イングランド銀行(BOE)は、11月4日まで開いた金融政策委員会(MPC)で政策金利を3.75%から4.00%へ0.25%引き上げることを決め、日本時間11月5日21時に公表しました。市場予想どおりの決定で、利上げは2023年8月以来、約3年ぶりです。投票は0.25%の利上げに8人が賛成し、反対したマン委員も0.5%の利上げを主張したため、9人全員が利上げに投票しました。同時に公表した金融政策報告書では、CPI(消費者物価指数)が2027年4-6月期に4.9%まで上昇するとの見通しが示されました。報道によると、ベイリー総裁は今回の利上げを「避けられない長い一連の利上げの1回目とみるべきではない」とする一方、中東の紛争が解決しなければ最後の利上げにもなりそうにないとの見方を示しました。本記事では、決定と見通し、総裁の発言の要点を整理したうえで、今後のポンドドル(GBP/USD)とポンド円(GBP/JPY)の見通しを解説します。
今回のBOEを3行でいうと
約3年ぶりの利上げで4.00%に
9人全員が利上げに投票し、マン委員は0.5%幅を主張
物価見通しを大きく引き上げ
CPIは2027年4-6月期に4.9%でピーク、2%に戻るのは2028年
総裁は連続利上げを約束せず、ポンドは上げ幅を縮小
ポンドドルは公表直後に1.3482まで上昇したあと、22時すぎには1.345台に
結果ハイライト
約束せず
主な項目の一覧
主な項目の結果は以下の通りです。
| 項目 | 今回 | 前回 | 予想 |
|---|---|---|---|
| 政策金利 | 4.00% | 3.75% | 4.00% 一致 |
| 利上げに 投票 | 9人 うち0.5%幅1人 | 3人 | ― |
| 据え置き に投票 | 0人 | 6人 | ― |
| CPI 見通し (26年10-12月期) | 3.8% | 3.75%前後 | ― |
| CPI 見通し (27年1-3月期) | 4.5%前後 | 4%強 | ― |
| CPI 見通し (27年4-6月期) | 4.9% | ― | ― |
出所:イングランド銀行。今回の見通しは金融政策報告書(26年10-12月期・27年4-6月期)と議事要旨のスタッフ見通し(27年1-3月期)、前回は9月の議事要旨のスタッフ見通し。市場予想はOANDA経済指標カレンダー
発表直後の市場の反応
結果公表と会見前後のポンドドル(GBP/USD)1分足の値動き
ポンドドルは、公表直前の1.3451から、利上げと9人全員の利上げ票を受けて21時00分に1.3482まで上昇しました。その後は1.3470前後でもみ合い、21時20分すぎに再び1.3482近辺を付けたものの、会見が始まる直前の21時25分ごろから売りに押されました。22時15分時点では1.3459と、公表前の水準近くまで上げ幅を縮めています。利上げ自体は予想どおりで、総裁が長い利上げ局面の始まりではないとの姿勢を示したことが、ポンドの上値を抑えたとみられます。
結果公表と会見前後のポンド円(GBP/JPY)1分足の値動き
ポンド円も、公表直前の213.04円から21時00分に213.55円まで上昇しました。21時20分すぎに同じ水準を試したあとは上げ幅を縮め、22時15分時点では213.27円です。ドル円は158円台半ばでほとんど動かず、ポンド円の値動きはポンドドルとほぼ同じ方向でした。
11月BOE金融政策委員会の結果の詳細
政策金利:約3年ぶりの利上げで4.00%に
BOEは2021年12月に0.10%から利上げを始め、2023年8月に5.25%まで引き上げました。その後は2024年8月に利下げに転じ、2025年12月に3.75%まで下げてからは据え置きを続けてきました。中東での紛争が9か月目に入り、エネルギー価格が一段と上がるなか、今回は約3年ぶりの利上げに踏み切りました。
投票の内訳:9人全員が利上げ、マン委員は0.5%を主張
0.25%の利上げに賛成したのは、ベイリー総裁、ブリーデン副総裁、ロンバルデリ副総裁、ラムズデン副総裁、ピル・チーフエコノミスト、外部委員のディングラ委員、グリーン委員、テイラー委員の8人です。マン委員は、物価上昇が根付くのを防ぐには積極的な対応が必要だとして、0.5%の利上げを主張しました。9月に据え置きを支持した6人が全員利上げに回り、据え置きや利下げの票はありませんでした。
議事要旨によると、8人はエネルギー価格の上昇が長く大きく続いたことで、先々の物価上昇の圧力が利上げに値する水準になったと判断しました。ただし、紛争前から続いていた物価の鈍化がどこまで進んでいたか、景気の緩みの大きさ、今の金融政策がどの程度引き締め的かについては、8人の間でも見方が分かれました。
議事要旨に載った各委員の説明のうち、次の一手にかかわる主な見方は以下の通りです。
- ベイリー総裁:物価の上振れリスクを和らげる材料がなければ、もう一段の利上げの論拠は理解できる。その後は、エネルギー価格と物価の動きを見ながら、より条件次第で判断する
- ピル・チーフエコノミスト:1回の0.25%の利上げだけでは十分でない可能性が高く、近いうちを含めて追加の引き締めが必要になる
- ロンバルデリ副総裁:物価の圧力が弱まる証拠がなければ、近いうちにもう一段の利上げが必要になる可能性がある
- グリーン委員:今後、追加の利上げが必要になる可能性が高い
- ブリーデン副総裁:エネルギー高が長引けば追加の引き締めが必要になるが、当面は今の金融環境の引き締めの度合いで釣り合っている
- テイラー委員:これは利上げ局面の始まりではなく、当面1回の「保険」としての利上げ。次の一手は利上げ・利下げ・据え置きのいずれもあり得る
総裁を含む内部の委員の一部が追加利上げに前向きな姿勢を示した一方、テイラー委員のように1回で様子を見る考えもあり、次の一手への見方は委員の間で分かれています。
金融政策報告書の見通し
金融政策報告書の中心シナリオでは、CPIは2026年10-12月期に3.8%、2027年4-6月期に4.9%まで上昇したあと、2027年10-12月期に4.0%、2028年10-12月期に2.0%へ下がる見通しです。7月時点では2027年10-12月期に2.1%まで下がる見通しだったため、物価が高い状態が1年近く長く続く見通しに変わりました。上昇の主因はエネルギー価格の直接の影響で、2027年1-3月期のCPIを約1.4%押し上げるとしています。
主な見通しは以下の通りです。
| 項目 | 26年 10-12月期 | 27年 10-12月期 | 28年 10-12月期 |
|---|---|---|---|
| CPI | 3.8% 7月 3.2% | 4.0% 7月 2.1% | 2.0% 7月 1.9% |
| GDP | 2.2% 7月 1.2% | 1.0% 7月 1.4% | 1.4% 7月 1.7% |
| 失業率 | 4.8% 7月 5.1% | 5.0% 7月 5.3% | 5.1% 7月 5.2% |
| 民間の 賃金 | 3.2% 7月 3.0% | 3.5% 7月 3.1% | 3.4% 7月 3.1% |
出所:イングランド銀行(2026年11月の金融政策報告書の中心シナリオ)。CPI・GDP・民間の賃金(定期給与)は前年比、失業率は期中の平均。下段は7月の報告書の値
景気は、これまでの底堅さを受けて足元の成長率の見通しを引き上げた一方、エネルギー高による実質所得の目減りと金利の上昇で、2027年にかけて鈍ると見込んでいます。失業率は5%前後へ緩やかに上がる見通しです。
この見通しは、市場が織り込む金利の道筋(10月27日までの15営業日平均で、2027年末に4.9%前後まで上昇し、2029年末に4.7%前後)を前提にしています。その前提のもとで2029年10-12月期のCPIは1.8%と2%をわずかに下回り、需要が弱まるシナリオでは2029年に1.2%まで下がります。市場の利上げ観測はやや強すぎるとの示唆と受け止められる可能性もあります。
用語メモ
金融政策委員会(MPC)は、BOEの政策金利を決める9人の会議です。総裁、副総裁3人、チーフエコノミストのBOE内部の5人と、財務相が任命する外部委員4人で構成され、1人1票の多数決で決めます。
金融政策報告書(MPR)は、年4回(2・4・7・11月)公表されるBOEの物価と景気の見通しです。市場が織り込む金利の道筋を前提に作られるため、その前提で物価が2%を下回るか上回るかが、市場の利上げ観測が妥当かどうかの手がかりになります。
声明の要点
今回の声明の主な内容は以下の通りです。
- 政策金利を0.25%引き上げて4.00%とすることを8対1で決めた。反対の1人は0.5%の利上げを主張
- 中東での紛争は9か月目に入り、世界のエネルギー価格は高い水準から一段と上昇した。英国のCPIは9月に3.5%に上がり、来年半ばには5%前後まで上がる見込み
- エネルギー高の直接の影響は明らかな一方、他の価格や賃金への波及の証拠は限られる。それでも、先々の物価上昇の圧力は利上げに値する水準になった。ここ数か月の景気指標が予想より強いことも、引き締めを少し強める理由になった
- 金融政策はあらかじめ決まった道筋にない。エネルギー高が他の価格や経済全体に広がるかを、賃金・企業の価格設定・需給の緩みを見ながら、会合ごとに判断する
9月の声明にあった「必要に応じて行動する用意がある」との表現はなくなり、代わりに「あらかじめ決まった道筋にない」と、次の一手を会合ごとに判断する姿勢を示しました。連続での利上げを約束しない書き方です。
ベイリー総裁の発言の要点
報道によると、ベイリー総裁の主な発言は以下の通りです。
- エネルギー価格の上昇による物価上昇の圧力が先々まで十分にあり、利上げが正当化される
- 今回の利上げを、避けられない長い一連の利上げの1回目とみるべきではない
- ただし、中東の紛争が解決しなければ、今回が最後の利上げになるとも考えにくい
総裁は、連続での利上げを約束しない一方で、エネルギー価格次第では追加の利上げもあり得るとの両面の姿勢を示しました。議事要旨で示した「物価の上振れリスクを和らげる材料がなければ、もう一段の利上げの論拠は理解できる」との説明とも重なります。利上げ自体は予想どおりだったうえ、総裁が利上げの長期化には慎重な言い回しを使ったこともあり、ポンドは公表直後の上げ幅を会見中に縮めました。
12月以降の利上げ観測
イングランド銀行の市場参加者調査(MaPS)では、回答の中央値が今回11月に4%、2027年2月に4.25%への利上げを見込んでいました。また、報道によると、金融市場は結果公表前の11月2日時点で、今回を含めて来年9月までに0.25%ずつ計4回の利上げを織り込んでいました。金融政策報告書が前提にした市場の金利の道筋も、2027年末に4.9%前後まで上がる見方です。
一方、報道によると、米中間選挙のあとに原油価格は7%超下がっています。今回の見通しは10月下旬までのエネルギー価格をもとにしているため、エネルギー価格が落ち着けば、追加利上げの観測が弱まる可能性もあります。次の材料は11月17日の英国の雇用統計と11月18日の10月CPIで、賃金や物価の上振れが続けば、12月17日の会合での追加利上げの観測が強まりやすくなります。
今後のポンドドル(GBP/USD)の見通し
ポンドドルは、会見後の22時15分時点で1.3459と、利上げ前の水準近くに戻っています。1時間足では、ボリンジャーバンドの中心線(1.3475)を下回り、下限(1.3449)に近づいています。
日足では、21日移動平均線(1.3333)、75日線(1.3406)、200日線(1.3418)をすべて上回り、上向きの流れは保っています。RSI(14)は63です。上値の目安は11月4日に付けた1.3503近辺、下値の目安は200日線の1.34台前半です。11月6日22時30分には10月の米雇用統計の発表があり、ドルの動きがポンドドルを左右しやすくなります。
OANDAのポンドドルのオーダーブック(11月5日22時15分時点)では、オープンオーダー(未約定注文)は買いが49.78%、売りが50.22%とほぼ互角です。上では1.3535、1.3555、1.3600に売り指値が厚く、1.3550には買いの逆指値も集まっています。下では1.3440に買い指値がある一方、1.3440〜1.3445には売りの逆指値が並び、ここを割り込むと売りが加速する可能性があります。その下の1.3380と1.3300には買い指値が厚く、下値の支えとして意識されやすい水準です。
オープンポジションはロング56.7%、ショート43.3%と買いが多い状態です。ロングは1.3390〜1.3415と、現在値より少し上の1.3470に厚く、1.3470近辺で買ったポジションは含み損を抱えています。下落が続くと、こうした買いの手じまいが出やすくなります。
直近1週間(10月29日21時〜11月5日21時)の通貨強弱では、ポンドはスイスフランに次ぐ8通貨中2位、米ドルは6位です。ポンドと米ドルの差は+13.43で、この1週間のピーク(11月5日15時の+15.21)からはやや縮みました。
今後のポンド円(GBP/JPY)の見通し
ポンド円は、会見後の22時15分時点で213.27円と、公表直後の高値213.55円から上げ幅を縮めています。1時間足ではボリンジャーバンドの中心線(213.22円)近辺にあり、方向感が出にくい状態です。円は直近1週間の通貨強弱で8通貨中最も弱く、ポンド円の下支えになっています。
日足では、21日移動平均線(210.66円)、75日線(211.97円)、200日線(212.85円)をすべて上回り、RSI(14)は66です。上値の目安は直近高値の213.77円と214.00円、下値の目安は200日線の212.85円近辺です。
OANDAのポンド円のオーダーブック(11月5日22時15分時点)では、オープンオーダーは買いが60.79%、売りが39.21%です。上では213.75円と214.00円に売り指値が厚く、213.80〜214.00円には買いの逆指値も並んでおり、上抜けると買いが加速する可能性があります。下では212.00円と211.00円に買い指値が厚く、212.90円や212.10円には売りの逆指値があります。
オープンポジションはロング58.9%、ショート41.1%と買いが多く、現在値のすぐ上の213.35〜213.60円にロングが厚い状態です。含み損を抱えた買いが多いため、戻り局面では手じまいの売りが出やすく、上値を抑える要因になりやすい配置です。
12月のBOE金融政策委員会までの主な予定
次回12月の会合までに予定されている主なイベントは以下の通りです。
11月6日(金)22:30
10月の米雇用統計
FRBの12月の判断を通じて、ポンドドルにも影響しやすい
11月17日(火)16:00
英国の雇用統計
民間の定期給与の伸びが鈍り続けるか
11月18日(水)16:00
10月の英国CPI
前回9月は総合3.5%・コア2.8%・サービス3.7%
12月17日(木)21:00
BOE金融政策委員会の結果公表
追加利上げの有無(金融政策報告書の公表は無し)
まとめ
- ✓BOEは政策金利を3.75%から4.00%へ引き上げた。約3年ぶりの利上げで、9人全員が利上げに投票し、マン委員は0.5%幅を主張した
- ✓金融政策報告書では、CPIが2027年4-6月期に4.9%でピークを付け、2%に戻るのは2028年と見込む。声明は「あらかじめ決まった道筋にない」とし、連続での利上げは約束しなかった
- ✓ベイリー総裁は今回を長い利上げ局面の始まりとはみていない一方、中東の紛争が続けば追加利上げもあり得るとの姿勢。委員の間でも次の一手への見方は分かれている
- ✓ポンドドルは1.34台後半、ポンド円は213円台前半で、公表直後の上げ幅を縮めた。下値の目安はポンドドルが1.3440近辺、ポンド円が212.85円近辺。11月6日の米雇用統計、11月17日の英雇用統計と18日の英CPIが次の材料
▶ 発表前の注目点の解説はこちら:BOE金融政策委員会(2026年11月)予想と注目点
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