フェデラル・ファンド・レート、Federal Funds Rate)の誘導目標を決めます。
ニュースなどでは「連邦公開市場委員会(FOMC)はFFレートの誘導目標を4.50~4.75%から0.25%引き上げ、年4.75~5.00%に決定しました」と報じられます。

目標レンジは4.50~4.75%といった0.25%幅で提示されます。
しかし市場等で話される時は、大概下限レート(4.5%)だけで語られます。
その一方、FOMC時に発表される「経済予測の概要(Summary of Economic Projection)」では中心値(4.6%)が使われます。
4.5%、4.6%と数字は違いますが、同じ4.50~4.75%の目標レンジを指していますので、注意しましょう。

基本ではありますが、為替市場では、金利が上昇すれば、その通貨が上昇するという因果関係があります。
米金利が上がるとドルは上昇し、米金利が下がるとドルは下落します。

金利が上昇すれば、その通貨が上昇するという因果関係

しかし実際の市場では、「FOMCで米金利引き上げが決まったのに、ドルが下落した」というケースがよくあります。

2022年3月16日以来、FOMCのたびに政策金利が引き上げられて来ましたが、毎回ドル円が上昇したわけではありません。

以下に主な例を挙げると、

  • ・2022年6月15日、0.75%利上げ、ドル円134.33円から132.22円へ下落(-1.57%)
  • ・2022年7月27日、0.75%利上げ、ドル円137.22円から134.24円へ下落(-2.17%)
  • ・2022年9月21日、0.75%利上げ、ドル円144.25円から142.38円へ下落(-1.3%)

いずれも、かなり売られています。
それぞれ要因は違うのですが(9月21日は為替介入の結果という特殊ケース)、多くの場合、利上げ幅が事前に織り込まれているとき、本来あるべき動きとは反対方向に動くことがあります。

事前にどの程度市場が織り込んでいるのかを、どうやってチェックすれば良いのでしょうか。

FOMCにおける市場の織り込みをチェックするにはCME(シカゴ・マーカンタイル取引所 Chicago Mercantile Exchange)が提供しているCMEのFedWatch ツールが便利です。

CMEのFedWatch ツール

ちなみに、左の欄の“Compare”をクリックすると

左の欄の“Compare”をクリック

“Probability”をクリックすると

“Probability”をクリック

【決定事項2】
資産購入に関する決定

近年中央銀行は、政策金利を動かす伝統的な金融政策に加えて、国債等の資産を購入することで資金を市場に供給する「非伝統的」金融政策も行うようになりました。
「量的緩和政策」とも言われます。
政策金利がゼロに達してもインフレ目標が実現しない時、資産購入し中央銀行のバランスシートを拡大させることで、さらなる金融刺激を行おうとするものです。
リーマン・ショックのあと、2009年3月から当時のバーナンキ議長が住宅ローン担保証券など1.75兆ドル購入すること(いわゆるQE1)から始めました。

様々な異論もありますが、中央銀行のバランスシートが拡大すればするほど、その中央銀行は景気刺激的政策を行っているとみなされ、その国の通貨は下落すると考えられています。

中央銀行のバランスシートが拡大すればするほど、その中央銀行は景気刺激的政策を行っているとみなされ、その国の通貨は下落する

FRBのバランスシートがどの程度大きいのか、FRED(セントルイス連銀)でチャートにだせます。

FRED(セントルイス連銀)でチャート

FRBのバランスシート

FRBのバランスシート

各国の中央銀行バランスシートの規模比較(2008年を100として計測)

FRBのバランスシートの大きさを早く、正確に知りたい場合、FRBのホームページから「Data」を選択し、その時に出てくるプルダウンメニューの右の方に「Factors Affecting Reserve Balances – H.4.1」というところが出てきます。

Factors Affecting Reserve Balances – H.4.1

ブラックアウト期間

FOMCが開催される1週間前の火曜日から、「ブラックアウト期間」が始まります。
そこからFOMCが終わるまで、FRB各理事、地区連銀総裁は金融政策に影響を及ぼすので発言は禁じられます。

WSJ紙 ニック・ティミラオス氏

しかし、それでも緊急にパウエル議長が市場にメッセージを伝えたいときがあるとき、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙のニック・ティミラオス氏の記事に注目すべきでしょう。

彼は何度も重要な政策変更をリークしています。

最初に有名になったのは、2022年6月15日、FOMCが始めて0.75%利上げに踏み切ったときです。

6月12日の記事で明確に0.75%利上げを否定していますが、次の13日の新聞で0.75%利上げと報道。
1日で考えを変えるわけがないので、おそらくパウエル議長か誰かから接触があり、0.75%利上げで市場が驚かないように、リーク記事を書くように依頼された、としか考えられないと、マーケットも判断しました。

それ以来、ニック・ティミラオス氏はパウエル議長のメッセンジャーとみなされています。
ニック・ティミラオス氏の記事は出された瞬間、直ぐ読むようにしましょう。

WSJ紙 ニック・ティミラオス氏

6月12日の記事はこちらから読めます。

WSJ紙 ニック・ティミラオス氏(1)

翌6月13日の記事は以下から読めます。

なおFOMCの発表スケジュールや今後の見通しなどについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>FOMCとは?2023年最新の発表スケジュールやマーケットに与える影響

記事執筆者:志摩力男(しまりきお)

慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。


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