貴金属の基礎

金(ゴールド)とは?基礎知識や価値、歴史などを詳しく解説


前書き


これからゴールドをはじめとした貴金属の全般的な知識を連載して行きます。

  • ゴールド(シルバー、プラチナ、パラジウム)とは何なのか
  • なぜそれだけの価値があるのか
  • どこで採れるのか?
  • 何に使われるのか?
  • 誰が持っているのか?
  • どうやって取引されているのか?
  • マーケットの仕組みは?
  • 歴史的な価値(価格)の変遷は?
  • 何が価格を動かしているのか?
  • などなど

知っているようで知らない、でも知っていればおそらくこれから貴金属のマーケットをみる上でも何かの役に立つかもしれない話を書いていこうと思います。


ゴールドとは何だろう?


なぜ金(以下「ゴールド」と表記します。)はこんなに高いのでしょうか。鉄やアルミや銅とのこの価格差の背景にはなにがあるのでしょうか。その理由は一つではありません。このコラムはまず、「ゴールド」とは何だろう?という素朴な疑問を掘り下げることから始めましょう。


貴金属の仲間


ゴールドはいわゆる「貴金属(Precious Metals)」と呼ばれる金属の仲間の一つです。「貴金属」に含まれる金属(メタル)はゴールドとシルバーの二つに加えて、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムそしてオスミウムという六つのいわゆる白金族(PGM:Platinum Group Metals)のメタルの8種類のメタルのことを指します。

この8つの貴金属の中で個人投資家が取引できるのはゴールド、シルバー、プラチナそしてパラジウムまでです。この4メタルは先物市場にも上場されており、投資家が参加できる市場性がありますが、それ以下のPGMは基本的には流動性のある取引マーケットは存在せず、工業用メタルとして、生産者と需要家の長期契約などの直接取引が基本となっています。

(表1:貴金属の価格、オンス当たりのドル建てとグラム当たりの円建て2021年8月9日現在)                                                                                                                                                                            
PM $/toz ¥/grm
Gold$1,741.78¥6,172.26
Silver$23.97¥84.94
Platinum$982.01¥3,479.90
Palladium$2,633.29¥9,331.48
Rhodium$18,990.00¥67,293.96
Iridium$5,390.00¥19,100.29
Ruthenium$748.00¥2,650.65
Osmium$375.00¥1,328.87

貴金属の価値


表1でみてもらえると貴金属の価値の高さが一目瞭然です。たとえばゴールドはこの原稿を書いている2021年8月現在1グラムの価値が6,172円です。最も高いロジウムはその10倍以上の67,000円台です。一時10万円を超えていました。まさに「貴金属」と呼ばれる所以がこの価格の飛び抜けた高さにあります。

たとえば銅は1グラムに換算すると約1円。アルミは約0.30円と、貴金属とそうでないメタル(たとえば銅やアルミ、ニッケルなどの非鉄金属や鉄)と比べると桁違いの価値があるのです。金属ではなくても1グラムの価値が数千円以上するような物質は貴金属以外には見つけることはできません。


ゴールドの歴史


それではこのゴールドはどのようにして我々人類とかかわりを持つようになったのでしょうか。そしてその桁外れの価値はどのようにして生まれたのでしょうか。ゴールドと人類の付き合いは有史以前にまで遡ると言われています。

もちろん有史以前の記録は残っていないので、正確なところは計り知ることはできませんが、紀元前6000年ごろのメソポタミア文明の担い手であったシュメール人が大勢の奴隷を使役してゴールドを採掘、加工したと伝えられていますが、具体的な形としてゴールドが現れたのは紀元前1000年ごろの古代エジプト王国が最初だと言われています。

古代エジプトでは太陽を尊いものとして崇め、王であるファラオたちはまばゆい輝きを放つゴールドを宗教的な祭具(燭台や杯など)として、権力の象徴あるいは太陽の象徴として使っていたようです。ナイル河の恵みである砂金を基にしてゴールドの装飾品を作っていたのでしょう。

相当数の奴隷を使役し、王たちの手元にはかなりの量のゴールドが集められ、有名なツタンカーメンの王墓には100キロを越える量の、当時としてはおそらく途方もない量のゴールドが使われ、2000点以上もの副葬品が埋葬納められていました。当時はおそらくゴールドを採集するためにかかる奴隷の労働力がそのまま、その価値にも直結したのではないでしょうか。

それほど希有で貴重な(砂金を集めるしかなかった)ものであったのです。「金字塔」という言葉は後世に残る不滅の業績を差す場合に使われる言葉ですが、元々はエジプトのピラミッドを指す言葉です。エジプト王家では代々ゴールドで作った宝飾品を王とともに埋葬していました。あの有名なツタンカーメンの黄金の仮面はその最たるものです。

3000年以上前のものがそのままの形で残っているのも、ゴールドの大きな魅力です。権力の象徴であったゴールドが富の象徴つまり貨幣として使われるようになったのは紀元前700年ごろの現在のトルコにあったリディア王国です。王国を流れる川の底から産出されたエレクトラム(ゴールドとシルバーの自然合金)を用いた「エレクトロン貨」がそれに当たります。このエレクトロン貨が最古の金貨として現存しています。

その後のアレキサンダー大王もゴールド通貨を鋳造し、ゴールドの価値はずっと人間に認められていくことになります。中世に入るとヨーロッパによる世界各地の発見と侵略が始まります。もちろんゴールドやシルバーなど貴金属を入手することがその大きな目的の一つだったことは歴史が雄弁に語っています。

近代に入ってもその基本的な流れは変わらず、大英帝国の旧植民地もしくは支配地域(アメリカ、カナダ、オーストラリア、南アフリカなど)が、ゴールドの主な産地であったことは単なる偶然ではありません。今でもロンドンがゴールド取引の中心地である理由はこういった歴史がその背景にあります。近代から現代にいたる過程でゴールドは経済の国際化が進む中、国際通貨としての役割を果たすようになっていきます。

Provided by
池水 雄一(Bruce Ikemizu)

1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社。
1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産株式会社で貴金属チームを率いる。
2006年スタンダードバンクに移籍、2009年同東京支店支店長就任。
2019年9月日本貴金属マーケット協会代表理事。

>池水 雄一氏監修の「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの貴金属」に関する記事一覧はこちら

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