日本時間10月2日(金)21時30分に発表された2026年9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+2.9万人と、市場予想(+8.8万人)を大きく下回りました。過去2ヶ月分も合計6.0万人下方修正され、失業率は4.2%に上昇、平均時給の伸びも前月比+0.1%と予想(+0.3%)を下回りました。9月のFOMCでの利上げ後、初めての雇用統計は、雇用の減速を示す内容となり、10月会合(10月27〜28日)での追加利上げ観測を後退させる材料と受け止められています。本記事では雇用統計の内訳をチャートで整理したうえで、今後のドル円(USD/JPY)とゴールド(XAU/USD)の見通しを解説します。
結果ハイライト
発表直後の市場の反応
- ドル円(USD/JPY):発表前157.60円近辺 → 一時156.96円まで下落(発表5分後:157.15円近辺)
- ゴールド(XAU/USD):発表前4,183ドル近辺 → 一時4,227ドルまで上昇(発表5分後:4,220ドル近辺)
発表直後のドル円(USD/JPY)1分足の値動き

ドル円は発表前に157.6円台で推移し、発表直前には157.5円台へ小幅に下げていました。雇用者数が市場予想を大きく下回り、過去2ヶ月分の下方修正と失業率の上昇も重なると、発表直後の1分間で157.19円まで急落し、21時32分には156.96円と、発表前から約65銭下落しました。ただ、157円を割り込んだところでは買い戻しが入り、21時33分には157.21円まで戻し、その後は157.1円台で推移しています。
発表直後のゴールド(XAU/USD)1分足の値動き

ゴールドは発表前の4,183ドル近辺から、発表直後の1分間で4,214ドルまで急伸し、一時4,227ドルをつけました。いったん4,209ドルまで押し戻された後も買いが続き、21時34分には4,226ドル近辺まで再び上昇しています。10月の追加利上げ観測の後退で米金利が低下し、金利を生まないゴールドに買いが入りました。
9月米雇用統計の結果の詳細
9月のNFPは前月比+2.9万人と、市場予想(+8.8万人)を大きく下回りました。あわせて7月分が+2.1万人から▲1.0万人へ、8月分が+16.2万人から+13.3万人へ改定され、過去2ヶ月分の改定は合計6.0万人の下方修正です。7月はマイナスに転じ、前回発表時に「雇用の急減速懸念はいったん後退」と受け止められた8月の強さも一部割り引かれました。単月の振れをならした3ヶ月移動平均は+5.1万人と、前回時点の+7.1万人から低下しています。
雇用の内訳:民間の伸びが鈍化、政府部門は減少
内訳では民間部門が+4.6万人、政府部門が▲1.7万人でした。政府部門のうち連邦政府は▲0.1万人と、2025年から続く人員削減の影響がなお残っています。民間部門の伸びは、8月の当初発表時の+12.7万人から大きく鈍化しており、ヘッドラインの弱さは政府部門の減少だけでなく、民間の雇用意欲の低下によるものです。
業種別では、教育・医療(+2.0万人)、建設(+1.1万人)、娯楽・宿泊(外食を含む、+1.0万人)、製造業(+0.9万人)が増加した一方、情報(▲1.0万人)、専門・ビジネスサービス(▲0.9万人)、金融(▲0.7万人)は減少しました。8月に全体をけん引した娯楽・宿泊(+6.2万人)の伸びは大きく縮小しています。増加は医療や建設などに限られ、雇用増の広がりは乏しい内容です。
失業率と労働参加:参加率の上昇を伴う失業率の上昇
失業率(U-3)は4.2%(丸める前は4.18%)と前月(4.1%)から上昇しました。この1年の失業率の低下は、労働参加率が62.5%(2025年9月)から61.6%(2026年8月)へ下がるなかで進んでおり、職探しをやめて労働市場から退出する人が増えたことが失業率を押し下げてきた面があります。今回は労働参加率が61.8%(前回61.6%)と上昇しており、労働市場に戻って職を探す人が増えたことが失業率を押し上げた面があります。雇用の減速だけで失業率が上がったわけではない点は、悪化をやや割り引いて見る材料です。縁辺労働者やパートタイム就業者まで含めた広義の失業率(U-6)は7.6%(前回7.7%)と、むしろ小幅に低下しました。
賃金:前月比は直近半年で最も低い伸び
平均時給は前月比+0.1%(詳細値+0.13%)、前年比+3.0%でした。前年比は、前年9月の伸び(前月比+0.2%程度)が小さかったことによるベース効果で高まりやすく、賃金の勢いは前月比で判断する必要があります。前月比は直近6ヶ月で+0.16〜+0.27%の範囲にとどまっていましたが、今回の+0.13%はその下限も下回り、直近半年で最も低い伸びとなりました。ベース効果があっても前年比は3.0%に鈍化しており、賃金面からインフレ再燃を警戒させる内容ではありません。
雇用者数の伸びの鈍化、過去2ヶ月分の下方修正、失業率の上昇、賃金の伸びの鈍化と、主要な項目がそろって労働市場の減速を示しました。労働参加率の上昇やU-6の低下など悪化を割り引く材料もありますが、全体としては、9月の利上げを含む金融引き締めの効果が雇用に表れ始めたと受け止められやすい内容です。
金融政策への影響:10月FOMCの追加利上げ観測
今回の結果を受けて、10月会合(10月27〜28日)での0.25%の追加利上げの織り込みは、発表前の26.0%(21時10分時点)から14.9%(21時40分時点)へ低下し、据え置きの見方が85.1%に高まりました(※参照元:CME FedWatchツール)。9月のFOMCで示されたドット・チャートは2026年末の政策金利の中央値を4.1%とし、年内にもう1回の利上げを示唆しています。今回の結果は、ウィリアムズNY連銀総裁が示した「次の利上げを急ぐ必要はない」との見方を裏付ける内容で、追加利上げの時期を12月以降へ先送りする観測を強めやすいとみられます。10月会合の前には、10月14日に9月の米消費者物価指数(CPI)の発表も控えています。
今後のドル円(USD/JPY)の見通し
雇用統計の発表直後、ドル円は157.60円近辺から一時156.96円まで下落しました。157円を割り込んだ水準では買い戻しが入り、157.1円台まで戻したものの、戻りは限られています。1時間足では、ボリンジャーバンドの-2σ(157.3円近辺)を大きく下回って推移しており、バンドは下方向に広がり始めています。中心線(157.85円近辺)は下向きで、短期的には下方向への勢いが残りやすい状況です。目先の下値は、9月30日の安値(156.3円台)が意識されそうです。

発表後(10月2日21時45分時点)のオーダーブックでは、オープンオーダー(未約定注文)は買いが58.66%、売りが41.34%と、買いが優勢です。現在値(157.29円近辺)の上では、157.4〜158.5円に売りの指値注文が厚く並び、159円ちょうど近辺と160円近辺にも大きな売り注文があります。戻り局面では158円前後で上値を抑えられやすい状況です。同じ価格帯には買いの逆指値注文(ショート勢の損切り)もあり、158円台半ばを上抜けると上昇が加速しやすい点には注意が必要です。現在値の下では、157円ちょうど近辺と156.6円近辺、156円ちょうど近辺に買いの指値注文が厚く、雇用統計後の安値(156.96円)近辺では押し目買いが入りやすい構図です。156.4〜156.9円には売りの逆指値注文(ロング勢の損切り)もあり、156円台半ばを割り込むと下げが加速しやすくなります。
オープンポジションはロング54.09%、ショート45.91%と、ややロングに傾いています。現在値より上の157.3〜158.3円には、発表前から158円台で買ったロングが含み損のまま多く残っており、戻り局面では建値近辺での決済売り(やれやれ売り)が上値を抑えやすい状況です。一方、現在値のすぐ下の156.9〜157.3円には、発表直後の急落局面で売ったショートが含み損を抱えており、ドル円が157円台で底堅く推移すれば、その買い戻しが反発を支える可能性もあります。

直近1週間の通貨強弱チャートを見ると、米ドルは9月30日夜から持ち直し、10月2日にかけて主要通貨の上位を保っていましたが、雇用統計の後はやや水準を切り下げています。一方、円は10月1日の日銀短観の後に大きく売られた後、2日の東京都区部CPIの上振れを受けて持ち直し、雇用統計の後も小幅に買われました。スイスフランが急伸して最も強い通貨となる一方、ユーロは10月1日夜から急落が続き、最も弱い位置にあります。米ドルの強さに陰りが出る一方で円が持ち直していることが、ドル円の上値を抑える構図です。


日足では、ドル円は10月1日・2日と200日移動平均線(158円台前半)に上値を抑えられ、2日は雇用統計を受けて大きな陰線となっています。75日線(159円台半ば)も下向きで、上値の重さが意識されやすい状況です。一方、21日線(156円台前半)は横ばいから上向きに転じつつあり、下値の支えとして意識されそうです。以上を踏まえると、上値は200日線のある158円台前半、下値は9月30日の安値(156.3円台)と21日線のある156円台前半が意識されやすい水準です。159〜160円では日本の通貨当局による円安けん制と介入への警戒が上値を抑えやすいうえ、今回の結果で米国の10月利上げ観測が後退したことで、ドル買いの材料は乏しくなりました。一方、2日朝の東京都区部CPIの上振れで日銀の連続利上げ観測が強まっており、日米の金融政策の方向の違いから円高方向に振れやすい地合いです。10月末には日銀会合も控えており、日米の金融政策をにらんだ展開が続きやすいとみられます。
今後のゴールド(XAU/USD)の見通し
発表後のゴールドは、4,183ドル近辺から一時4,227ドルまで上昇し、執筆時点では4,220ドル台で推移しています。雇用の減速で10月の追加利上げ観測が後退し、米金利の低下とドル安がそろってゴールドを押し上げました。金利を生まないゴールドにとって、10月会合での追加利上げの有無は最も直接的な材料であり、利上げ観測が後退した今回は、9月下旬の急落からの戻りを試しやすい地合いです。1時間足では、ボリンジャーバンドの+2σを上抜けて9月30日の高値(4,219ドル近辺)に並んでおり、ここを上抜ければ戻りに勢いがつきやすい状況です。


日足では、ゴールドは9月28〜29日の急落で4,110ドル近辺まで下げた後、持ち直しが続いています。ただ、75日線(4,240ドル近辺)、21日線(4,300ドル近辺)、200日線(4,530ドル近辺)をいずれも下回っており、下落基調からの戻りの局面です。上値は75日線のある4,240ドル近辺、その上は21日線の4,300ドル近辺、下値は9月29日の安値の4,110ドル近辺が目安として意識されやすい水準です。
まとめ
- ✓9月米雇用統計はNFP+2.9万人と予想(+8.8万人)を大きく下回る。過去2ヶ月分は合計6.0万人の下方修正で、7月はマイナスに
- ✓失業率は4.2%に上昇、労働参加率は61.8%に上昇。参加率の上昇やU-6の低下は悪化を割り引く材料だが、全体として雇用の減速を示す内容
- ✓平均時給は前月比+0.1%・前年比+3.0%。前月比は直近半年で最も低い伸びで、賃金面からのインフレ圧力は和らぐ
- ✓10月会合での追加利上げの織り込みは26.0%(発表前)→14.9%へ低下。据え置きの見方が85.1%に高まり、追加利上げは12月以降との観測が強まる
- ✓ドル円は一時156.96円まで下落。上値は200日線のある158円台前半、下値は156.3円台(9月30日安値)が目安。159〜160円では介入警戒。ゴールドは4,227ドルまで上昇し、上値は4,240ドル(75日線)、下値は4,110ドルが目安
▶ 発表前の注目点・市場予想の解説はこちら:米雇用統計(2026年9月)予想と注目点
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OANDA Lab編集部
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