貴金属の基礎

シルバーの需要と供給|鉱山生産やそのコスト、埋蔵量等から詳しく解説

まずはシルバーの需要と供給をみてみましょう。過去10年の需給表はゴールドと同じMetals Focus社の作成のものですが、シルバーはSilver Institute のSilver Surveyで毎年発表されています。

(シルバーの需要と供給)

シルバーの需要と供給

各項目の詳しい点はこれから見ていきますが、最初にシルバーの需給の特徴に少し触れておくと、鉱山生産の規模でゴールドと比較するとゴールドが約4,000トンの鉱山生産に対して、シルバーは26,000トンと約6.5倍です。

しかしシルバーの価格は2022年2月現在80分の1というレベルであり、希少価値としての比較を考えるとシルバーはゴールドにくらべて大きく割安の状態にあると言えます。

もちろん、希少価値だけがそのものの価値を決めているわけではありませんが、需要面でのゴールドとの違いも大きなものです。2021年の需要全体で32,130トン。そのほぼ半分にあたる16,299トンが工業用の需要です。

ゴールドの工業用需要は需要全体の1割にもなりません。シルバーは素材としての工業用需要が大きく工業用のメタルであり、ゴールドはそのままの形で保有する宝飾品を含む投資用のメタルであるということが言えます。


1.シルバーの供給



a.鉱山生産


シルバーの主な生産地はメキシコやペルーなどの中南米と中国が大きく、最も大きい生産国はメキシコで2020年5541トン、続くペルーは3411トン、中国が3377トンとこの三か国でちょうど世界のシルバー鉱山生産の半分を占めます。

日本はシルバーの輸入国ですが、日本に入ってきているシルバーは、主に、メキシコ、ペルー、韓国、そしてオーストラリアからです。日本のシルバーの供給は、総合商社がシルバー生産国から輸入する分(輸入塊)と、スメルターである日本の鉱山会社が輸入した銅鉱石や亜鉛鉱石から副産物としての彼らのブランドのシルバーを生産する「国内山物」があります。

歴史的には住商がメキシコから、物産がオーストラリアから、日商岩井(現双日)がペルーからといった図式がありましたが、近年では輸入塊は、地理的に近い韓国からの輸入が増えています。

韓国はシルバーの鉱山生産国ではありませんが、日本のスメルター同様、非鉄鉱石からの副産物としてシルバーを生産しており、その大きな部分が日本の商社を通じて日本のユーザーに使われています。韓国から来たシルバーが日本でペーストに加工され、それがまた韓国のソーラーパネルメーカーなどに輸出されるというシルバーの流れがあり、非常に興味深いものです。

(シルバー生産国トップ20)

シルバー生産国トップ20

シルバーの生産は、ゴールドと違ってシルバーがメイン(primary)の鉱山で生産される量は全体の4分の1に過ぎません。残りの4分の3は、ほかのメタルの副産物として生産されています。最大のものは鉛亜鉛で31.7%、そしてプライマリー(銀鉱山)26.7%、銅25.3%、ゴールド15.7%という内訳です。

ゴールドは基本的に「金鉱山」から生産されます。その鉱山が金鉱山なのか、銀鉱山なのか、銅鉱山なのかは、その鉱山の収入をどのメタルが最も大きな部分を占めるかによって名前が決まります。

ゴールドはその価値が高いがために、どうしても「金鉱山」となりがちなのです。ということでシルバーの場合は下のグラフのように、シルバー以外の非鉄の鉱山の中に含まれる部分が多くなっています。

(シルバーの鉱石別鉱山生産量)

シルバーの鉱石別鉱山生産量


b.鉱山生産コスト


シルバーの生産コストはゴールドほど重要ではありません。というのも、そのコストがはっきりできるのは銀鉱山(Primary)のコストだけであり、ほかの鉱石からの副産物ではシルバーのみのコストの計算はできません。

銀鉱山の現在の生産コストは以下の表のとおりです。2020年のAIS(すべての要素を含んだ生産コスト)は11.17ドルと、この原稿を書いている2022年3月1日現在のシルバー価格24.5ドルですから、そのコストは半分以下であり、シルバー鉱山会社は大きな利益を得ていると考えることができます。

(銀鉱山生産コスト)

銀鉱山生産コスト


c.埋蔵量


シルバーの埋蔵量(銀鉱山での確認された経済的に採算の合うシルバーの量)は増加傾向にあります。2019年は105,596トンでしたが、新しい鉱山・鉱脈開発で15,000トン増加、生産で減少した分が7800トンで、差し引き約7200トンほど埋蔵量は増えて、2020年は112,864トンが確認されています。

現在確認されている資源量は226,551トンであり、その約半分が経済的に掘削可能です。埋蔵量は新たな鉱脈の発見、鉱山掘削技術の進歩そしてシルバー相場の動きによって増減します。

(銀鉱山の埋蔵量の変化;単位:100万オンス)

銀鉱山の埋蔵量の変化;単位:100万オンス


d. リサイクルからの二次供給


2021年のシルバーの鉱山供給26392トンに対して、いわゆる二次供給とよばれるリサイクルからの供給は6103トンと供給全体の約19%です。リサイクルの主な材料は、工業素材(3405トン)、宝飾品(1082トン)、銀器(839トン)、フィルム(662トン)、そしてコイン(112トン)となります。(数量はいずれも2021年の統計)

宝飾品と銀器の出元はインドが多く、この二つの分野は特に相場の動きに大きく左右されます。

また、2021年はパンデミックの影響のロックアウトで、家庭での断捨離で捨てられた電気機器からのシルバーの回収が増えたという興味深い事態もあります。

フィルムはもはやすたれたと思われがちですが、まだまだ医療の分野、つまりレントゲンに使われるフィルムにはシルバーが感光材として含まれており、この分野もシルバー価格が上がってくると回収が進みやすいという傾向があります。

(シルバー価格の動きと各分野別リサイクル量の推移)

シルバー価格の動きと各分野別リサイクル量の推移

(シルバー供給の推移)

シルバー供給の推移

参考記事:シルバーの需給と供給|需要を主要な分野ごとに詳しく解説

Provided by
池水 雄一(Bruce Ikemizu)

1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社。
1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産株式会社で貴金属チームを率いる。
2006年スタンダードバンクに移籍、2009年同東京支店支店長就任。
2019年9月日本貴金属マーケット協会代表理事。

>池水 雄一氏監修の「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの貴金属」に関する記事一覧はこちら

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