貴金属の基礎

ゴールドの需要|公的機関(中央銀行)での需要について解説


公的機関(中央銀行)



中央銀行の買いと売り


中央銀行のゴールドの買いも、ゴールドにとっては大きな需要分野になっています。

2021年の予想では420トンと、需要全体の中で約9%を占めています。もちろん年によってはネットで売り手になる場合もありますが、過去10年は毎年250トンから650トンの間でのネットの買い手となっています。

中央銀行の買いはいわゆる外貨準備の中のゴールドを増やすということになります。過去10年の間の最大の買い手はロシア中央銀行です。昨年2020年はパンデミックの影響により過去3年で最低の量でしたが、それでも525トンという量を買っています。ロシアの外貨準備におけるゴールドの割合は25%を越えて、保有している米ドルの総額を初めて超えました。

2020年ゴールドの買いで目立ったのは他にトルコ、インド、UAE、カタールそしてカンボジアでした。

ゴールドを外貨準備の中でその割合を増加させるというのは、特に新興国やロシア、中国といった国々にドル資産からゴールドへの動きが目立ちます。

もちろん中央銀行はゴールドを買うだけではありません。当然売りもあります。2020年は例年よりも多くの国々がパンデミックによる経済危機を回避するために、ゴールドを売却して資金を得るという、まさにいざというときのゴールドの活用法という売却が目立ちました。

圧倒的な売りはトルコ。トルコはその経済危機に対応するために90トンのゴールドを2020年9月から11月の間に売却しました。この期間はゴールド価格が史上最高値を記録しており、タイミング的にも利食いとなる売りであったろうと思われます。

モンゴル、スリランカ、コロンビアそしてフィリピンなども2010年以来の最大の売却量となりました。それでも、中欧銀行のゴールドの売買、ネットでは2020年は250トンの買い越しでしたが。

(中央銀行の売り買い)


中央銀行のゴールド保有量


中央銀行が保有するゴールドの量は2020年末で34,420トン。これは地上に存在するゴールド130,470トンの26%に当たります。

最大の国はやはり米国で8,134トン。これはゴールドの歴史で触れましたが、米国はもともと2万トン以上のゴールドを保有していましたが、ブレトンウッズ体制下の「ゴールド・ドル本位制」のもとでその残高が大きく減少し、1971年のニクソンショックでドルとゴールドの兌換が中止された時点からこの残高はほぼ変わっていません。

米国にとっては外貨準備高のほとんど(8割)をゴールドで持つのはごく自然なことです。世界の基軸通貨である米ドルを自由に刷ることができ、ドルを上回る信頼をおける通貨がないとすれば、ユーロや円などを持つ意味はほとんどありません。米国にとって保有する意味のある資産はゴールドということになるでしょう。

米国に次いでゴールドを保有しているのはドイツ、イタリア、フランスと西欧の先進国です。いずれも外貨準備におけるゴールドの割合が6割から8割と、米ドルよりもゴールドが最も重要な資産となっています。

そして近年ゴールドの割合を急速に増やしているのがロシアです。10年前は5%にも満たなかったゴールドが現在は23%と大きくその割合が増しています。ロシアの中央銀行総裁はドル資産からゴールドへの乗り換えを明言し、それを忠実に実行してきました。

そんな中で目立つのは中国や日本です。両国とも外貨準備高は世界でも1,2を争いますが、ゴールドの割合は4%そして3%と極端に少なく、特に中国はより大きな割合へドルからゴールドへの乗り換えが期待されます。

日本は歴史的にゴールドにタッチしない政府です。核の傘の庇護下にある米国のドルを持っていることがその資産の安全にももっともよいことだと思っているのかもしれません。また日本ではゴールドは金融資産(通貨)という観点よりも「物」という見方が強く、管轄省庁も財務省ではなく経産省、取り扱う業種も銀行ではなく、総合商社や地金商であるということも他の国々とゴールドに対する考え方が違うことの現れかもしれません。

(公的機関のゴールド保有量トップ10)


本記事の監修者・Bruce Ikemizu / 池水雄一


1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社。1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産株式会社で貴金属チームを率いる。2006年スタンダードバンクに移籍、2009年同東京支店支店長就任。2019年9月日本貴金属マーケット協会代表理事。


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