貴金属の基礎

金(ゴールド)への投資需要|現物投資について解説

現在のゴールドのマーケットで価格を決めているのは、一言でいうと「投資家」です。

昔は中国やインドといった「実需」の影響力が相当大きかったのですが、今は「投資家」の影響力がはるかに大きく、特に「先物市場」での大手投資家の動きが、先物市場のレバレッジ効果(証拠金によるてこの原理)も相まって短期的なマーケットの動きに多大な影響を与えています。

ゴールドの価格を決める「マーケット」の仕組みに関しては、ファンダメンタルズの次に解説しようと思いますので、もう少しお待ちください。

まず需要全体における「投資」の割合をみてみましょう。ゴールドはほかの貴金属とは違い、「そのもの」の形で使われる比率が高いメタルです。

シルバーはその半分が産業用需要であり、PGM(プラチナやパラジウムの白金族)はほぼ9割が産業用需要です。ゴールドのそれはわずか7%であり、残りの需要は「そのものの形で保有する需要」つまり宝飾品と投資需要になります。宝飾品もインドや中国では、「投資」の一部と考えることができ、ゴールドは圧倒的に「投資」のためのメタルであると言えることができます。同じ貴金属という括りの中でもこれはゴールドの非常に大きな特徴だと言えます。

その希少性ながら十分な流動性、そして何よりも5000年といわれる有史以来の人間との付き合いがゴールドの「投資」価値を形づくってきたのだと思われます。

プラチナと人間の付き合いはせいぜい200年前後、そして流動性に大きな欠点、つまり、希少性が高すぎるということ、シルバーは精錬という技術が発達するまでその獲得は難しかったこと(ゴールドのように「自然金」の形で手に入ることはほとんどなかった。PGMも同様)、そして精錬の技術が進歩したあとは逆に多く生産ができるようになったことで希少性が薄くなったことなどから、ゴールドはほかの貴金属と違った独自の「投資」用メタルとしての地位を確定したと言えます。

その最も顕著な事例として、世界の中央銀行はゴールドを外貨準備の一部として大量に保有しますが、その他の貴金属をゴールドと同じように保有することはほぼありません。

この投資用メタルの側面が、現在ゴールドの価格を、希少性ではゴールドの20倍近くの価値があるはずのプラチナよりもはるかに高い価格に維持している最大唯一の理由です。投資家はゴールドを買うけれどもプラチナはそれほど買わないのです。


現物投資


投資の形として最も一般的なのは「現物投資」です。

地金と呼ばれる金の延べ板では、世界で最も流通しているのは1kgバーでしょう。東アジアや欧米では金純分99.99%でフォーナインと呼ばれる純度のものです。

中央銀行や金融機関など一番川上の機関投資家はラージバーと呼ばれる400オンス(約12kg前後)の大きなバーで所有するのも一般的です。ただし、ラージバーは必ずしも99.99%とは限らず、99.5%や99.9%などそのゴールドの品位(純度)も異なるため、その価値は金純分で計算されます。

基本的に99.99%の1kgバーは「純金」として計算されるのに対して、ラージバーは一本一本その純金量によって価値が変わります。そのため1kgバーの方が取引は簡単です。すべて同じ基準で取引できるからです。

1kgバーは現在のマーケットでは一本で700万円近い価値があり、個人投資家には価値が高すぎる部分があり、一般にはもう少し小さなサイズのバーが多く取引されます。500グラム、100グラム、50グラムから1グラムまで、すべて99.99%の純金ですが、サイズが小さくなればその分買いやすい価格になる一方、改鋳のコストとしてスモールバーチャージというプレミアムが課され、1kgバーよりも若干割高となるのが普通です。

そして、取引の品位はその地域によって変わってきます。

東アジアの日本、中国、韓国、香港、台湾、そしてタイやベトナム、シンガポールといった東南アジア諸国では99.99%の品位のゴールドが基本ですが、インド、パキスタンのような南西アジアからドバイ、サウジアラビアなどの中東では99.5%のゴールドが取引の標準品位であり、ゴールドの世界ではインドパキスタンと中国との境に大きな「国境」があります。

そのため、例えば東南アジアの各国へのゴールド現物の供給はシンガポールや香港がハブとなりますが、インドや中東への供給はUAEのドバイがその中継地になります。

品位が違うために、よっぽどのことが無い限りこの二つのグループの間の直接的な取引はありません。もし東アジアから中東へゴールドを持っていく場合は、たいていスイスの精錬所で99.99%を99.5%に鋳なおすということになるのです。

また、地金と同じようにゴールドの現物投資で人気があるのが金貨、ゴールドコインです。

これはアンティーク型とブリオン型の二種類がありますが、ゴールドの価値に投資するという意味ではブリオン型が一般的です。地金と同じようにゴールドの時価によってその価値が計算されるもので、毎日価格が変わります。地金よりも小口で、その分、プレミアムは高めですが、保有もしやすく、特に欧米ではゴールドコインは人気が高いと言えます。

一方アンティーク型は発行枚数が少なく、ゴールドの価値というよりも希少価値でその価値が上がっていくような「骨董品」的なコインです。

世界で最もゴールドの現物を買っているのは中華圏と日本を含む東アジア地域です。2021年の予想では417トン。

それに次ぐのが欧州で266トン。特にドイツでは二度の大戦で紙幣が紙切れになった経験からゴールド現物への投資が盛んです。

そしてインドが含まれる南アジアの164トン。これは控えめな数字に見えますが、中国と並ぶゴールド選好が強いインドでは、宝飾品の需要としてそのゴールド買いがカウントされている部分が大きいと思われます。

中東は147トンで目立つのはトルコとイランです。

(世界のゴールド現物投資)

(過去5年のゴールド価格の動向と世界の現物投資の動き)

Provided by
池水 雄一(Bruce Ikemizu)

1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社。
1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産株式会社で貴金属チームを率いる。
2006年スタンダードバンクに移籍、2009年同東京支店支店長就任。
2019年9月日本貴金属マーケット協会代表理事。

>池水 雄一氏監修の「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの貴金属」に関する記事一覧はこちら

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