貴金属の基礎

金(ゴールド)の供給|埋蔵量と資源量、二次供給(リサイクル)も解説


ゴールド鉱山生産コスト


ゴールドには「生産コスト」があります。

これは鉱山からゴールドを掘り出し、それを精錬して地金にするコストです。生産コストは、当然のことながら各ゴールド鉱山によって大きく違います。1トンの金鉱石当たりに含まれるゴールド純分は鉱山、鉱脈により大きく違ってきます。

ゴールドの含有量が多ければ多いほど、生産コストは低くなり、少なければ少ないほどその手間は増えるので、生産コストは高くなるということです。ですから、ゴールドの生産コストを出すためには、各金鉱山のコストをまとめ、国別そして地域別の平均を出すという方法でMetals Focus社が出しています。

(ゴールド鉱山生産コスト)

ゴールド鉱山生産コスト

この表のAll-in Sustaining Cost (AISC:トータル鉱山継続コスト)というのが、採掘コストに、鉱域の使用免許コストや鉱山の維持のための資本コストその関係する事務管理費用など、すべてのコストを合わせたものであり、これがゴールドを採掘するためのコストだと言えます。

最もAISCが安い地域はロシアを中心とするCISで721ドル、その次はアジアの856ドル。最も高いのが欧州1090ドル、北米1083ドルとなります。

個別の鉱山でみると、最新のデータでは世界最大の産金会社であるBarrick社の米国のLong Canyon というゴールド鉱山がなんと156ドル、Kirkland Lake社のオーストラリアのFosterville鉱山は423ドルと非常にコストが安い鉱山もあります。

世界のゴールド鉱山の生産コストの平均は986ドルとなり、現状のゴールド価格が1800ドル近辺にあるということは、その生産コストはほぼ半分に近いレベルであり1オンス当たりの利益は800ドルを超え、ゴールド鉱山は、現在非常に大きな利益を上げているのです。

(2021年第一四半期のコストが安いゴールド鉱山ベスト10)

2021年第一四半期のコストが安いゴールド鉱山ベスト10

(Kitco newsより)


ゴールドの埋蔵量と資源量


埋蔵量という言葉はよく聞きます。30年前、原油の埋蔵量はあと30年と言われていました。そして30年後の今、原油の埋蔵量はあと30年のままです。これは一体どういうことでしょうか?

私が中学一年の時、当時のあこがれだったオリビアニュートンジョン(オーストラリアの美人シンガー)は28歳でした。そして高校卒業の時、彼女はまだ28歳でした。美人は歳を取らないんだあ、と妙に感心したものです。笑。資源の埋蔵量もそうなのでしょうか?しかし決してそういうわけではありません。

埋蔵量(Reserve)とは、その時点で確認されている「採掘することが経済的に合う」地下資源のことを言います。そして、その存在が確認もしくはほぼ確実に想定できるもの全体を資源量といいます。

ゴールドの埋蔵量とそれを除いた資源量は以下の表の通りです。現在確認されている埋蔵量は世界で57,490トン、それを除いた資源量は130,470トンと推定されています。

埋蔵量は採掘することが経済的に合う量であることから、将来の新たな鉱脈の発見、ゴールド価格の動き、そして採掘技術の進歩によってその量は増減します。

現在地上にあるゴールドの総量は201,296トンと言われており、今地中にある埋蔵量は57,490トン、埋蔵量ベースで考えるとその大きな部分はもはや地上に掘り出されていると考えることができます。

(ゴールド埋蔵量と資源量)

ゴールド埋蔵量と資源量

(ゴールドの地上存在量:WGCより)

ゴールドの地上存在量:WGCより

ゴールドの地上存在量:WGCより


ゴールドの二次供給(リサイクル)


ゴールドの特質として、その不変性を上げましたが、その特性のため、基本的に何かに使われたゴールドは消費されて無くなることはありません。そのため回収のコストがゴールドの価格を上回らない限り何度も回収されて利用されることになり、このいわゆる二次供給がゴールドの供給の重要な部分を占めます。

どのような形で利用されていたとしても、溶かして99.99%のゴールドに精錬してしまえば、鉱山から生産されるいわゆる新産金と質的に何ら変わることはありません。どちらもpure goldであり、同じものです。

リサイクルの量は、そのときのゴールド価格に影響を受けます。ゴールド価格が上昇すればするほどゴールドをリサイクルする利益が大きくなり、それはリサイクル量の増加に繋がります。

そのため2020年8月にゴールドが史上最高値をつけた時のリサイクル量は大きく増加しました。しかし一年を平均してみるとだいたいは1100トンから1200トン前後と、鉱山生産の約3分の1くらいの量で安定しています。

2021年は鉱山生産が3700トンに対して、二次回収は1200トンとなっています。

回収されるゴールドは投資用地金やコインの売り戻し、宝飾品スクラップがメインとなりますが、近年「都市鉱山」という名で注目されている、パソコンやスマートフォンその他電気製品に使われている電子部品の中からのゴールドの回収も増えてきています。

この分野からのゴールドの生産は当然限界がありますが、これまでの歴史的流れを見る限り鉱山生産の3分の1くらいの供給は絶えずあることが期待できます。

(世界のゴールドリサイクル量推移:四半期ベース)

世界のゴールドリサイクル量推移:四半期ベース

Provided by
池水 雄一(Bruce Ikemizu)

1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社。
1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産株式会社で貴金属チームを率いる。
2006年スタンダードバンクに移籍、2009年同東京支店支店長就任。
2019年9月日本貴金属マーケット協会代表理事。

>池水 雄一氏監修の「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの貴金属」に関する記事一覧はこちら

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