英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は、日本時間11月5日(木)21時に金融政策委員会(MPC)の結果を公表します。同時に四半期ごとの金融政策報告書(MPR)も公表され、21時30分ごろからベイリー総裁の記者会見が予定されています。市場予想は、政策金利を3.75%から4.00%へ0.25%引き上げる利上げです。実現すれば2023年8月以来、約3年ぶりの利上げになります。2025年に4回の利下げを重ねた後、中東情勢を受けたエネルギー価格の上昇で物価が再び加速しており、前回9月の会合でも9人のうち3人が利上げを主張していました。本記事では、投票の内訳や物価見通しなどの注目点を整理したうえで、ポンドドル(GBP/USD)とポンド円(GBP/JPY)の足元の相場状況を解説します。
今回のBOEの見どころを3行でいうと
予想は4.00%への利上げ
実現すれば約3年ぶり。物価は9月に3.5%まで加速
焦点は9人の投票の内訳
大差の利上げか、僅差か。次の一手への手がかりになる
金融政策報告書の物価見通し
9月時点では来年1-3月期に4%強でピークの見通し
BOE金融政策委員会(11月)の概要
今回の会合の概要は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 結果の公表 | 11月5日(木)21:00(日本時間)。議事要旨と金融政策報告書も同時に公表 |
| 総裁の記者会見 | 21:30ごろから(予定) |
| 市場予想 | 4.00%(0.25%の利上げ) |
| 現在の政策金利 | 3.75%(2025年12月の利下げ以降、据え置き) |
| 前回(9月)の投票 | 据え置き6人、利上げ3人 |
出所:イングランド銀行。市場予想はOANDA経済指標カレンダー
▶ その他の重要指標の発表スケジュールはOANDA経済指標カレンダーでご確認いただけます。
前回(9月)の決定:9人中3人が利上げを主張
BOEは9月17日に公表した前回の決定で、政策金利を3.75%に据え置きました。投票は6対3で、グリーン委員、マン委員、ピル・チーフエコノミストの3人が0.25%の利上げを主張しています。声明では、8月の消費者物価指数(CPI)が3.1%に高まったことを受けて「インフレ率は今後数四半期でさらに高まる可能性が高い」と指摘し、物価のリスクは7月の時点よりも上振れ方向に傾いているとの判断を示しました。そのうえで「インフレ率が中期的に2%の目標に向かうよう、必要に応じて行動する用意がある」としており、11月の利上げに含みを残していました。
用語メモ
金融政策委員会(MPC)は、BOEの政策金利を決める9人の会議です。総裁、副総裁3人、チーフエコノミストのBOE内部の5人と、財務相が任命する外部委員4人で構成され、1人1票の多数決で決めます。
金融政策報告書(MPR)は、年4回(2・4・7・11月)公表される、BOEの物価と景気の見通しです。今回は11月の報告書が公表されます。
英国の物価と賃金
物価:9月のCPIは3.5%に加速
英国統計局(ONS)が10月21日に公表した9月のCPIは前年比3.5%と、8月の3.1%から伸びを高めました。エネルギーや食品などを除いたコアは2.8%(8月2.6%)、BOEが重視するサービスは3.7%(同3.4%)と、いずれも加速しています。押し上げの中心はガソリンなどの自動車燃料で、前年比29.8%の上昇でした。BOEは9月の時点で、CPIが10-12月期に3.75%前後、2027年1-3月期に4%をやや上回る水準まで高まるとの見通しを示しています。10月のCPIは11月18日に公表されるため、今回の会合には間に合いません。
賃金と雇用:賃金の伸びは鈍化、失業率は4.7%
一方、賃金の伸びは落ち着いています。ONSが10月20日に公表した統計では、賞与を除く定期給与の伸び(3か月平均の前年比)は3.7%、BOEが注目する民間部門の定期給与は3.0%でした。失業率は4.7%です。エネルギー高が賃金の引き上げ要求につながる「二次的な影響」はまだ大きくないとみられ、利上げを主張する委員と慎重な委員の見方が分かれる点になっています。
政策金利の歩みと主要中銀との比較
BOEは物価高への対応で2021年12月から利上げを続け、2023年8月に政策金利を5.25%まで引き上げました。2024年8月からは利下げに転じ、2025年12月に3.75%まで下げた後は据え置いています。今回4.00%へ引き上げれば、利下げの局面から利上げの局面へ、約3年ぶりに方向が変わることになります。
主要中銀の政策金利を比べると、BOEの3.75%は、米連邦準備制度理事会(FRB)の3.75〜4.00%に並ぶ水準で、欧州中央銀行(ECB)の2.50%、日銀の1.25%を大きく上回っています。FRBとECBも物価の上振れを警戒して利上げの是非を探っており、主要中銀の中でBOEが先に動くかどうかが、通貨の強弱を左右しやすい局面です。
今回の注目点
注目点1:9人の投票の内訳
利上げが決まるかどうかに加えて、何人が利上げに投票するかが重要です。9月に据え置きを支持した6人のうち、少なくとも2人が利上げに回れば過半数の5人に届きます。7対2や8対1など大差での利上げなら、さらに利上げを続ける余地が意識されやすく、5対4のような僅差なら、今回で打ち止めとの見方も出やすくなります。据え置きを支持してきたディングラ委員やテイラー委員の判断も見どころです。
注目点2:金融政策報告書の物価見通しと市場の金利の前提
今回の報告書で、CPIのピークがどこまで引き上げられるかが焦点です。9月時点の「2027年1-3月期に4%強」から上振れすれば、追加利上げの観測が強まりやすくなります。また、報告書の見通しは市場が織り込む金利の道筋を前提に作られるため、その前提のもとで2〜3年後の物価が2%を下回る見通しなら、市場の利上げ観測は行き過ぎとの示唆と受け止められる可能性があります。報道によると、金融市場は今回を含めて来年9月までに0.25%ずつ計4回の利上げを織り込んでいます(11月2日時点)。
注目点3:ベイリー総裁の会見
会見では、12月以降の追加利上げへの姿勢と、エネルギー高が賃金や他の品目の価格に広がるリスクへの評価が注目されます。ベイリー総裁は、利下げ局面でも「緩やかで慎重な」金利の調整を強調してきました。利上げ局面でも同じように慎重な言い回しを使えば、ポンドの上値を抑える材料になる可能性があります。
結果のシナリオとポンドの反応
結果の組み合わせと、ポンドの反応の方向の目安は以下の通りです。
シナリオ1:大差で利上げ、追加利上げにも含み
4.00%に利上げ(7対2以上)、報告書の物価見通しも上振れ
12月以降の利上げ観測が強まり、ポンド買いに傾きやすい
シナリオ2:僅差で利上げ、追加には慎重
4.00%に利上げ(5対4・6対3など)、総裁は慎重な姿勢
利上げの予想が大勢のため、材料出尽くしでポンドが売られる可能性も
シナリオ3:据え置き(市場予想に反する結果)
3.75%で据え置き、利上げは12月以降に持ち越し
利上げの織り込みがはがれ、ポンド売りに傾きやすい
足元のポンドドル(GBP/USD)の相場状況
ポンドドルは1.34台後半で推移しています(11月5日朝)。11月4日には、米中間選挙で民主党が上下両院で過半数を獲得したとの報道を受けてドルが売られ、ポンドドルは一時1.35台に上昇しました。その後はやや押し戻され、1時間足ではボリンジャーバンドの中心線(1.3472)をわずかに下回る水準です。
日足では、ポンドドルは21日移動平均線(1.3333)、75日線(1.3406)、200日線(1.3418)をすべて上回り、上向きの流れが続いています。RSI(14)は64と、買われ過ぎの目安とされる70は下回るものの高めの水準です。利上げを見込む向きが大勢のため、予想通りの結果なら上値が重くなりやすい面もあります。
OANDAのポンドドルのオーダーブック(11月5日7時40分時点)では、オープンオーダー(未約定注文)は買いが49.48%、売りが50.52%とほぼ互角です。現在値の上では1.3535と1.3600近辺に売り指値が厚く、1.3550には買いの逆指値が集まっており、上抜けると買いが加速する可能性があります。下では1.3375と1.3400に買い指値が厚い一方、1.3440〜1.3450には売りの逆指値が並び、ここを割り込むと売りが加速する可能性があります。
オープンポジションはロング57.6%、ショート42.4%と買いが多い状態です。ロングは1.3390〜1.3415に厚く、1.34近辺で買われたポジションが多いことがわかります。現在値より上で含み損を抱えたロングは14.64%と多くないため、結果を受けて下落した場合は1.34近辺まで下がったところで手じまいの売りが出るかどうかが焦点です。
直近1週間(10月29日6時〜11月5日6時)の通貨強弱では、ポンドはスイスフランに次ぐ8通貨中2位と強く、米ドルは5位です。ポンドと米ドルの差は+12.54で、11月4日21時の+14.67をピークにやや縮んだものの、利上げ観測とドル安の両方がポンドを支えています。
足元のポンド円(GBP/JPY)の相場状況
ポンド円は213円台前半で推移しています(11月5日朝)。ポンド高に円安が重なり、直近1週間の安値の209円台から上昇しました。1時間足ではボリンジャーバンドの中心線(213.22円)付近にあり、上昇の勢いはひと息ついています。
日足では、ポンド円は21日移動平均線(210.65円)、75日線(211.97円)、200日線(212.85円)をすべて上回り、RSI(14)は66です。上値の目安は214.00円、下値の目安は200日線の212.85円近辺です。
OANDAのポンド円のオーダーブック(11月5日7時40分時点)では、オープンオーダー(未約定注文)は買いが61.95%、売りが38.05%です。現在値の上では214.00円に売り指値が厚く、213.80〜214.50円には買いの逆指値も集まっており、上抜けると買いが加速する可能性があります。下では211.00円と212.00円に買い指値が厚く、212.10円や213.00〜213.10円には売りの逆指値があります。
オープンポジションはロング58.3%、ショート41.7%と買いが多い状態です。現在値のすぐ上の213.50〜213.65円にロングが厚く、含み損を抱えた買いが多いため、戻り局面では手じまいの売りが出やすい配置です。
当日のスケジュール
11月5日(木)と翌日の主な予定は以下の通りです。
11月5日(木)21:00
BOEの結果公表(議事要旨・金融政策報告書)
政策金利・9人の投票・物価見通しが同時に出る
11月5日(木)21:30ごろ
ベイリー総裁の記者会見(予定)
12月以降の追加利上げへの姿勢
まとめ
- ✓BOEは11月5日21時に結果を公表。市場予想は3.75%から4.00%への利上げで、実現すれば約3年ぶり
- ✓9月のCPIは3.5%に加速し、サービスも3.7%。一方で民間の定期給与の伸びは3.0%まで鈍化
- ✓焦点は9人の投票の内訳と、金融政策報告書の物価見通し、ベイリー総裁の追加利上げへの姿勢
- ✓ポンドドルは1.34台後半、ポンド円は213円台前半。利上げを見込む向きが大勢で、大差の利上げならポンド買い、僅差や慎重な姿勢なら材料出尽くしの売りにも注意
▶ 10月のECB理事会の結果はこちら:ECB理事会の結果とラガルド総裁退任
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OANDA Lab編集部
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