貴金属の基礎

金(ゴールド)マーケットの仕組み|価格はどこで決まるのか?

ゴールドの物としての需給の話は前回までで終了。今回からはゴールドの価格がどのようにしてどこで決まっているのか、その価格形成のマーケットの仕組みを解説していきたいと思います。


ロコ・ロンドン・ゴールド・マーケット


世界の金価格の形成の最も根源にあるのがこの「ロコ・ロンドン・ゴールド価格」です。一般的に「ドル建て金価格」というとき、このロコ・ロンドン価格を指しています。(Comexの先物価格も全く同じ表示なので、少しややこしいですが、それはのちほど解説します。)

ロコロンドンゴールド価格とは、ロンドンで受け渡しされる(実際にはアカウントの付け替え)条件の1トロイオンス(troy ounce=toz=31.1035グラム、貴金属にだけ使われる単位でオンスといわれるときもあるが、本来のオンスとは単位が違います。)当たりの米ドル建ての価格です。

新聞などで、ゴールドが2000ドルを超えた、という表現があるときは、1トロイオンスあたりの米ドル価格です。つまり、1オンスのゴールドと2000ドルを交換する、ドルとゴールドの交換レート、つまり為替だということができます。その仕組みはドル円やドルユーロなどの外国為替と全く同じです。

海外では銀行などの金融機関がゴールドのトレーディングを為替のデスクで行っているのが普通です。ドル建てゴールドはゴールドとドルの為替であるからです。

ドル円の為替は、ドルはニューヨークにある銀行での受け渡し(記帳上の付け替え)となり、円は東京にある銀行での受け渡しとなりますが、ゴールドは国籍がありません。しかし、その歴史的な経緯から、ゴールドの受け渡しはロンドンにある銀行で行われることになっています。そのためロコ・ロンドンと呼ばれます。「ロコ」はラテン語で場所を表す接頭辞であるとか、英語のLocal の略語だとか言われる説がありますが、受け渡し場所を示す言葉として貴金属取引では使われています。例えば東京渡しの場合は「ロコ東京」という具合です。

そしてその「スポット価格」とは、二営業日後決済(ドルはニューヨークで、ゴールドはロンドンで付け替えが行われる日)の取引のことです。つまり今売買すれば二営業後にその取引による受け払いがなされるということです。

このロコ・ロンドン・ゴールド価格は、ドル円の為替と全く同じくほぼ24時間、銀行間の相対取引(OTC取引)として取引されています。ロコ・ロンドンという名前から地理的にロンドンのマーケットかと誤解されやすいのですが、外国為替として、地理は関係なく、基本的に24時間世界で取引をされています。

ただ、太陽の動きに従い、つまり月曜日のアジアの朝から始まり、欧州、米国と取引の主体が動き、米国が終わると日付を変えて翌日のアジアが始まる、といった具合に金曜日の米国の終わり(日本の土曜日早朝)でマーケットも週末に入り、週末明けの月曜日のアジアからまた取引が再開するという流れになっています。


円建てゴールド価格


世界中のゴールドの価格はこの「ロコ・ロンドン・スポット価格」をもとに計算されます。たとえば日本の円建て1グラム当たりの金価格はこのドル建てのロコ・ロンドン価格をドル円により円転し、オンスからグラムに換算したものです。その計算式は以下の通り。

ドル建てオンス当たりの価格 x ドル円為替レート / 31.1035グラム =円建てグラムゴールド価格

$1860/toz x 114.00 / 31.1035 = 6817.72円/gram

これはいわばロコ・ロンドン円建てグラム当たりの金価格ともいうべきものです。

実際にゴールドの現物の受け渡しする場合は、ロンドンから東京にゴールドを移送するコストが価格に反映されます。それがだいたいオンス当たり1ドル。(グラムあたりは、ドル円が114円だとすると3.6円くらいになります。)つまりロコ東京のゴールド価格は理論的にはロコ・ロンドンよりも、3.6円くらい高くなります。

しかし、実際のマーケットはその時のその国(この場合は日本)のゴールド需給により、このロコ・ロンドンとの価格差との関係は、たとえば円建てゴールド価格が上昇し、投資家による利食い売りが増えて、ディスカウント(ロンドンよりも安くなる状況)となることさえもあり、その時々によって変わることになります。

おそらく一般の人が最も目にする機会が多い「小売価格」はこのロコ・東京のゴールド価格ですが、少し詳しい解説が必要です。

2021年11月15日の小売価格は7560円(消費税込み)です。小売価格とは毎朝9時半に貴金属商で公表されるその日の価格で、よほど大きな相場変動がない限りその日一日は有効な価格です。

当然ゴールドのマーケット、ドル円相場ともにずっと動いています。その絶えず変動している相場のリスクをとっているので、そのリスクを許容するための余裕と各貴金属商が自分のブランドのゴールドを改鋳するコストなどがその価格には含まれています。

7560円を税抜きにすると6870円、9時半時点のロコ・ロンドン・ゴールド価格は6830円であったので、この場合40円くらいのバッファーがあるということになります。

この価格の成り立ちは、ほかの貴金属でも基本的に同じです。ただプラチナとパラジウムは歴史的にはロコ・ロンドンではなく、ロコ・チューリッヒ、つまりスイスのチューリッヒの銀行口座での付け替えを基本としたドル建て価格でした。しかしここ数年で、プラチナとパラジウムでもロコ・ロンドンとロコ・チューリッヒが併用されるようになっています。

以上、貴金属の価格の根源であるスポット価格について解説しました。しかしこれだけでは実は片手落ちになります。現在ではスポット市場よりもゴールドの価格形成におそらくより強い影響力がある「先物市場」における取引の仕組みを解説します。

Provided by
池水 雄一(Bruce Ikemizu)

1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社。
1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産株式会社で貴金属チームを率いる。
2006年スタンダードバンクに移籍、2009年同東京支店支店長就任。
2019年9月日本貴金属マーケット協会代表理事。

>池水 雄一氏監修の「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの貴金属」に関する記事一覧はこちら

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