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ロスカットとは?計算方法や回避策などを初心者向けに解説


FXのロスカットとは、投資家が預けた資金(証拠金)以上の損失を発生させないよう、損失がある一定の水準を超えるとFX会社が強制的に決済する仕組みです。
投資家の保護を目的としており、原則預けた証拠金以上の損失は発生しません。

しかし何らかの理由で短期間での急な価格変動(フラッシュクラッシュ)や為替レートが大きく変動した場合は、ロスカットが間に合わない可能性もあります。
ロスカットが間に合わず執行されなければ、預けた証拠金以上の損失が発生する場合もあります。

本記事では、ロスカットの仕組みや回避方法などを初心者の方向けに詳しく解説します。

1.FXのロスカットとは?

FXのロスカットとは、FX会社が定める一定の損失を発生させた場合に、預けた資金(証拠金)以上の損失を発生させないよう強制的に決済される仕組みです。
ロスカットは損失を確定させる仕組みですが、原則最低限の資金は温存されます。

例えばOANDA証券では、有効証拠金必要証拠金を割り込んでしまった場合(証拠金維持率が100%以下)に、損失の大きいポジション(建玉)から順番にロスカットされます(証拠金維持率が100%を上回るまで続けられる)。
OANDA証券のロスカット詳細については、「OANDA証券のロスカットルール」を御覧ください。

FXは預けた資金の何倍も大きな取引が行えるので、預けた資金以上の損失を発生させる可能性があります。
ロスカットは、大きな損失から守ってくれる投資家保護の目的があるのです。

FXのロスカットとは?

ただし、ロスカットは必ず機能するものではありません。
何らかの理由で短期間での急な価格変動が発生した場合は、ロスカットが間に合わない可能性があります。
詳しくは本記事の下部にある「3.ロスカットの注意点」を御覧ください。

    ●OANDA証券のロスカットルール

    OANDA証券のロスカットルールは、以下の通りです。

    • TY3:証拠金維持率が100%以下となった場合に発動(個人・法人)
    • NY4:証拠金清算割合(%)が100%以上となった場合に発動(個人・法人)

    ※ロスカットは保有しているポジションと反対売買を成行注文で行うので、ロスカット判定時の価格で約定を保証するものではありません。
    またお客様の損失額が限定されることを保証するものでもありません。
    ロスカットルールがあっても、相場が急激に変動した場合には預けた証拠金以上の損失が発生する可能性があります。

さて本記事では「有効証拠金」「必要証拠金」「証拠金維持率」など、FX特有の専門用語が出てきています。
本記事をスムーズに読み進めるためにも、覚えておきましょう。

    ・有効証拠金とは?

    有効証拠金とは、口座残高にまだ実現していない損益(含み益、含み損)を加えた証拠金残高です。
    含み益が増えれば有効証拠金は増え、含み損が増えると有効証拠金は減ります。
    例えばポジションを保有していない場合、「口座内の証拠金=有効証拠金」です。

    ロスカットの判断をする場合に、有効証拠金を用いて計算を行います。
    有効証拠金の詳しい詳細については、以下の記事を参考にしてください。

    参考記事:有効証拠金 – FX初心者向け用語解説

    ・余剰証拠金とは?

    余剰証拠金とは、有効証拠金から必要証拠金を引いた金額です。
    余剰証拠金の割合が低下すると、新規で取引できる量が減ったりロスカットされたりするリスクが高まります。

    ・必要証拠金とは?

    必要証拠金とは、FX口座に最低限預け入れしなければならない資金です。
    FX取引は、FX会社やそのFX会社が提供する取引コースによって預け入れる資金が変わります。

    また必要証拠金がいくらかによって、ロスカット水準が変わります。
    必要証拠金の詳しい詳細は、以下の記事を参考にしてください。

    参考記事:FXの証拠金とは?いくらから取引を始められる?初心者向けに徹底解説

    ・証拠金維持率とは?

    証拠金維持率とは、必要証拠金に対する純資産の割合を指します。
    つまりポジションを保有している状態を維持するために最低限必要な資金の割合です。

    FXではポジションを保有すると証拠金維持率が自動で計算されます。
    OANDA証券のMT4では、以下の画像のように証拠金維持率が表示されます。

    証拠金維持率とは?

    なお、証拠金維持率の計算式は、以下の通りです。

    • 証拠金維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100

    上記画像を例にすると、938.26%(49,887÷5,318×100=938.07)と算出できます。
    (スプレッド分は加味されていないので少しの誤差があります。)

ロスカットを動画で解説

以下動画では、ロスカットについて詳しく解説しています。
動画をクリックすると、ロスカットの解説から始まります。

OANDA証券では、FXの基礎知識に関する様々な動画を提供しています。
ぜひ、以下からご参考下さい。
>FX初心者向けの入門講座動画を視聴する

2.ロスカットの計算方法

ロスカットは、前述したように、TY3では証拠金維持率が100%を下回った場合に執行されます。
具体的には、以下の計算式で求められます。
(TY3を例に記載)

ロスカットの計算方法

ではOANDA証券のロスカットルール(TY3)を例に、預けた資金からどのくらい損失が発生するとロスカットされるのかをシミュレーションしてみましょう。

ロスカットの発生事例

50,000円の資金で10,000ドル(10,000通貨)分の取引を行ったと想定し、ロスカットが発生するまでの流れを解説します。

買いポジションを保有しており損益が0円の場合

1ドル=100円の場合、10,000通貨を取引するのに必要な証拠金は「40,000円」です。
買いポジションを保有しており、損益が0円の場合の証拠金維持率は、以下の通りです。

買いポジションを保有しており損益が0円の場合

上記の場合の証拠金維持率は「125%」です。
では続いて、1ドル99.5円まで下落してしまった場合の証拠金維持率について解説します。

買いポジションを保有していたが相場が1ドル=99.5円まで下落した場合

10,000通貨で取引を行った場合、0.5円(50pips)の下落で「-5,000円」の損失が発生します。
つまり有効証拠金は、45,000円(50,000円-5,000円)です。
上記の計算式に当てはめると、証拠金維持率は以下の通りです。

買いポジションを保有していたが相場が1ドル=99.5円まで下落した場合

上記の場合の証拠金維持率は「112.5%」です。
では続いて、1ドル99円まで下落してしまった場合の証拠金維持率について解説します。

買いポジションを保有していたが相場が1ドル=99円まで下落し損失が-10,000円の場合

10,000通貨で取引を行った場合、1円(100pips)の下落で「-10,000円」の損失が発生します。
つまり有効証拠金は、40,000円(50,000円-10,000円)です。
上記の計算式に当てはめると、証拠金維持率は以下の通りです。

買いポジションを保有していたが相場が1ドル=99.5円まで下落した場合

上記の場合の証拠金維持率は「100%」です。

OANDA証券のロスカットルール(TY3)は、証拠金維持率が100%を下回った場合です。
つまり、50,000円の資金で10,000ドル(10,000通貨)分の取引を行った場合、-10,000円以上の損失が発生するとロスカットが執行されます。

上記例では、スプレッドやスワップポイントは含まれていません。
あくまで分かりやすいよう単純計算したものです。
スプレッドやスワップポイントを含んだ実際のロスカット水準を算出する場合は、自動で算出できる「ロスカットシミュレーション」を活用しましょう。

    ●OANDA証券のロスカットシミュレーション

    OANDA証券が提供する「証拠金・損益シミュレーション」では、ロスカット水準を自動で算出できます。
    口座資産や通貨ペア、取引数量など必要事項を入力するだけで誰でも簡単に利用可能です。

    OANDA証券のロスカットシミュレーション

    「証拠金・損益シミュレーション」は、以下のリンクから利用できます。

    参考記事:証拠金・損益シミュレーション

3.【注意点】ロスカットは間に合わない場合がある

ロスカットの注意点として必ず覚えておきたいのは、ロスカットが間に合わない場合があることです。
ロスカットが間に合わない主な原因は、以下2つあります。

  • 1.短期間での急な価格変動(フラッシュクラッシュ)が起きた場合
  • 2.週明けの窓開けで価格が大きく乖離した場合

【原因1】
短期間での急な価格変動が起きた場合

FXの相場は、マクロ経済(国全体の経済活動)に影響されます。
テロや金融ショックなど、世界に影響する何らかの事案が発生した場合、急な価格変動(フラッシュクラッシュ)を引き起こす可能性があります。

では実際にフラッシュクラッシュが発生したチャートを、以下で表示します。

フラッシュクラッシュが発生したチャート

2019年1月3日にフラッシュクラッシュが発生した、米ドル/日本円(USD/JPY)の1時間足チャートです。
チャートをみると大陰線が出現しているイメージを持つかもしれませんが、実際はたった数分から数十分の間で約4円(約400pips)の下落が発生しています。

2019年1月3日のフラッシュクラッシュでは、アップルショック(アメリカApple社の売り上げ見通しを下方修正)をきっかけに「アルゴリズム取引(AI(人工知能)取引)」「高頻度取引(HFT)」が作動し、年初で流動性が低いこともあり大量のストップロス(逆指値注文)を執行させてしまったことが原因とされています。

このように短期間で急な価格変動が起きた場合、ロスカットが間に合わない可能性もあるのです。

  • ※アルゴリズム取引(AI(人工知能)取引)とは、あらかじめ決められたロジックでコンピューターが自動で取引をすること
  • ※高頻度取引(HFT)とは、あらかじめ決められたロジックに従って、高頻度の自動売買を繰り返す取引のこと

【原因2】
週明けの窓開けで価格が大きく乖離した場合

FXは土日に取引できませんが土日の間に何らかの大きな事案が発生すれば、週明けの月曜日に「窓開け」が発生する可能性もあります。

以下の画像は、「窓開け」が発生したチャートです。

窓開けが発生したチャート

2020年3月6日の米ドル/日本円(USD/JPY)5分足チャートです。
この時は新型コロナウイルスの影響もあり、約1円(100pips)の窓開けが発生しています。

このように週明けの窓開けで価格が大きく乖離した場合、ロスカットが間に合わない可能性もあります。

    ロスカットが間に合わないとどうなるの?

    万が一、ロスカットが間に合わなかった場合、預けた資金以上の損失を発生させてしまいます。
    損失を発生させた分は、追加で資金を入金しなければなりません。
    例えば100万円の資金を預け入れした場合、ロスカットが間に合わず150万円の損失を発生させたとします。
    「100万-150万円=-50万円」、つまり50万円を追加で入金する必要があります。

4.ロスカットを回避する4つの方法

ロスカットは、大きな損失を発生させないようにする投資家保護の役割があります。
しかしポジションが強制的に決済されてしまうので、意図しないトレード結果を発生させてしまう可能性もあります。

ここではロスカットを回避する4つの方法を解説します。

  • 1.追加で証拠金を入金する
  • 2.保有しているポジションを一部決済する
  • 3.損切りを行う
  • 4.低レバレッジで取引を行う

【回避方法1】
追加で証拠金を入金する

ロスカットは、前述したようにTY3では証拠金維持率が100%を下回った場合に執行されます。
含み損が増えれば有効証拠金は減っていくので、証拠金を新たに追加することで有効証拠金が増えロスカットリスクを減らせます。

しかし、ただ闇雲に証拠金の追加入金を行うのはやめましょう。
FX相場は一度トレンド(相場が一方方向に動く現象)が発生すると、しばらく続く傾向があります。
万が一トレンドの発生中に証拠金の追加入金を行えば、再びロスカットリスクを高めてしまうでしょう。
ロスカットが執行されてしまえば、追加で入金した証拠金も失ってしまい、逆に大きな損失を発生させてしまいます。

追加で証拠金を入金する場合は、相場の状況をよく分析して闇雲に行わないようにすることが大切です。
相場状況によっては、後程解説する「損切り」を検討する必要もあります。

【回避方法2】
保有しているポジションを一部決済する

含み損のポジションを複数保有している場合は、一部ポジションを決済することで有効証拠金が増え、ロスカットリスクを減らせます。
ただし前述した証拠金の追加入金と同様に一時的な措置であり、相場にトレンドが発生していれば、ロスカットリスクは引き続き存在します。

また含み損のあるポジションを保有しつづけることは、ロスカットリスクだけでなく、資金が拘束されてしまい、取引チャンスが来たときに資金不足で新たな取引ができない可能性もあります。
含み損のポジションをいつまでも保有するのは、機会損失にもなるので、損切りを行い次の取引チャンスを伺うことも大切です。

【回避方法3】
損切りを行う

ロスカットの回避方法として、「証拠金の追加入金」や「保有ポジションの一部決済」などを前述しました。
しかし前述した2つの回避策はあくまで一時的なものであり、相場状況によってはさらに損失を発生させてしまうかもしれません。

ロスカットリスクを抑えたいのであれば、「損切り」を行いましょう。
損切りは損失を確定させる行為ですが、ロスカットよりは損失を抑えられます。

損切りとロスカットは、ポジションを決済するといった点では同じです。
しかし以下のような明確な違いが存在します。

    【損切りとロスカットの違い】

    • ・損切り:自分の意志で行う損失を最小限に抑える行為
    • ・ロスカット:FX会社によって強制的に決済され、意図しない大きな損失を被る

    損切りは意図したポジションの決済であり、ロスカットは意図しないポジションの決済です。
    意図しているかしていないかによって精神的負担が変わり、将来のトレード成績に大きく影響します。

損切りのやり方としては、「1回の取引で何%の損失額が発生したら損切りをする」といった具体的なルールを決めておくと良いでしょう。
損切りのやり方に関しては複数あるので、以下の記事を参考に自分に合った損切りのやり方を行って下さい。

参考記事:FXの損切りとは?ルールの決め方や損切り目安を予測する分析ツール

なお、OANDA証券ではより精度の高い損切りを行うためのツール「OANDAオーダーブック」を提供しています。

    ●OANDA証券が提供するツール「OANDAオーダーブック」

    OANDA証券が独自開発したオリジナルツール「OANDAオーダーブック」では、OANDAグループの顧客取引状況をグラフ化して表示します。 以下の画像は、OANDAオーダーブックの一例です。

    OANDAオーダーブック

    左側のオープンオーダーでは未約定のオーダー、つまり利益確定や損切りがどの価格に溜まっているかを分析できます。
    右側のオープンポジションでは保有中のポジション、つまり含み益や含み損のポジションがどの価格に溜まっているのかを分析できます。

    OANDAオーダーブックを利用すれば、将来の価格がどのように動くのかを予測でき、精度の高い損切りを行うことができるでしょう。

    またOANDAオーダーブックは無料で利用できますが、OANDA証券の本番口座をお持ちの方とお持ちではない方では、最大1時間のタイムラグが発生します。
    より素早く情報を取得したい場合は、OANDA証券の本番口座開設を検討してください。

    OANDA証券の本番口座開設は、以下のボタンより行えます。

    OANDA証券の口座開設

    OANDAオーダーブックの詳しい使い方に関しては、以下の記事を参考にしてください。

    参考記事:OANDAオーダーブック

【回避方法4】
低レバレッジで取引を行う

FXは、預けた資金(証拠金)の何倍も大きな取引ができる「レバレッジ」という仕組みがあります。
レバレッジをかけた取引は、同じ証拠金でもより大きな利益を期待できます。

例えば、1万円の資金でレバレッジ倍率10倍と倍率20倍では、どの程度利益に差があるのかを見ていきましょう。

低レバレッジで取引を行う

上記画像を見ていただくとわかる通り、レバレッジ倍率20倍のほうが同じ証拠金でもより大きな利益を得られます。

しかし取引に成功すれば大きな利益を期待できますが、取引に失敗すればその分大きな損失が発生するリスクもあります。
つまり、レバレッジ倍率が高いほどロスカットリスクも高まるのです。

取引に慣れていない初心者の方は、まずは低いレバレッジ倍率で取引を行いましょう。

レバレッジについては、以下の記事で詳しく解説しています。
FXを始める前に、どのように調整するのか、仕組みを覚えておきましょう。

参考記事:【初心者向け】FXのレバレッジとは?計算方法とリスクの抑え方を解説

まとめ

最後に、この記事で紹介したロスカットやその回避方法などについてまとめておきます。

  • 1.ロスカットは強制的に決済される仕組み、投資家保護の目的がある
  • 2.ロスカットは必ず機能するものではなく、預けた資金以上の損失を発生させる可能性もある
  • 3.ロスカットを回避するには、低いレバレッジ倍率での取引や損切りなど、リスク管理を行いながらの取引が大切

ロスカットは投資家保護を目的としていますが、なるべくなら執行されたくない制度です。
含み損を長く保有するのではなく、損切りを行いリスクを抑えた取引を心がけましょう。

FXでは、ロスカット以外にもレバレッジやスプレッドなど様々な専門用語が存在します。
OANDA証券では、様々な専門用語やFXの相場分析方法など、これからFXを始める初心者の方向けに詳しく解説したコンテンツを豊富に提供しています。
ぜひ以下のコンテンツを参考に、読み進めてください。

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